「社内のデータが色々な場所に散らばっていて、有効活用できていない…」
「Excelでのデータ集計やレポート作成に時間がかかりすぎている…」

このような課題をお持ちのビジネスパーソンにとって、BigQuery(ビッグクエリ)は強力な解決策となります。この記事では、Googleが提供するデータ分析サービス「BigQuery」について、その特徴から料金、具体的な活用方法まで、ITに詳しくない方でも理解できるよう、わかりやすく解説していきます。

BigQueryとは?

BigQueryとは、簡潔に言うと「社内のあらゆるデータを一箇所に集め、高速で分析するための、Googleが提供する巨大なデータ倉庫」です。

BigQueryはGoogleのクラウド上で提供される「サーバーレス」という仕組みを採用しています。これは、面倒なサーバーの管理や設定が一切不要で、使いたいときに使いたい分だけデータ利用ができることを意味します。そのため、IT担当者の負担を大幅に削減し、分析したい人がすぐにデータ分析を始められる環境が手に入ります。

BigQueryがビジネスで選ばれる5つの特徴

なぜ多くの企業がBigQueryを選ぶのでしょうか。その代表的な5つの特徴をご紹介します。

1. 驚異的な速さ!数億行のデータも数秒で分析

BigQueryの最大の特徴は、その圧倒的な処理速度です。

従来のデータベースでは一晩かかっていたような膨大な量のデータ分析も、BigQueryならわずか数秒から数分で完了します。

この速さにより、「会議中に気になった数値をその場で集計して、すぐに議論に反映する」といったことが可能になり、データに基づいた迅速な意思決定を強力にサポートします。

2. 使った分だけの支払いで、無駄なコストを削減

BigQueryの料金体系は、主に「データの保管料金」と「データの分析料金」の2つからなる従量課金制で、実際に使った分だけ支払う仕組みです。

高価なサーバーを事前に購入する必要がないため、「まずは小規模に始めて、事業の成長に合わせて利用を拡大する」といった柔軟な使い方が可能です。毎月一定の無料利用枠も用意されており、無駄なITコストをかけずにデータ活用をスタートできます。

3. 直感的な操作で、分析結果をレポートに活用

BigQueryはWebブラウザ上で完結し、非常に直感的な操作が可能です。「SQL」という比較的習得しやすい言語を使い、分析の質問を投げかける(クエリを実行する)だけで、すぐに答えが返ってきます。

画像は実際の操作画面です。主に3つの領域に分かれており、それぞれ以下のような役割があります。

  • ナビゲーション:BigQueryの管理やデータの閲覧が出来ます
  • クエリエディタ:実際にクエリを作成し、実行が出来ます
  • 詳細ペイン:BigQueryに格納されているデータの詳細や、クエリの実行結果の詳細が確認出来ます

さらに、分析結果はボタン一つでGoogleスプレッドシートやExcel形式でダウンロードしたり、後述するBIツールに連携したりできるため、資料やレポートの作成もスムーズに行えます。

4. 豊富な連携機能で、今使っているツールとも繋がる

BigQueryは、Googleが提供するサービス(Googleアナリティクス、Google広告など)との連携が非常にスムーズなのはもちろん、SalesforceのようなSFA/CRMツールや、様々な外部ツールとも簡単にデータを繋げることができます。

社内のあちこちに散らばったデータをBigQueryという一つの場所に集約することで、これまで見えなかったビジネスの全体像を可視化できます。

<Amazon RedshiftやSnowflakeとの違いは?>

BigQueryと同様のデータウェアハウスサービスとして、Amazon社の「Redshift」やSnowflake社の「Snowflake」があります。それぞれに特徴がありますが、BigQueryは特に「サーバー管理が一切不要な手軽さ」と「Googleサービスとの親和性の高さ」において大きな強みを持っています。

➡ Amazon RedShiftとBigQueryの比較に関してはこちら https://primenumber.com/blog/bigquery_redshift
➡ SnowflakeとBigQueryの比較に関してはこちら
https://primenumber.com/blog/bigquery_snowflake

5. AI・機械学習で、未来を予測する

BigQueryには「BigQuery ML」という機能が組み込まれており、データ分析の専門家でなくても、SQLを使ってAIによる予測分析が実行できます。

例えば、過去の購買データから「今後、購入してくれそうなお客様」を予測したり、「解約しそうなお客様」の兆候を見つけ出したりといった、一歩進んだデータ活用を手軽に実現できます。

【BigQuery活用事例】
多様なSaaSをつなぎ、誰でもデータを使える環境を。複数のD2Cブランドの成長を支えるデータ基盤構築の舞台裏(and roots株式会社)
https://primenumber.com/cases/and-roots

“全体最適されないKPI設定”から脱却し、全社目標を個人レベルまで落とし込むには?  〜部門間データ統合で挑む、識学のRevOps実践と組織強化〜(株式会社識学)
https://primenumber.com/cases/shikigaku

BigQueryの主な機能

BigQueryには、ビジネスを加速させるための便利な機能が多数搭載されています。

  • 柔軟なデータロード & ストレージ
    溜まったデータを一括で取り込むバッチ処理はもちろん、次に紹介するリアルタイムでのデータ取り込みにも対応しています。
  • ストリーミングデータ処理
    ECサイトの売上データや、Webサイトのアクセスログなど、次々と発生するデータをリアルタイムでBigQueryに取り込み、即座に分析することができます。これにより、常に最新の状況を把握し、スピーディーなアクションに繋げられます。
  • BigQuery ML(機械学習統合)
    前述の通り、SQLだけで機械学習モデルを構築・実行できる機能です。外部の専門ツールを導入することなく、使い慣れたBigQuery上で高度な予測分析を始められます。
  • 組み込みのBI・可視化機能
    Googleが提供する無料のBIツール「Looker Studio」と直接連携できます。BigQueryで集計したデータを、自動更新されるグラフやダッシュボードで分かりやすく可視化し、関係者とリアルタイムで状況を共有できます。

BigQueryの詳しい利用方法の解説はこちら >>

BigQueryの料金体系

BigQuer」の料金体系は、主に「分析料金」と「ストレージ料金」の2つの要素で構成されています。また、データの取り込みや特定機能の利用に応じても料金が発生します。

以下に、詳しい内容についてまとめましたのでご覧ください。

1. 分析料金(コンピューティング)

クエリの実行(データ処理)にかかる費用です。以下の2つのモデルから選択できます。

1.1. オンデマンド料金

クエリでスキャンされたデータの量(TiB)に応じて課金される、従量課金制のモデルです。

項目料金無料枠
クエリ$7.50 / TiB毎月最初の 1 TiB まで無料

特徴: 手軽に始められ、利用頻度が低い場合にコストを抑えられます。

注意点: スキャンするデータ量を意識しないと、想定外の高額請求につながる可能性があります。

1.2. BigQuery Editions(容量料金)

スロット(クエリ処理に使用される仮想CPU)と呼ばれるコンピューティングリソースの処理能力に対して課金されるモデルです。

3つのエディションが用意されており、それぞれ利用できる機能が異なります。

エディション料金(スロット/時間)1年コミット割引後の料金3年コミット割引後の料金主な特徴
Standard$0.051小規模な分析や開発向け。基本的な機能を提供する。
Enterprise$0.0765$0.0612$0.0459大規模な本番ワークロード向け。高度なセキュリティ機能、BI Engine、BigQuery MLなどが含まれる。
Enterprise Plus$0.1275$0.1020$0.0765ミッションクリティカルなワークロード向け。顧客管理の暗号鍵(CMEK)など最高レベルのセキュリティとガバナンス機能を提供する。

特徴: 利用量が多い場合、オンデマンド料金よりコストを削減できる可能性があります。スロットを予約することで、安定したクエリパフォーマンスを確保できます。

支払いモデル:

  • 従量課金制: 1秒単位(最低1分)で利用した分だけ支払います。
  • コミットメント: 1年または3年の長期利用を約束することで、大幅な割引が適用されます(Enterprise / Enterprise Plusのみ)。

2. ストレージ料金

BigQueryに保存しているデータの量に応じて課金されます。

2.1. ストレージ課金モデル

モデルアクティブストレージ長期保存
論理ストレージ (デフォルト)$0.023 / GB / 月$0.016 / GB / 月
物理ストレージ$0.052 / GB / 月$0.026 / GB / 月
無料枠共通で毎月最初の 10 GB まで無料共通で毎月最初の 10 GB まで無料

アクティブ vs 長期保存: テーブルまたはパーティションが90日間連続で編集されない場合、そのデータのストレージ料金は自動的に安価な「長期保存」料金になります。

論理 vs 物理ストレージ:

  • 論理ストレージ: 非圧縮時のデータサイズに基づいて計算されます。シンプルで分かりやすいモデルです。
  • 物理ストレージ: 圧縮後の物理的なデータサイズに基づいて計算されます。圧縮率が高いデータの場合、論理ストレージよりもコストを削減できる可能性があります。

3. データ取り込み・エクスポート料金

3.1. データ取り込み

方法料金無料枠
バッチ読み込み (ファイルからロード)無料
Storage Write API (ストリーミング取り込み)$0.025 / GB毎月最初の 2 TiB まで無料
Legacy Streaming Inserts$0.01 / 200 MB

3.2. データエクスポート

方法料金
バッチエクスポート (Cloud Storageへ)無料

注: エクスポート処理自体は無料ですが、エクスポート先のCloud Storageでのストレージ料金や、ネットワーク転送料金が別途発生する場合があります。


4. その他の主要サービス料金

サービス課金単位料金主な用途・備考
Storage Read API読み取ったデータ量$1.10 / TiBBigQuery外部のアプリケーションからデータを高速に読み取るためのAPI。毎月300TiBの無料枠あり。
BigQuery MLモデル作成時のスキャンデータ量モデルタイプによる(例:線形回帰 $250 / TiBSQLで機械学習モデルを作成・実行できる。モデル作成クエリは毎月10TBまで無料。予測・評価は通常の分析料金が適用される。
BI Engine予約したメモリ容量$0.0416 / GB / 時間Looker StudioなどのBIツールからのクエリを高速化。Editionsコミットメントに応じて無料容量が付与される。

BigQueryの導入でできること

では、実際にBigQueryを導入すると、どのようなことができるのでしょうか。具体的なビジネスシーンでの活用例を3つご紹介します。

1. 大規模データの高速かつ高度な分析の実施

数千万件を超える購買履歴やWebアクセスログなど、Excelでは開くことができないような巨大なデータをストレスなく高速に集計・分析できます。

「全店舗の過去5年間の商品Aの月別売上推移を、エリア別・顧客年代別で集計する」といった複雑な分析も瞬時に行え、ビジネスの課題発見や機会創出に繋がります。

2. マーケティングデータ統合・分析によるROI改善

Web広告、CRM/SFA、Webサイト解析ツールなど、マーケティング部門が利用するデータは多岐にわたります。これらのデータをBigQueryに統合することで、「どの広告から流入したお客様が、最も優良顧客になっているのか」といった、これまで分断されていて見えなかった顧客の全体像を可視化できます。

これにより、勘や経験に頼らない、データに基づいた広告予算の最適化(ROI改善)が実現します。

3. 機械学習による予測分析の実現

BigQuery MLを活用すれば、「過去のデータに基づき、来月の売上を予測する」「特定の商品を購入した顧客が、次に買いそうな商品を予測(レコメンド)する」「サービスの解約確率が高い顧客を予測し、事前にフォローアップを行う」といった予測分析が可能です。これにより、ビジネスの精度を大きく向上させることができます。

 活用幅を広げるBigQueryのAPIに関しての解説はこちら >>

【BigQuery活用事例】
データドリブンな番組制作への転換 〜TBSラジオにおける聴取者分析の実践〜
(株式会社TBSラジオ)
https://primenumber.com/cases/tbsradio

BigQuery導入を成功させる3つのポイント

BigQueryは非常に強力なツールですが、導入効果を最大化するためには、いくつか意識すべきポイントがあります。

1. データの「しまい方」を最初に決める(データ基盤設計)

BigQueryという巨大な倉庫に、どのようにデータを整理して保管するか、最初のルール決めが重要です。この「しまい方(スキーマ設計)」を適切に行うことで、後の分析がスムーズになったり、分析にかかるコストを抑えたりすることができます。

2. コストを意識した使い方を心がける

BigQueryは従量課金制のため、使い方によっては意図せず料金が高額になる可能性もあります。分析前に処理されるデータ量を見積もる、データを整理整頓して保管(パーティショニング)するなど、少しの工夫でコストを賢く管理することができます。

3. 運用体制とスキル

BigQueryを使いこなす上で、SQLの知識は非常に役立ちます。とはいえ、最近はBigQueryと連携する便利なツールも多く、必ずしも全員がSQLのエキスパートである必要はありません。データを見る人、分析する人、データを準備する人など、チームで役割分担を考えることが成功の鍵です。

【BigQuery活用事例】
頻発したエラーを解消し、浮いたリソースを分析業務やAI活用へ。データ基盤構築で見えた可能性とは(株式会社ベーシック)
https://primenumber.com/cases/basic

BigQueryと相性抜群のツール

BigQueryを単体で使うよりも、周辺ツールと組み合わせることで、その価値はさらに高まります。

1. 散らばったデータを自動で集める「データ統合・ETL/ELT ツール

社内の様々な場所に散らばったデータをBigQueryに集める作業は、手動で行うと大変な手間がかかります。そこで役立つのが、データ統合を自動化するETL/ELTツールです。

弊社が提供する「TROCCO」は、専門的な知識がなくても、数クリックの簡単な設定で広告データやCRMデータなどをBigQueryへ自動で統合できます。データの「お引越し」や「整理整頓」をTROCCOに任せることで、担当者は本来注力すべきデータ分析業務に集中できます。

TROCCOのBigQuery活用事例資料へ

2. 分析結果を分かりやすく見せる「BI・可視化ツール」

BigQueryで分析した結果(数字の羅列)を、グラフや表で分かりやすく可視化するツールです。GoogleのLooker Studio(画像)や、Tableauなどが有名で、経営層への報告やチームでの情報共有に欠かせません。

3. データ分析の品質を高める「開発・データ管理ツール」

分析作業が高度化してくると、どのような分析をいつ行ったのか、管理が煩雑になりがちです。dbtなどのツールを使うことで、データ分析の過程を記録・管理し、分析の属人化を防ぎ、品質を担保することができます。

>> TROCCOとdbdの連携についてはこちらから

まとめ

この記事では、Googleのデータ分析基盤サービス「BigQuery」について、その全体像を解説しました。

  • 面倒なサーバー管理が不要で、すぐに始められるデータ分析環境
  • 数億行のデータも数秒で処理できる圧倒的なスピード
  • 使った分だけの料金体系で、スモールスタートが可能
  • AI・機械学習による高度な予測分析も手軽に実現
  • 各種ツールとの連携で、データ活用の可能性がさらに広がる

Excelでの集計作業に限界を感じている方、データに基づいた意思決定を迅速に行いたい方、マーケティング施策の成果を最大化したい方は、ぜひBigQueryの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

そして、BigQueryへのデータ連携でお困りの際は、ぜひ弊社の「TROCCO」にご相談ください。貴社のデータ活用をスムーズに、そして力強くサポートします。。

primeNumber編集長

primeNumberのブログを担当している編集長