複数のD2Cブランドの立ち上げから運営までを手がけるand roots株式会社。同社では、ブランドごとに異なる指標やデータ取得手段が混在し、グループ横断のデータ活用が困難であるという課題に加え、ファイルを開けないほどのデータ量や分析作業にかかる時間・工数などに悩みを抱えていた。

こうした状況を改善するため、これまで使用していたデータインジェストツールからETLツールである「TROCCO」へ乗り換え、グループ横断のデータ基盤の構築に取り組んだ。今回は「TROCCO」導入前後の変化、現場での活用法、そして今後の展望について、データ利活用の実務を担うご担当者様にお話を伺った。

課題・問題

複数のD2Cブランドを各グループ会社が運営。追いかけるべき指標のロジックがバラバラだった

and roots株式会社 グロースハックチーム テックリード アナリティクスエンジニア 谷口 健太様
貴社サービスとデータ活用の指標をお聞かせください。

谷口 健太様(以下、敬称略):弊社ではブランドの立ち上げから運営を行うD2C事業と、お客さまのマーケティング支援を行うWebコンサルティング事業を主に手掛けています。それぞれ別々のビジネスモデルですので、データ活用で追うべき指標も異なり、D2Cでは売上を、マーケティング支援ではリスティング広告などのCPAやROASなどの成果指標を追っています。

私たちが扱っているデータの8〜9割がD2C領域です。具体的には注文データや在庫データ、広告データ、さらにはCS対応のメールログまで、フルに取得して活用しています。

一方のWebコンサルティング事業では、お客さまから運用をお任せいただいているGoogle広告やMeta広告、Yahoo!広告などのデータを扱っています。お客さまの広告運用を最適化するため、日々の運用成果を可視化、レポーティングを行っています。

加えて、データ活用によって効率化された業務時間や工数、創出できた付加価値などの視点も重視しています。業務上の工数を削減し、より売上に貢献できる取り組みに投資していくことも求められています。

「TROCCO」導入以前に抱えていた課題をお聞かせください。

谷口:以前は、各D2CブランドにCRMツールを導入していたことから、指標のロジックや算出方法、その定義がバラバラでした。「売上」という重要な指標でさえも微妙に異なっており、分母や分子の定義が違うことで、F2転換率や利益率といった経営判断に直結する数字にもブランドごとに齟齬があったのです。また、データの取得に時間がかかること、データの量が多すぎてスプレッドシートで開けないなど、データ分析の作業負担が大きいことも課題でした。

なぜ「TROCCO」を選んだのか

データインジェストツールや他のETLツールと比較。ワークフロー機能で手動から自動へ

and roots株式会社 グロースハックチーム データエンジニア 崎本 育直様
「TROCCO」はどのようなきっかけでお知りになりましたか。

谷口:参考にしていた大手メガベンチャー企業の導入を知ったことがきっかけです。それまで「ETLツール」すら知らず、データ活用の最先端を走る企業が導入しているのなら間違いないだろうと感じ、比較検討することになりました。

ETLツールと他のソリューションでは、どのような要素で比較検討されましたか?

谷口:以前はデータを収集し、他のシステムへ転送するデータインジェストツールを一部では使用していました。しかし、ワークフロー機能がなく、実際にグループ内に展開できるレベルには達していませんでした。

そうした背景もあり、初めて「TROCCO」を触ったときに「こんな便利なツールがあるのか」と衝撃を受けたのをよく覚えています。やはり一番感動したのはワークフロー機能ですね。

以前は手動で各ジョブを時間差で動かしていたので、下流で何かデータ転送で失敗するとジョブ全体を最初からやり直さなければならず、非効率的でした。しかしワークフロー機能であればデータの依存関係を考慮し、自動で処理を進められるようになり、一括管理も可能になります。

他社ツールとは、どのような要素で比較検討されましたか?

谷口:日本語のサポートページが用意され、日本語によるサポートを受けられることを前提としていました。他にもUI/UXが優れていること、サポートページのドキュメントの整備状況などの要素を重視しました。「TROCCO」はひとりでも扱いやすく、かつ業務の自動化も実現できたため、私ひとりしかいない体制でも充分扱えると判断し、導入を決定しました。

導入までのスケジュール・過程

複数のSaaSを活用するため、データを統合。ひとりデータアナリストから後任への引き継ぎもスムーズに

「TROCCO」導入後に構築されたデータ基盤についてお聞かせください。

谷口:「TROCCO」で各SaaSや広告媒体からのデータを取り込み、DWHのGoogle BigQueryに集約しています。ETL処理にdbtを、データの可視化・分析にはLooker Studioを導入しています。D2C事業のうち、4ブランドで20本以上のパイプラインが常に動いており、月間で6,000ワークフロー、10万ジョブを実行しています。このジョブ数は「TROCCO」が導入されている企業全体でも上位10%に入る規模だと聞きました。

データ基盤構成図
“ひとりデータアナリスト”として「TROCCO」を導入された際に意識していたことをお聞かせください。

谷口:データ基盤は、用意しただけでは現場に使ってもらえません。そこで事業部側ですでにある程度SQLを書けるメンバーや、教えればSQLを扱えるようになりそうなメンバーをキーマンとして集め、Google BigQueryのテーブルに直接アクセスしてデータを取り出せるようにSQLの書き方をレクチャーしました。この施策のおかげで、「TROCCO」で構築したデータ基盤を現場からもしっかり活用できるようにしています。

後任である崎本さんには、どのようにデータ基盤の運用を引き継いだのでしょうか。

谷口:特にレクチャーをすることなく、primeNumber社が公開しているドキュメントを渡しただけです。「TROCCO」のUI/UXは直感的で、新しく入社したばかりのメンバーでもある程度触っていれば使えるようになりますし、ドキュメントも日本語で書かれているため心配はありませんでした。

崎本 育直様(以下、敬称略):癖のないUIに加えて、Slackによるサポートが非常に心強かったですね。トラブル対応の際にはすぐにレスポンスをいただけて、安心感がありました。

D2C事業ならではの「TROCCO」活用のポイントがあればお聞かせください。

崎本:私は新規のD2C立ち上げプロジェクトを担当することが多く、その際にはどのSaaSを導入するべきか検討します。その時の重要な要素のひとつに「TROCCO」と連携できるか、コネクタは対応しているかが挙げられます。

弊社では、MAツールやヒートマップ、ABテスト、メール配信ツール、LINEメッセージ配信など、シンプルな機能のマーケティング系SaaSを用途別に多数導入しています。これは多機能なオールインワンのMAツールでは初期投資が大きく、導入効果も見えにくいため、費用対効果が見えにくいからです。

多くのツールを導入した仕組み(ベスト・オブ・ブリード)を構築する場合、課題になるのは各ツールの連携です。そこで「TROCCO」のHTTP・HTTPSコネクタを駆使してつなぎ込んでいます。ツールによっても前後しますが、1日で作業が完了する場合もあれば、1〜2週間ほどかかってしまうこともあります。しかし、どんなにAPIの仕様に癖がある場合でも「TROCCO」でつなげることができ、本当に困ればサポートに助けていただけるので、特に不安はありません。

導入後の効果

開発の工数削減と高速復旧を実現し、グループ全体でデータを活用できるように

「TROCCO」導入によって得られた成果についてお聞かせください。

谷口:特に一番大きかったのは、データ分析開始までの速度です。以前はデータ周りの環境を整備するだけでも2〜3日かかっていたのですが、今ではすぐにパイプラインを用意できるようになり、スピーディにデータ分析を始められるようになりました。

また、手動でデータを転送していた頃と比べ、「TROCCO」導入によってリカバリーや再実行の負荷が大きく下がりました。以前はパイプラインが落ちると1日がかりでリカバリー作業を行うこともありましたが、今ではどこで失敗したのかがすぐに分かり、途中から再実行もできるため、1時間以内で復旧できるようになっています。

D2C事業では、どのような成果を得ることができていますか。

崎本:自社で構築したECストアとは違い、ECモールのデータは取得がとても難しく、LTVといった指標を可視化できていませんでした。しかし「TROCCO」を通じて注文データを取得し、分析できるようになったことでECモールへの出品でも「このLTVならこの金額まで広告投資が可能だ」と判断ができるようになっています。この変化によって、より攻めたECモール施策ができています。

「TROCCO」に対して経営層からはどのような評価を受けていますか。

谷口:「TROCCO」の導入から4年が経っていますが、直近1年でデータ転送量が2〜3倍に増加しています。これはand rootsのグループ全体でデータ活用が進んだことが背景にあります。各グループ会社がそれぞれのECブランドを運営することでターゲット層にあわせた施策を打ちやすいというメリットがありますが、その一方でデータをグループ全体で活用しにくくなるデメリットがあります。

しかし「TROCCO」の存在によって、グループ全体でデータを統合、活用することができ、データ活用のリテラシーがグループ全体で底上げされていると感じています。こうした変化に対して、経営層も「TROCCO」導入時に高く評価していました。現在は弊社のインフラとして定着し、代表をはじめ当時を知るメンバーが「あの頃のデータ活用は大変だった」と振り返るたび、改めてデータ基盤の重要性を実感しています。

and roots社に新卒入社されたビジネスユーザーの方が作成したダッシュボード

今後の展望

より正確な経営判断が求められるD2Cにこそ、データの力を

D2Cビジネスにおけるデータ利活用の意義をどのように捉えていますか。

谷口:D2Cは広告費や在庫といった大きな先行投資が避けられないビジネスモデルです。広告の投下判断や商品発注の精度を上げ、収益性の高い事業として運営するには、正しいデータを元に判断することが必要不可欠なのです。だからこそ、属人的なデータ運用から脱却し、誰でもデータを正確かつ迅速に扱える仕組みを整えることが、D2Cビジネス事業では重要だと考えています。

今後の展望についてお聞かせください。

谷口:これからも新しい事業、新しいグループ会社が次々と立ち上がっていくと思いますが、その成長をデータで支えられるグロースハックチームでありたいと考えています。事業部から具体的に「これをやりたい」「こんな分析をしたい」と要望があったとき、すぐに実現できる体制を今後整えていきたいですね。データの利活用にボトルネックがあっては貴重なビジネスチャンスを逃してしまうので、できるだけラグを短くし、試行回数を最大化することが、D2Cブランドの成長においてとても重要だと感じています。

崎本:さまざまなSaaSが乱立する昨今、“データの番人”として「TROCCO」を活用していきたいですね。各SaaSごとにデータが散在している状態では、開発コストばかりがかかってしまいます。適切なプラットフォームにデータを集約し、費用対効果を意識して舵取りしていくことが、データとテクノロジーを管理する立場としての責務だと考えています。

最後に「TROCCO」導入を検討する企業に向けてアドバイスをお願いします。

谷口:primeNumberさんは、技術的な理解が浅い状態でもきちんと対応してくれるので安心感があります。他のデータインジェストツールと違い、データ分析に強い支援が得られる点が信頼できると思います。何もわからなくても、まずは相談してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

崎本:「TROCCO」はある程度のITリテラシーがあれば、すぐにでも使えるツールです。他のSaaSを使いこなしている人が社内にいれば、その人が中心になって導入できると思います。とにかく一度触ってみて、使いやすさを体感してほしいですね。

and roots株式会社

https://androots.co.jp/

業種情報・通信
設立2019年2月
従業員数 グループ会社合計:147名(社員)、263名(従業員)(2025年3月現在)
事業内容通信販売事業/コンサルティング事業/メディア事業/eコマース事業