受注ミス激減・トレーサビリティ確保を実現するサプライチェーンにおけるデータ活用とは 〜ベースフードが描くデータ活用の未来(4/4)〜

ベースフード株式会社

- 課題
- 業界専用ツール、FAX、メール、など発注経路の多様化により、受注の重複・漏れの確認が困難
- 発注情報と社内受注データとの突合・整合性確認の仕組みがなく、トレーサビリティが不十分
- 目的
- 発注から出荷までのプロセスの正確性の担保による、配送ミス・納品トラブルの未然防止
- ノーコード/ローコードによる運用で、非エンジニアでも管理・改善できるデータ基盤の整備
- 効果
- 受注漏れ・重複の削減により配送トラブルが大幅に減少し、受注精度が向上
- EC領域において、ロット情報と配送記録の突合によりトレーサビリティを実現
- Google Drive・CSVなどの形式で誰でも扱える環境を整え、運用の属人性を排除・業務継続性を確保
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに掲げ、世界初の完全栄養の主食*「BASE BREAD」や「BASE Cookies」「BASE YAKISOBA」を開発・販売するフードテック・スタートアップ企業、ベースフード株式会社。オンライン直販を中心としたD2Cモデルで顧客との接点を持つだけでなく、大手コンビニチェーンやスーパマーケットなどのリアルチャネルにも進出し、販路を拡大していることが特徴だ。
* 1食分(BASE BREADは2袋、BASE Cookiesは4袋、BASE YAKISOBAは2個、BASE Pancake Mixは1袋と卵Mサイズ1つ、牛乳(成分無調整)100mlを使用して調理した場合)で、栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウム以外のすべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む。
今回は、サプライチェーン領域における課題と解決方法、導入後に得られた効果、そして今後のデータ活用の展望について、プロジェクトをリードされた煙草森様、嶽様にお話を伺った。
課題・問題
多岐に渡る発注経路により、重複や受注漏れがないかを問い合わせがないと把握できなかった

煙草森 直也様(以下、敬称略):全社的な生産性向上を通じて売上や利益を最大化することをミッションに、出向のような形で各部門に入り込み、業務効率化を支援しています。
直近では、誤受注を防ぎ、正確な発送を実現するため、サプライチェーン領域のデータ活用に注力しています。弊社では、自社倉庫から個人のお客様への直送(toC)と、卸業者を経由して店舗へ納品する(toB)両方の配送オペレーションを展開しています。これらをミスなく・迅速に・簡便に処理できるように、データの移行フローを整備する取り組みをこの1年間進めてきました。
嶽 雅也様(以下、敬称略):私のミッションは、売上や利益の向上を図る中で、固定費の削減を実現することにあります。具体的には、外注費の見直しやツールの適正な配分、業務フローの整備、新たなAIツールの導入などを進めています。業務の棚卸しを行う中で、ツールによる自動化を検討する過程で「TROCCO」の活用も視野に入れています。
データ活用までの道のり
発注内容と受注内容の一致が確認できず、受注の重複や漏れが発生

煙草森:以前はBtoBの発注から出荷のプロセスで、発注内容と社内で登録している受注情報が完全に一致しているかどうかを全体で突合・確認する仕組みが存在していませんでした。納期や商品種別、品目、配送先といった情報を確認できる状態になっておらず、業務品質や顧客対応にリスクを抱えていました。
そもそも、食品業界標準の発注ツール、FAX、メール添付のExcelなど、発注経路が複数存在し、管理方法もバラバラな状態でした。これらのデータは受注管理ツールであるLOGILESSに登録されるものの、本当に正しく登録されているか、重複や漏れがないかといった検証ができておらず、問題が発覚するのは問い合わせベースという状況でした。
また、トレーサビリティの観点でも課題を抱えていました。仮に問い合わせがあったとしても、どの製品がどのロットで、どこに配送されたかを即座に追跡できる体制がなく、改善アクションが後手に回る場面がありました。これらの課題を受けて、受発注に関わるすべての情報を標準化し、データベースに一元管理するプロジェクトを立ち上げました。
活用までの過程
理想の業務状態を定義し、誰でも対応できる環境を整える

煙草森:まず取り組んだのは、「正確に受注できている状態」の定義づけです。具体的には、「重複がない」「受け漏れがない」「内容が正確に一致している」ことを理想とし、その状態を実現するために必要なデータ要件を整理しました。
次に、さまざまな形式で届く受注データを共通の形式に統一し、日次で自動的にAmazon Redshift(以下、Redshift)へ格納するパイプラインを構築。そこでは「TROCCO」を活用し、データの取得・変換・蓄積のプロセスを標準化しています。必要な情報が入っていない、もしくは整合性に問題がある場合は、アラートを発報し担当者へ通知が届く仕組みも整えました。
また、トレーサビリティの強化にも取り組みました。
弊社は資材調達から制作、製造から倉庫保管、ピッキング、配送まで行っています。商品をピッキングする際にロット情報を読み取り、その情報をLOGILESSと突合することで、製造工場で作られた商品の賞味期限や製造ロット情報を把握し、その情報と配送データを突合できる仕組みを構築しました。
オフラインで読み取ったデータはPC上にCSV形式で保存されるため、Google Driveにアップロードするオペレーションを組み、Google Drive上にあるCSVはTROCCOで吸い上げてRedshiftに格納することで、配送履歴を確認できるようにしています。
煙草森:構築にあたって意識したのは、「エンジニアでなくても運用できる仕組み」にすることです。日々のデータの取得についてスクリプトを書いてシステムを構築するのではなく、ノーコードやローコードのツールを活用することで、属人化を避け、幅広い人材が運用に関与できる環境を目指しました。
具体的には、API連携が可能なデータソースには「n8n」、API非対応のサービスからのデータ取得にはRPAツールを活用しています。たとえば、画面操作を自動化してCSVをダウンロードさせるなど、可能な限り手作業を排除しています。取得したデータはGoogle Driveに格納し、そこからTROCCOが自動でRedshiftへデータを連携します。
ローコードツール上で処理の流れが可視化されているため、万が一エラーが発生しても、非エンジニアでも原因特定や初期対応ができる点も運用面で大きな利点になっています。
煙草森:専門的なエンジニアスキルも必要だと思いますが、「自分で調べてトライする力」がより大切だと感じています。今の時代は生成AIのようなツールを使えば、エラーの原因もエンジニアでなくても探れるようになりました。英語のエラー表示も翻訳しながら内容を理解し、試行錯誤して修正することでそれぞれのメンバーのできることの幅は広がると思います。
活用による成果
受注ミスの削減とトレーサビリティの確保が実現

煙草森:これまでは、受注漏れや重複などで商品が届いていないなど、取引先にご迷惑をおかけするケースもありました。今回の取り組みにより、受注漏れはほとんどなくなり、重複に関してはゼロに限りなく近くなりました。
加えて、ECサイトからの購入についてトレーサビリティが確保されたことも成果の1つです。どのお客様にどのロットの商品が届いたのかを後から正確に追跡できるようになり、品質管理や問い合わせ対応がスムーズになっています。仮に返品などの事象が発生した際、今までだともっと大きい単位で返品対応などを検討しなければいけなかったものを、現状であればどの工場・どのロットで製造されたかがすぐに把握でき、適切な対応が可能となっています。
嶽:データを柔軟に取得できるようになったことで、新しい取り組みの検証サイクルをスピーディに回せるようになった点も、大きな成果だと感じています。弊社は自社で食品を開発しており、R&Dの領域でもデータ活用が求められることがあります。
たとえば、製造を委託している工場では、製造環境や衛生状態に関するデータを日々取得・活用しています。工場からそのデータと別のデータが格納されているスプレッドシートの情報も突合して監視できないか提案され、他のSaaSと組み合わせて試してみたことがありました。
現在は別の方法での運用に落ち着いていますが、「TROCCO」を活用して必要なデータをスムーズに集約できたことで、検証作業を迅速に進める環境が整ったことは大きな前進でした。今後もR&Dの分野で、こうした柔軟なデータ連携が試行錯誤のスピード向上に寄与すると考えています。
今後の展望
全ての業務データを活用し、新しい仕事や価値創出に繋げていく

煙草森:今後、企業として「本当に必要なことは何か」を見極める力がより一層求められています。そうした判断を支えるインフラとして、「TROCCO」はすでに社内に深く根付いています。今後も新たなSaaSを導入・検討する際には、「TROCCO」のコネクタの有無を確認しながら、より柔軟で効率的な活用を進めていきたいと考えています。
嶽:弊社のCEOの考えとして「全ての業務に関するデータを、データ基盤上に乗せていきたい」というビジョンがあります。業務上のデータがすべて管理され、通常業務は自律的に進み、社員は新しい仕事・価値創出に集中できるという未来像をCEOは何度も口にしています。この未来像を実現するには「TROCCO」は必要不可欠ですし、データ活用における比重が今後ますます大きくなると感じています。
TROCCOが気になった方はぜひフリープランからお試しください。
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