精緻なコスト管理と会計データの一致を実現 ベースフードが挑んだ“非財務データ×FP&A”の基盤改革 〜ベースフードが描くデータ活用の未来(2/4)〜

ベースフード株式会社

- 課題
- 手元で管理しているのは全部門・全商材の数字が合計された損益計算書上の勘定項目の金額のみで、実際何に対してどのくらいの費用がかかっているか把握しにくかった
- 経営の意思決定に必要な粒度での数字の作成には、各部門にてスプレッドシートで個別管理されたデータを集計する必要があり、集計に多くの工数がかかった
- 原価全体の横断的かつリアルタイムでのデータの取得が困難だった
- 目的
- 実際に何にいくらかかっているのかを把握するためのデータ整備
- 経営の意思決定に必要な粒度での数字の作成の際の、会計データとの一致確認や数字の集計にかかる工数の大幅な削減
- 効果
- 会計データと非財務データを突合して正確なコスト管理を実現
- データ整備を意識させることなく、誰でもデータを使える環境を構築
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに掲げ、世界初の完全栄養の主食*「BASE BREAD」や「BASE Cookies」「BASE YAKISOBA」を開発・販売するフードテック・スタートアップ企業、ベースフード株式会社。オンライン直販を中心としたD2Cモデルで顧客との接点を持つだけでなく、大手コンビニチェーンやスーパマーケットなどのリアルチャネルにも進出し、販路を拡大していることが特徴だ。
* 1食分(BASE BREADは2袋、BASE Cookiesは4袋、BASE YAKISOBAは2個、BASE Pancake Mixは1袋と卵Mサイズ1つ、牛乳(成分無調整)100mlを使用して調理した場合)で、栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウム以外のすべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む。
同社では以前より複数のSaaSや基幹システムを活用しながらデータを収集・分析していたが、各種データ取得を担当するバッチ処理が属人化し、運用負荷やミスのリスク、情報の非一貫性などがデータ活用のボトルネックとなっていた。こうした課題を背景に、全社的なデータ基盤の再構築と運用体制の脱属人化を目指し、ETLツールの導入に踏み切っている。
導入時のお話はこちらよりご覧ください。
今回は、既存の財務管理における課題と解決方法、今後のデータ活用の展望について、プロジェクトをリードされた大橋様にお話を伺った。
データ活用の体制
ビジネスサイドのメンバーへのデータ活用の促進に向け、FP&A領域のデータを整備

大橋 俊和様(以下、敬称略):私がリーダーを務めるビジネスインテリジェンスチームでは、売上データを活用した施策立案や顧客理解、市場開拓のための分析を始め、会計データ、サイト内のトランザクションのデータ、売上実績を正確に突合させる仕組みを整備・運用しています。
事業運営における重要なデータとして、PLに関わる売上や原価、販促費といった数字はもちろん、マーケティング施策に関しては新規・既存顧客の区分や流入経路、施策単位のコストや成果などが挙げられます。
社内に蓄積されているデータを中間テーブルのような集計しやすい形に整形し、ビジネスサイドの部門が必要なデータに対する解像度を上げ、弊社内でのデータ活用を推進していくことも私たちの役割です。たとえば、必要な製造数量から支払いまでのビジネスの流れをデータで一気通貫に捉えられるように整備しました。これにより、簡単かつ高精度な集計・分析が可能になっています。
弊社では、全社的に全ての数字をTROCCOを経由して取得していると言っても過言ではありません。直近ではTROCCOを活用し、損益計算書(PL)に記載される数値の取得や整備に取り組んでいました。
データ活用までの道のり
損益計算書の数値の取得により、データドリブンな意思決定を促進

大橋:損益計算書を分解すると、原価や販促費など多くの細かなデータが必要になります。弊社では、そうした会社運営に関わる各種数値を、すべてTROCCOを経由して逆算・管理する仕組みを整えています。
現在、会計関連のすべてのデータはfreeeにデータが溜まっていく仕組みになっています。TROCCOを導入する前は自社でバッチ処理を組み、Amazon Redshift(以下、Redshift)へ取り込んでいました。Redshift上で計算した結果をスプレッドシートに出力していたのですが、freeeからAPI経由で取得できるデータは勘定科目ベースのため、各社からの請求金額しか把握できませんでした。そのためfreee上で別途設定し分類した項目を取得できず、何にいくらかかっているかの詳細までは分かりませんでした。
例えば、A社から提供されている材料A・B・Cを使用していたとしても、freee上では「A社への請求」としてまとめて記録され、内訳が見えません。原価管理に関しても、材料の使用量や賞味期限切れなどの実績データはスプレッドシートに個別管理されており、原価全体を横断的に把握するのが難しい状態でした。そこで、TROCCOを活用して各データを分解・統合し、Redshiftに格納することで、損益計算書の原価項目と実績データを照合し、整合性を検証できるようになりました。
同様の課題がマーケティング施策においても見られました。代理店様と協力し、Google広告、Yahoo広告、Meta広告を運用しておりますが、freee上のデータの場合はまとめて広告運用費としての金額しか把握できません。
非財務データも含めて、アドエビスや各種スプレッドシート、手元のExcelなどのデータと照合しながら、計算結果の一致を確認することで、数式や集計ロジックの妥当性を検証できます。より正確なデータが把握できるようになったことで、意思決定の精度も大きく向上しました。
これにより、より精緻なコスト管理と会計データの一致を実現しています。現在では、こうした精度の高いデータを、事業計画の策定や経営判断にも活かせるようになっています。
最初は決算短信にあるような損益計算書と貸借対照表に記載されている費用データしか取得していませんでしたが、もっと細かく確認したいという要望が出てきて、それに順次対応していきました。
今後の展望
データの整備や管理に対する意識を向けさせず、ビジネスを生み出すためのデータ活用を広げていく

大橋:社内のエンジニアリングに関わらない人には、データの整備や管理にリソースがかかるという認識がありません。ただ、私としては認識する必要もないと思っています。「TROCCO」を使うことで、私たち以外は認識せずにデータを意思決定に使える環境にできたことはすごく価値のあることだと思っています。
そもそも、きれいにデータを集めることにはあまり価値はないと思っています。データを使えるからこそ、初めて価値が出てくるのです。「データを取得できたところで何ができるのか」と言われることも多いと思うので、活用できる状態にできていることが「TROCCO」を使っていてすごくいいと思っているところです。
大橋:ルーティン業務の自動化にとどまらず、今後はそれ以上の意味合いー 新しいビジネスを生み出すための「余白」を作る基盤として、データを整え、活かしていきたいですね。
現状でも、全社員のうち半数以上は何らかの形でデータに触れていると思います。今後は、たとえば食品開発部門でメモ程度に残されている情報のデータ化や、センシティブな配合情報、レシピ情報などをいかに管理・統合していくかが課題ですね。
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