HeartRails Geo APIは、国土交通省「位置参照情報ダウンロードサービス」のオープンデータを加工して、株式会社ハートレイルズが提供する、商用・非商用を問わず無料で使える地理情報APIです。都道府県名の一覧や、指定した郵便番号から住所・緯度経度・最寄駅情報(駅名・路線・距離)も取得できます。
フォームの自動補完や店舗検索の地図表示といった“その場の表示”だけでなく、ユーザー情報や顧客リストに地理情報を紐づけてエリア別の傾向分析などに利用することが可能です。
本記事では、クラウドETLサービス「TROCCO」のConnector Builderを利用し、ノーコードでHeartRails Geo APIとデータ連携を実現する手順を具体的に解説します。
Codaの公式インテグレーションではなくETLツールの利用が適している場面
CodaはSlack、Google Drive、Figmaなどとの公式インテグレーションを提供していますが、これらは主にリアルタイム同期や基本的な連携に留まります。一方で、データを継続的に格納し整形する前提がある場合は、ETLツールが適しています。
- Codaドキュメント内のテーブルデータの定期的な分析・監視
- 複数ドキュメントのプロジェクト状況の統合ダッシュボード作成
- タスク管理データと他のプロジェクト管理ツールの連携
- ドキュメントの更新履歴やコラボレーション状況の分析
- ノーコードによる迅速な業務可視化
「TROCCO」はデータ転送だけでなく、データのフィルタリング、フォーマット変換、集計、マージなどの加工処理も一連のワークフローとして自動実行が可能です。
これにより、Codaのデータを最適な形に整えられ、さらに様々な部門向けの分析やレポート作成に活用するデータを作成・転送することができます。
この記事の執筆時点では「TROCCO」に公式のCodaコネクタはありませんが、Connector Builderを利用すれば、CodaのAPIをGUIで設定しながら手軽に自作コネクタを作成することができます。
Connector Builderとは?
ETLツールでは一般的に、2つの異なるインターフェース間の接続を可能にする実装のことを、コネクタと呼びます。
Connector Builderは、ユーザー自身で独自コネクタをノーコードで作成できるTROCCOの機能です。
- OAuth認証(認可コード・クライアントクレデンシャルズ)やAPIキーの設定に対応
- ページネーションや任意のクエリパラメータに対応
- 通常のコネクタと同様にスケジュールによる定期実行が可能
詳細は下記の記事をご参照ください。
Connector Builder(コネクタビルダー)とは
※ Connector BuilderはTROCCOのAdvancedプラン以上のプランでご利用いただける機能です。
HeartRails Geo API連携カスタムコネクタをConnector Builderで作成し実装する手順を解説
HeartRails Geo APIは国土交通省の「位置参照情報ダウンロードサービス」のオープンデータを加工して株式会社ハートレイルズが提供する商用・非商用を問わず無料で利用できるAPIです。ただし、クレジット表記が必要で、大量リクエストや安定運用が前提なら有料SaaS/ASPメニューの検討をしてください。
認証は不要なAPIとなっているため、事前にAPIキーなどの発行は不要です。
利用する際には、必ずドキュメントを参照し、位置参照情報利用約款、HeartRails の利用規約の確認を行ってから利用を開始しましょう。
ドキュメント
https://geoapi.heartrails.com/api.html
STEP1|カスタムコネクタ実装の前に事前準備をする
TROCCOのカスタムコネクタの設定を解説します。
TROCCOの管理画面からカスタムコネクタを新規作成
TROCCOの [カスタムコネクタ] メニューから [新規作成] ボタンを押してカスタムコネクタを作成します。
カスタムコネクタの各種設定を実施
APIドキュメントを確認しながら、コネクタ情報・認証情報の各種設定を行います。
HeartRails Geo API は認証不要なAPIであるため、APIキーの発行の必要なく利用可能ですが、TROCCOでは認証なしを指定することはできないため、認証種別では「APIキー」を選択し、デフォルト入力値のまま保存します。

- 基本情報
- 任意の名前をつけてください。
- コネクタ情報
- ベースURL: https://geoapi.heartrails.com
- 認証情報
- 認証種別: APIキー
- 認証ヘッダー名: Authorization
- 認証ヘッダースキーム: Bearer
必要なAPIエンドポイントの追加
[エンドポイントを追加] ボタンを押して必要なAPIエンドポイントを追加します。
今回は指定の郵便番号に合致する町域の情報を取得できるエンドポイントを追加します。このエンドポイントで緯度・経度の取得が行えます。

〇エンドポイント設定内容
項目 | 設定内容 | 解説 |
名前 | searchByPostal | (任意の名前) |
パス | /api/json | |
HTTPメソッド | GET | |
パラメータ | ①パラメータ名: method表示名:メソッドデフォルト値: searchByPostal編集可能: チェックしない必須: チェックする ②パラメータ名: postal表示名: URL エンコード (UTF-8) された郵便番号デフォルト値: 空編集可能: チェックする必須: チェックする | 利用時に任意のクエリパラメータを指定してリクエストできるようにしたり、毎回固定パラメータでリクエストするなどの設定ができます |
HTTPヘッダ | 設定しない | 利用時に任意のリクエストヘッダを指定してリクエストできるようにしたり、毎回固定ヘッダでリクエストするなどの設定ができます |
JSONPathルート | $.response.location[*] | レスポンスを確認してデータの行が格納されている配列形式のキー名をJSONPath記法で記述してください。 |
ページング設定 | 無効 | 今回はページング設定は行いませんが、ページベース、オフセットベース、カーソルベースのページングの設定が行えます。 |
ステータスコード設定 | デフォルト設定 |
ここまで設定し、エンドポイントを保存し、さらにカスタムコネクタを保存すればカスタムコネクタの作成は完了です。
STEP2|HeartRails Geo APIの接続設定の作成
[接続情報] メニューをクリックし、接続情報一覧画面の右上の [新規作成] ボタンを押して接続情報を作成します。
カスタムコネクタは [その他] のタブの中にあります。

以下が設定手順になります。
① 接続設定を作成したいカスタムコネクタを選択します。
②「接続情報」画面で以下の項目を入力します
- 名前:接続設定の名前
- リソースグループ:接続を共有するグループがあれば選択します
- APIキー:TROCCOのカスタムコネクタ接続情報にはAPIキーの入力が必須になっているため、適当な文字列を入力(例: hoge)して登録してください

③ [保存] を押して接続情報を保存します。
これで接続設定の作成は完了です。
STEP3|データ取得のための転送設定の作成
先ほど作ったカスタムコネクタを利用して、指定した郵便番号の緯度・経度を取得してみます。
① 転送元・転送先の選択
サイドバーの[データ転送] > [転送設定] をクリックし、画面右上の端にある[新規転送設定作成] ボタンを押します。
転送元と転送先を選択する画面が表示されますので、転送元をクリック、カスタムコネクタを選択します。

カスタムコネクタは [その他] のタブの中にあります。
今回は転送先に Google Spreadsheets を指定します。

② 転送元・転送先の設定
先ほど作った HeartRails Geo API の [カスタムコネクタ]、[カスタムコネクタ接続設定]、[取得対象] を選択します。
[URL エンコード (UTF-8) された郵便番号] に、取得したい町域情報の郵便番号を指定します。(例:1410021)転送先の設定は次のドキュメントを参照して設定してください。

③ スキーママッピング
[次のSTEPへ] ボタンを押すと、自動データ設定の選択画面が表示されるので、[自動データ設定を実行]を選択したまま[決定して次へ進む]を押すと、スキーマのカラムマッピングが自動的に実行されます。
TIPS(引用ブロック使用)
スキーママッピングは、一方のシステムのスキーマ(ソーススキーマ)を、もう一方のシステムのスキーマ(ターゲットスキーマ)に対応させる作業です。これにより、データ移行、データ統合、データ連携などを円滑に行うことができます。
カスタムコネクタが正しく作成されていれば、取得予定のデータサンプルがプレビューに表示されます。

カラムの型推論とマッピング設定は自動的に行われますが、転送先のカラム名やデータ型はGUI上で任意に編集できます。
④ カスタムコネクタの設定を確認

設定内容に問題なければ [保存して適用] を押します。
これで転送設定の作成は完了です。
STEP4|転送ジョブの実行
それでは、作成した転送設定を利用し実際にデータを転送するために、作成した転送設定の画面の右上にある [実行] ボタンを押します。
ジョブの実行時に指定できる項目がありますが、今回は特に変更せず、そのまま実行をクリックします。
ジョブの実行ログ画面に切り替わり転送が開始されます。
ジョブが正常終了するとステータスが [SUCCESS] に変更になります。
Googleスプレッドシートに郵便番号に関する地理情報が転送できました。
TROCCO の Connector Builder を利用すると、最小限の設定でAPI連携ができるカスタムコネクタの作成やデータの転送までできることがおわかりいただけたかと思います。
HeartRails Geo APIをビジネスに活用するConnector Builderのアイデア・ユースケース
実装方法を解説してきましたが、他にも以下のようなユースケースの利用が可能になります。興味があるものは一度実装をお試しください。
- 地域ディメンション整備 × 浸透率の可視化
- 住所・郵便番号から付与した緯度経度や地域コード(都道府県/市区町村/町域)で売上・会員数を集計し、浸透率やホワイトスペースを地図やランキングで見える化。
- 最寄駅属性の付与 × 駅圏別パフォーマンス分析
- 最寄駅名・路線・距離(徒歩分換算)をレコードに付与し、駅距離や路線別の成果との相関を可視化。検索条件の最適化や物件・店舗のレコメンド精度向上に活用。
- 郵便番号ベースのエリア判定 × 配送SLAの最適化
- 注文の郵便番号でエリアを判定し、遅延率・再配達率・コストをエリア別に定点観測し、料金帯やお届け目安、在庫配置・担当割の見直しに反映。
よくある質問(FAQ)
Q. ノーコードでカスタムコネクタを作成・運用できますか?
A. GUIで直感的にコネクタの作成ができますが、APIの仕組みやAccess Tokenなど認証についての理解といった基礎知識が必要となりますので、以下の記事もご参照ください。
非エンジニアでもわかる!Connector Builderを使うための3つのポイント
Q. 複数の郵便番号に対して一括で取得できますか?
A. 可能です。まず郵便番号データを一括で取得するエンドポイントを使って郵便番号一覧を取得し、その後、各郵便番号ごとの緯度経度データを取得することで対応できます。TROCCOのワークフロー機能を活用すれば、この一連の処理を自動化することが可能です。
Q. HeartRails Geo APIの利用制限や注意点はありますか?
A. HeartRails Geo APIは無料で利用できますが、いくつか注意点があります。まず、利用時には必ずクレジット表記(「HeartRails Geo API」の記載)が必要です。また、大量リクエストを行う場合や商用サービスでの安定運用が必要な場合は、有料のSaaS/ASPメニューの利用を検討する必要があります。無料版では過度なアクセスによりIPアドレスがブロックされる可能性もあるため、TROCCOのスケジュール実行機能を使う際は適切な実行間隔を設定し、サーバーに負荷をかけないよう配慮することが重要です。
詳細な利用条件については、HeartRailsの利用規約と国土交通省の位置参照情報利用約款を必ず確認してください。
まとめ
Connector Builderは、TROCCOの新機能として、コード不要のGUIでコネクタを素早く作成し、DWH・クラウドアプリ・Googleスプレッドシートとの連携を設定ベースで構築できます。
作成したコネクタは再利用でき、専門的なAPI実装を前提とせず現場主導でデータ連携や運用自動化を進められるため、設計〜保守の負担を大幅に削減します。
公式コネクタ同等の性能・セキュリティに加え、ワークフロー/通知も利用可能で、内製に比べ低コストで導入できます。
無料トライアルで、その使いやすさをお試しください。
※Connector Builderは、TROCCOのAdvancedプラン以上でご利用いただけます。
