広告データの転送を自動化し、日々の経営判断に貢献。施策の企画や効果検証の際も必ずデータを元に判断するデータドリブンな文化が徐々に定着
ユアマイスター株式会社
- 課題
- 各種サービスのニーズごとに施策を考え、実行する必要があったが、効果検証するためのデータ基盤がなかった
- 豊富なカテゴリや複数の流入経路によってデータ分析が複雑だった
- アプリケーションのデータを全転送していたことでコストがかかっていた
- 目的
- データドリブンなマーケティング体制の構築
- 日々の広告の実績データを把握し、正確な経営判断を下せる状態
- 低コストでデータ転送ができている状態
- 効果
- 日々更新される広告の実績データをもとに経営判断ができるように
- 1〜3時間かかっていた実績データの集計作業が、今では10分もかからずに完了
- 必要なデータだけを差分転送でき、コストを抑えられた
さまざまな業界のプロフェッショナルの方々と、ものを大切にしたいユーザーをつなぐサービス「ユアマイスター」を開発、運営するユアマイスター株式会社。
ハウスクリーニングやカバンの修理など、さまざまなプロフェッショナルによるサービスや技術をユーザーに提供する同社のサービスでは、サービスをさらにグロースさせていくためにデータドリブンなマーケティングを目指している。そこで以前から抱えていたデータ転送の課題と広告の実績データの集約、活用を目的に「TROCCO®︎」を導入いただいた。「TROCCO®︎」導入の背景にあった課題や導入の決め手、データ基盤の構築によって得られた成果について、ご担当者様にお話を伺った。
課題・問題
サービスの幅広さや流入経路の多さゆえに、広告データの集計と分析に時間も手間もかかっていた
星 永亮様(以下、敬称略):弊社が手がけるサービス「ユアマイスター」は、さまざまな業界のプロフェッショナルの方々と、ものを大切にしたいユーザーの方をつなぐサービス産業のプラットフォームです。自宅のエアコンや洗濯機、水回りといったハウスクリーニングや、靴やかばんの修理・カスタマイズなど、100以上のカテゴリのサービスをインターネット上で依頼することができます。
こうしたプロのサービスは、内容によっては高い買い物となってしまったり、トラブルが起きても自分で解決しなければならなかったりと、ユーザーの方は不安を感じながら依頼することが少なくなかったと思います。ユアマイスターはプロフェッショナルの方の比較検討やトラブル対応、やり直し、サービス料金の支払いなどをオンライン上で完結できることが強みであり、プロフェッショナルの方への依頼に不安を感じているユーザーの背中を優しく押してあげるような存在でありたいと考えています。
星:ユーザーはユアマイスター上で、大きく2パターンのサービス依頼の方法を選べるという特徴があります。
ひとつはメニューと日程を選択するだけで条件にあったプロフェッショナルが選択され、求めているサービスが提供されるものです。自らプロフェッショナルの方を選ぶことはできませんが、希望にあった低価格、スケジュールを実現しやすいというメリットがあります。もうひとつが、ユーザーが所定の条件を指定し、表示されたリストの中から自身でプロフェッショナルを探していただくサービスです。
この両方のサービス依頼の方法に対応しているサービスは2024年8月現在「ユアマイスター」のみであり、「誰でもいいから早くきて!」「納得できるプロフェッショナルの方に頼みたい!」というそれぞれのニーズをカバーできています。
より効果的にマーケティングを展開していくためには、それぞれのニーズごとに施策を考え、実行する必要がありました。
藤本 優汰様(以下、敬称略):エアコンや車、水道、ハウスクリーニングなど、ユアマイスターで展開しているカテゴリ数はかなり多く、そのためすべてのキーワードの出稿にかかる費用に対する効果を横断的分析するのは簡単ではありませんでした。私が以前広告代理店でマーケターをしていた頃は、Googleのリスティング広告で2、3個ほどのキャンペーンを担当していましたが、「ユアマイスター」の広告運用ではキャンペーン数が10〜20個にもなっています。
また、広告運用の実績データを集計し、分析するまでのリードタイムがかかっていたことも課題でしたね。「TROCCO®」を導入する以前は、毎朝出社したら広告を運用している媒体ごとにCSVをダウンロードし、スプレッドシートに一つひとつ貼り付けていました。その作業だけで午前中が丸々潰れてしまったり、数字が正しくないこともあったりしました。
データドリブンなマーケティングを実現するには、広告運用における実績データの集計作業の自動化は避けては通れない道でした。
なぜ「TROCCO®︎」を選んだのか
データウェアハウスへの差分転送でデータ転送にかかるコストを1/10に。コストの低さ、コネクタの豊富さを評価
星:もともとは、MySQL上に蓄積されていたアプリケーションのデータをGoogle BigQueryへ転送する方法を模索していたことがきっかけでした。以前のデータ転送ではEmbulkでスクリプトを書き、毎回データを全転送していたのですが、サービスの拡大とともに転送コストが膨らむようになったため、大きな負担になっていました。
データを差分転送するため、さまざまなETLツールを探す中で出会ったのが「TROCCO®」でした。変更があったデータのみを識別してGoogle BigQueryへ転送できるCDC(Change Data Capture)方式がちょうど実装されたタイミングだったこともあり、費用感と相談しながらトライアルをすることになりました。
星:「TROCCO®」のCDCによる差分転送がうまくいくかどうかが、最も重視したポイントでした。1日あたりのデータ転送量で以前と比較した結果、全転送していた頃と比べて転送コストが10分の1以下にまで圧縮できることを確認し、中長期的な視点で考えても自社開発より「TROCCO®」を活用していくべきと考え、正式に導入を決定しました。
また、広告系の対応コネクタが豊富であったことも高評価でした。アプリケーションのデータ転送が落ち着いた頃に、マーケティングにおけるデータ基盤の構築に着手しようと考えたことも「TROCCO®」導入の後押しになりました。
星:「データ転送作業を任せるアルバイトの人件費よりも安くなる」というコスト削減のアプローチでは不十分だと考え、日々最新の広告実績データを簡単に確認できるようになると広告施策や事業全体にどのようなメリットがあるのかを経営層に説明しました。
また、広告の実績データをビジュアライズすることによって、取締役会や経営会議、部署内のミーティングで使用するレポートの質が上がり、意思決定の精度向上にもつながるはずだと伝えています。
星:アプリケーションのデータをMySQLからGoogle BigQueryへ転送するパイプラインの構築では、サービスのカテゴリ数が多いという特徴からタイムゾーンなどの設定を変更しなければならないテーブル数が300以上もあったことに苦労しました。ひとつずつ設定を変更する手間こそありましたが、以降はデータ自体をただ転送するだけですので楽ですね。
藤本:マーケティング業務においても「TROCCO®」を活用するようになったのは2022年頃からです。その当時、私はまだSQLが書けなかったのですが「TROCCO®」を活用することで、これまでのデータ転送設定を参考にしながら、自動化するパイプラインを問題なく構築することができました。
現在、弊社がデータパイプラインを接続した広告系の転送元は以下の通りです。
- Google Ads
- Yahoo!検索広告
- Yahoo!ディスプレイ広告(運用型)
- Microsoft Advertising
- Facebook広告
- Instagram広告
- TikTok Ads
これらの転送元から広告実績データを統合し、Google SpreadsheetsやBIツールに出力することで分析業務に活用できています。
星:「TROCCO®︎」を導入した当時、Slackで弊社専用のチャンネル作成し、やり取りすることをご提案いただきました。いつでも気軽に問い合わせできる環境はとてもありがたいと感じていまして、今年ですでに開設から3年近くも経ちました。
Slack上で分からないことを質問すると、とても親身な回答をいただけます。弊社ではさまざまなSaaSを使用していますが、他のサービスと比べても、また基本サービス料を考慮しても、対応レベルはとても高いなと感じています。
星:差分転送機能などの設定の変更履歴を保存する際にコメントを残せるようになったことは最高ですね。私の場合、プルリクエストのURLをコメントとして貼り付けています。
また、設定の変更履歴で変更の差分を閲覧できるようになったことも便利です。弊社では複数人が「TROCCO®︎」を運用していますので、変更した本人以外でも変更の背景や要因をたどることができる環境は安心できます。
導入後の効果
データ更新の作業が10分もかからず完了。“ひとりマーケター”ゆえの心理的拘束から開放された
藤本:マーケティング業務におけるデータ活用の業務がとても楽になりました。これまではそれぞれの媒体の管理画面から実績データを毎回手作業でダウンロードしていましたが、「TROCCO®」で自動連携しているおかげで朝7時になればデータが更新されています。最低1時間、場合によっては午前中の業務時間もかかっていた作業が、今では10分もかからずに完了します。
自動で更新されるデータには、媒体ごとの広告費や売上などが含まれており、費用対効果もすべて分かります。これらのデータは、私が出社してすぐに経営層へ報告され、経営判断に活かされています。
藤本:データを出力、加工にリソースを割く必要がなくなったことは大きな変化ですが、単純な工数削減だけでなく、業務時間外にも広告のことを考えてしまう心理的な拘束や不安感から開放されたことが嬉しい変化ですね。
いわゆる“ひとりマーケター”としてマーケティング業務に取り組んでいる以上は仕方がないのかもしれませんが、たとえば自分が休んでしまうと業務全体が止まってしまうような、冗長化されていない環境はあまり褒められたものではありません。広告の実績データを集計して分析しやすい形にするという業務の一部分ではありますが、再現性のある仕組みに置き換えられたのは大きな成果だと思います。
今後の展望
無形商材における注文フローのスタンダードを目指し、サービスのUX改善に取り組みたい
星:「TROCCO®」導入以前に抱えていたマーケティングの課題の7〜8割は、すでに解決できていると考えています。まだまだ足りないのは、分析や活用といった領域です。たとえば、よりパーソナライズした広告運用を実現したり、MAを導入してマーケティング業務を自動化したりと、取り組んでいきたい施策はまだまだ残っています。
またマーケティングだけでなく、施策を企画し効果検証する際も必ずデータをもとに判断するという社内風土が、「TROCCO®」を導入したこの3年で当たり前になったと思います。今後もデータドリブンな取り組みをしつつ、チャレンジの本数とABテストによる判断の正確性を高めていきたいですね。
星:ユアマイスターが取り扱っているプロフェッショナルの方々の技術やサービスは目に見える形がない、いわゆる無形商材です。実物がある商品であれば、色やサイズを選び、配送先を入力して決済するというフローが確立していますが、こうした無形商材の注文フローには、まだデファクト・スタンダードが存在しません。そこで私たちユアマイスターが、無形商材における注文フローのスタンダードになれるよう、サービスのUX改善に今後取り組んでいきたいと考えています。
藤本:広告代理店で働いていた頃から、広告のデータは媒体の管理画面から直接CSVにダウンロードするものだと思い込んでいました。しかし今回初めて「TROCCO®」を触り、データ基盤を知ったことは、まるで未知の扉を開いたかのような感覚でした。今では「もっと早くに知っておけば……」と後悔するほどですので、もしマーケターの方で興味を持たれたら、まずは「TROCCO®」を触ってみることをおすすめします。