2022年にサービス開始から7周年を迎えたゲームアプリ『ぼくとドラゴン』をはじめ、「夢中になる時間(とき)をつくり、人と人をつなげ、日常を豊かにする」をミッションに掲げる株式会社スタジオレックス。ユーザーから長く愛されるゲームタイトルを運営する同社では、ゲーム内キャンペーンやイベントの開催時に参考としていたデータ活用の頻度と手間に課題を感じていたという。そこで、データ分析業務の効率化とコスト削減を目的に導入されたのが「TROCCO®」だ。取り組みの背景にあった課題や効果、データ活用における今後の展望についてお話を伺った。

導入のきっかけ

1日1回のデータ更新頻度に大きな課題感。データ分析業務の脱属人化や効率化も実現したかった

貴社のデータ活用の体制をお聞かせください。

渡辺 友理様(以下、敬称略)協力会社である株式会社リーン・ニシカタの栗田さんと私の2名体制で、ゲームアプリ上のデータを集計・整理し、ゲームプランナーさんやゲームコンテンツに携わるエンジニアさんにデータを共有し、活用していただく体制となっています。データの内容としては、例えばユーザ動向やGvG(ユーザー同士で対戦するシステム)のバトルデータ、売り上げデータなどが対象です。
その中でも特に重視しているのが、7日間連続でログインしたユーザー数、そしてゲームから離脱したユーザー数ですね。ユーザー数が確保できていなければ、GvGのギルドバトルができませんので、特に重要なKPIとして日々追っています。

データを社内に共有する上で意識していることはありますか。

渡辺ゲームプランナーさんはデータの取り扱いに必ずしも慣れている訳ではないため、なるべく分かりやすく伝えることを意識しています。BIツールを使ってグラフや表にビジュアライズ化し、そのデータを見て企画しやすいように整えてあげることが重要だと考えています。

栗田 雅史様(以下、敬称略)ゲームアプリ業界全体から俯瞰して、スタジオレックスさんのゲームプランナーさんは、データ分析の能力に長けていると感じています。ゲームプランナーさん自身の経験とデータを照らし合わせ、どのようなユーザが、どのように動いているかをジャッジする精度が高いため、私も緊張感を持ってデータの集計、整理に取り組んでいます。

渡辺現在は隔週で、栗田さんと私、そしてゲームプランナーさんやエンジニアさんでデータに関する定例会議を開いています。そこでは決められたデータを毎回共有するのではなく、プランナーさんが今困っていること、気になっていることをヒアリングし、その都度、要望に沿ったデータを共有しています。

「TROCCO®︎」導入の背景にあった課題をお聞かせください。

渡辺:最も大きな課題が、データ更新の頻度でした。「TROCCO®︎」を導入するまでは、ETLサーバーで毎朝4時に1回、ゲームデータをBigQueryに送っていました。毎日1回しかデータが更新されないため、キャンペーン施策実施直後の売上変化といった、リアルタイムのデータを確認することができなかったのです。これはゲームプランナーさんからも改善の要望が寄せられていました。

栗田ゲームアプリを手掛けている他社企業でも、リアルタイムでデータを検証することは珍しいことではありません。ゲームアプリでは、コンテンツの更新頻度が非常に高いため、そのコンテンツが刺さったのか刺さっていないのか、早めに情報を吸い上げてから予測を立て、次の企画を早期に仕込んでいくことが重要になります。企画の判断スピードを上げていかないと、エンジニアさんやクリエイターさんを待たせてしまうことにもなるため、ゲームアプリではデータ分析にもスピードが求められるのです。

渡辺:データ分析のスピード感だけでなく、業務の属人化や作業効率も課題でした。あくまで例え話ですが、私が抜けてしまったら業務が回らなくなってしまいますし、今後新しいデータアナリストが入社することを考えると引き継ぎやすい環境を整える必要があります。作業効率についても、私1人で全部担当していたために時間がかかっていました。ローカルでソースコードを編集してGitに上げ、サーバーに反映させたものをテストし、問題なければ本番環境に移すという流れを1人でこなしていたので、とにかく大変だったのです。

導入・構築について

ETLサービスで比較検討。ポイントは費用対効果とデータ更新頻度の高速化

株式会社リーン・ニシカタ
執行役員/分析事業部 事業部長
栗田 雅史様
データ分析における課題に対して、どのようなアクションを取られたのでしょうか。

渡辺栗田さんにご相談したところ、「TROCCO®︎」をご紹介いただきました。

栗田弊社では以前からETLサーバーを構築してお客様に提供はしていたのですが、継続的なメンテナンスには高度なエンジニアリング力が求められるという課題がありました。
そこで、よりメンテナンスしやすい環境を構築するため、ETLサービスの導入をご提案させていただきました。その際に「TROCCO®︎」ともう1社のサービスで比較検討しています。

ETLサービスの比較検討はどのように進めたのでしょうか。

渡辺ETLサービスの比較検討において重視したのは、費用対効果とデータ更新頻度の高速化の2点で、特に費用対効果を重視しています。
弊社ではゲームアプリごとにETLサーバーを立てており、さらに本番環境と開発環境の2台を用意していたため、1つのゲームあたり月10万、合計して20万円の費用が毎月かかっていました。特に昨今の円安も重なり、経営層からコスト削減の要望がきていたこともETLサービス導入の後押しとなっています。
比較検討にあたっては、海外ツールと「TROCCO®︎」をトライアルしました。まず、海外ツールでトライアルを実施してみたのですが、あまり上手くいきませんでした。具体的にはデータベースの接続設定ができず、サービスのサポートも英語対応でかなり大変だったのです。
一方で、「TROCCO®︎」のトライアルはスムーズに進みました。各種機能を充分に試すことができたこともあり、運用のイメージをしっかり描くことができたのです。
その中でも私が評価しているのは、GUIでパイプラインを定義できることです。これまではCUIベース/コマンドラインベースで操作していたものが、画面をクリックするだけになったのは、非常に画期的なことです。
こうした比較検討の結果、「TROCCO®︎」の導入を決定しました。

「TROCCO®︎」導入のスケジュールを教えてください。

渡辺当初のロードマップ通り、6ヶ月で導入は完了しました。分析のために持ってきたいデータの転送設定数は400以上もあったので、さすがに1人では難しいため、栗田さんにご協力いただきました。

栗田:サーバー構成の確認とプランニングは渡辺さんにお願いし、そこから切り出された作業を弊社でお手伝いしています。primeNumberの方とは密にコミュニケーションさせていただき、課題や進捗確認をしてくださったおかげで、大きなトラブルもなくプロジェクトを進めることができました。

渡辺まずは「TROCCO®︎」に登録するデータの一覧をスプレッドシートにまとめました。サーバーの接続設定自体は1日もかかっていませんが、データの転送設定の登録に4ヶ月ほどかかっており、この作業は栗田さんと分担しています。最後に1ヶ月ほどチェック期間を設けてのリリースとなりました。

「TROCCO®︎」導入ではどのようなサポートがありましたか。

渡辺分からないことがあればSlackで相談させていただき、随時こちらの質問に丁寧に答えていただきました。気軽に質問できる環境だったので、ここまでスムーズに導入できたと思っています。

「TROCCO®︎」で特に活用している機能をお聞かせください。

渡辺ワークフローのジョブ管理機能は本当にありがたいと感じています。安定して データが回っていること、もし転送が詰まったとしても再実行できることは非常に便利です。
APIの仕組みのせいか、たまに条件に引っかかってデータ転送にGoogleのエラーが出てしまうことがあります。ETLサーバは設定さえすれば3回以上のリトライができますが、サーバやDBへの負荷の関係でリトライ数は3回までに制限していたため、3回以内でエラーが解消できるか不安になりながら作業をしていたのです。しかし「TROCCO®︎」では10回までリトライできるため、安心して運用できます。

導入後の効果

40%のコスト削減に加え、データ転送の手間が2割に!GUIで編集できることが高評価

株式会社スタジオレックス
事業推進部 データエンジニア
渡辺 友理様
「TROCCO®︎」導入後の成果をお聞かせください。

渡辺:以前のETLサーバーの契約を最近終了したため、今後は計算上で40%のコスト削減になる予定です。
また、私のデータ転送にかかっていた時間と手間が、8割ぐらい減っています。Git上でソースコードを管理していた頃は、開発環境でいちいちソースコードをGitに投げる必要があり、また、つづりが少しでも違うとそれだけでもGitにコミットしなければならないことが面倒でした。しかし今ではGUIですぐに編集できるのはありがたく、助かっています。
最近ではゲームアプリを横断して分析の幅を広げていきたいと考えており、「TROCCO®︎」の導入で浮いたリソースをその準備に投じています。

栗田:私が感じている1番の成果が、データの追加作業に工数を割く必要がなくなり、ゲームプランナーさんからの依頼に対してクイックに対応できるようになったことです。

また、以前はETLサーバーの都合で渡辺さん1人でソースコードを確認していただく必要がありましたが、現在では私も「TROCCO®︎」でご協力できるようになったことも、大きな変化であると感じています。私でもデータの取り込み方法やデータソースを確認し、自ら情報を取りに行けるようになったことは、業務全体の効率化に大きく貢献しているのではないでしょうか。

今後の展望

既存に加え、新規のゲームタイトルでもデータを活用し、次のヒットに貢献したい

今後の展望をお聞かせください。

渡辺:弊社の『ぼくとドラゴン』『猫とドラゴン』は、リリースから時間が経っているコンテンツなので、ユーザーから飽きられないためにも、もっとキャンペーンやイベントのスピード感が求められると考えています。そのためにもボトルネックの探求や調査、改善がしやすいように、高い精度のデータ分析に取り組んでいきたいですね。

また、現在運営しているゲームタイトルだけでなく、今後新たにリリースされていくコンテンツでもユーザーが夢中になれる時間を作り、人と人をつながって楽しめるゲーム環境作りにデータの側面から貢献していきたいと考えています。

栗田:ゲームアプリ業界では、2〜3年でサービス終了になるタイトルが非常に多いのですが、スタジオレックスさんはゲームの運用力が非常に高く、タイトルが長く続いていることが特長だと思います。
今回の取り組みではデータ分析基盤の維持に必要なリソースがかなり削減されたので、弊社ももっと分析業務に集中していき、よりサービスを長く続けること、そして次のゲームタイトルをヒットさせることに貢献していきたいです。

「TROCCO®︎」はどのような企業におすすめできるでしょうか。

渡辺:弊社にとって「TROCCO®︎」はデータ分析になくてはならない、インフラのような存在になっています。少人数のデータ部門にとって「TROCCO®︎」は、大きな戦力になると考えています。

株式会社スタジオレックス

https://studiorex.co.jp/

業種IT業界
設立2020年3月2日
従業員数51名(2022年3月末)
事業内容スマートフォン向けゲームアプリ等の企画・開発・運営