『ブルーロック』のスマホゲームでも実践!データドリブンなゲーム運営を支えるルーデルのデータ分析基盤とは
株式会社ルーデル
- 課題
- データ分析基盤がなく、大量のデータを取り扱える環境が整っていなかった
- サービス改善にデータを最大限に活用できていなかった
- 目的
- データ分析基盤にデータを蓄積し、データ分析に活用したい
- データを最大限に活用し、サービスの改善へとつなげていきたい
- 効果
- リアルタイムにデータ収集ができるようになり、ゲーム内の状況をいち早く把握できるようになった
- データが可視化されたり分析に使えるデータの幅が増えたりしたことで、データドリブンなサービス運営を実現できた
スマートフォンのソーシャルゲームをリリースする株式会社ルーデルは、複数のプレーヤーがチームを組んで対戦できるゲームの運営を得意としている。マンガやアニメコンテンツとコラボしたコンテンツ運営もしており、なかでも2022年12月末にリリースした人気マンガ・アニメが原作の『ブルーロック Project: World Champion(以下 ブルーロックPWC)』はリリースから5ヶ月で400万ダウンロードを突破した。
ソーシャルゲーム事業本部では、プレーデータや広告データ・ゲーム内イベントなどの状況を常に分析している。利用者がより楽しく遊べるようアイテムやゲーム内通貨の提供をするなど、きめ細かい施策の実践が必要だ。
アプリ内の情報をリアルタイムで取得するためにBigQueryを導入するなど、データ分析基盤を構築した。その際にパイプラインとして活用したのが「TROCCO®」だ。今回は協力会社である株式会社リーン・ニシカタの栗田様にも同席いただき、「TROCCO®」導入の背景や活用状況についてお話を伺った。
導入のきっかけ
データ分析基盤の導入とともに分析データの可視化を目指す
ーー「TROCCO®︎」導入の背景にあった課題をお聞かせください。
吉永 辰哉様(以下 吉永):これまでは本番環境のデータベースにあるデータを同じクラウド上にコピーし、それを直接触って分析用に集計して活用していました。
基礎的な指標をスポットで集計するという点では問題なかったのですが、大量のデータを一度に取得することには向いていませんでした。
例えるならば、たばこ屋さんのように商品をひとつずつ取り出すような動きは得意でも、倉庫のように箱単位で一斉に商品を動かすような動きはできないというような状況でした。
そのため、データは蓄積されていてもいざデータ抽出しようとするとデータベースの処理自体にものすごく時間がかかったり、場合によってはタイムアウトしたりしてデータの抽出自体ができないということがありました。
栗田 雅史様(以下 栗田):以前はMySQLからデータを直接参照し、内製した管理画面で売上などをモニタリングして活用していました。ダッシュボードも簡易的なもので、ルーデル様からデータ分析基盤を作りたいとご相談いただきました。
吉永:データ分析基盤を構築し、データ分析に活用しやすい形式でデータを蓄積させて、BIダッシュボードで可視化したり、アドホックな分析に活用できる状態を目指していました。
導入・構築
ETLツールは操作性・サポートの有無・費用の見積りやすさで検討
ーー「TROCCO®」導入の経緯をお聞かせください。
吉永:データ分析基盤にBigQueryを使うことが決まり、まずはひとつのタイトルでBigQueryを用いたデータ活用を実践することになりました。スモールスタートではじめて、対応するタイトル数を増やして行こうと計画しました。
栗田:データ分析基盤のコンポーネントのポイントは、以下の3つでした。
- 運用者・経営者が見るダッシュボード
- 分析に使うデータベース
- BigQueryに転送するためのパイプライン
そのなかで、パイプラインとして使うツールに求める条件を満たしているのが「TROCCO®」でした。操作性の良さや日本語でのサポートが受けられること、費用を見積りやすいことが「TROCCO®」の導入の決め手です。
ーー検討から導入までのスケジュールを教えてください。
吉永:2022年5月に検討を開始し、6月からトライアル利用を始めました。7月にはひとつ目のタイトルの環境構築が完了しました。トライアル終了後に本格的に利用を開始しました。
栗田:導入にあたり、本番のデータベースからBigQueryへ取り込むデータを慎重に選定をして、それを「TROCCO®」を使って転送していきました。転送したデータをBIツールで可視化し、その値が今までみていたものと同じかを確認しながらデータ分析基盤の構築を進めました。想定より速いペースでゲーム内のかなりの量のデータを可視化できました。
1ヶ月も経たずに日次でKPIを追えるようになりましたし、8月には細かいデータまで取得できる状態になっていました。さまざまな企業にご支援した経験がありますが、本来ならゲームの膨大なデータ量で実現できるスピードではありません。
吉永:2022年末にリリースしたブルーロックPWCでは、リリース直前まで出来る限りゲームの品質を追求した開発を進めていました。
そのため、直前までデータベースの構造が変わる可能性があり、分析基盤へのデータ転送の設定も直前まで完了することができない状況でした。
データベースの構造が確定してからリリースまでは、本当にわずかな期間しかありませんでしたが、「TROCCO®」の機能性にかなり救われまして、リリースまでにはデータ基盤へのデータ転送設定を終え、リリース時には基礎KPIのBIダッシュボードでの可視化と、データ分析をできる状態にすることができました。
ーー「TROCCO®」構築から運用までサポート体制はいかがでしたか。
吉永:担当営業の方からすぐに返信をいただける安心感がありました。「こんなことをやってみたい」と相談すると、すぐに相談に乗ってくれますし、エンジニアと一緒に作業もしてくれます。今も、データ転送量を軽くしたいという技術的課題について、作業者として入っていただき、協力していただいています。
ツールの提供にとどまらず、しっかりサポートしてもらえているなと思います。
導入後の効果
1日で施策のPDCAが回せるように!適切なKPIの設定で売上の安定も
ーー「TROCCO®」導入後、分析や施策の実行はどのように変わりましたか。
吉永:施策によってかける時間は異なるものの、すぐチャレンジできるものがあればその日に施策の立案から実行まで動いていることもあります。また、頻度が上がっているというよりは、精度が上がってきているという印象があります。
ブルーロックPWCの分析は私が担当しているのですが、重要な指標についてはデータをリアルタイムに近い状態で分析基盤へ転送しているので、鮮度の高いデータによる分析結果をもとに施策提案を行うこともできます。早いときには提案から3時間後には施策を実行するまでのスピード感になりました。
データサイエンス部が「集計屋」で終わらないよう、ゲームプランナーと密に連携し、ゲームの運営を一緒に考えるスタンスでいるようにしています。
ーー現在はどのような指標を追っていますか。
吉永:ユーザー様に楽しんでもらうことを大切にしています。
日々のアクティブユーザー数や各コンテンツのプレイ状況など、ゲームを楽しんでいただけているか確認できる指標を常に追っています。
また、ユーザー様のゲーム内での強さを示す指標は重要です。対戦型ゲームの場合、適切なマッチングがされなければ拮抗した実力同士のプレイヤーが対戦することがなくなり、楽しめる体験にはなりません。
ユーザー様によって楽しみ方が異なるので、誰もが楽しめるように全体のバランスを取ることが重要であると考えています。
データの可視化が進んだことで、ユーザー様の各コンテンツのプレイ状況やゲーム内通貨の消費量も細かく確認できるようになりました。
これらをいかにゲームを楽しんでもらえているかの指標として、運営メンバーと常に追いかけるようにしています。
また、これらの指標は売上との相関があることが分析からも明らかになっているので、ユーザー様にゲームを楽しんでもらった先に売上向上があるということが、会社としての共通認識となっています。
ーーシステムを刷新して新たに取得できるようになったデータ、指標にはどのようなものがありましたか。
栗田:アイテムの配布量やキャラクターの成長速度がわかることで、ユーザー様の状況を的確に把握し施策に活かせています。
また、マンガやアニメコンテンツとコラボしたゲームの場合、どのキャラクターがよく使われているかはコンテンツの版元の会社の方も気にしている情報なので、そうしたデータも見られるようになったことはよかったと思います。
ーーKPIを追いやすくなったことで売上に変化はありましたか。
吉永:KPIが追いやすくなったことで、売上増減の原因が分かりやすくなりました。売上という指標だけを見るとその増減の原因はどうしても定性的な判断にならざるを得ません。
BigQueryや「TROCCO®」導入後はどの指標が影響しているかがわかるようになり、改善施策の精度も向上しました。
ーーそのほか、当初は想定していなかった副次的効果はありましたか。
栗田:以前は分析担当が一人だったこともあり、分析データの正確性でチェックし切れていないものがありました。「TROCCO®」導入のタイミングで担当者が増えたこともあり、ダブルチェックの機会も増え、分析データがより正確になりましたね。
吉永:データサイエンス部という組織を立ち上げ、現在はインターンも含めた9名のメンバーがいます。
基本的にはゲームタイトルごとに担当を割り振っています。
ソーシャルゲームに限った話ではないですが、データ分析をする上で重要なポイントはドメイン知識とユーザー目線です。
対象のサービスをどれくらい理解できているか(ドメイン知識)と、いかにユーザー目線でサービスの魅力や不満を見出せるかが重要だと考えています。
各メンバーは実際にゲームをプレイし、そこで得られた体験から課題のヒントを見つけます。これがデータ分析を進める上での仮説となり、データドリブンなユーザー体験の改善へとつながります。
データサイエンスというと、プログラミングや数理素養などの技術面に焦点を当てがちですが、これらはあくまで手段に過ぎません。もちろん重要な要素ではありますが、成果を上げるというゴールに対してはこれだけでは不十分だと考えています。
このように扱えるデータの幅が広がったことで、データ分析にも相応のスキルも求められるようになり、組織としての水準が向上することにもつながると感じました。
ーーゲーム業界だからこそのデータ分析の難しさはありますか。
吉永:ゲームの世界で行われた行動は全てログとなるので、データはきれいに取得できます。ただ、その分データ分析にも奥深さが出てきます。
細かい条件での集計をする必要があったり、使える分析手法の幅も広がってくるので、それだけスキルが求められるという点が難しさでもあり醍醐味でもあるかなと思います。
栗田:すべてのデータを取ろうとすると、本当にきりがありません。新しいイベントや機能の実装が始まったタイミングでこうやってデータを取ろう、という相談を都度しながら、徐々に取得データを増やしています。
今後の展望
ソーシャル感を活かした楽しみの場を提供
ーー今後の展望をお聞かせください。
吉永:ユーザー様により楽しんでもらえるようゲームの精度を追求していきたいです。弊社はチームで戦えるコンテンツの提供に強みを持っている会社なので、ソーシャル感がユーザー様の日々の楽しみの場所として遊んでもらえるような場作りを目指します。リアルの世界とは別で人間関係を作れるような心地いいと思ってもらえる世界を作っていきたいです。
ーー「TROCCO®」を一言で表すとしたら何でしょうか。
吉永:イメージとしては水や石油を運ぶパイプラインで、無くなると困る「インフラ」です。「TROCCO®」がないとすべてが止まってしまいます。
ーーゲームを運営する企業やデータを活用したい企業に向けて、「TROCCO®」をどのようにおすすめしますか。
栗田:先ほどお話しした「たばこ屋」の状態の企業もあると思います。そうした企業は導入するとデータ分析が各段にやりやすくなるので、まず使ってみてほしいです。
吉永:まだ「TROCCO®」を導入していない企業はそもそもデータ分析基盤が必要だという発想がないかもしれません。データ分析基盤の必要性を感じれば自然に導入が決まるので、まずは使ってみて欲しいです。