2021年5月26日、Google社主催のイベント「Google Cloud Day: Digital ’21」にて、【メルカリ社が運営する TROCCO®️ x BigQueryのデータ分析基盤と経済性】というテーマで弊社COO新井が登壇いたしました。
ゲストにはメルカリ社の横山氏(Data Management Team Technical Product Manager)をお招きし、データ分析基盤の構築事例とその経済効果について紹介しました。登壇内容をレポートいたします。
メルカリ社のデータ活用における課題と課題解決に向けた検討
メルカリ社のデータ活用における課題
メルカリ社では、データ活用における二つの問題がありました。
一つ目はビジネス面の、営業活動に対するインセンティブ設計の問題です。これまでは、「店舗への決済サービス(メルペイ)の導入」を基準としてインセンティブが設計されていましたが、導入後の利用を促進するために「導入後に利用されたかどうか」を基準に設計し直す必要がありました。
しかし、営業担当が使う顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)のデータと、ソフトウェアエンジニアが使う決済サービスのデータは分断されていたため、メルペイ導入後に店舗でどれだけ利用されているのか分からない状態でした。
「サービス導入後の利用を促進」するために「営業活動と決済実績を紐付けて計測・評価」をしたい。
そのために「分断されているデータの統合」が必要でした。
二つ目は技術面の、データエンジニアの工数不足という問題です。分断されているデータを統合し、営業活動と決済実績データを紐付けるためには、開発・保守・運用それぞれのフェーズでデータエンジニアの稼働(※)が必要であり、社内エンジニアの工数が圧倒的に足りない状態でした。また、専門性が高く母集団が少ないデータエンジニアの採用は非常に難易度が高く、人員追加も困難でした。
※データエンジニアの稼働例
開発:社内のmicroserviceやSaaSごとに連携
保守:連携システムの仕様変更に追従
運用:大規模データの転送のチューニングや障害対応
課題解決に向けた検討
次に上記二つの課題の解決に向けた検討を進めました。検討事項は3つです。
- どのようなシステムの構成であれば、課題を解決できるか
- システムを内製するか、外部ツールを使用するか
- どの外部ツールを使用するか
1については、既に導入しているGoogle Cloud領域内において、社内の各種システムのデータをBigQueryに統合することに成功し安定していたため、領域外にあるSaaSデータ(CRM/SFA)は外から直接BigQueryにつなぐ構成に決めました。
2については、外部ツールを使用することを決め、3のどの外部ツールを使用するか検討に移りました。選定基準は以下の通りです。
- Quality 内製と同等の品質か
- Cost 内製の人件費より安価か
- Delivery 営業部門のスタッフ自身が使用可能かできるか
- Scope 多様なSaaSデータに対応可能か
上記項目で検討した結果、メルカリ社ではTROCCO®️ × BigQuery のデータ分析基盤導入を決めました。
TROCCO®️ 選定理由とデータ分析基盤構成の紹介
TROCCO®️ を選定した理由
QCDSの全てにおいて、TROCCO®️は選定基準を満たしていました。
- Quality セキュリティ対応、ハンズオンや Q&A サポートにより品質を担保
- Cost エンジニア工数の人件費と比較して圧倒的に低コスト
- Delivery 営業部門のスタッフ自身が使用可能 / SaaSですぐに導入可能/要望した機能(※)の開発スピードが早い
- Scope 対応可能なデータソースが豊富
※対応データソース拡充(JIRA、GitHub)、GitHub 設定管理機能、Backfilling機能
その他のポイントとして、社内稟議を通しやすいサポート体制も挙げられます。日本発のサービスのため、日本語のドキュメントがあり、セキュリティチェックの対応も充実していました。
課題解決を実現したデータ分析基盤構成
Google Cloud 領域外のデータ連携は従来スクラッチ開発で対応していましたが、TROCCO®️ によってデータエンジニアの稼働を割かずにデータ連携が可能になりました。
得られた経済効果とは
ビジネス面での効果:営業CVR30%UP
データ統合に成功し、「営業活動と決済実績を紐付けて計測・評価」することが可能になりました。そのため、営業KPI・インセンティブ設計をアップデートすることができました。
新 KPI に連動した利用促進施策を次々と実施することによって、前後比較で30%の営業 CVR 向上が実現できました。具体的な実数はお伝えできないのですが、もし1人月 100 万円、スタッフ 100 名と仮定すると、人件費換算 3,000 万円/月の人員追加に相当します。
技術面での効果:エンジニア工数3人月創出
開発においては、新規連携時・データ追加時に営業企画のメンバーが画面操作するだけで完了します。保守・運用においては、社内工数ゼロ。トラブル発生時はもちろん、日頃の些細な技術課題や質問もprimeNumberのカスタマーサクセスにて対応いただけます。本来であれば開発・保守・運用でデータエンジニア工数3人月は必要でしたが、TROCCO®️導入によって丸々ゼロになりました。そのおかげで、データエンジニアの工数をより重要でミッションクリティカルな業務に向けることができました。
データ連携リードタイムへの効果:1/4に短縮
また、特徴的だったのはデータ連携にかかっていたリードタイムの変化です。これまで営業企画のメンバーが新しいデータを連携したい場合は、複数の部門での連携が必要でした。データマネジメントチームに相談し、開発要件を詰め、データエンジニアのメンバーと連携しながら細かい部分の調査やテストなどを行い、リリース。リリース後、営業企画のメンバーが内容を確認してようやく完了します。ここまでに1ヶ月かかっていました。
TROCCO®️導入後は営業企画のメンバー自身が画面上で設定し、データ連携・確認が可能となりました。そのため完了までの時間は、長くて1週間、早いと数日や数時間で終わることもあります。
データドリブンな文化・ビジネスの加速
メルカリ社では、TROCCO®️によって作った分析基盤で様々なデータソースを連携しています。営業データ(Salesforce/kintone)のみならず、カスタマーサポート(Zendesk)、開発(JIRA)、人事(workday)などのデータも、TROCCO®でBigQueryに連携させLookerで可視化しています。可視化したデータの利用方法としても様々なユースケースがあり、TROCCO®を活用することによって、社内のデータドリブンな文化を加速させることができました。
メンバーからもTROCCO®️導入後「こんなこともやりたい」「これもできるのではないか」という声がどんどん上がってくるようになりました。
TROCCO®️やBigQueryなどの便利なテクノロジーを使用し、データ活用を進めていくことでビジネスをどんどん加速させることが可能になると思います。
まとめ
TROCCO®︎の導入によりデータを活用できる環境が整ったことで、工数削減だけでなく、営業活動の可視化、運用業務のクイックな立ち上げや成果の可視化などができ、それによって会社全体の売り上げ最大化につながる素早い意思決定が可能となりました。
今後もTROCCO®︎の柔軟性を生かして、新しいデータを連携することで、より一層ビジネスを加速させていきたいと思います。