経営統合を機にグループ横断でデータ基盤の整備に着手。営業現場のデータ活用や事業会社間のクロスセルも実現

フルサト・マルカホールディングス株式会社

- 課題
- 13の事業会社それぞれが販売管理システムを導入しており、データがサイロ化していた
- 経営判断に必要なデータを提供するまでに時間がかかっていた
- 経験者がおらず、データ基盤の構築が後回しになっていた
- 目的
- グループを横断したデータ基盤の整備
- 工数を割かずにノーコードで、誰もがデータ基盤の構築に取り組める環境
- 将来的なデータ基盤運用の脱属人化
- 効果
- データ基盤を構築した経験がなくとも1時間かからずデータパイプラインを設定できた
- 200本以上の転送設定を自力で実現し、時間と手間を削減できた
- グループ内のデータの一元化が進められ、事業会社の垣根を越えたクロスセルも可能に
建設資材や機械工具といったメーカー機能を持つフルサトグループと、産業機械・建設機械の供給力に強みを持つマルカグループが2021年10月に経営統合したことで誕生したフルサト・マルカホールディングス株式会社。各事業会社がそれぞれ培ってきた専門性を活かしつつ、「フルサト・マルカグループ」として「『その手があったか』を、次々と。」をスローガンに掲げ、ユニークなアイデアによる顧客の課題解決に取り組んでいる。
経営統合後、グループ全体で新たなシナジーを生み出していくために、グループ横断の組織であるIT企画部が新設され、データを一元的に管理する基盤を構築することになった。簡単なIT知識があれば誰でもデータパイプラインを構築でき、低コストに抑えられることなどを評価いただき、「TROCCO」を導入いただいた。「TROCCO」導入の背景にあった課題やETLツールの比較検討、データ基盤の活用状況、そして今後の展望についてご担当者様にお話を伺った。
課題・問題
経営統合を機に、グループでIT・データを一元的に管理。データ基盤の構築で抱えていた課題とは

山本 忠孝様(以下、敬称略):フルサト・マルカホールディングスは、機械・工具、建設資材、建設機械、IoTソリューションなどを幅広く扱う技術商社です。「『叶えたい』が、あふれる社会へ。」をビジョンに掲げ、「感動提案で今を拓き、変化の先まで伴走する。」というミッションのもとに全事業・全社員が事業に取り組んでいます。
社名からも分かる通り、弊社は2021年10月にフルサトグループとマルカグループが共同株式移転によって経営統合し、設立された持株会社です。2025年現在で13の事業会社がグループを構成しています。
私が所属するデジタル戦略課はグループ全体のIT・データを活用し、DXを進めていくことがミッションの1つです。現場の困りごとに対して柔軟にIT活用を提案し、「その手があったか」と気づきを得てもらうため、勉強会の実施やIT導入支援に取り組んでいます。
山本:今回のデータ統合の対象である販売管理システムのデータは、各事業会社ごとに構築されています。ERPパッケージを導入している事業会社があれば、フルスクラッチで独自開発されたシステムを構築している事業会社もある状態です。さらにオンプレミス環境かクラウド環境かもバラバラです。売上などに関するデータも事業会社ごとに蓄積している状態で、データが“サイロ化”していました。
それによって経営判断に必要なデータを提供するまでに時間がかかっており、環境の変化が激しいVUCA時代においてよりリアルタイムな経営判断を下していくためには、グループ全体を統合するデータ基盤が必要だとの結論に至りました。
山本:IT企画部では、インフラの保守運用やPCのセットアップなど、多岐にわたる業務を請け負っています。その中でどうしてもやらないといけない「作業」が中心となっていました。データ基盤の構築といった新しい施策や「攻め」の施策はどうしても後回しになっていたのです。
そこで工数を割かずにノーコードで、誰もがデータ基盤の構築に取り組めるツールの導入を検討し始めました。部内の誰でも操作できることはデータ基盤の将来的な運用の属人化を防ぐことにも繋がりますので、特に重要だったポイントです。
なぜ「TROCCO®︎」を選んだのか
決め手はイニシャルコストの低さ。国産サービスであることや分かりやすさを評価

山本:インターネットでETLツールを調べたり、展示会に足を運んだりと情報を収集する過程で「TROCCO」を知りました。ETLツールを比較検討する上で、国産であることは当初から重要なポイントでした。海外の企業が提供するETLツールの場合、何か問題が起きたときのサポートに不安が残ったり、日本語のマニュアルが整備されていなかったりと導入のハードルが高く、データ基盤の専門家向けだと感じました。私自身も営業部門から異動してきており、将来的にデータ基盤を任せるメンバーも必ずしもデータ基盤のスペシャリストではないので、分かりやすいサービスが求められていました。
他にも料金形態もチェックしたポイントで、比較検討していた当時の他社のETLツールはコネクタごとに数万円の料金が加算される仕組みでした。この料金形態ですと、コネクタ数が少ない導入初期であれば費用を抑えることはできます。しかし長期的に考えた場合、データの活用の幅が広がった頃には費用感が膨らむと感じたのです。
山本:閉域網のネットワーク上に構築されたSQLサーバーにもアクセスできることは大事な要素でした。事業会社の販売管理システムは、閉域網内にデータベースに構築しています。グループ全体のデータを統合するにあたって、閉域網内のデータとクラウド上のGoogle BigQueryでデータをどのようにやり取りするのか気になっていました。弊社の場合は踏み台サーバーに対してSSH(セキュアシェル)接続することで、自社のセキュリティポリシーを満たしたデータ連携が可能だったため、問題なく進められることがわかりました。
山本:スムーズに社内合意が得られたのは、他社のETLツールと比べてイニシャルコストが段違いだったからです。初めてETLツールを導入するため、やはりスモールスタートで検証していきながらデータパイプラインの構築を進めたいと考えていました。
他社サービスの場合はイニシャルコストで数百万円単位かかってしまうとの見積もりでした。「TROCCO」の場合は導入時の初期費用がかからなかったので、検証を含めたスモールスタートには最適と感じました。

導入までのスケジュール・過程
13の事業会社のデータをGoogle BigQueryに統合、BI上で可視化し、現場へダッシュボードを展開

山本:2022年2月からPoCとしてトライアルを行い、2022年4月から正式な導入を進めました。データパイプラインの構築も引き続き私が担当しており、UIがとても分かりやすく、いい意味ですごく単純だと感じました。
データ基盤の構成では、まず転送元は以下の3つを設定しています。
- Microsoft SQL Server
- Google Spreadsheets
- FTP・FTPS(ローカルファイル)
これらの転送元からGoogle BigQueryへデータを転送し、BIツールのLooker StudioやQlik Senseのダッシュボード上で数字を管理する形です。営業担当が日々確認するダッシュボードについてはLooker Studioでシンプルな構成で構築しており、より詳細な分析が必要なチーム、経営層向けのダッシュボードはQlik Senseで構築しています。

山本:いろいろ親身に寄り添っていただいた記憶です。困ったときのサポート、レスポンスは「TROCCO」の方がめちゃくちゃ速いですね。問い合わせ対応の窓口としてSlackチャンネルを作成していただいており、そこでのやり取りが非常にスピーディです。
「知りたいときに知ることができる」「助けてほしいときに助けてもらえる」といったサポートのため、問い合わせに対する回答を待つ時間が短く、作業の手が止まってしまう時間を最小限に抑えることができています。
山本:13の事業会社のデータを一気にGoogle BigQueryと連携することは、IT企画部のリソース的に難しいので、優先順位を決めて着手していきました。最初の1年は、私が以前在籍していたフルサト工業の営業支援、製造支援、予実管理のデータを連携し、ダッシュボードを構築しました。事業をよく理解していたこともあり、現場からも好感触が得られるダッシュボードを構築できたと思います。
そこからは、データの一元化を順次進めているところです。ダッシュボードの完成度が7割の段階で現場のメンバーに共有し、フィードバックを元に修正し、より使いやすいダッシュボードを現場と共に作っています。

また、現場のデータ活用を促進するための勉強会にも力を入れています。現場社員がデータに対する理解を深めるために重要なことは、とにかく専門用語は避け、裏側の仕組みについては説明しないことです。「何がしたいのか」「何を見たいのか」といったニーズを聞き出し、目に見える部分だけを分かりやすく説明するよう心がけています。

導入後の効果
データ基盤未経験でもデータパイプラインを構築。事業会社間のデータ統合を進め、現場の業務に変化も

山本:そもそも「TROCCO」がなければ、データ基盤の知見や経験がなかった以前の私では今回のパイプラインの構築やデータの集約、そしてダッシュボードの構築は迅速に進めることは難しかったと思います。もしスクラッチで作成していたら、どのくらい時間と手間がかかるか想像できません。
「TROCCO」のおかげで、データ基盤の構築が未経験でも簡単な転送設定であれば、1時間もかからないうちに実現できています。現在、200本以上の転送設定があるので、トータルではかなりの時間と手間を削減できており、非常にコストパフォーマンスが高い取り組みだったと思います。
また、「TROCCO」を導入せずにBIツールだけ活用しようとしていたら、事業部門からの要望を受けてデータソースを柔軟に変えたり、調整したりすることは難しかったでしょう。事業部門のためにデータソースを増やそうとしても、工数の都合で断ってしまうことも発生していたかもしれません。
山本:以前は営業支援、製造支援、予実管理のデータを確認する場合、数字をExcelにまとめてなんとか分析できるような形に仕上げていました。ただ、部署間の情報共有もなかなかスムーズにはいかないため、データの集約に時間がかかりすぎていました。
「TROCCO」を導入した現在は、ワークフロー機能で10分毎にデータが更新できるようになり、BIツール上から最新の数字を確認できるようになりました。経営層向けの展開はまだまだこれからですが、現場におけるアクションの判断などについては、データ活用による貢献ができています。
また特に営業の数字は、評価にも関わってくるとても大事なものです。正しい数字をいつでも確認できるようになったことは日々のアクションの判断やモチベーションの向上にも影響していると思います。製造の数字については、日々の生産性や機械ごとの稼働率などの分析に役立てられています。
山本:現在も事業会社のデータの一元化を順次進めている最中ですが、すでに事業会社4社の顧客データを連携したことによるメリットが得られています。以前から日本国内の企業データベースをまとめたサービスを契約しており、そこに4社の顧客データを重ね合わせることで、事業会社を横断した顧客の紹介、クロスセルの提案が可能になっています。グループ間のシナジーを高めていくためには、共通のデータベースの存在が重要だと実感した事例です。
今後の展望
データの可視化による過去の分析だけでなく、生成AIを活用した未来の予測にもデータ基盤を活用していきたい

山本:データ基盤の構築だけでなく、統合したデータをしっかり見ることができる人材、つまりDX人材を増やしていくことも、私たちの大事なミッションです。社員向けの研修だけでなく、会議でダッシュボードを確認する習慣を根付かせるといった業務改革の施策も今後必要だと感じています。
また、これまでは今あるデータをいかに可視化していくか、つまり過去のデータ分析が施策の中心になる考えでした。ここから先は、蓄積したデータをもとに生成AIといった新しい技術を活用し、需要予測や在庫・出荷予測といった未来の分析にも着手していきたいですね。現場の職人による属人的な勘や経験に頼ってきた部分が、今後はデータと仕組みによって脱属人的な予測を実現することが目標です。
そのためにもデータ基盤は必要不可欠であり、データをつなぐ「TROCCO」も引き続き活用していければと考えています。まだまだ集約しきれていないデータも残っていますので、今後もデータ基盤の構築には力を入れていきます。
山本:「とりあえずやってみよう」と伝えたいですね。データ部門だけでなく、事業部と一緒にトライ&エラーを繰り返し、議論し、よりよいデータ活用の形を目指していくのが良いのではないでしょうか。
まずは失敗をおそれず、1回手を動かしてみれば自然と自社にとってベストなデータ活用が見えてくるはずです。

フルサト・マルカホールディングス株式会社
業種 | 精密機械 |
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設立 | 2021年10月 |
従業員数 | 単体 108名(2024年12月31日現在)、グループ 2,010名(2024年12月31日現在) |
事業内容 | グループ経営戦略策定・推進、グループ会社の経営管理、それに付随する業務 |