企業のコアバリューに「ヒト・ファースト」を掲げ、ヒト起点のマーケティング×デザインでビジネスを前進させる会社、株式会社キュービック。金融、人材、法律相談などさまざまな領域のデジタルメディア事業を行っており、表面的なニーズではなくインサイト(深層心理)を的確に捉え、人々をよりスムーズな課題解決体験へと導いている。

直近7年間で33倍の成長を続ける同社では、メディア運営とデジタル広告運用における売上や成果といったデータの集計作業に手間と時間がかかることに課題を感じていたという。そこで、データ分析業務の効率化を目的に導入されたのが「TROCCO®」だ。取り組みの背景にあった課題や効果、データ活用における今後の展望についてお話を伺った。

キュービック様のデータ整備・活用についてより具体的な内容を知りたい方は、 2023年4月27日に実施したオンラインセミナーのアーカイブ動画をご覧ください。
https://blog.trocco.io/seminar/trocco-cuebic_20230427

導入のきっかけ

社内のデータ分析基盤であるCBAをリニューアルし、ビジネスサイドの要望に対応できる環境を目指して

テクノロジーエキスパートセンター
執行役員 CTO
加藤 彰宏様
貴社のデータ活用の体制をお聞かせください。

加藤 彰宏様(以下、敬称略):テクノロジーエキスパートセンターは、一般的には開発部と呼ばれる部署になります。特徴的なところとして、弊社全体のDX戦略と開発を担っていることです。

特に弊社のデジタルメディア事業では、100弱ものメディアを運営しているため、これらの業務基盤を支えるチームとして、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング)チームがあります。そこではプロダクト設計、開発だけでなく、事業全体の成果を集計するデータ分析基盤<CBA>も扱っていました。

貴社のデータ活用における指針や方向性についてお聞かせください。

加藤:3年前に中長期戦略を立てたタイミングで、データ利活用の土台を構築しました。以前からキュービックの事業にはデータが集まっていたので、データの力を活かして事業業績を伸ばすことができないのかと考えたことがきっかけです。データを正しく理解し、レポートや顧客への提案として活用できる状態を目指すことになりました。

尾﨑 勇太様(以下、敬称略):弊社のサービスは、デジタルマーケティング領域における「集客代行」であるため、成果報酬型のビジネスモデルで収益を挙げています。つまり、デジタルメディアでコンバージョンしたリードをクライアントへ送客することが、成果に直結するのです。

データ活用の方法としては、大きく2つあります。まず1つは、売上げの着地見込みを日々リアルタイムでビジネスサイドのマーケターや広告・SEO担当者が把握して施策につなげること、2つ目が広告運用におけるグロース戦略を構築する際に活用するという方法です。

「TROCCO®︎」導入の背景にあった課題をお聞かせください。

加藤:これまで認知できていなかった種別のデータを取得、分析したいと考え、過去に運用してきた自社データ分析基盤<CBA>をリニューアルしたいと考えていました。

以前の業務では、データソースから手動でデータをダウンロードし、我々が構築した事業基幹システム(売上レポートの集計システム)に手動でインポートするという流れであり、分析業務に手間がかかっていたのです。売上データは毎日確認するものだったため、毎日手作業による手間が発生していました。主なデータソースである、GoogleとYahoo!はAPI連携していたものの、媒体側のアップデートに追随していくことが大変だったため、結局手動に戻っていたのです。
尾﨑:この作業は各部署の担当者が担当しており、おおよそ30名が手動によるデータ連携業務に時間を費やしていました。また、初期の開発メンバーが不在でレガシーなシステムになっており、ビジネスサイドから改修要望が届いても他業務の優先度の方が高いため、ずっと対応できずにいました。

導入・構築について

ツールや他社ソリューションと比較し、「TROCCO®︎」を導入。Amazon Redshiftと組み合わせたデータ分析基盤構築へ

テクノロジーエキスパートセンター
Tech Lead
尾﨑 勇太様
データ分析における課題に対して、どのようなサービスを比較検討されたのでしょうか。

加藤:「TROCCO®︎」を含めたETLツールと、広告データを収集して、レポーティングするというトータルソリューションで、3年前に比較検討しました。

SaaSであるETLツールを導入すれば、フルスクラッチよりも簡単に構築することができ、ツールによってはローコード開発も可能であることが大きなメリットです。データエンジニアの工数が必要ないため、構築コストを抑えながら短期間で導入することもできます。

ただ、デメリットとしては、ETLツールの対応範囲という制約があるため、やりたいことすべてを、自分たちのイメージどおりに実現することはできません。ただ、これはトータルソリューションの場合も同様で、サービス範囲外であれば実現することは難しいと考えました。

最終的に、企業が提供するトータルソリューションではなく、ETLツールの導入を決めたのは、自社のデータウェアハウス上にしっかりデータが溜まるような状況を構築したかったからです。

「TROCCO®︎」のトライアルはどのように進められたのでしょうか。

尾﨑:まず最初に、以前までのシステムで取得していた広告媒体やASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)との連携がスムーズにできるのかを検証しました。広告コネクタを使用してGoogle、Yahoo!をはじめ、大手SNS(LINE、Twitter、TikTok、Facebook、Instagram)の連携やhttpコネクタを使用して主要なASPとAPI連携が可能かを確認しています。加えて、「TROCCO®︎」は連携が必要な広告媒体が増えても、自社システムを改修する手間が必要ないことも、大きな魅力だと感じました。

加藤:エンジニアが本当に手を動かさなくても新規サービスとの連携ができるのか、日々の運用ができるのかというポイントもトライアル期間に確認しました。

ビジネスサイドのコアメンバーにはトライアル期間中に「TROCCO®︎」を触ってもらい、エンジニア経験がなくともデータセットして連携ができること、またデータを取得するだけでなく、データの整形処理も「TROCCO®︎」でしっかり対応できることも検証しました。

尾﨑:特にデータの整形処理は重要な機能です。例えば、あるビジネスメディアの広告成果をレポートにまとめる際に、単純にデータ全件を取り込むのではなく、特定のキーワードを含んでいるものは除外する場合や、お客様の要望に合わせたルールに沿った報告をする場合、あらかじめルールが設定できないと、結局工数がかかってしまいます。

弊社の最終的な売上データを取りまとめる事業統括チームのメンバーにも「TROCCO®︎」を確認してもらい、およそ1ヶ月のトライアル期間を経て正式に「TROCCO®︎」導入を決定しました。

「TROCCO®︎」の導入では、どのように設定を進めましたか。

加藤:「TROCCO®︎」の導入と同時に、データウェアハウスサービスも導入しました。弊社のアクティブメディアのインフラがAWSであったため、Amazon Redshiftを選定しています。「TROCCO®︎」のデータマート機能を使えばAmazon Redshiftにクエリを投げることができると知ったため、「TROCCO®︎」✕ Amazon Redshiftというシンプルな構成に見直しました。Amazon Redshiftに対してデータ整形や更新が行えるETLツールは少ないものの、「TROCCO®︎」はAWSアプリケーションとの親和性が非常に高かったことが、この構成にした背景にあります。

尾﨑:「TROCCO®︎」の導入にあたっては、将来的に運用が本格化した際に新たな課題を生み出さないことを重視して設定を進めています。たとえば、新たな種類のデータをAmazon Redshiftに転送した際に破綻しないよう、設定を進めました。

また、ワークフロー機能でループ処理を実行できるため、通常のETLツールであればジョブを量産しなければならないところ、自前のアカウントリストに従い単一ジョブで実行できる点を評価しています。

導入後の効果

本格運用スタート後、全体工数の半分以上が削減され、8人月から4人月へ圧縮される予定

運用の効果についてお話する加藤様と尾﨑様
「TROCCO®︎」導入後の成果をお聞かせください。

加藤:現段階のフェーズでは、まだ「TROCCO®︎」によるデータ分析基盤<Komawo>の仕組みを現場に展開していないため、今後想定している成果をお話させていただきます。

まず、データ運用における工数が40%削減、システムの保守運用に関わる工数が70%削減、全体工数の半分以上が作業時間ベースで削減される予定です。

尾﨑:現在、DXメンバー、データエンジニア、基盤構築担当者、既存の自社基盤の運用担当者で、8人月ほどがかかっています。2023年8月以降に本格運用がスタートしますと、およそ4人月に圧縮されると見込んでいます。

データ分析業務に携わっている現場の方からは、どのような感想がありますか。

尾﨑:弊社では業務のローコード化を目指しています。そのため、様々な部署でSaaSの導入を進めているのですが、以前のデータ分析の体制と仕組みでは、各SaaSのデータを統合することはできなかったでしょう。

しかし、「TROCCO®︎」をハブにして最終的にAmazon Redshiftへデータを統合するという現在の仕組みであれば、とりあえず「TROCCO®︎」へデータをつなげれば大丈夫であるため、現場の社員からも今後への期待が高まっています。

「TROCCO®︎」導入後のデータ分析基盤<Komawo>に期待する業務上の変化をお聞かせください。

尾﨑:既存のデータ分析基盤であるCBAをしっかり代替できること、そしてビジネスサイドからの追加要望に対して短期的に反映できること、この2点を期待しています。特に追加要望を反映する際に、以前よりも時間と手間がかからずに対応できる状態が望ましいですね。

また、データ分析が完了する時間が短縮されたことで、経営の意思決定が速くなることも期待できます。以前のシステムでは、データソースを朝一番に取り込んでも、集計が終わってレポートがアウトプットされるのは15時頃でした。

しかし、「TROCCO®︎」を活用した現在の体制であれば、朝一番に取り込んだデータは、13時にはレポートとして確認できるようになる予定のため、意思決定に関わる会議やその後のアクションに間に合うため、ビジネスとしてもプラスの効果になるはずです。

今後の展望

社内成果のデータを集計し、今後はデータウェアハウスを活かした施策に繋げたい

今後の展望をお聞かせください。

尾﨑:今回のプロジェクトは、社内の成果を集計するデータ分析基盤<CBA>のリプレイスという立ち位置のため、例えば、蓄積したデータを機械学習し、その分析結果をビジネスサイドの施策にフィードバックするといった、データウェアハウスの真価を発揮するような施策まではできていません。

つまり、新しいデータ分析基盤<Komawo>を構築しただけでは売上に直接貢献することはできないため、今後はよりメディア事業に貢献していけるようなデータを収集、活用できる仕組みを目指したいです。

例えば、各メディアにどんなユーザが滞在し、どんなコンテンツを閲覧し、どのようなアクションを取ったのか、といったカスタマージャーニーまで追うことができるデータを「TROCCO®︎」経由で収集していきたいと考えています。

そのためにも、まずはデータ利活用のメリットをしっかり経営層に提示し、理解を得た上でさらに効果的なデータ分析基盤<Komawo>を構築していく予定です。

「TROCCO®︎」はどのような企業におすすめできるでしょうか。

尾﨑:私自身、「TROCCO®︎」の導入で最も助かったと感じているのが、CS(カスタマーサクセス)の方の手厚いサポートでした。CSの方に伴走していただきながら、弊社が実現したいこと、そのためのベストプラクティスを一緒に考えていただいたことが印象に残っています。

自社でデータ活用のスペシャリストがいない企業でも、primeNumber社のCSの方にサポートいただければ、安心してデータ分析基盤を構築できると思います。そのためにも、導入側もしっかり会社の情報を開示したうえでデータ分析基盤におけるゴールの解像度を上げていくことが重要です。まずは一度、primeNumber社の担当者に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

株式会社キュービック

https://cuebic.co.jp/

業種IT業界
設立2006年10月24日
従業員数(単体)304名(連結)483名(2021年5月末時点)
事業内容デジタルメディア事業、通販事業者向け集客支援事業、プラットフォーム事業、有料職業紹介事業(厚生労働大臣許可番号 13-ユ-311579)