バンダイナムコグループが展開するIPを軸に、様々なエンターテインメントや商品、そしてお客様をデータによって結びつけることをミッションとする株式会社バンダイナムコネクサス。グループ横断でデータ活用を推進する「データユニバース構想」の一環として、データ分析基盤の内製化に取り組んだものの、取り扱うIPやデータ、関係するグループ会社が多いことに課題を感じていた。そこでグループ横断でデータを収集、一元管理し、非データエンジニアでもデータを活用できる環境を目指して導入されたのが「TROCCO®」だった。取り組みの背景にあった課題や効果、データ活用における今後の展望について、ご担当者様にお話を伺った。

課題・問題

データ分析のクオリティとスピードを向上させるため、データ分析基盤を内製化したかった

貴社では、どのようなデータ活用戦略を打ち出しているのでしょうか。

藤井 祐麻様(以下、敬称略):バンダイナムコグループでは現在、「データユニバース構想」を重要な戦略のひとつとして掲げてます。ゲームやECサイト、イベントといったエンターテインメント事業に関わる多種多様なデータを、グループ会社を横断して収集、連携、分析することでさらなる事業成長を目指す、という構想です。

これまでは、グループ各社それぞれにデータを収集しており、グループ会社同士でうまくデータが連携されていないという状況がありました。本来であれば、IP(ゲームタイトルやキャラクターといった知的財産)単位でデータを利活用すべきなのですが、商材やサービスによってグループ会社が分かれており、うまく連携できていなかったのです。

バンダイナムコグループが一体となってデータを活用し、ファンに向けた取り組みを適切に組み合わせてファンの熱量を最大化することを目指しており、そうした文脈のなかで私たちバンダイナムコネクサスでは、グループ内のデータ収集から分析までを一気通貫で担っています。

今回の取り組み以前における、データ活用の体制と抱えていた課題を教えてください。

藤井:「TROCCO®︎」を導入する以前、まだデータエンジニアチーム自体がない状態で、外部にデータ分析基盤の構築、保守を委託していました。社内にデータエンジニアがほとんど在籍しておらず、データアナリストやデータサイエンティストといった少数の分析官がなんとか分析していたような状態だったのです。

データ分析基盤の構築、保守を外部企業に委託していたことによって、データ抽出の依頼からアウトプットまでのリードタイムが長くなってしまうことに課題を感じていました。また、依頼には弊社の意図や状況を外部スタッフもわかるように伝えるためのコミュニケーションコストもかかっていました。
こうした問題によって、イベントの企画までにデータ分析の結果が間に合わないなど、経営判断にも影響が出ていました。そこでデータエンジニアの採用を強化し、データ分析基盤の構築、保守を内製化することを決めました。

ETLツールの導入を検討し始めたきっかけを教えてください。

藤井:「データユニバース構想」としては初めての取り組みで、グループ会社が運営するECサイトのデータを取り込むことになりました。ECサイトは多くの会員を擁しており、ファンの中でも話題になるような特色のある商品を取り扱っていることが特徴です。つまり、データ活用によって効果的な施策を打てば、大きな成果が望めるのではと考えたのです。

取り扱うデータ量が多く、しかも速く結果を出してほしいと要望を受け、パイプライン構築を内製化するためにETLサービスの導入を検討し始めました。

なぜTROCCO®を選んだのか

決め手はGUIで操作できること。データエンジニアだけでなく、ビジネスサイドでも活用したかった

ETLサービスの比較検討は、どのように進めたのでしょうか。

藤井:弊社で採用していたGoogle Cloudとの親和性を考慮し、Google Cloud系のマネージドサービスの他に、いくつかのETLサービスと「TROCCO®︎」を比較検討しました。当時は「データユニバース構想」を打ち出してから日が浅く、今後データ活用のプロジェクトがどのように変化していくか不透明だったため、まずはスモールスタートさせていくために、低コストで着手しやすいツールを選定していくと決定しました。

当初想定していたデータ転送元と転送先を教えてください。

藤井:データの取得元はTreasure Dataを想定していました。Treasure DataにはECサイトの購買データだけでなく、物流に関するデータも集約しています。

そこからGoogle BigQueryに流し込み、最終的にはBIのツールのLookerやLooker Studio、データ分析のJupyter Notebookにデータを連携したいと考えていました。

比較検討の結果、「TROCCO®︎」の導入を決定した決め手を教えてください。

藤井:利用者を考えた結果、GUIベースですべての操作ができることが決め手になっています。

ETLサービスの利用者はエンジニアだけでなく、コーディング経験のない社内の分析官も想定していました。データエンジニアの採用は簡単なことではないため、できるだけ専門的な知識がなくても操作できるETLサービスが求められていました。

また、将来的には多くのグループ会社からデータを収集、連携していくことになるため、より多くの対応コネクタが用意されていることも、「TROCCO®︎」の評価に繋がっています。

導入コスト、運用コストも抑えられているため、社内からの承認はスムーズに得られ、無事に「TROCCO®︎」の導入が決定しました。

TROCCO®選定のポイント

導入までのスケジュール・過程

ECサイトやアミューズメント施設のデータを転送。チーム機能でグループ会社間でも活用できている

「TROCCO®︎」導入までの流れを教えてください。

藤井:想定していたよりもスムーズにパイプラインを構築することができました。ボタンをクリックしていくだけで設定がほぼ完了するため、導入をスタートした翌週にはすでにECサイトのデータを転送するパイプラインが1つ出来上がっています。

また、すでにプラグインが用意されているApp Store Connect APIからアプリゲームのデータをGoogle BigQueryに流し込むパイプラインも簡単に構築できて嬉しかったですね。バンダイナムコグループには多くのアプリゲームがあるため、これらすべてのApp Storeのデータや広告データを一つひとつ設定していくのは大変だと思っていましたが、想定していたよりも楽でした。


エラーログの読み取りが難しい場合でも、primeNumber社からのサポートのおかげで解消することができています。Slackで問い合わせをするとすぐに返信をもらえるので、とても助かっています。

TROCCO®導入までの流れ
「TROCCO®︎」導入後、どのようなデータを転送、活用していますか。

藤井:最も活用しているのが、導入のきっかけにもなったECサイトのデータですね。ECサイト以外では、たとえばイベントやキャンペーンなどを担当している複数の事業部から企画のためにデータがほしいと求められています。

具体的には、どのIPの、どのキャラクターの、どの商品が、どの程度売れているか、といった情報や、購入者の属性データ、GoogleやFacebookの広告配信データを集約し、活用できるようになっています。

その他も、アミューズメント事業が手掛けているアミューズメント施設のデータも活用できるようになりました。ゲームのプレイログはすべて残しており、現在はGoogle BigQueryに流し込むようにリプレイスしています。

TROCCO®を組み込んだデータ分析基盤の構成図
「TROCCO®︎」で特に活用いただいている機能をお聞かせください。

藤井:私たちは複数のグループ会社のデータを取り扱っていることもあり、守秘義務上、特定のグループ会社以外には開示できない設定や許可していない操作が存在します。そこで重宝しているのが、「TROCCO®︎」のチーム機能です。

このチーム機能にはチームとリソースグループという2つの概念があり、任意のリソースグループおよびリソースグループに属するリソースに対して、チーム単位で権限や許可する設定を管理することができます。この機能のおかげで、アカウントの払い出しがとてもスムーズになっており、今後関係するグループ会社や外部の委託先企業が増えても安心です。

「TROCCO®︎」を社内で使用する際に工夫したことはありますか。

藤井:マニュアル作成に力を入れました。委託先企業にお願いするケースや、社員の入れ替わることを想定し、誰でも「TROCCO®︎」を扱えるようになるマニュアルが必要だと判断したからです。

グループ会社の中には、独自のセキュリティ要件で社外にデータを出すこと自体が禁じられているケースもあっため、「TROCCO®︎」を活用すべき場合と別の方法を選ぶべき場合を判断するフローチャートや、「TROCCO®︎」を操作する際の注意事項などをマニュアルにまとめています。

導入後の効果

データ転送の設計から設定完了が1ヶ月から2週間に短縮。さらに実装と運用コストの抑制にも成功

「TROCCO®︎」の導入で得られた成果をお聞かせください。

藤井:実装コストと運用コストをしっかり抑えてデータ分析基盤を内製化できていることが最も大きな成果だと思います。

導入初期は、たった1〜2人月ほどの稼働だけで実装できました。運用フェーズにある現在は、複数の外部企業に頼みながら、社内データエンジニアの人数を増やさずとも運用できています。現在は4名のデータエンジニアが正社員として採用されていますが、もし「TROCCO®︎」を導入していなければ、少なくとも現在の倍、つまり8名以上のデータエンジニアが必要になったことでしょう。

一方で抑えられたコストは、お客さま情報の保護といったセキュリティの予算に回せるようになりました。

データ分析基盤を内製化したことで、データ活用にどのような変化がありましたか。

藤井:グループ会社から依頼を受け、データ転送の設計から設定完了までのリードタイムがとても短くなりました。以前は外部の会社も関わっていたため、1ヶ月ほどかかっていましたが、現在は同じような依頼でも2週間で完了できるようになっています。そもそも「TROCCO®︎」を導入していなければ実現できなかった依頼もありました。
その結果、いち早くデータ分析に取り掛かれるようになっただけでなく、気兼ねなくデータ転送の依頼ができるようになったとの声を現場の分析官から聞いています。その他にも、分析官からは「細かい要望にもすぐ対応してもらえるようになった」「定義書の用意などにリソースを使えるようになったことで、データの品質も向上している」といった感想も聞いています。

データ基盤の構築・リプレイスやダッシュボード作成についてお悩みの方はこちらよりご相談ください。

今後の展望

データに基づいた経営の意思決定、さらには新規IPの立ち上げを目指して

「データユニバース構想」について、今後の展望をお聞かせください。

藤井:2023年10月の現時点では、ようやく1つ目のステップが完了した状態です。具体的には、グループ会社ごとにデータを収集、分析できる環境がようやく安定するようになりました。

2つ目のステップでは、グループ全体を横断してデータを利活用できる環境を目指します。このタイミングで、データをもとにしたグループ全体の意思決定が下せるようになると理想です。

そして3つ目のステップは、これはあくまでも個人的な考えですが、これまで分析してきた結果から、アニメやグッズ、ゲームなどデータに基づいた多角的な展開に貢献していきたいと考えています。

「TROCCO®︎」活用における、今後の展望についてお聞かせください。

藤井:バンダイナムコグループは、グループ会社や外部企業との連携が多く、プロダクトも多いため、データエンジニアが地道にデータ活用をしようとしてもスケールすることなくリソース不足になることが目に見えています。

しかし、「TROCCO®︎」のようなツールを導入することで、運用コストを抑えつつ、データの接続元を増やすことでデータ活用の範囲を手軽にスケールすることができます。そこで得られた知見をもとに、グループ会社に対してしっかり貢献していきたいですね。

また、アナログな方法で収集しているイベント関連のオフライン施策データも「TROCCO®︎」で活用していければと思います。

データ分析基盤の構築に悩んでいる企業へ、アドバイスをお願いします。

藤井:エンジニアやインフラ担当者が潤沢ではない企業にとって、「TROCCO®︎」は最適な選択肢だと思います。弊社にとっての「TROCCO®︎」はデータ活用における“インフラ”のような存在です。だからこそ、導入するにあたっては、誰が、どのように使用するのかを明確にしておくと、その後の運用がとてもスムーズになるはずです。

データ分析基盤の構築・運用は
TROCCO®️におまかせ。

ETL/ELTパイプライン構築やワークフローなどを、SaaS上で実現。データエンジニアの工数を削減して、分析やクリエイティブな業務に集中しましょう。

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株式会社バンダイナムコネクサス

https://bandainamco-nexus.co.jp/

業種広告・情報サービス
設立2017年8月
従業員数65名
事業内容オンラインゲームおよび配信するプラットフォーム、IPファン向けサービスの開発・運営・分析など