Gainsight CXは、多くのB2B SaaS企業にとってカスタマーサクセス活動の中核をなすプラットフォームです。顧客のヘルススコア、エンゲージメント、サクセスプラン、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)の活動履歴といった重要なデータが集約されています。
しかし、これらのデータはGainsight CX内に閉じてしまいがちで、CRM/SFA(Salesforceなど)に蓄積された商談データや、プロダクトの利用ログ、マーケティングオートメーション(MA)ツールの活動履歴など、他のシステムに散らばるデータと分断されているケースが多く見られます。その結果、「顧客の全体像」を掴むことが難しくなり、データに基づいたプロアクティブな打ち手を講じる上での障壁となっています。
このような背景から、Gainsight CXのデータをDWH(データウェアハウス)に統合し、全社横断でのデータ活用ニーズが高まっています。ETLツールを用いてデータを一元管理することで、解約予測モデルの精度向上、アップセル・クロスセルの機会特定、プロダクト改善へのフィードバックなど、より高度なデータ活用が実現可能になります。
本記事では、クラウドETLサービス「TROCCO」の転送元HTTPSを利用し、ノーコードでGainsight CXのAPI連携・データ連携を実現する手順を具体的に解説します。
どういう場合にETLツールの利用が適しているか?|公式機能とETLツールの使い分け
Gainsight CXは標準でレポート機能や他システムとの連携機能を提供していますが、一方で、
- Salesforce以外のCRMや自社データベースなど、多様なデータソースとGainsightのデータを統合分析したい
- 過去のヘルススコアや活動履歴を長期間DWHに蓄積し、時系列での変化を分析したい
- SQLを用いて、Gainsightのデータとプロダクトログを組み合わせた独自のKPIを算出したい
- エンジニアのリソースを割かずに、CS部門主導で迅速にデータ分析基盤を構築したい
- これからDWHを導入し、データ活用の第一歩を踏み出したい
といった場合は、ETLツール「TROCCO」との連携がより適しています。
「TROCCO」はデータ転送だけでなく、データのフィルタリング、フォーマット変換、集計、マージなどの加工処理も一連のワークフローとして自動実行が可能です。これにより、Gainsight CXから抽出したデータを分析に最適な形に整え、CS部門だけでなく、営業、マーケティング、経営企画など様々な部門向けのレポート作成に活用できます。
この記事の執筆時点では「TROCCO」に公式のGainsight CXコネクタはありませんが、転送元HTTPSを利用すれば、Gainsight CXのAPIをGUIで設定しながら手軽に自作コネクタを作成することができます。
TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタとは?
TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタは、公式コネクタが用意されていない外部サービスについて、REST API形式でデータを取得できる機能です。
このコネクタを利用すれば、URLを指定するだけでデータの定期取得からデータ基盤への転送までを自動化できます。
主な特徴は以下の通りです。
- セキュアな認証設定: APIキー、Bearer Token、OAuth等の認証方式に対応
- 柔軟なパラメータ設定: クエリパラメータ、ヘッダー、リクエストボディの自由な設定
- ページング設定: 大量データの自動分割取得に対応可
- スケジュール実行: 定期的な自動データ取得
- データ変換機能: JSONレスポンスの自動パース・フラット化
これにより、Gainsight CXが提供するAPIより取得したデータをETLパイプラインの一部として組み込むことができます。
※ 転送元HTTP・HTTPSコネクタは TROCCO の Advanced プラン以上のプランでご利用いただける機能です。
利用するデータ
今回はGainsight CX上に蓄積されているCTA(Call To Action)のデータを利用します。
CTAは「行動喚起」を意味し、Gainsight上で顧客に対し取るべきアクションを管理するための単位となります。
例えば、特定顧客のサービス活用状況が低下した際に取るべきアクションや、「3ヶ月に1度顧客とMTGを設定する」といった会社のビジネスルール上取るべきアクションなどがCTAとして登録・管理されます。
顧客への行動起点となるCTAの情報をより詳細に集計・分析することで、カスタマーサクセス人員のCTA完了予実やモニタリングを行うことが可能となり、日々の活動振り返りの強化となります。
データ取得にあたり、公開されているAPIのうち、Fetch CTA APIを利用します。
APIリファレンス
概要
https://support.gainsight.com/gainsight_nxt/API_and_Developer_Docs/About/API_Documentation_Overview
【実践編】Gainsight CX APIと転送元HTTP・HTTPSコネクタでデータ連携を実現
ここからは具体的に、TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタを利用して、Gainsight CXに登録されているCTAを自動取得・転送する設定手順を解説します。
事前準備
まず、CTA取得にあたり、Gainsight CX側で認証情報の取得を行います。
Gainsight APIを利用するに当たっての認証方法としてアクセスキー方式とOAuth方式がありますが、今回はアクセスキー方式の取得を行います。
Gainsight CXにログインした後、サイドバーより以下手順でアクセスキー取得画面に遷移します。
管理 > インテグレーション > コネクタ2.0

画面右上「接続を作成」をクリックし、「Gainsight API」を選択してください。

その後、表示された手順に従い、画面手順に従ってアクセスキーを作成してください。
※作成時「認証タイプ」を”ACCESS_KEY”を指定してください。
作成したアクセスキーは今後利用するため、必ず控えておいてください。
転送設定の作成
次に、TROCCO上で実際にCTAを取得するための手順を解説します。
STEP1:転送元・転送先の設定
- TROCCOのメニューから [データ転送] → [転送設定] を開きます。
- [新規転送設定作成] ボタンをクリック。
- 「転送元」で HTTP・HTTPS を選択します。
- 「転送先」では今回は Google BigQuery を選択します。

転送元の設定

CTAを取得するためのエンドポイントURLは以下となります。
v2/cockpit/admin/picklist/lite
このエンドポイントURLと、契約しているGainsight CXのドメインを組み合わせた値を、HTTPコネクタの項目”URL”に入力します。
例:”https://samplecompany1234.us2.gainsightcloud.com”というドメインで利用している場合、”https://samplecompany1234.us2.gainsightcloud.com/v2/cockpit/admin/picklist/lite”と入力

他の項目は以下のように入力します。
項目 | 値 |
URL | {用意したURLを設定} |
HTTPメソッド | POST |
文字エンコーディング | UTF-8 |
入力ファイル形式 | JSON Path |
ルート | $.data |
リクエストボディ | {} |
HTTPヘッダ | 1行目キー:accesskey値:{取得したアクセスキー}2行目キー:Content-Type値:application/json |

転送先の設定(Google BigQuery)
転送先の設定は次のドキュメントを参照して設定してください。
設定後、 [次のSTEPへ] ボタンをクリックします。
[自動データ設定の選択] で [自動データ設定を実行] を選択し [決定して次へ進む] をクリックします。
STEP2:スキーママッピング
- Gainsight CX APIよりCTAが取得され、テーブルのプレビューが表示されます。

- TROCCOが自動的にカラム名・データ型を推論します。
- 必要に応じてカラム名を変換したり、データ型の変換を行ってください。
- Gainsight CXの場合「CompanyId__gr.Name」のように参照した値が取得できますが、BigQueryのカラム名は”.”を許可していないため、このまま転送するとエラーとなります。
- これを解消するために、以下手順を取ってください。
- カラム定義のチェックボックスにチェックを入れ、すべてのカラムにチェックを入れてください。
- 「一括変換」をクリックしてください。
- 変換形式に「サニタイズ(Google BigQueryカラム名互換)変換」を選択し、「変換する」をクリックします
- カラム名が変換され、BigQueryに転送してもエラーにならない形式になります。



STEP3:設定の確認・保存
- 入力内容を確認したら、画面右下の [確認画面へ] をクリックします。
- 設定内容が表示されるので、問題がなければ画面右下の [保存して適用] をクリックして設定を保存します。
- 設定完了後、転送設定の詳細画面に戻ります。
- 右上の [実行] ボタンを押し、手動実行でデータ転送のテストを行います。
ジョブのログ画面でステータスが「SUCCESS」になれば、データ取得とBigQuery転送が正常に完了しています。

BigQuery上で確認すると、以下のようにデータが作成されていることが確認できます。

又、今回はBigQueryへの転送を例示いたしましたが、お客様のニーズに応じて、Google Sheetへの出力や、CSV形式でのGoogle Driveへの出力も可能となっております。
定期実行の設定
定期ジョブ化することで分析データを常に最新状態に保つことが可能となります。
- 転送設定画面の [スケジュール設定] タブを開きます。
- [スケジュールを追加] をクリックしスケジュール登録を行います。

また、実行完了の通知をSlack/メールへしておくと運用がスムーズです。
Gainsight CX APIの実践的な活用ユースケース
今回はCTAのデータを例に取得をしましたが、TROCCOを用いてGainsight CXのデータをBigQueryなどのDWHに蓄積すると、社内のさまざまなデータと掛け合わせた分析・自動化が実現します。
ここでは代表的なユースケースを紹介します。
CSMの活動状況と顧客ヘルススコアの相関分析
- DWH上でCTAの完了数や対応期間と、ヘルススコアの変動を組み合わせることで、「どのような活動が顧客の健全性向上に寄与するのか」を定量的に分析できます。これにより、効果的なプレイブック(活動の型)を開発し、カスタマーサクセスチーム全体の生産性を向上させます。
プロダクト利用データと連携した解約兆候の早期発見
- プロダクトの利用ログデータとGainsightのヘルススコアやCTA情報を統合し、「特定機能の利用率が低下し、かつリスクCTAが発生している」といった複合的な条件で解約リスクの高い顧客をリストアップします。これにより、カスタマーサクセスマネージャーがより早期に介入し、解約を未然に防ぐことが可能になります。
契約データと連携したアップセル・クロスセルの機会特定
- CRMに格納された契約プランやMRR(月次経常収益)データと、Gainsight CXのサクセスプラン達成状況を組み合わせます。「現行プランの機能を最大限活用し、サクセスプランの達成度も高い」顧客を特定し、営業チームへアップセルの候補として共有することで、データに基づいたLTV(顧客生涯価値)向上を実現します。
よくある質問(FAQ)
Q1. Gainsight CX APIを利用するにあたり、制限はありますか?
A. 時間あたりの実行回数に制限がございます。
詳細はこちらに記載がございますので、あわせてご確認ください。
Q2. Gainsight CX APIからCTA以外のデータを取得することは出来ますか?
A. 各種オブジェクトやサクセスプラン、プレイブック、タスクのデータを取得する事が可能です。いずれもTROCCOの転送元HTTP・HTTPSを用いて取得ができますので、是非本記事の手順を参考にお試しください。
Q3. データの更新頻度はどれくらいに設定できますか?
A. TROCCOのスケジュール実行機能で柔軟に設定可能です。日次や週次でのバッチ実行はもちろん、高頻度な更新が必要な場合は時間単位での実行も設定できます。
まとめ
Gainsight CXのデータを起点としてデータ基盤を整備し活用することで、カスタマーサクセス部門の業務効率化にとどまらず、営業、マーケティング、開発といった他部門とも連携した、全社的な顧客中心の事業運営を実現できます。
そのためにはデータ統合が必要となりますが、TROCCOのHTTP・HTTPSコネクタを利用すれば、こうしたGainsight CXをノーコードで自動取得し、BigQueryなどのDWHへ転送できます。
さらに、ワークフロー機能を組み合わせることで、SQLによるデータ加工や集計など、一連のデータ整備を自動化することも可能です。
社内に蓄積された多くのビジネスデータを活用しし、データドリブンな意思決定を支える仕組みを、TROCCOで構築してみるのはいかがでしょうか。
上記お取り組みをご検討の方は、ぜひ TROCCOの無料トライアル をお試しください。
※転送元HTTP・HTTPSコネクタは、TROCCO の Advanced プラン以上のプランでご利用いただける機能です。
