決算の早期化は、より迅速な意思決定を可能にし、競争優位性を強化する重要な要素です。また、投資家やステークホルダーへ迅速に正しい数値報告を行うことで、企業としての信頼性も高まります。
本記事では、2023年6月27日に開催された「決算早期化のヒント!事業×会計のデータ統合と自動化の仕組み」のセミナーをもとに、決算の早期化を実現するためのデータ統合と自動化の仕組みをわかりやすくご紹介します。
経営環境の変化に迅速に対応し、企業価値の最大化を目指す皆様に向けて、決算の早期化を実現し、データ分析に注力するための方法をお話しいたします。上場企業やスタートアップに所属する経営者、経営企画、財務・経理部門の方をはじめ、定期的にステークホルダーへの事業数値の報告や説明責任がある方々は必見の内容です。
なお、当日のセミナーはこちらからご覧いただけます。
※本イベントレポートの内容は2023年6月当時のものです。TROCCO®の利用やAWS PrivateLink接続オプション、データカタログオプション等の利用の詳細について知りたい方はprimeNumberまでお問い合わせください。
講演者紹介
岩田匠
株式会社primeNumber ソリューションアーキテクト
新卒で独立系SI企業に入社後、DBA、PjM、R&Dの役職を経験の上、複数の業界や案件を担当。その後のAIベンチャーにて、人材育成やPaaS事業の責任者を歴任し、現職。クライアントのコンサルティングからデータ基盤設計・構築までを幅広く手がける。また企業や大学に向けたデータエンジニアリングに特化したワークショップの講師も務める。
本編
本編は、以下のようなアジェンダで進行していきます。
- データ集めに奔走する日々
- 導入のポイント
- 具体例とプラクティス
- TROCCO®について
経営のインプットデータ

岩田:「実際に決算をしたり数値を作ったりする際、大きく分けて3つの粒度がメインになると思います。たとえば、会計・事業部・経営企画の秘伝の三粒度です。」
会計の役割

岩田:「会計のメインは経理担当です。締め作業を基本としたカレンダーに基づく作業があり、クォーターや月次、また事業や企業といった単位での締め作業が発生します。そのうえで、数値を正とした情報整理がもっとも重要です。」
事業部の役割

岩田:「事業部のメインは、営業やそれに付随するビジネスデベロップメントのチームだと思います。KPIを基本とした定量的な観測や進捗を確認し、人の動きを正とした情報整理を行います。そのうえで、KPIの達成状況やそれに対しての売上を管理することが事業部の役割です。」
経営企画の役割

岩田:「経営企画のメインは、経営企画のメンバーかそれを兼ねているチームであり、決算対応や経営分析を行います。特定の観点で集まった情報をうまく整理したうえで、各種レポートや分析に対応したテンプレートロジックを実現したり、それらの体系化・定型化を行ったりします。
その中の数値には配賦や按分を加味している要素も含まれており、この時点でも属人化するにはリスクのある部分が存分に含まれていると思います。」
各部門の課題感

岩田:「経理担当は、たとえば会計システムや社内の管理側のシステムなどの関係上、うまく連携できなかったり、すぐにデータを出力できなかったりするケースがあると思います。また、特定の期間でなければ締められないケースもあるでしょう。
各事業部は、月末になると数値の整理や流動などの確認事項が山積みになってしまいます。それにより、他のメンバー・チームとの連携が難しいぐらい忙しい状態だと思います。
経営企画は、前段の経理担当や事業部責任者などから得られた情報を整理したうえで、数値の微修正や精緻化を行います。そのため、決算のレポートを作ったりダッシュボードに連携させたりするまで、必死に数値をこねたり合わせたりしている印象が強いです。」
「頑張ればできる」の不安

岩田:「これらは完全にマンパワーに依存している状態であり、『頑張ればできる』状態に陥っています。その原因として、担当者へのルール統制不足や管理者不在によって、各々のインプットとなる数値が上がってこないケースが考えられます。
すべき作業がある程度定型化されており、運用が回っている企業も数多く現れると思いますが、その中でも工数がかかっていたり、結局は集めた数値を手元で集計したりしているケースは当面なくならないと思います。
これは、Excelやスプレッドシートによる作業であれば、数値計算が手元で素早くできたり、関数やスクリプトに慣れていることが原因でしょう。また、特定の会計サービスやシステムのみで運用する方が便利であるがゆえに、それらに依存してしまうことも原因のひとつです。
そのため全体的に見ると、できる人が頑張って解決している状況があり、これは大きな問題点のひとつだと感じます。経営担当の方や実際に数値を見る方は、特定の人に頑張ってもらったり多くの時間を使ったりすることで、なんとかしてもらおうと期待しているのではないかと思います。
こういった状況から脱却するために、数値の連携や数値の作成も含めて、数値管理の自動化を1つの案として検討いただければと思います。」
数値の連携自動化

岩田:「会計システムやSFA、経営企画の手動で管理しているものがインプットとなります。アウトプットは、数値がチェックできる機構やダッシュボードでの可視化、レポート・分析のペーパーなどです。
この絵を見る限り、シンプルになればなるほど、(数値の連携自動化が)素早くできそうな印象を抱かれるのではないかと思います。」
実際はもう少し複雑だが、導入効果は大きい

岩田:「しかし、実際は『どこでデータを管理するのか』、『どのように連携し、加工していくのか』など、考えなければならない点がいくつかあり、もう少し複雑です。
しかしデータ連携が実現できた時の効果は大きいです。そのため、導入効果を徐々に紐解いていきつつ、導入のポイントも含めてお伝えできればと思います。」
自動化による導入効果

岩田:「おもな導入効果は以下のとおりです。
全体的に共通するポイントとして、数値周りの整理が統制化された企業は、それに比例して具体的なアクションも早く取れるようになると思います。
まず、レポートの作成や株主対応の早期化が可能です。社内の観点では、メインの導入効果として数値の作成を見込んではいるものの、シミュレーションの連携や可視化ダッシュボードへの連携を実現できるメリットがあります。
データ管理の観点では、『どこの事業部・部門から、どういったデータが上がってくるのか』が明確化されます。さらに、『どこに管理するのか』や『どのデータは触ってよいのか』といった、具体的な管理場所や扱い方の明確化が行えます。
最後の2つは(自動化による導入効果として)大きな部分だと思い、下線を引いています。社内では同じ数値を見た会話が基本になり、再現性を持った取り組みができます。また各部門の取り組みが活発化し、新しい主体的な動きが出てくるメリットもあります。」
同じ数値を使う

岩田:「下線の部分を補足をすると、『同じ数値を使う』意味の言葉として、Single Source of Truthの観点があります。一つのデータソースを整理した上で、似たデータの作成やコピー、クローンなどが生まれない環境を作り、同じデータや数値をさまざまな人が見られるように展開することが重要だと思います。
Single Source of Truthの観点でデータを作っていくことによって、『基本的にデータの連携元は同じだから、データをこのように計算したらこういった結果が出る』といった共通の観点を持て、自分たちで数値の再現が可能になる点が大きなメリットだと思います。」
部門内の活発化

岩田:「弊社ではおもにバックオフィス関連などが発達している最中であり、データの連携する内容やサービスなどが飛躍的に増えています。
たとえば営業の部分をより最適化していきたいと考えた際、営業側を支援するSalesOpsでデータを扱う動きが生まれます。最初は部隊としてあるわけではなく、SalesOpsのメンバーによるチャレンジから組織になっていく変遷もあります。
このようにしてデータ連携の幅が大きくなったり自動化が増えたりすると、やれることややっていきたいことが増えていきます。そこで、それぞれの部門や事業部が枝分かれをして、さらにやれることが増えていくのです。
レポートやダッシュボードを自分たちで作成するなど、そういったKPIを増やしていく動きが活発になっていくと思います。」
導入における4つのポイント

岩田:「今までは導入のメリットばかりをお伝えしましたが、やはり考えるべき点や導入のハードルが非常に重要になるため、その上での導入のポイントと具体事例をお伝えします。
導入のポイントは4点挙げさせていただきました。スピード感を持って導入を行う点はよくある話かなと思いますが、その中で今見直すべきポイントを確実に落とさないように進めていただくことが重要だと思います。もちろん決算作業以外の観点も含め、『社内のこういった基盤を作っていく』、このチャレンジを進めていく』のように、全体感を意識していただけるとよいと思います。
1つ目は『インプット/アウトプット領域を徐々に広げる点』、2つ目は『手軽さが一番!には逃げない』、3つ目は『同じスケジュール上で動き、データの担当を明確にする』、最後は『重要指標の見直しを併せて検討する』です。大きく分けて以上の4つを書かせていただきましたが、一番大きなポイントは重要指標の見直しを合わせて検討することかなと思います。」
インプット/アウトプット領域は徐々に広げる

岩田:「インプット/アウトプット領域を徐々に広げることは、さまざまな場面でよく言われている点かと思います。とくに社内でデータ連携や自動化を進めていく観点でいうと、決裁権者や管理されている方からすると、『現状回っているのだから、このままでよいのではないか』と考えられるケースも往々にしてあると思います。
やはり今やるべき理由を明確にする必要はありますが、その上で『いまどこに時間やコストがかかっているのか』、『どこに連携が関わってくるのか』を確認し、スコープを決めていく必要があるかと思います。
ここではTROCCO®を使って連携と記載していますが、もちろん全てTROCCO®である必要はないと思います。たとえば、初めはインターフェースとしてスプレッドシートを使いつつ、スプレッドシートとデータウェアハウスをGoogleで自動連携できる形にします。
連携元や転送したいデータが増えてきた時には、『何を使うのか』、『どこで管理するのか』などを考える必要があると思います。このような状況でできる限り時間やコストをかけずに、今できることは確実にアピールしていくことが重要です。
そのうえで将来的な構想も含め、今できることと将来的にやっていくことを明確にしていくのが、まず一つ目の入り方かなと思います。」
手軽さが一番!には逃げない

岩田:「先ほどExcelやスプレッドシートの話をしましたが、やはり非常に手軽で便利であることは皆さんも感じていただけると思います。ただし、思考をやめた『とりあえず現状維持』、や、『今はExcelやスプレッドシートで回っているから、このままでいい』といった考え方で決定をしていくと、基本的にはなくなってこないと思います。
いま回っていたとしても、『このデータと連携できるのではないか』、『一元管理が可能なのではないか』、『これを揃えることでこういったことが見られるのではないか』などを考えることが重要です。現在スプレッドシートで管理できていたとしても、将来的な進め方や、いざやろうとしたときにスコープはどこから始めるのかなどを考えていくべきだと思います。
たとえばスライドの下の部分に書いていることとしては、スレッドシートに関数やGASは仕込まず、シンプルにインタフェースとして入力やシミュレーションにのみ使いますが、そこでデータを管理することはありません。データ管理自体はバックエンドのデータベースやデータウェアハウスで行うことにより、スプレッドシートに情報が寄らなかったりデータが断面でたまったりします。
スプレッドシートを使うにしてもさまざまな方法があります。それらを踏まえたうえで、現状維持の考え方は排除して、一度振り返ってどうするべきなのかを決めていくとよいと思います。」
同じスケジュール上で動き、データの担当を明確にする

岩田:「データ連携を進めていく中で、たとえば会計側や事業責任者側、経営企画側で、それぞれのスケジュールや作られるデータのタイミングが異なるケースがあると思います。
そこで、最終的にデータを利用して作りたいものを明確化しておく必要があります。たとえば、レポートや決算、ダッシュボードを作成する際、『数値のアウトプットはどのタイミングか』、『そのデータを使うインプットがどれか』を考慮しておきます。そして、月次処理の動きなども含めて管理することを理解しておく必要があると思います。
自分の前後やスケジュールがどのように組まれるのかに関して、もし現状でそういった理解がないのであれば、分析基盤構築やデータ連携を進めていくタイミングを皮切りに、ぜひ足並みを揃えたり同じ土俵で進め方について検討したりすべきだと思います。
音頭をとる際には、管理工数を下げるためだけの独断専行な取り組みにせず、今取り組むメリットを明確にしたうえでお伝えするのが重要かなと思います。そうすることで、『この部分はこういったデータが上がってくる』、『このデータを管理しているのは、この部門』のように、より明確に見ていただけるのではないかなと思います。」
重要指標の見直しを併せて検討する

岩田:「重要指標の見直しを併せて検討することが、今までの経験上重要なポイントかなと思っています。とくに、会社に合わせたKPIや数値の観点などの会社の上位の重要指標は、やはり慎重に作ったりデータ連携したりする必要があると思います。
その数値が複雑なロジックであったり、配賦・付け替えが発生したりするのであれば、後々腫れ物扱いや数値を触りたくない状況になりかねないです。
部門ごとの詳細なレポートや分析は、上段の経営レポートに含まれる数値を前提として作成されます。そのため、経営レポート時点での複雑性を踏襲した連携になり、基本的に数値が間違っていたり、誰もが疑問を持ちたくなかったりする数値になってしまうと思います。
また複雑なロジックが入っていると、その数値の修正をする際や、データが上がってきて最終的にレポートを作成する際にも、その部分を頑張って経営企画が直したり事業部が吸収したりなど、その部分を作り込む手間が出てきてしまいます。
データ連携やダッシュボードの作成、最終的な事業部の詳細レポートへ繋げていくことを考えた時に、今持っている数値やKPIの観点で今後、「どうのように作っていくべきなのか」「連携していくべきなのか」を改めて考えることは重要かなと思います。数値自体の見直しや現在よりもシンプルな方法の模索を進めていくことが重要なポイントです。」
システムはシンプルに、数値・運用は慎重に

岩田:「システム自体は『よりシンプル』に回しつつ、数値や運用は『急がば回れ』で検討を続けていただければと思います。」
顧客の環境と課題

岩田:「ここからは、具体事例とプラクティスに入らせていただきます。このスライドでは、顧客についてのイメージを持っていただけるような書き方をしています。
会社のステージが一段変わるようなタイミングの顧客から、ご相談をいただく機会が増えている印象があります。たとえば、資金調達後や上場前後、グループ内企業の変遷です。
顧客が持たれている具体的な課題は、『自力で頑張っており、環境の変化に社内が追いついていけない』『適切な人に適切な数値を適切な形で提供できていない』などがあり、これらはダッシュボードなどの要素もあるかなと思います。ほかにも、上場した後であったりとかグループ内企業の変遷において、『按分や配賦などの実際の数値を作り込む部分での数値合わせの苦労が非常に大きい』といったお話いただくことが多いです。
また、『本来業務に時間が割けない』『新しいことにチャレンジする時間が取れない』といったお話もいただきます。これらの課題は全体的に共通して持たれている印象です。」
TROCCO®を使って実現した例

岩田:「実際に支援させていただいた企業の具体例を紹介します。
弊社のTROCCO®を使ってデータを連携させ、それぞれの役職に合わせてスプレッドシートやTableau、Salesforceを用いて、ダッシュボード作成やレポート・分析を実現しました。」
ダッシュボードやレポートの具体例

岩田:「たとえば、よりドリルダウンが効いたダッシュボードを作成するケースがあります。また、右下にあるのは弊社の内部のレポートです。Salesforceによって、営業側で持っているSFAの観点で、数値の連携だけでなく情報の書き込みも行えます。」
進め方

岩田:「実際の進め方や具体的なプラクティスについてお伝えします。
進め方としては、大きく分けて2つあるかなと思います。方法1は、レポートやダッシュボード、報告書などのアウトプットを、取り組みとして先行的に見せていく形で進めていきます。
方法2は、全体の手順(タイムライン)を圧縮しつつ進めていく形です。イメージとしては、ウォーターフォール型で実際にコンサルティングをしたり機能配置を考えたりして進めていきます。
今回の方法は、方法1です。どちらの方法がよいというわけではないですが、スコープを可能な限り小さくしつつ、その中でも『どのような導入効果が見込めるか』『アウトプットはどのようなものか』を早期に見せていく意味合いを込めて、方法1で進めました。」
領域を徐々に広げる

岩田:「1、2ヶ月の短期スパンでアウトプットの修正をかけつつ、2、3ヶ月のスパンでデータの管理方法やKPIなどの上段の部分を見直し、そこに合わせてデータの作り込みの流れを決めます。このようにループを回しつつ、徐々に対応範囲を広げていきます。
会社としても、このような業務により多くの時間を使っていく必要があります。」
組織・所属・サービスへの配賦

岩田:「組織・所属・サービスへの配賦の観点では、データの種類や量と更新頻度から、具体的なインターフェースを検討します。
たとえば、管理データ種が少なくデータの更新頻度も低ければ、基本的にあまり使われないデータです。一方、シミュレーションや事業の稼働付け替えなどは、データ種は少ないが更新頻度は非常に高いデータです。
反対に、自社関連人員の流動などを例として挙げると、管理すべき人員の種類は多いですが、流動の頻度は非常に少ないため、『データ種は多いが更新頻度は少ないデータ』に分類されます。また、更新も高頻度で必要で管理する種類も非常に多いデータについては、さまざまな方法を考える必要があります。
それぞれのデータ種と更新頻度、また利用者のリテラシーも含めて管理の方法や使い方を決定します。そのうえで、データの改廃や流動性が向上するように工夫することが重要です。」
データの断面の獲得

岩田:「ここはシステム的なテクノロジーの話になってしまうため、あまり深堀りをせずに進めていきます。
ポイントとしては、『データの改廃について迷ったら、とりあえず残す』です。画像や動画などは、実際にデータとして残すとなると多くのストレージを必要としますが、数値やスプレッドシート、Excelなどの構造化データは、基本的には多くのストレージを必要としないデータです。
『データを残しておきたい』『月次の観点でデータの状態を見ておきたいが、今までではサービスで管理していたため更新がかかってしまう』といったケースであれば、迷ったらとりあえず残しておき、不必要になったのであれば消すことが重要かなと思います。
今回の事例でいくと、スナップショット切ったり、読み取り専用を利用したりして、できるだけコストをかけずにデータを残しています。」
計画・実績・予測

岩田:「実際に数値を作っていく際には、KPIに合わせて計画・実績・予測の観点を考慮することが非常に重要かなと思います。丁寧に分解していくことの大切さは、昨今より感じるようになっています。
とくにデータ連携ができるようになってきた時、確認したい粒度感は異なりますが、大きく分けて計画・実績・予測の粒度があるかなと思います。そのため、数値の切り替わりや入力方法、使い方などを含めて流れを見ていくのがよいです。
たとえば全社売り上げの場合、『年に1回の話なのか』『いつ締めのタイミングで上がってくるのか』を確認し、予測の観点では『来季のレベル間での予測か、次月のレベル感での予測か』などを確認します。
(スライドの右側は)ダッシュボードのひとつの例ですが、『切り替わりとしては締まった部分までは実績で見れた方がよい』『これ以降の部分は、予測を利用したほうがよい』『達成率は、このような事業部単位で算出したほうがよい』などを含めて検討するとよいでしょう。
やはりこれらは、一番見られる部分であるため、丁寧に分解して反映していくことが重要かなと思いますし、実際に時間をかけた部分です。」
数値のチェック

岩田:「最終的には、数値のチェックを行います。パイプラインやデータを連携する部分は、育てていく意識を持っていただきたいです。
数値は扱い方が変わったり要素が加わったりしますし、事業部は次第に幅広くなっていきます。そのため基本的には、前提として『組織や管理するデータはスケールしていくもの』と考えるべきです。
たとえばデータを正しく見るための方法として、現状の業務で管理されている数値の結果と今回作られたデータを突き合わせをしたうえで、どのように数値のチェックなどを加えていくのかを検討しながら、パイプラインをどんどん太くしていくことが大切です。
そういった意味で育てていくことは重要であるため、数値のコンペアは数ヶ月の期間を設けて実行してもらいたいと思います。」
BIツール

岩田:「データの作り込みでいうと、探索的にデータの分析や可視化をしていくことを踏まえてにはなりますが、可能な限りはじめは、BIは切り替えられるような観点を持っていた方がいいかなと思います。
TableauやLookerなどのBIの種類もそうですし、誰が見るのかといった観点を考慮しておくと、データを貯めたり自動化を進めたりする際に選択肢がより広がります。
このスライドの例では、リアルタイムでの繁栄を望むのであればLookerが選択肢に出てきてたり、ダッシュボードを作り込んでドリルダウンでKPIの内訳などを見たいのであればTableauを選ぶと記載しています。
しかし、もちろんそれだけで選択肢が決定されるわけではありません。データを扱っていくうえでは、初回はデータを作り込みすぎず、さまざまなものを試していくのがいいかなと思います。今回の例でいうと、Tableauを選んで、ダッシュボードを作り込んでいった背景があります。」
メタデータ

岩田:「仕様書や設計書を書くことに疲れている方がいらっしゃるのではないかと思います。メタデータは、そういった方へ向けて、データをより効率的に管理するためのものです。
メタデータは、ビジネスメタデータやユーザーメタデータ、テクニカルメタデータなどさまざまな言い方がありますが、そのデータを補足するための詳細な情報です。テーブル情報や管理している情報のほかに、前段での処理や出来上がったデータの状態などを残しています。
このように詳細な情報を付与しておくと、仕様書や設計書をメンテナンスする手間が省けると思います。最初はハードルが高かったり進め方について迷ったりすると思いますが、ぜひ考えてみていただければと思います。
分析と予測のフェーズへ

岩田:「数値の算出が早期化されることによって、捻出された時間を分析や予測に充てられます。やれることは増えていく一方であるため、想定される期間や効果を鑑みたうえで、どのように取り組んでいくのかを検討するとよいでしょう。
ここに書いている通り、ダッシュボード構築やデータの自動連携を基盤として行ったうえで、予測につなげていくことが大切です。予測といっても、すぐに機械学習などを求めるわけではなく、ロジックをうまく使ったシンプルな予測です。
また、事業部でのビジネスサイクルも重要です。顧客をナーチャリングしていく方法やそれらのライフタイムバリューを読み解きます。そのうえで、データを会計システムと統合したり、ハイパフォーマーを抽出することで評価へ反映させたりと、さまざまな方向へ繋げていける可能性があります。
このように進めていくことで、さまざまなロードマップ・考え方が広がっていくのかなと思います。」
まとめ
岩田:「まとめとしては、自社にあった方法で進捗を取りつつ、一石“N”鳥な環境を目指していくことが大切です。
今回お伝えさせていただいた重要なポイント10点を踏まえつつ、そのうえで自分たちにあった方法で、幅広い顧客に対して訴求効果のある、一石“N”鳥な環境を目指していくことがよい進め方ではないかと思います。」
本記事のまとめ
本記事では、決算の早期化を実現するためのデータ統合と自動化の仕組みをわかりやすくご紹介しました。
決算の早期化は、迅速な意思決定を可能にし、競争力を向上させる重要な要素です。データ連携の自動化や効率的なデータ管理によって決算の早期化を実現させたい方は、本記事で紹介した内容を参考に、データ運用についての現状を見直してみてはいかがでしょうか。
また、弊社のデータ分析基盤総合支援サービス「TROCCO®」は、データのETL機能を中心として、データの利活用を手助けするさまざまな機能を提供しています。本記事で紹介した「メタデータ機能」や「データカタログ機能」などにより、データ運用を多方面からサポートします。
データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方は以下よりぜひ資料をご覧ください。
