Marketoは、リード管理やメール配信、ランディングページ作成、ABM(アカウントベースドマーケティング)など、多彩なMA機能をワンストップで提供する統合型プラットフォームです。直感的なUIと豊富な機能から、多くの企業で導入されています。
標準機能だけでも見込み顧客の育成やキャンペーン管理を効率化できますが、Marketo APIを活用すると、さらにMarketoの利便性を高められ、利用価値を最大化できます。たとえば、外部CRMとの顧客情報の同期や、アクティビティログをトリガーにした自動ワークフロー起動、DWH・BIツールへの大量データロードなどを実現可能です。
本記事では、Marketoが提供する各種APIを一覧でご紹介し、それぞれのAPIの概要やできることをご紹介します。併せて、利用時の注意点や具体的なユースケースについても解説します。
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Marketoとは
Adobe Marketo Engage(マルケト)は、Adobe社が提供するMAツールです。Marketoを導入することで、マーケティング活動を効率化したり、顧客エンゲージメントを向上させたりできます。to B/to Cなどのビジネスモデルや業界、企業規模を問わず、幅広い企業で導入されています。
Marketoは、全10個のアプリケーションによる豊富な機能提供が特徴です。MA機能はもちろん、ABM(アカウントベースドマーケティング)やマーケティングアナリティクスなど、包括的なマーケティングソリューションを提供しています。これにより、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスまでをシームレスにつなぐ役割を果たします。
Marketo APIを用いてできること
Marketoでは、外部システムとの連携や既存機能の拡張を目的に、さまざまなAPIが提供されています。ここでは、それらのAPIを用いてできるようになることを3つ紹介します。
リードデータの自動同期
Marketo APIを利用すると、CRMに登録された新規リードを自動でMarketoに取り込み、属性情報やスコアをリアルタイムに更新できます。
たとえば、Webフォームから送信されたリード情報を即座に特定のスマートリストへ振り分けたり、カスタムオブジェクトの値に応じてターゲットセグメントを動的に切り替えたりすることが可能です。これにより営業チームは常に最新のリード情報に基づいてアプローチでき、マーケティング活動の生産性向上に貢献します。
大量データの一括インポート/エクスポート
Marketo APIを利用すれば、過去数年分の顧客履歴やウェビナー参加者ログ、外部システムの売上データなどを、CSVファイルでまとめて一括処理できます。
夜間バッチで数百万件のリードを高速にアップサート(登録・更新)し、翌朝にはBIツールやDWH(データウェアハウス)で分析できる状態に自動的に整えることが可能です。また、同じ仕組みを使って大量のアクティビティログを安定的に抽出し、自社のデータレイクへ連携することも可能です。
サイト行動分析とフォーム改良
Marketo APIを導入することで、サイト訪問者のページビューやリンククリック、動画再生やダウンロードなど、あらゆるアクションをMarketo側のアクティビティログとして記録できます。これにより、「製品紹介動画を再生開始・完了したユーザーをトラッキングし、完了者だけにフォローアップメールを自動配信する」といったフローを構築可能です。
また、フォームの事前入力やカスタムバリデーション、送信後の遷移制御を自在にカスタマイズできるようになります。これにより、フォーム離脱率を大幅に低減しつつ、入力ミスを防いで正確なリード情報を確保することが可能です。たとえば、過去の行動履歴に応じて必要項目だけを表示したり、誤ったフォーマットの入力を即座に指摘して送信前に修正を促したりすることで、コンバージョン率を大幅に向上させられるでしょう。
Marketo API一覧
Marketoが提供するAPIを一覧としてご紹介します。
REST API
REST APIは、Marketoのさまざまな機能(リード、アセット、活動ログなど)をHTTP+ JSON形式で操作・取得できるサーバー向けAPIです。OAuth2.0を使って認証し、MAの設定やデータ連携をコードで制御できます。
REST APIを活用すると、リードの登録・更新・検索・削除や、キャンペーンの自動起動、メールやランディングページの作成・管理などができるようになります。外部システムとのデータ連携において用いられ、Marketoの提供するAPIの中でもっとも頻繁に利用されるAPIです。
Lead Database APIs
Lead Database APIsは、Marketoのリードデータベースに直接アクセスし、リードやカスタムオブジェクト、リスト情報の作成・更新・削除を行うためのAPIです。とくに、営業やインサイドセールスのプロセスにおいて、CRMと連携したスコアリングやターゲティングの自動化に不可欠です。また、アクティビティログも取得できるため、ユーザーの行動履歴を分析基盤に取り込む用途にも使われます。
Data Ingestion API
Data Ingestion APIは、Marketoに大量のデータを一括で取り込むためのバルクインポート専用APIです。REST APIとは異なる独自の構成(v2エンドポイント)で、CSV形式のファイルをアップロードし、非同期でデータ取り込み処理を実行します。主に、ウェビナー参加者情報や外部DBからのリード一括取り込み、過去データの定期バッチ登録など、大量データを高速・安定的に処理したい場合に利用されます。
Data Ingestion APIの公式ドキュメントはこちら
Asset APIs
Asset APIsは、Marketo上で作成・管理されるメールテンプレートやランディングページ、フォームといったマーケティング資産を操作できるAPI群です。これらのAPIを活用することで、キャンペーンの構成要素をプログラム的に生成・更新でき、運用の効率化が進みます。また、フォルダやスニペット、トークンなども対象に含まれるため、パーソナライズやA/Bテストの自動化にも活用できます。
Bulk Export API
Bulk Export APIは、Marketo内に蓄積されたリード情報やアクティビティログをCSV形式で一括抽出できる高効率なデータエクスポート用APIです。日次バッチでのDWH連携や、BIツールによるKPI可視化、外部分析基盤へのデータ連携に最適です。REST APIと異なり、抽出処理を非同期ジョブとして実行するため、大規模データも安定して取り出せます。
Bulk Import API
Bulk Import APIは、CSVファイルを使ってMarketoにリードデータを一括登録・更新できるRESTベースのインポートAPIです。Data Ingestion APIと似ていますが、こちらはREST API v1の一部として設計されており、特に中小規模の一括アップロードや、定期インポートに向いています。ジョブIDを用いたステータス確認や、エラーデータの取得も可能です。
User Context API
User Context APIは、現在のAPIトークンに紐づいたユーザーの情報を取得するためのAPIです。どのワークスペースやデータパーティションにアクセスできるか、どのような制限がかかっているかを把握するのに役立ちます。複数環境でAPIを動的に切り替えるような大規模運用において、セキュリティ制御やテナント別処理を適切に行うための重要な補助APIです。
User Management API
User Management APIでは、Marketoの管理者アカウントに関連するユーザー情報やロール情報をAPI経由で取得できます。REST APIを通じて、ユーザーの属性や付与されている権限の一覧を取得することで、システム連携時のアクセス制御や監査ログ管理などにも対応できます。ただし、新規ユーザーの作成や権限設定はAPIではできず、GUI上での操作が必要です。
User Management APIの公式ドキュメントはこちら
SOAP API
SOAP APIは、Marketo初期から提供されているXMLベースのAPIであり、REST API以前の統合手段として利用されてきました。現在はREST APIへの移行が推奨されています。
JavaScript API
MarketoのJavaScript APIは、WebサイトやLP上で動作するクライアントサイド向けAPIです。主にフォーム操作や訪問者トラッキングに使われ、Webマーケティング施策のフロントエンド部分を制御する目的で活用されます。REST APIと補完的な関係にあり、訪問データの収集やUX制御に強みがあります。
Forms API
Forms APIは、Marketoが提供する埋め込みフォームをJavaScript経由で制御するためのAPIで、MktoForms2オブジェクトを用いて操作します。Forms APIを使うことで、フォームの自動読み込み、事前入力、バリデーション制御、送信後のイベントフックなどを柔軟に実装できます。Google Analyticsや広告計測ツールとの連携や、UIに応じた動的フォーム出し分けなどに最適です。
Munchkin API
Munchkin APIは、Marketoのトラッキング用JavaScriptライブラリで、Webサイト訪問者の行動(ページビュー、リンククリック、カスタムイベントなど)を自動・手動で記録できます。クッキーによる匿名訪問者の識別や、フォーム送信後にユーザーとリードを紐づけるassociateLead機能なども含まれています。取得された行動ログは、Marketoのスコアリングやセグメント判定、営業通知のトリガーとして活用されます。
Munchkin APIの公式ドキュメントはこちら
Marketo APIを利用する際の注意点
Marketo APIは非常に便利なツールですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。ここでは、主な注意点を3つ説明します。
利用制限に気をつける
Marketo APIでは、安定したユーザー体験を提供するため、各APIにおいて利用制限が設けられています。たとえばREST APIでは、主に以下のような制限があります。
- 1日の割り当て量:1日あたり50,000回
- レート制限:20秒あたり100回
- 同時実行数:最大10回まで
対策として、APIリクエストの間隔管理には、指数バックオフ+ジッターを導入すると良いでしょう。たとえば 429 エラーやタイムアウトが返ってきた場合、待機時間を最初は1秒、その後は倍ずつ伸ばし、乱数で前後1〜2秒を振ることで複数クライアントからの同時再試行集中を回避できます。
また、バッチ処理の活用も有効です。リードの大量登録更新にはBulk Import API、ログ取得にはBulk Export APIを使うことで、1回あたりの呼び出し回数を大幅に削減できます。
Marketo APIのベストプラクティスはこちら
SOAP APIは新たに使わないようにする
MarketoのSOAP APIは2025年10月31日(PT)に廃止予定となっており、以降は一切利用できません。旧来のSOAP APIに依存したシステムは、サービス停止や機能障害を回避するため、早急にREST APIへの移行を進める必要があります。
REST APIはJSON/HTTPベースで可読性が高く、豊富なエンドポイントとOAuth2.0認証を備えているため、新規開発やバルク処理、アセット管理などあらゆる用途に対応可能です。移行作業では、SOAPのWSDL定義からRESTのリソースURLやパラメータ形式へのマッピングを整理し、API呼び出しロジックやエラーハンドリングを再実装します。
これにより保守性が向上し、今後のAPIバージョンアップにも柔軟に対応できる体制を整備できます。
認証とセキュリティ
Marketo APIではOAuth2.0を使ったトークン認証が必須となっており、クライアントIDとクライアントシークレットを安全に管理しないと、不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まってしまいます。トークンは環境変数や専用のシークレットマネージャーで暗号化保管し、GitリポジトリへコミットしないようCIのシークレットスキャンを導入しましょう。
また、アクセストークンは有効期限が短いため、自動リフレッシュ処理を組み込み、期限切れで業務停止しない設計が求められます。
APIトークンには最小限のOAuthスコープだけを付与し、不要な権限を与えない「最小権限の原則」を徹底することも重要です。
Marketo APIを用いたデータ連携事例
Marketo APIを活用した、よくあるデータ連携事例をご紹介します。
Marketo × Salesforce
Marketoの代表的な連携先として、Salesforceが挙げられます。MAツールであるMarketoとCRM・SFAであるSalesforceをデータ連携させることで、いくつかのシナジーが生まれます。
まず、顧客のWebサイトへのアクセス履歴を有効活用できる点です。Salesforce上に登録されている顧客が自社サイトにアクセスした際にアプローチをかけるなど、顧客行動に合わせたアプローチが可能になります。
また、重複対応の防止が可能です。SalesforceとMarketoを別々に運用していると、それぞれの顧客情報が同期されていないため、Marketoの自動メール配信などで商談中の顧客に宣伝メールが送信されてしまうケースがあります。一方、それぞれをデータ連携させていれば、どちらからも顧客の最新状況を確認できるため、重複対応を防げるのです。
Marketo × BigQuery
DWHとのAPI連携も、Marketoの利用価値を引き出すおすすめのユースケースです。たとえば、MarketoとBigQueryを連携させることで、DWHならではの強みをデータ分析に活かすことが可能です。
大きなメリットとして、Marketoの標準レポート機能では実現できない複雑な分析が可能になります。たとえば、BigQueryのカスタムSQLクエリを使用した高度なセグメンテーションや時系列分析を実行できたり、BigQuery MLを用いた顧客行動の予測モデルを構築したりできます。
また、MarketoのデータをBigQueryに連携することで、BigQuery上でCRMやSFAなど、さまざまなデータソースとデータを統合させることが可能です。これにより、マーケティングだけでなく、営業活動やカスタマーサクセスまでをカバーした統合的な顧客理解が可能になります。
Marketoリード情報とログ情報を結合し顧客行動分析を自動化
まとめ
本記事では、Marketoが提供するAPIとその役割を一覧としてご紹介しました。また、活用時の注意点や具体的なユースケースについても解説しました。
Marketoはリード管理やメール配信、ランディングページ作成、ABMといったマーケティングオートメーション機能をワンストップで提供するプラットフォームです。しかし、標準画面だけでは社内システムやBIツールとのデータ連携、バルク処理による大規模インポート・エクスポートをカバーしきれない場面があります。
そこでMarketo APIを活用することで、外部CRMとの双方向同期、フォーム体験の最適化、自動バッチ処理によるデータの一元管理などが実現可能になります。API連携を通じて、自社の業務プロセスに最適化された運用体制を構築し、さらなる業務効率化・生産性向上を推進していきましょう。

