近年、Webシステムやアプリ開発の現場では「REST API(レストエーピーアイ)」という言葉をよく耳にするようになりました。API自体は以前から存在しますが、REST APIはその中でもシンプルかつ柔軟で、さまざまなサービス連携に活用される手法です。

しかし、「何となく使っているけれど、詳しい仕組みはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、REST APIの基本的な定義や特徴、他のAPIとの違い、設計や実装のポイントまで、実務に役立つ内容を分かりやすく解説します。

REST APIとは?

REST APIとは、「Representational State Transfer」の略で、Web上のリソースに対してHTTPを用いて操作を行うAPIの設計スタイルです。リソースとは、ユーザー情報や商品データなど、特定のデータや機能を指します。REST APIは、シンプルな構造とルールで実装できることから、多くのWebサービスやアプリケーションで採用されています。

特徴的なのは、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を使ってリソースを操作し、URLでリソースを一意に表現するという点です。また、クライアントとサーバーの役割を分離し、拡張性や保守性に優れている点も支持されている理由です。次の見出しでは、RESTの基本原則について詳しく解説していきます。

RESTの基本原則

REST APIは、「6つのアーキテクチャスタイル(設計原則)」に基づいて設計されます。これらの原則に従うことで、APIは高い拡張性と柔軟性、そして保守性を実現できます。以下では、その中核となる5つの基本原則を解説します。

ステートレス(Stateless)

ステートレスとは、各リクエストが独立しており、サーバー側がクライアントの状態を保持しない設計を指します。たとえば、あるユーザーがAPIを通じてデータを取得したとしても、そのリクエストに関する情報はサーバーに保存されません。すべてのリクエストは、必要な情報(認証トークンやパラメータなど)を含んだ完全な形で送信される必要があります。

これにより、サーバーの処理が単純化され、スケーラビリティの向上や障害時の復旧が容易になります。一方で、リクエストごとに状態を含める必要があるため、クライアント側の実装には工夫が求められます。

クライアント・サーバー(Client-Server)

RESTアーキテクチャでは、クライアントとサーバーの役割を明確に分離します。クライアントはユーザーインターフェースや操作のロジックを担い、サーバーはリソースの管理や処理を担当します。これにより、クライアントとサーバーは独立して開発・更新できるため、システム全体の柔軟性が高まります。

たとえば、フロントエンド側でのUI変更や、新しいモバイルアプリの導入がサーバーの設計に影響を与えにくくなります。さらに、クライアントとサーバーの間で明確な契約(API仕様)を設けることで、チーム間の連携もスムーズに進められるようになります。

キャッシュ可能(Cacheable)

REST APIでは、レスポンスにキャッシュ可能な情報を含めることで、クライアントや中間サーバーがデータを一時的に保存し、再利用できるように設計します。たとえば、同じユーザー情報を何度も取得する場面では、キャッシュを活用することでAPIへのアクセス回数を減らし、レスポンス速度を向上させることができます。

HTTPのヘッダー(例:Cache-ControlやETag)を適切に設定することで、どの情報がキャッシュ可能かを制御できます。これにより、サーバーの負荷軽減やネットワークトラフィックの削減が可能になり、全体的なパフォーマンス向上に寄与します。

統一インターフェース(Uniform Interface)

RESTの特徴の一つが、統一されたインターフェースを通じてリソースへアクセスするという点です。これにより、クライアントとサーバー間の相互運用性が高まり、APIの利用や学習が容易になります。具体的には、リソースをURLで表現し、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を適切に使い分けることで、統一された操作体系を実現します。

また、リクエストとレスポンスの形式も基本的にJSONやXMLに統一されるため、実装の標準化が進みます。結果として、APIの拡張やメンテナンスが容易になり、開発スピードの向上や品質の確保にもつながります。

階層構造システム(Layered System)

RESTでは、クライアントとサーバーの間に複数の中間層(プロキシ、ゲートウェイ、キャッシュサーバーなど)を挟んだ階層構造のシステム設計が推奨されています。これにより、負荷分散やセキュリティの強化、機能の分割が可能となります。たとえば、認証処理を中間サーバーで行うことで、アプリケーションサーバーの負荷を軽減できます。

また、キャッシュ層を通じて同一データの再利用を図ることで、パフォーマンスの向上にも寄与します。クライアントは、どの階層にリクエストを送っているかを意識する必要がなく、あくまで一つのサーバーとして扱えるのが利点です。

REST APIが使われる具体的な場面

REST APIは、さまざまなシステム開発において不可欠な存在です。とくに、フロントエンドとバックエンドの連携、外部サービスとの統合、ECサイトや予約システムなどの複雑な機能実装において活用されています。以下で具体的な事例を紹介します。

フロントエンドとバックエンドの連携

フロントエンドとバックエンドの連携は、REST APIの代表的な活用例です。近年では、SPA(シングルページアプリケーション)やモバイルアプリが主流となっており、これらのUI部分とバックエンドのデータベースとを繋ぐ手段として、REST APIが使用されています。たとえば、ユーザー情報の表示、商品データの取得、注文処理などはすべてAPI経由で行われます。

REST APIを導入することで、フロントエンドとバックエンドの開発を分離できるため、それぞれの開発チームが独立して作業を進めやすくなります。また、同じAPIをWebアプリとモバイルアプリの両方で再利用できるため、効率的なシステム構築が可能です。

外部サービス連携

REST APIは、外部サービスと自社システムを連携する際にも多く使われています。たとえば、決済システム(例:『Stripe』や『PayPal』)、地図サービス(例:『Google Maps API』)、チャットボットやSNS連携など、さまざまな外部機能を簡単に統合できます。REST APIを活用すれば、これらの外部機能を一から開発することなく、短期間で導入できます。また、外部サービス側もREST APIを提供していることが多く、ドキュメントに従って実装すれば、比較的スムーズに連携可能です。さらに、必要に応じてデータの取得・送信ができるため、ユーザー体験を損なわずに多機能なサービスを構築できます。

ECサイトや予約システムの機能実装

ECサイトや予約システムでは、ユーザー管理、商品表示、在庫管理、注文処理、決済など多くの機能が求められます。これらの機能をモジュール化し、柔軟に設計・運用するためにREST APIが活用されます。たとえば、商品情報の一覧取得や詳細表示にはGETメソッドを、注文確定にはPOSTメソッドを用いるといった具合です。

また、在庫数の更新や注文のキャンセルにはPUTやDELETEを使うことで、分かりやすく直感的な処理が可能になります。さらに、API化することで外部チャネル(モバイルアプリ、POSシステムなど)との連携も容易になり、システム全体の拡張性が大きく向上します。ビジネス成長に応じた柔軟な対応がしやすくなるのもREST APIの強みです。

REST APIとSOAPの違いを徹底比較

REST APIとSOAPは、どちらもシステム間でデータをやり取りするための手段ですが、その設計思想や使い方には大きな違いがあります。RESTはHTTPプロトコルを活用し、シンプルで柔軟な構造を持つ一方、SOAPはXML形式をベースとした堅牢なメッセージ仕様を持ち、標準化された通信が特徴です。

RESTはWebアプリやモバイルアプリとの相性が良く、軽量な通信が求められる環境に適しています。対してSOAPは、セキュリティやトランザクション制御などの要件が高い企業向けシステムや金融系などで利用される傾向があります。以下の表では、両者の主な違いを分かりやすく比較しています。

項目REST APISOAP API
データ形式JSON、XML、HTML、テキストなど柔軟XMLのみ
処理の軽量性軽量で高速処理が重く、通信量が多くなる
セキュリティ対応HTTPSでの暗号化が基本WS-Securityによる高度なセキュリティ対応
拡張性・柔軟性高く、用途に応じた設計が可能拡張性は低く、厳密なルールに従う必要あり
主な利用シーンWebサービス、モバイルアプリ企業間取引、金融システム、業務基幹系
通信プロトコルHTTPのみHTTP、SMTP、FTPなど複数に対応

このように、目的や利用環境によって最適なAPI形式は異なります。次の見出しでは、それぞれを選択すべき具体的なケースについて詳しく解説します。

REST APIとSOAP API、いつどちらを選ぶべきか?

REST APIとSOAP APIは、それぞれに得意な用途があるため、プロジェクトの要件や目的に応じて使い分けることが重要です。REST APIは、開発スピードや拡張性が求められるWebアプリやモバイルアプリ、マイクロサービス環境に最適です。軽量で扱いやすく、JSON形式での通信が主流のため、UIとの親和性が高い点が特長です。

一方、SOAP APIは、金融系や大規模な企業システムなど、厳密なセキュリティやトランザクション制御が求められるケースに向いています。標準仕様に従うことで信頼性の高い通信が可能になるため、レガシーシステムとの連携や業務の安定性を重視する場面で選ばれています。選定時には、セキュリティ、拡張性、開発効率のバランスを見極めることがポイントです。


REST APIの基本的な設計ルール

REST APIを効果的に活用するには、一定の設計ルールに基づいた実装が重要です。設計が整理されていないAPIは、開発や保守の際に混乱を招きます。ここでは、リソース設計、HTTPメソッドの使い分け、ステータスコードやレスポンス設計といった基本ルールについて解説します。

リソース設計とエンドポイント命名の考え方

REST APIでは、URLがリソースを明確に表すように設計します。リソースとは「ユーザー」「商品」「注文」など、アプリケーションの対象となるデータです。エンドポイントの命名には一貫性と可読性が求められ、複数形を使うのが一般的です(例:/users、/products)。

さらに、特定のリソースを指定する場合にはIDをパスパラメータとして使用します(例:/users/123)。動詞は使わず、「データの状態」を示す表現にします。こうした命名により、APIの利用者は直感的に使い方を理解できるようになります。また、階層構造を用いて関連リソースを表すことで、設計の整合性が高まります。

【命名の具体例】

操作内容エンドポイント例説明
ユーザー一覧取得GET /usersすべてのユーザー情報を取得
ユーザー登録POST /users新規ユーザーを作成
特定ユーザーの取得GET /users/123IDが123のユーザーを取得
ユーザー情報の更新PUT /users/123IDが123のユーザー情報を更新
ユーザーの削除DELETE /users/123IDが123のユーザーを削除
特定ユーザーの注文一覧GET /users/123/orders特定ユーザーの注文履歴を取得
特定注文の詳細取得GET /orders/456注文ID 456の注文詳細を取得

こうした命名規則を採用することで、APIの一貫性が保たれ、フロントエンドや外部利用者にとっても理解しやすい設計となります。

HTTPメソッド(GET/POST/PUT/DELETE)の使い分け

REST APIでは、HTTPメソッドを適切に使い分けることで、リソースに対する操作を明確に表現します。メソッドの選定が正確であれば、APIの一貫性が保たれ、利用者にとっても直感的なインターフェースになります。

GET:リソースの取得(副作用なし) 主に情報を「取得」する目的で使用します。データの変更は伴いません。
例:ユーザー一覧の取得

GET /users
レスポンス例(JSON) JSON
[
{ "id": 1, "name": "佐藤", "email": "[email protected]" },
  { "id": 2, "name": "鈴木", "email": "[email protected]" }
]

POST:新規リソースの作成 新しいリソースの登録時に使います。同じリクエストを複数回送ると、同じデータが重複して登録される可能性があります(非冪等)。
例:新規ユーザーの作成

POST /users
リクエストボディJSON
{
  "name": "高橋",
  "email": "[email protected]"
}
レスポンスJSON
{
  "id": 3,
  "name": "高橋",
  "email": "[email protected]"
}

PUT:既存リソースの更新(全体置換) 指定したリソースIDに対し、全体を上書きする形で更新します。対象が存在しない場合は新規作成されることもあります(冪等)。
例:ID=1のユーザー情報を更新

PUT /users/1
リクエストボディJSON
{
  "name": "佐藤太郎",
  "email": "[email protected]"
}
レスポンスJSON
{
  "id": 1,
  "name": "佐藤太郎",
  "email": "[email protected]"
}

DELETE:リソースの削除 指定されたリソースを削除する操作に使います。
例:ID=1のユーザーを削除

DELETE /users/1
レスポンスJSON
{
  "message": "User deleted successfully."
}

ステータスコードとレスポンスの設計ベストプラクティス

レスポンス設計では、HTTPステータスコードによって「処理結果」を明確に伝えることが重要です。単に成功か失敗かを示すのではなく、より具体的な状態を返すことで、フロントエンド側の実装やエラー対応が容易になります。

また、レスポンスボディはJSON形式が一般的であり、とくにエラー時には、エラーコード・メッセージ・詳細情報などを含めることで、デバッグ効率やユーザーへの通知品質が向上します。以下に、実際のステータスコードの使い分けと、エラーメッセージ設計のコツを紹介します。

200系、400系、500系の使い方

HTTPステータスコードは、状況に応じて次の3分類で適切に使い分けることが基本です。

200系(成功系) 処理が正常に完了したことを示します。
200 OK:一般的な成功レスポンス 例

GET /users/123
HTTP/1.1 200 OK
{
  "id": 123,
  "name": "田中太郎"
}

201 Created:新規リソースの作成成功時 例

POST /users
HTTP/1.1 201 Created
{
"id": 124,
  "name": "佐藤花子"
}

400系(クライアントエラー) リクエストに誤りがある場合に返されます。
400 Bad Request:パラメータ不備など 例

POST /users
HTTP/1.1 400 Bad Request
{
  "code": 4001,
  "message": "入力値が不正です",
  "details": "emailフィールドが空です"
}

404 Not Found:指定リソースが存在しない 例

GET /users/999
HTTP/1.1 404 Not Found
{
  "code": 4004,
  "message": "ユーザーが見つかりません",
  "details": "ID:999に該当するユーザーは存在しません"
}

500系(サーバーエラー) サーバー側で予期せぬエラーが発生した場合に使用します。
500 Internal Server Error:汎用的なサーバー障害 例

GET /users
HTTP/1.1 500 Internal Server Error
{
  "code": 5001,
  "message": "システムエラーが発生しました",
  "details": "データベース接続に失敗しました"
}

正確なステータスコードの返却は、APIの信頼性とトラブル対応力を大きく向上させます。

エラーメッセージ設計のコツ

エラーメッセージは、単に「エラーが発生しました」と返すのではなく、「なぜ」「どこで」「どうすればよいか」を伝える構造にすることがポイントです。フロントエンド側のハンドリングや、エンドユーザーへの表示、運用者のログ分析に有効です。

エラーメッセージ構成例(JSON)

{
"code": 4001,
  "message": "入力値が不正です",
  "details": "emailが未入力です"
}
  • code:アプリケーション独自のエラー識別子 例:4001(必須パラメータ未入力)/5001(DB接続エラー)
  • message:ユーザー向けの簡潔な説明文 例:「入力値が不正です」「指定されたユーザーが存在しません」
  • details:開発者・管理者向けの技術的な補足情報 例:「emailフィールドが空です」「usersテーブルとの接続に失敗しました」

このように構造化されたレスポンス設計を行うことで、UI側のエラー表示処理も簡潔かつ的確になり、運用保守の品質も向上します。MLOpsやAPI連携が増える現代においては、こうした設計思想がプロジェクト成功の鍵を握ります。

REST APIの利用方法とポイント

REST APIは、設計ルールを守るだけでなく、正しい利用方法と実装手順を理解することが重要です。ここでは、実際にAPIを使ってデータをやり取りする方法と、サーバー側でのAPI実装手順、さらに注意すべきポイントについて解説します。

APIの利用方法

REST APIの利用は、HTTPリクエストを通じて行います。主に使用されるのは、curlコマンドやブラウザベースのツール(例:Postman)、フロントエンドからのJavaScriptによるFetch APIなどです。

たとえば、GET /users/1のようにURLにリソースを指定してリクエストを送ると、サーバーから該当するユーザー情報がJSON形式で返されます。また、認証が必要な場合は、ヘッダーにトークンを含める「Bearer認証」などが使われます。

レスポンスとしては、HTTPステータスコードとJSON形式のボディが返され、API利用者はそれをパースして処理に利用します。APIドキュメントを確認しながら、正しいパラメータやリクエスト方法を選ぶことが大切です。

実装時のポイント・注意点

REST APIは、社内外のシステム連携やフロントエンドとの通信の中核を担うため、設計・実装の質がサービス全体の信頼性やユーザー体験に大きく影響します。そのため、開発初期段階から「統一性」「安全性」「パフォーマンス」を意識した実装が求められます。そこで、以下に示すポイントを押さえることで拡張性が高く、保守しやすいAPIを実現できます。

  • 一貫したエンドポイント設計:命名規則やパス構成を統一する
  • 入力バリデーション:不正なリクエストを防ぐために必須
  • エラーハンドリング:例外時に明確なエラーコードとメッセージを返す
  • セキュリティ対策:認証やアクセス制御を正しく実装
  • パフォーマンスの考慮:不要なAPI呼び出しを避け、キャッシュを活用

これらを守ることで、利用者にとって使いやすく、保守性の高いAPIを実現できます。

まとめ

REST APIとは何か、その仕組みや設計思想を理解することで、システム連携やアプリ開発がよりスムーズになります。SOAPとの違いや設計・実装・運用まで一通り理解すれば、API活用力がぐっと高まります。ぜひ本記事を実務にお役立てください。

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