現代のデータ駆動型社会において、企業は膨大なデータを効果的に活用することが競争力の源となっています。一方、「さまざまなシステムが社内に散在していて大変」「データの整形に工数がかかっている」といった組織も多いのではないでしょうか。
そこで、ETL(Extract, Transform, Load)プロセスが重要な役割を果たします。ETLによって、異なるソースから得られたデータが統一されるかつ、品質の高いデータへと変換されるのです。
その際、Google Cloud Platform(GCP)を活用することによって、ETLツールをスムーズに導入することが可能です。
この記事では、まずETLの基本的な概念とそのプロセスを詳しく解説します。また、Google Cloud Platform(GCP)の概要と、GCPが提供するETL関連ツールについて紹介します。
本記事を通じて、GCP上でのETLプロセスの基本から応用までを理解し、実際の業務に活用について学んでいただければ幸いです。
ETLの基本的な概念
データ利活用を促進していくにあたってさまざまなツール・サービスが導入され、データもそれらのツール・サービスに散在してしまっている組織も多いのではないでしょうか。社内に存在するデータを効果的に活用するためには、データソースをデータベースに連携し、一元的に管理する必要があります。
そこで重要となるのが、ETL(Extract、Transform、Load)です。データ連携においてETLは、異なるシステムやフォーマットのデータを統合し、そのデータを分析や意思決定に適した形に整える役割を果たします。
本セクションでは、ETLの各フェーズの具体的な内容と、ETLを行う4つのメリットを解説します。
ETLのプロセス
ETLは、データを扱う際の基盤的なプロセスです。ETLプロセスは、大きく三つのフェーズに分かれています。
抽出
第1フェーズの「抽出(Extract)」では、異なるデータソースから必要なデータを取り出します。収集されるデータのソースとしては、オンプレミスのデータベース、クラウドストレージ、Web API、レガシーシステムなど多岐にわたります。
たとえば、ECサイトを運営している場合、販売履歴、顧客情報、マーケティングキャンペーンのデータなど、複数のデータソースからデータを収集したいと考えるでしょう。
データの種類が多ければ、そのデータはJSONやCSVファイルなどの異なる形式で保存されていることも多くなるため、まずはそれらを一箇所に集める必要があります。この際に用いられるのが、抽出プロセスです。
重要なのは、データの正確性と完全性を保ちながら、必要なデータを迅速かつ効率的に取得することです。Google Cloud Platform(GCP)では、BigQueryやCloud Storage、Cloud SQLなどのサービスを使って、多様なデータソースからデータを簡単に抽出できます。
データの抽出時には、データソースの信頼性を確認し、不正確なデータや欠損データが含まれていないかをチェックすることが重要です。
変換
第2フェーズの「変換(Transform)」では、抽出したデータをデータベースに書き出すため、一定の規則や形式にしたがって変換・加工します。
一般的には、以下の操作が行われます。
- データクレンジング
データの誤りや欠損値を修正し、データ品質を向上させる工程です。住所データの表記ゆれ(“東京都渋谷区” と “渋谷区”)や半角/全角を統一したり、重複データを除去したりします。 - データマッピング
異なるデータソースの項目を対応づけ(マッピング)する工程です。CRMの「顧客ID」とERPの「ユーザーID」が同一のものを指す場合、それらを統一して一貫した形式に変換します。これにより、異なるシステム間でデータを正しく連携できるようになるのです。
これらのプロセスを経ることで、データ品質を向上させることができ、結果として、データ分析の精度や意思決定のスピードの向上につながります。
データ変換の実践プロセスについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
格納
第3フェーズの「格納(Load)」は、変換されたデータを必要としているシステムに格納するプロセスを指します。変換したデータを保存するシステムとしては、データベース、データレイク、データウェアハウス(DWH)などが挙げられます。
このプロセスでは、データが正しい場所に、適切なフォーマットで保存されているかどうかを確認する必要があります。たとえば、顧客情報などの機密性の高いデータが含まれている場合、それをセキュアなDWHに保存することが求められます。
また、ロードの際には、データの整合性を保つために、インデックスの作成やリレーションの定義なども行われます。
ETLを行う4つのメリット
ここでは、ETLを導入することで得られる4つの主なメリットについて詳しく見ていきましょう。
一貫性と信頼性を確保できる
ETLプロセスの一つの大きなメリットの1つは、データの一貫性と信頼性を確保できることです。前述の通り、多種多様なシステムから収集されたデータは、形式や内容が異なることが多く、そのままでは信頼性のある情報として利用することが難しい場合があります。
そのため、ETLプロセスを通じてデータを標準化することで、データの一貫性と信頼性が確保されるのです。
一貫性が確保されることで、データの信頼性が向上します。それによって、ビジネスインテリジェンスやデータ分析において、正確で一貫した結果を得ることができます。その結果、企業の意思決定がより確実なものとなり、経営リスクの軽減にもつながります。
分析の精度を向上できる
データクレンジングと標準化が行われたデータは、より精度の高い分析を可能にします。
信頼できるデータは、BIツールや機械学習モデルにとって非常に重要です。データの信頼性が欠如していると、分析結果が不正確になり、誤った意思決定を招く可能性があります。
たとえば、GCPのデータ分析ツールを利用すれば、ETLによって整理された高品質なデータをリアルタイムで活用し、精度の高い予測分析や意思決定を支援することが可能です。
データの標準化を行える
部署・部門によって異なるシステムを使用している場合、データの書式や列の並び、データの入力規則などがそれぞれで異なりがちです。このままでは、組織内にさまざまなデータが蓄積されていたとしても、組織横断のデータ分析やAIの導入、業務の自動化などにあく影響を及ぼす可能性があります。
そこで、ETLによるデータの標準化が効果的です。蓄積されたデータをETLプロセスに適用させれば、異なるシステムで管理されていたデータも、統一されたフォーマットに変換できます。
これにより、データの互換性を確保でき、DX推進のための土台が磐石になります。結果として、組織横断のデータ分析やAIの導入など、よりステップアップしたデータの利活用が実施できるのです。
データセキュリティを強化できる
ETLプロセスは、データの移動や変換において、セキュリティの強化を図る重要な機能を担います。ETLプロセスを正しく管理することで、データセキュリティが強化され、データ漏洩や不正アクセスのリスクが大幅に軽減されるのです。
ETLツールは、データの暗号化、アクセス制御、ログ記録などのセキュリティ機能を備えており、データの安全性を確保します。とくに、GCPのセキュリティ機能を利用すれば、データの移動や処理の際に高いセキュリティ基準を維持しつつ、機密情報の漏洩リスクを最小限に抑えることが可能です。
さらに、ETLプロセスを通じて、データがコンプライアンス要件に適合するように管理することも可能です。GDPR(一般データ保護規則)やHIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)など、法的規制に準拠するためのデータ管理が求められる場合、ETLはその一助となります。
GCP(Google Cloud Platform)とは
Google Cloud Platform(GCP:旧称。現在の正式名称は「Google Cloud」。この記事では便宜的にGCPと呼びます)は、Googleが提供するクラウドサービスです。データストレージ・データ処理・機械学習・ネットワーキング・セキュリティなど、ビジネスに必要なツールを一元化し、企業のIT運用を簡素化します。
多くのITインフラサービスの中でも、GCPは、そのスケーラビリティと信頼性が特徴と言えます。提供元であるGoogleの強力なインフラを基盤としているため、組織はリソースを迅速かつ効率的にスケールアップできます。
また、GCPは高度なデータセキュリティを提供しており、安全にクラウド上にデータを保存・処理することが可能です。さらに、ビッグデータ分析や機械学習のツールも提供しているので、企業がデータに基づいた迅速かつ効果的な意思決定を行うのをサポートします。
GCPは、PaaS、IaaS、SaaSといった多様なサービスを提供しています。そのため、自社のニーズに合ったサービスを選び、統合することで、効率的なクラウドインフラを構築できます。
とくに、ビッグデータの処理や分析に強みを持つGCPは、データ駆動型の意思決定を支援するための強力なツールを提供しています。
GCPに含まれるETL関連ツール5選
GCPには、データの抽出、変換、ロード(ETL)を効率的に行うためのツールが豊富に揃っています。これらのツールは、複雑なデータ処理をシンプルにし、リアルタイムでのデータ統合や分析を可能にします。
以下では、GCPで利用可能なETL関連ツールの中でも注目すべき5つのツールについて紹介します。
Dataflow
Dataflowは、GCPで提供されるフルマネージドなデータパイプラインサービスで、Apache BEAM(Batch + strEAM)がベースとなっています。
Dataflowの強みは、バッチ処理とストリーミング処理の両方に対応している点です。リアルタイムデータ処理と定期的なバッチ処理を同じプラットフォームで実行できるため、柔軟なデータ処理が可能となります。
また、サーバーレス環境で動作し、ジョブの実行中にリソースを動的にスケーリング可能です。そのため、データ量に応じた効率的にリソースを管理でき、大規模なデータ処理でもパフォーマンスを維持しつつ、コストを抑えられます。
さらに、Dataflow TemplatesというGoogleが提供するテンプレートがあるため、この機能を活用することによって、データパイプラインの迅速な構築が可能です。
Dataprep
Dataprepは、GCPで提供されるデータのクレンジングおよび準備を行うためのツールです。ノーコードで利用できるため、技術的な知識がなくても、直感的な操作でデータの変換やクレンジングが行えます。
また、データの可視化やプロファイリング機能を備えており、データの品質を高めるためのツールとして非常に有用です。大規模なデータセットのクレンジングが必要な場合、Dataprepを使用することで、短時間で高品質なデータセットを作成できます。
さらに、BigQueryとシームレスに連携しているため、クレンジングしたデータをすぐに分析に利用できます。
Cloud Data Fusion
Cloud Data Fusionは、GCP内でETLとELTの両方のパイプラインを簡単に作成できるクラウドベースのデータ統合ツールです。オープンソースのコアシステムを採用しており、Googleエコシステム以外のデータソースにも対応しています。
具体的には、Salesforce・Oracle・SAP ODP・SQL Serverなどと連携可能な、150以上の事前設定されたコネクタが含まれています。
Cloud Data Fusionは、ポイント&クリックのUIを提供しているので、コーディングの必要がほとんどありません。技術的な知識が少ないユーザーでも簡単にETLパイプラインを構築し、データ統合プロセスを効率化することができます。
Pub/Sub
Pub/Subは、リアルタイムデータのストリーミング処理をサポートするメッセージングサービスです。データを、多様なGCPサービスに取り込んで配信します。Pub/Subは前述したDataflowと連携して、リアルタイムのデータ処理を効率化できるため、データの一貫性確保に役立ちます。
また、暗号化されたデータ転送と細かいアクセス制御を提供するという、優れたセキュリティも誇ります。
Pub/Subは、リアルタイム分析やマイクロサービス間のデータ連携で重宝されています。
Dataproc
Dataprocは、GCP上でHadoopやSparkなどの分散コンピューティングフレームワークを利用するための、マネージドサービスです。オンプレミスでのHadoopやSpark環境をクラウドサービスに移行したい場合、Dataprocを用いてGCS(Google Cloud Storage)との連携をすれば、データの永続化を効率化しつつクラスタの起動・停止を簡単に行えます。
クラスタの自動スケーリングや、アイドル状態のクラスタの自動削除機能を備えているため、運用コストの削減を図ることができます。
また、既存のHadoopおよびSparkのコードをほぼそのまま利用できるため、クラウドへのリフト&シフトが容易です。
GDPを利用する際の料金
GCPの料金体系は、従量課金制と呼ばれる、使用したリソースに対してのみ料金が発生する仕様になっています。そのため、コスト管理がしやすく、無駄な支出を抑えることが可能です。
また、多くのサービスには「無料枠」があるため、小規模なプロジェクトや学習目的での利用にとくにおすすめです。個人開発者やスタートアップ企業がプロトタイプを作成する際にも、無料枠を活用してコストを抑えながら、必要なインフラを迅速に構築することができます。
ただし、大規模なデータ処理や長期的なプロジェクトになると、有料プランへの移行が必要になります。料金は使用するサービスやリージョンによって異なるため、事前にGoogle Cloud Pricing Calculatorを使用してコストを見積もることをおすすめします。
GCPのETL ツールのエクスペリエンスを上げるならTROCCO®がおすすめ
ここまで解説してきた通り、GCPが提供するETLツールは非常にパワフルで、とくにGCPのエコシステム内でその効果を最大限に発揮します。しかし、さらにコストをかけずに、かつGoogleに依存しないETLツールを用いたい場合には、TROCCO®がおすすめです。
TROCCO®なら、ノーコード・ローコードでETL機能をはじめとした多くの機能をサポートしています。また、多様なデータソースとターゲットシステムを簡単に接続し、ETLプロセスを迅速に構築できる点が大きな特徴です。
Googleのほか、FacebookやX(旧Twitter)、Instagram、TikTokなどの各種SNSやkintone、Salesforceなどの今を時めくローコードツールなどにも対応したコネクタが用意されています。
そのため、TROCCO®を活用できればスモールに、より多くのビジネスチャンスを掴むことができます。それ以外にも、データマート機能やデータカタログ機能などを備えているため、データの民主化に寄与します。
まずは、クレジットカード不要のフリープランをお試しください。
まとめ
今回は、ETLの概要やETLを活用するメリット、GCPに含まれるETLツールなどについて解説しました。
GCPはセキュアでパワフルなサービスですが、料金体系がやや複雑であり、場合によっては多額のコストがかかることもあります。しかし、TROCCO®は分かりやすい料金体系であるため、想定外のコストがかかりづらく、スモールにシステムを構築することが可能です。
