社内に散らばったデータをうまく活用できずに困っていませんか?売上管理、顧客管理、在庫管理と、それぞれ別々のシステムで動いているデータを組み合わせて分析したいけれど、手作業では限界がある。そんな課題を解決するのがETLです。この記事では、「ETLって何?」という基本的な疑問から、実際にどう使えばいいのかまで、分かりやすく解説します。

ETLとは?

「ETL」とは、Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)の頭文字を取ったもので、データ統合のプロセスを指します。企業内に散在している複数のデータソースから必要なデータを抽出し、分析に適した形に変換し、最終的にデータウェアハウスやデータレイクといった目的地に格納する一連のプロセスを実現します。

ETLの各役割

ETLの主な役割は、バラバラに存在しているデータを統合し、企業の意思決定に役立つ「信頼性の高いデータ」に変えることです。これにより、ビジネスの状況を多角的に分析し、経営戦略の策定や業務改善を支援します。

〇Extract(抽出)

複数のデータベース、ファイル、アプリケーションなど、さまざまなデータソースから必要なデータを取り出す最初の段階です。この工程では、どのデータを、どのようなタイミングで抽出するかを決定します。

〇Transform(変換)

抽出したデータを、分析しやすいように整理・加工する最も重要な段階です。データの重複を削除したり、欠損値を補完したり、形式や単位を統一したりします。この変換によって、データの品質と一貫性が保たれ、正確な分析が可能になります。

〇Load(格納)

変換が完了したデータを、最終的な保存先であるデータウェアハウスやデータレイクに書き込む最終段階です。格納方法には、すべてのデータを入れ替える「フルロード」や、変更分のみを追加する「差分ロード」などがあり、データの量や更新頻度に応じて使い分けられます。

マルチソースからのデータ統合で得られるメリット

複数のシステムのデータをまとめることで、今まで見えなかった会社の状況が分かるようになります。たとえば、売上情報と顧客情報を組み合わせると、「この年代の人がよく買ってくれる」とか「リピート率の高いお客さんの特徴」といったことが見えてきます。在庫情報と売上を一緒に見れば、「いつ頃どの商品が足りなくなりそうか」も予測できます。部署をまたいだ情報を活用することで、コストを下げたり売上を伸ばしたりする具体的なヒントが見つかります。

ETL(ETLツール)の3つの主な機能

ETLプロセスを効果的にする場合葉、ETLツールを利用する場合が多くあります。そのETLツールの3つの主な機能に関して説明します。

多様なデータソースへの接続

データベース、ファイル(例:CSV, Excel)、クラウドサービス(例:Salesforce, Google Analytics)、Web APIなど、さまざまな場所に格納されているデータに接続し、データを抽出します。社内のシステムが複雑な場合やデータ量が膨大になる場合、差分抽出だけをする場合でも管理画面上の機能で簡単に効率的な抽出ができるようななります。

データクレンジングと品質管理

データを整理する工程では、重複したデータを削除したり、抜けている部分を補ったり、バラバラだった書き方を統一したりします。例えば、会社名で「(株)」と「株式会社」が混在していたら、どちらかに揃えます。日付も「2024/01/01」と「2024-01-01」のように違う書き方があれば統一します。おかしな数値がないかチェックする仕組みも作っておくと、後で分析するときに信頼できる結果が得られます。データの欠損値の補完、重複データの削除、誤ったデータの修正などを行い、データの品質を向上させます。

高速な書き込みとDWHへの格納

整理したデータをどこに保存するかは、何に使いたいかで決まります。きれいに整理されたデータで高速に分析したいならデータウェアハウス、色々な形のデータをとりあえず溜めておきたいならデータレイクが向いています。また、大量のデータを効率的に書き込むために、複数の処理を並行して実行したり、一括でデータを挿入したりする機能も備わっています。

ETLツール導入によるメリット

ETLツールの導入は企業のデータ活用能力を飛躍的に向上させる一方で、初期投資やスキル習得の負担も発生しますが、様々なメリットがあります。

効率的なデータ分析環境構築の実現

多くの企業では、販売データ、顧客情報、Webサイトのアクセスログなど、さまざまなデータが複数のシステムに散在しています。ETLツールは、これらの異なるソースから必要なデータを自動で抽出(Extract)し、一箇所に集約します。

ETLツールを導入することで、データの収集、加工、格納という一連の流れが自動化され、データ分析環境の構築と運用が効率化されます。

開発のスピードアップ

ETLツールの多くはGUIで操作できるため、プログラミングの知識がなくても開発を進められます。データの流れや設定を行うだけで、ツールが自動で処理を実行する仕組みになっています。

そのため、開発言語を扱える人材が社内にいなくても、ETLの導入・運用が可能です。一度作成した処理は再利用できるため、開発時間の短縮にもつながります。

開発時だけでなく、運用・保守の負担が少ないこともメリットです。GUIによって処理内容が視覚的に把握できるため、担当者の引き継ぎがスムーズになり、システムの拡張も容易に行えます。

データ統合のハードルが下がる

ETLツールを導入することで、データ統合のハードルが大幅に下がります。従来、データ統合には各プロセスを実行するための専用プログラムを構築する必要があり、データベースに深い知識を持つプログラマーやエンジニアが不可欠でした。

しかし、ETLツールは多くの場合、ノーコードまたはローコードで開発が可能です。これにより、専門的なプログラミングスキルを持つ人材がいなくても、データの流れや設定をGUI上で直感的に操作するだけで、データ統合の仕組みを構築できます。

その結果、開発作業が大幅に効率化され、専門人材の確保が難しい企業でも、迅速にデータ統合を実現できるようになります。

ETLツール選定のポイント

機能・性能面に関して

〇対応データソース

〇処理能力と拡張性

〇GUIの使いやすさ

機能・性能面では、上記3つのポイントを考慮しましょう。まず、データベースやアプリケーション、ファイル形式など、自社で利用するすべてのデータに対応しているか確認しましょう。将来的な拡張性も考慮すると安心です。

次に、データ量や処理頻度に応じた十分な処理能力があるか、データ増加に対応できる拡張性があるかを検討します。

最後に、プログラミング知識がなくても直感的に扱えるGUIの使いやすさも、運用負担を減らし、属人化を防ぐために重要なポイントです。

コストに関して

サービス利用の料金は、定額制と従量課金制が主流です。データ処理量が一定なら定額制が予算を立てやすく、変動する場合は従量課金制が適しています。

また、システム導入にかかる費用は、オンプレミス型は初期投資が大きいものの長期的なコストを抑えやすい一方、クラウド型は初期費用が安く、手軽に導入できるのが利点です。

そのため、自社の状況に合ったプランを選ぶ必要があります。

サポート体制に関して

ツールの導入時には、迅速で的確な技術サポートを受けられるか確認しましょう。特に海外製品では、日本語対応の有無やサポート時間が重要です。

また、豊富なドキュメントやチュートリアル、活発なユーザーコミュニティがあるかどうかもチェックポイントです。これらは、問題発生時の自己解決能力を高める上で非常に役立ちます。サポート体制と情報源の充実度は、ツールを円滑に利用するための鍵となります。

ETLとELTの違い

ETLとELTは、いずれもデータ統合の手法ですが、データを変換するタイミングと場所が異なります。

〇ETL (Extract, Transform, Load)
データを抽出した後、専用の処理エンジンで変換し、最終的にデータウェアハウスなどに格納します。

〇ELT (Extract, Load, Transform)
データを抽出し、まず未加工のままデータウェアハウスなどに格納します。その後、データウェアハウス内で変換を行います。

この違いにより、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。

ETLのメリット・デメリット

ETLは、データウェアハウスに格納する前にデータを整形するため、格納先の容量を節約でき、データ品質の管理がしやすいというメリットがあります。また、古いシステムとの連携やコンプライアンス要件が厳しい場合に適しています。

一方で、変換プロセスがボトルネックとなり、大量のデータを扱う場合に処理速度が遅くなることがあります。また、事前に変換ルールを詳細に設計する必要があり、柔軟性に欠ける点がデメリットです。

ELTのメリット・デメリット

ELTは、変換の前にデータを格納するため、データの取り込み速度が速いのが最大のメリットです。クラウド環境の高性能なデータウェアハウスの処理能力を活かして、大規模なデータや非構造化データも効率的に扱えます。また、分析の必要に応じていつでも自由にデータを変換できるため、柔軟性が高いのも特徴です。

しかし、変換前の生データをすべて格納するため、ストレージコストが増大する可能性があります。また、データウェアハウスに大きな負荷がかかるため、運用には注意が必要です。

どちらを選ぶべきか

どちらの手法が適しているかは、企業の状況によって異なります。

ETLは、データウェアハウスの負荷を抑えたい場合、厳格なデータ品質管理が必要な場合、またはデータ量が比較的少ない場合に適しています。

ELTは、リアルタイムに近いデータ分析が求められる場合、扱うデータ量が非常に多い場合、または柔軟な分析を行いたい場合に特に有効です。近年のクラウド技術の発展により、ELTの利用が拡大しています。

まとめ

ここまでETLについて色々とお話してきましたが、一番大切なのは「完璧を目指さずに、まず始めてみる」ことだと思います。最初は小さなプロジェクトから始めて、徐々にノウハウを蓄積することが大切です。オンプレミスかクラウドか、ETLかELTかといった選択肢はありますが、正解は会社の数だけあります。データを活用した意思決定ができるようになると、きっと今まで見えなかった改善点や成長のチャンスが見つかるはずです。

TROCCOは、これまで多くの企業様のETL導入をサポートしてきました。特にノーコードでETLパイプラインが構築できる点や、豊富なデータソース対応により、IT専門知識がなくても安心してご利用いただけます。もしETL導入でお悩みのことがあれば、お気軽にご相談ください。

TROCCO ライター

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