デジタル時代の進展に伴い、企業は膨大なデータを効率的に管理し、活用することが求められています。その中で、データの価値を最大限引き出すため、「データオーケストレーション」が注目されるようになりました。
データオーケストレーションは、企業がデータを一元管理し、効率的に活用するための包括的な手法です。データの流れを自動化し、最適化することを目的としています。
本記事では、データオーケストレーションの基本概念から具体的な実践方法、そしてそのメリットや課題について詳しく解説していきます。データを最大限に活用してビジネス成果を向上させるために、データオーケストレーションの重要性を理解しましょう。
データオーケストレーションとは
データオーケストレーションとは、複数システムで管理されたデータを収集・整理し、適切に分析できるようにするための自動化されたプロセスです。とくに、部署・部門間で散在した(サイロ化した)データを組織横断的に活用するため、ETL・分析・可視化のプロセス全体を自動化・調整することを指します。
2010年代以降のデータ活用の環境変化に伴い、データが分散した環境で収集・処理・分析されるようになったことで、データフロー全体を管理する必要性が高まりました。従来のジョブ管理ツール(ワークフローエンジン)は、主にバッチ処理のスケジューリングや実行管理を目的としていましたが、クラウドやマイクロサービスの普及に伴い、リアルタイム処理や異なるシステム間の統合が求められるようになったのです。
このような背景から、複数のデータパイプラインを適切に調整する「データオーケストレーション」の概念が登場しました。そして、それらの役割を果たすツールは、「データオーケーストレーションツール」と呼ばれます。また、汎用的にジョブ管理(ワークフロー)ツールとしての役割も担うため、「ワークフローオーケストレーションツール」とも呼ばれます。Apache AirflowやPrefectがその例です。
データオーケストレーションを行う3つの目的
この章では、データオーケストレーションを行う3つの目的について解説します。
データプライバシーを遵守するため
データプライバシーの法律遵守は、データオーケストレーションを行う大きな目的のひとつです。
GDPRやCCPAのようなデータ保護法では、データの収集、使用、保管に関する厳格なガイドラインがあります。
データオーケストレーションは、企業が各規則を遵守し、顧客がデータ収集のオプトアウトや個人データの削除を要求した際に、適切に対応できるよう支援するものです。個人情報の漏洩リスクを最小限に抑え、信頼性を向上させることができます。
データ利活用のボトルネックを取り除くため
データオーケストレーションは、データ利活用のボトルネックを取り除くための効果的な手段です。
データ利活用においてどこかにスピードを損ねる箇所があると、それが企業の意思決定のスピードにも悪影響を与えます。
そこで、データオーケストレーションが有効です。データオーケストレーションを実施すれば、データの収集、処理、配信の各段階での効率を向上させ、遅延や中断を未然に防ぐことができます。
企業はデータをタイムリーに利用できるため、迅速なビジネス戦略の実践が可能です。
データガバナンスを強化するため
データガバナンスの強化も、データオーケストレーションの重要な目的のひとつです。データガバナンスとは、データ品質、セキュリティ、および管理を保証するためのフレームワークです。
複数のシステムにまたがって分散しているデータは、データガバナンスの確立を困難にします。
そこで、データオーケストレーションは、さまざまなデータソースを一元化し、データ管理の効率化に貢献します。また、データ品質を保ちながら、データへの適切なアクセス権限を設定可能です。
データオーケストレーションによって、企業はデータガバナンスを強化し、データセキュリティとコンプライアンスを維持できるのです。
データオーケストレーションを行う3つのステップ
この章では、データオーケストレーションを効果化する3つのステップを解説します。
1. データを整理する
データオーケストレーションの最初のステップは、さまざまなソースからデータを収集して整理することです。CRMシステム、ソーシャルメディア、行動イベントデータなど、多岐にわたるデータソースが対象となります。
各データは、
- レガシーシステム
- クラウドベースのツール
- データウェアハウス
など、異なるツールやシステムに保存されている可能性があります。
データを整理し、後続プロセスのスムーズな進行へつなげましょう。
2. データを変換する
データオーケストレーションの第2ステップは、収集したデータの変換です。
このプロセスは一般に、ETL(Extract, Transform, Load)プロセスとして知られています。
たとえば、あるシステムでは日付が「January 21, 2020」と表記されている一方で、別のシステムでは「2020/01/21」のように数値形式で表記される場合があります。正確に分析を行うためには、こうしたデータの表記を統一することが大切です。
3. データのアクティベーションを行う
最終ステップはデータのアクティベーションです。
調整され、整合されたデータを下流のツールに送り、即座に使用可能にするプロセスです。
変換されたデータを基に分析を行い、ビジネスインサイトを導き出します。たとえば、分析結果をグラフやチャートとして、人が視覚的に分かりやすい形で表現する際には、BIツールが有用です。
そして分析結果を基に、ビジネスの戦略や戦術を決定し、データに基づいた具体的なアクションを実行します。これによって、企業はデータから潜在的な価値を引き出し、競争優位の確立につなげられます。
データオーケストレーションの2つの課題
データオーケストレーションは、組織内のデータ活用を最大限に引き出す重要なプロセスです。しかし、実装にあたってはいくつかの課題もあります。
ここでは、実装における2つの課題について説明します。
データのサイロ化が発生する
1つ目の課題は、データのサイロ化です。
データのサイロ化とは、データが組織内の特定の部署やシステムに隔離され、共有されていない状態です。サイロ化は、組織のデータ利用の効率を低下させ、全体的なデータの可視性と活用の妨げとなります。
このような状況が発生すると、データの一貫性が欠如し、異なる部門が異なるバージョンのデータを使用することになり、信頼性が低下します。また、データアクセスの制限により、必要な時に必要なデータにアクセスできないことで、業務効率の低下を招きます。
データオーケストレーションは、異なるソースのデータを統合することでサイロ化の解消を試みます。しかし、異なるデータフォーマットやプラットフォーム間の互換性の問題は、依然として実装にあたって大きな壁となるでしょう。
データの品質が求められる
もう1つの課題は、データ品質の維持です。
データオーケストレーションによって異なるソースからデータが集められる際、データの一貫性、正確性、信頼性の高さが求められます。
不正確で不完全なデータがシステムに入ると、分析の結果に悪影響を与え、誤った判断を引き起こす可能性があるためです。また、最新のデータが使用されていない場合、古い情報に基づいた意思決定が行われるリスクもあります。
データクレンジングや検証プロセスを適切に管理し、高品質のデータを保証することが、データオーケストレーションの実施に不可欠です。
データオーケストレーションツールを使う4つのメリット
この章では、データオーケストレーションツールがもたらす、おもな4つの利点を解説します。
ワークフローを自動化できる
データオーケストレーションツールを使用することで、複雑なワークフローの自動化が可能になります。
手動でのデータ処理には多大な時間と労力がかかり、エラーの発生リスクも高まります。
そこで、データオーケストレーションツールによる、ワークフローの自動化が重要です。ワークフローの自動化により、データの流れがスムーズになり、データアクセスと活用のスピードが向上します。
これにより、データエンジニアは日々のルーティン作業から解放され、より価値の高い作業に集中できるようになるでしょう。また、データ処理の各プロセスが自動化されるため、手作業によるエラーを減らし、プロセスの効率を大幅に向上させます。
データのサイロ化を解消できる
データオーケストレーションツールは、データのサイロ化の解消にも大いに役立ちます。
多くの企業では、異なる部門やチームが独自のデータセットを管理し、情報が組織全体で共有されないために、データのサイロ化が発生しています。これによって、データの重複やアクセスの非効率性を招き、迅速かつ正確な意思決定が阻害されるのです。
そこで、データオーケストレーションツールを利用することで、隔離されたデータを一元的に管理します。これにより、データが組織全体で共有され、アクセスが容易になるため、迅速な分析、意思決定が可能になるのです。
また、データの重複が解決されれば、データ品質の向上が期待できます。これにより、信頼性の高いデータに基づいて戦略を立案できるようになるでしょう。
データ利活用の効率が向上する
データオーケストレーションは、データ収集、整理、変換などの繰り返し行われる手作業を削減し、各プロセスの速度と正確性を向上させます。
このように、日頃の単純作業が自動化されれば、データエンジニアやアナリストがより価値のある作業に集中できるようになります。したがって、データ利活用の質・効率ともに向上が期待できるでしょう。
また、自動化によってデータパイプラインの保守・運用が容易になれば、エラーが減少し、全体的な運用効率も向上します。
データの可視性を高められる
データオーケストレーションツールを使用することで、組織全体のデータフローに関する可視性(データリネージ)が大幅に向上します。データの流れと処理状態を、リアルタイムで追跡できるためです。
データの可視性が高まると、どのデータがどのように使用されているかを把握することができます。これにより、問題が発生した場合に迅速に対応できるのです。
また、データの可視性が向上することで、データ品質の保持が容易になります。これにより企業は、データを基にした意思決定を迅速かつ正確に実践できるようになるのです。
データオーケストレーションならTROCCOがおすすめ
現在では、AirflowやPrefect、Argoなどがデータオーケストレーションツールとして有名ですが、それらのツールを導入しなくても補える場合があります。ただし、データオーケストレーションを実践するためには、以下の機能を備えているツールが必要となります。
- データの抽出・変換・書き出し機能(ETL機能)
データソースからデータを抽出し、分析可能なフォーマットに整形してターゲットに取り込む機能 - データカタログ機能
効率的なデータマネジメントを目的とし、メタデータを管理するシステム
- プロセスコントロール機能
定義済みのパイプラインを、特定の時間やイベントで実行する機能や、それがエラーとなった時に再実行を行う機能
これらの機能を全て備えているのが、ETLツールである「TROCCO」です。
TROCCOはデータの収集、変換、統合を一元管理し、効率的なデータオーケストレーションを実現する強力なツールです。その直感的なユーザーインターフェースにより、技術的な専門知識がなくても簡単に操作できます。
TROCCOのETL(Extract, Transform, Load)機能は、データオーケストレーションの中核を成します。この機能により、データの抽出、変換、ロードのプロセスを自動化し、データ処理の効率と正確性を大幅に向上させます。
- データの抽出:
TROCCOは多様なデータソースに対応しており、データベース、クラウドサービス、アプリケーションからデータを簡単に抽出できます。これにより、異なるシステム間でのデータ統合がスムーズに行えます。
- データの変換:
抽出されたデータは、ビジネスルールや要件に基づいて変換されます。TROCCOは強力なデータ変換機能を持ち、データのクリーニング、フィルタリング、集約、正規化などを自動的に実行します。これにより、データの一貫性と信頼性が向上します。 - データの格納:
変換されたデータは、リアルタイムでターゲットシステムにロードされます。これにより、データの即時利用が可能となり、迅速な意思決定を支援します。
TROCCOはETL機能だけでなく、ジョブ管理機能やデータチェック機能なども備えています。これにより、複雑なデータパイプラインを簡単に設定・管理でき、データエンジニアは時間のかかる手動作業から解放されます。また、セキュリティ対策も万全で、データの暗号化やアクセス制限などの機能を提供し、企業の大切なデータを安全に管理します。
TROCCO専任のサポートチームが常に対応しており、障害発生時にも迅速にサポートを提供します。データ管理の効率化と自動化を求める企業にとって、TROCCOは最適な選択肢です。
まとめ
本記事では、データオーケストレーションの基本概念とその重要性について解説しました。
データオーケストレーションは、異なるシステムやアプリケーション間でデータを効率的に移動、整理、活用する手法です。データオーケストレーションの戦略的な実施は、ビジネスの目的達成に欠かせない要素といえるでしょう。
またデータオーケストレーションは、ETLツールとデータカタログを組み合わせることでさらに強化されます。データの品質、アクセスのしやすさ、意思決定の効率などが大幅に向上するのです。
TROCCOは、ETLツールとして、データオーケストレーションに欠かせない存在となります。また、データカタログ機能やワークフロー機能も提供しており、効率的なデータ活用を全面的にサポートします。
また弊社primeNumberでは、Data Orchestration Cloud 構想を発表しました。こちらは、一連のデータ利活用のプロセスを自動化し、一元的に管理・運用できるよう、推進サポートを行うことを表明した構想です。
データオーケストレーションの実践に関する課題を、プロダクトとプロフェッショナルサービスの両側面からサポートしております。データオーケストレーションの導入を検討している企業は、TROCCOを提供するprimeNumber社に一度ご相談ください。ご要望に合わせた提案を行い、ビジネスニーズに合ったデータオーケストレーション構築を支援します。。
