近年、企業活動においてデータの重要性はますます高まっています。業務効率化、顧客体験向上、意思決定の迅速化など、あらゆる場面でデータ活用は不可欠です。しかし、多くの企業ではシステムごとにデータが分断されており、十分に活用できていない現状があります。

こうした課題を解決する手段として注目されているのがデータ連携です。本記事では、データ連携の概要や効果的な手法、メリット、そして導入が進まない理由までを分かりやすく解説します。

データ連携とは?

データ連携とは、異なるシステムやツール、データベース間でデータを自動的にやり取りし、情報の一貫性や整合性を保つ仕組みのことです。企業内では販売管理、顧客管理、会計など多種多様なシステムが使われており、それぞれにデータが存在します。これらを個別に扱っていては、情報の活用や分析に大きな手間がかかります。

データ連携を行うことで、必要な情報をリアルタイムに取得・統合し、業務効率や意思決定の精度を高めることが可能になります。本記事では、データ連携がなぜ重要なのか、導入による効果や直面しやすい課題、具体的な進め方や活用ツールについて詳しく解説していきます。

データ連携がされていないと生じる問題

システム間のデータが連携されていないと、業務上さまざまな問題が発生します。以下で主な課題を解説します。

1. システム間のデータ不整合

複数のシステムが独立して運用されている場合、同一のデータに内容の差異が生じることがあります。たとえば、顧客管理システムと営業支援システムで住所や連絡先が異なっていれば、正確な対応やサービスの提供が困難になります。これは、それぞれのシステムで情報が個別に更新されることによって、整合性が保てなくなるためです。

データ連携が実現されていれば、一方のシステムで変更された情報が他方にも反映され、こうした情報のズレを未然に防ぐことができます。整合性のないデータで業務を進めると、ミスや顧客クレームの原因となる恐れがあります。

2. データの組み合わせによる分析の困難さ

部門ごとに分断されたシステム環境では、データの統合が困難です。そのため、売上データと顧客属性データを組み合わせたクロス分析や、業務全体を見渡す経営分析ができません。たとえば、マーケティング部門が販売履歴とWeb行動データを組み合わせて分析したい場合でも、システムがつながっていなければ、CSV出力や手作業による集計が必要になります。

これは、時間と工数の無駄につながり、迅速な意思決定を妨げる要因になります。データ連携が整備されていれば、リアルタイムでの集計やダッシュボードによる可視化が可能となり、より高度な分析が実現します。

3. データの所在が不明になる

社内に複数のシステムが乱立していると、必要な情報がどこに格納されているのか分からなくなることが頻発します。たとえば、顧客に関するトラブルが発生した際に、「問い合わせ履歴はCRM」「契約情報は販売管理システム」「請求情報は会計ソフト」といったように、情報の所在を探すだけで多くの時間を費やしてしまいます。

これは、データがシステムごとに分散され、連携が取れていないことが原因です。情報の所在が不明確なままでは、業務効率が著しく低下し、対応の遅れや判断ミスにつながります。データ連携を実現することで、必要な情報へ迅速にアクセスできる環境が整います。

4. 手作業によるヒューマンエラーが発生しやすい

システム間でデータ連携が行われていないと、情報の受け渡しを人の手で行わざるを得なくなります。たとえば、営業担当者がExcelで出力した顧客リストを別システムに手入力する場合、入力ミスや転記漏れが発生しやすくなります。

こうしたヒューマンエラーは、顧客対応のミスや請求トラブル、在庫管理の誤りなど、重大な問題の引き金になります。さらに、手作業による作業は多くの時間を要し、担当者への負担も大きくなります。自動で情報が流れるデータ連携を導入すれば、こうしたミスを未然に防ぎ、作業の正確性とスピードを確保できます。

データ連携がもたらす3つのメリット

データ連携を行うことで、業務効率化や分析力の向上など、多くのメリットを享受できます。

1. 業務プロセスの効率化

部門やシステム間の情報共有がスムーズになります。例えば、営業部門が入力した顧客情報がリアルタイムで会計システムに反映されることで、二重入力や確認作業が不要になり、業務の無駄を削減できます。これにより、業務プロセスの全体的な最適化と生産性向上が期待できます。

2. 散在するデータの一元管理

企業内に散在するデータを一箇所に集約し、一元管理できます。これにより、情報の重複や漏れを防ぎ、必要なデータへ迅速にアクセスできる環境が整います。全社で統一されたデータ基盤は、組織全体の情報資産の価値を高める上で不可欠です。

3. データの活用と分析の向上

複数のシステムから集めた情報を統合することで、より多角的な分析が可能になります。販売データと顧客データ、Web行動データを組み合わせれば、顧客の購買傾向やニーズを的確に把握できます。リアルタイムでの可視化と合わせ、意思決定のスピードも大幅に向上します。

データ連携が進まない理由と解決策

多くの企業がデータ連携の必要性を感じているにもかかわらず、導入が進まない背景にはいくつかの課題があります。

1. データのフォーマットが揃っていない

データ連携が進まない大きな要因の一つが、システムごとにデータ形式が異なることです。たとえば、顧客情報の「氏名」が「姓+名」か「名+姓」かで統一されていなかったり、日付フォーマットが「YYYY/MM/DD」と「MM-DD-YYYY」で異なっていたりすることがあります。こうしたフォーマットの違いは単純な連携では整合性を保てず、連携後の活用にも支障をきたします。連携を行う前には標準化や前処理の工程が必要になり、その準備が手間と時間を要するため、結果として導入が遅れる要因となります。

項目パターンA(例1)パターンB(例2)備考
氏名表記姓+名(山田 太郎)名+姓(太郎 山田)和文・英文混在、表示順の違いに注意が必要
日付形式YYYY/MM/DD(2025/04/10)MM-DD-YYYY(04-10-2025)地域・システム依存が大きい
電話番号形式090-1234-5678+81-90-1234-5678国番号の有無、ハイフンの位置が異なる
郵便番号123-45671234567ハイフンの有無で形式が不一致になることがある
性別表記男・女M・F または Male・Female英語/日本語・略語表記の違いがある
数値単位10,000(カンマあり)10000(カンマなし)数値の区切り方や小数点記号にも違いがある
国名表記日本Japan または JP国コード、英語表記、日本語表記で揺れがある
フラグ表記〇/× または 有/無true/false または 1/0論理値の表現方法がシステム間で統一されていない

2. オンプレミス型環境によるデータ連携へのハードル

古くからの企業システムではオンプレミス型で運用されているケースが多く、これがデータ連携の障壁となることがあります。オンプレミス環境ではシステムごとのカスタマイズが進んでおり、外部ツールとの接続やAPI連携が困難な場合も少なくありません。

クラウドサービスのような柔軟なインターフェースが存在しないため、他のシステムとつなぐには専門知識が必要な開発が必要になります。その結果、データ連携を進めたくても、技術的な難しさやコスト、工数の問題から断念するケースが見られます。このような環境では、まずは基盤の見直しが求められます。

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3. 手作業でのデータ業務ができてしまっている

多くの現場では、データの出力、集計、登録といった業務が「手作業」で対応できてしまう状態にあります。一見すると柔軟な対応が可能なように思われますが、実際には非効率で属人化しやすい仕組みです。

とくにExcelやCSVファイルによる運用が中心になると、ミスや遅延が発生しやすくなり、担当者への負荷も増大します。それでも「今のやり方で問題なく運用できている」と感じてしまうことで、データ連携の必要性を見過ごしてしまうのです。現状の手法には限界があると認識し、自動化・標準化の重要性に気付くことが、導入への第一歩となります。

データ連携のフロー

データ連携を実現するためには、データの取得から変換、格納、可視化までの一連のプロセスを設計・実行する必要があります。以下に各ステップを詳しく解説します。

データを取得する

最初のステップは、連携対象となるデータを取得することです。データは社内システムや外部サービス、センサーなど、さまざまなソースに分散して存在しています。APIやファイル転送、データベース接続などの手法を用いて、必要な情報を安定的に取得します。取得方法はソースによって異なるため、接続先の仕様を正確に把握することが重要です。

データを変換する

取得したデータは、そのままでは利用できないケースが多く、形式の違いや不要な情報が含まれていることもあります。そこで必要なのがデータ変換です。具体的には、日付フォーマットの統一、文字コードの変更、必要な項目の抽出、欠損値の処理などを行います。目的に応じた整形処理を施すことで、次のステップで扱いやすいデータに仕上げます。

データを格納する

変換処理を終えたデータは、分析や活用のために適切な場所へ格納します。一般的にはデータウェアハウスやクラウドストレージ、業務システムのデータベースなどが使用されます。格納時には、アクセス権限の管理やセキュリティ対策も重要です。保存形式や更新頻度に応じた最適なストレージ設計を行うことで、安定した運用が実現します。

データ連携を実現する主要ツール

1. EAIツール

EAI(Enterprise Application Integration)ツールは、企業内の異なる業務システムをリアルタイムで連携するためのツールです。APIやメッセージングを活用して、各システム間のデータ連携を自動化します。主に基幹系システムや業務アプリケーション間の統合に用いられ、リアルタイム性の高いデータ連携を実現できます。

2. ETLツール

ETL(Extract, Transform, Load)ツールは、データを抽出・変換・格納する一連の処理を担い、大量データの統合や整備を効率的に行うための重要なソリューションです。とくに分析やレポート作成を目的としたデータ基盤の構築において、多くの企業で導入が進んでいます。

国産ETL/ELTツールであるTROCCOは、ノーコードで直感的に操作できるインターフェースと、多様なデータソースとの接続性を強みに、導入企業から高い評価を得ています。Amazon RedshiftやBigQueryなどのDWHとの連携機能が充実しており、定期的なバッチ処理や差分転送、ジョブ監視、データフローのバージョン管理にも対応。エンジニアでなくても扱いやすく、スピーディにデータパイプラインを構築することが可能です。

また、IP制限や暗号化転送などセキュリティ面にも配慮されており、金融・流通業界など高い要件が求められる現場でも安心して利用できます。TROCCOは、効率的なデータ整備と信頼性の高いデータ基盤運用を支える強力なETLツールとして、データ活用を推進する企業の中核を担っています。

3. RPAツール

RPA(Robotic Process Automation)ツールは、定型的なPC操作をソフトウェアロボットにより自動化するツールです。ファイルのダウンロードやデータのコピー&ペーストなど、人手で行っていた作業を代替します。直接的なデータ連携機能はありませんが、補助的に活用することで手作業の負担を軽減できます。

4. iPaaS

iPaaS(Integration Platform as a Service)は、クラウド上で複数のアプリケーションやサービスをつなぐ統合基盤です。開発不要で直感的に接続設定ができ、クラウドサービス間の連携やオンプレミス環境との統合にも対応しています。近年ではAPI連携を簡易に実現したい企業を中心に注目が集まっています。

ツール名主な役割得意な領域特徴
EAI業務システム間のリアルタイム連携基幹系システムの統合APIやメッセージングを活用し、即時性の高い連携を実現
ETLデータの抽出・変換・格納分析向けデータの整備・加工大量データを整備し、データ基盤へ格納する処理に特化
RPA人手作業の自動化定型的なPC業務の代替Excel操作や入力業務などPC操作を自動化し、手作業を代替
iPaaSクラウドサービス同士の連携SaaSアプリ連携開発不要でGUIベースで設定でき、柔軟な統合が可能

ETLツール「TROCCO」の活用例

ETLツールは、大量のデータを正確に整備・格納するための強力なソリューションです。国産ETL/ELTツールである「TROCCO」は、ノーコードで直感的に操作できるインターフェースが強みです。Amazon RedshiftやBigQueryなどのデータウェアハウス(DWH)との連携機能が充実しており、定期的なバッチ処理や差分転送、ジョブ監視にも対応しています。

エンジニアでなくても扱いやすく、スピーディにデータパイプラインを構築できるため、データ活用を推進する企業の中核を担っています。

まとめ

データ連携は、業務効率化や意思決定の高度化を目指す企業にとって、避けては通れない重要な取り組みです。データ連携を成功させるには、まず現状の課題を把握し、データの取得から変換、格納、可視化までの一連のプロセスを理解することが重要です。その中でも、大量のデータを扱うデータ基盤構築においては、ETLツールが非常に有効な手段となります。

データ連携の第一歩として、ぜひ自社の課題と照らし合わせ、最適なツールの導入を検討してみてください。

primeNumber編集長

primeNumberのブログを担当している編集長