マネーフォワードは、標準機能だけでも多くの業務課題に対応できますが、API(Application Programming Interface)を活用することで、他システムとのデータ連携やワークフローの自動化がさらに進み、業務効率とデータ活用のレベルを一段引き上げることが可能です。たとえば、取引先や従業員の情報を他システムと自動同期したり、仕訳や勤怠データをリアルタイムで連携したりできます。
本記事では、マネーフォワードが提供する各種APIの一覧を紹介するとともに、それぞれのAPIでできることを解説します。API連携によってマネーフォワードクラウドの活用価値を最大化し、バックオフィス業務のさらなる効率化を実現しましょう。
マネーフォワードクラウドとは
マネーフォワードクラウド(以下、マネーフォワード)は、オンラインで経理財務・人事労務・法務などのバックオフィス全体を効率化するサービスです。 銀行やクレジットカードと自動連携して仕訳や帳票(レポート)を生成するため、入力作業を大幅に削減できます。また、AIが取引を学習することで自動仕訳の精度が向上し、使うほど会計業務が効率化されます。
クラウドの特性から、ブラウザとアプリのどこからでもアクセスでき、複数拠点で同時編集を行える点が特徴です。さらに、日々の仕訳データを基に自動で決算書を作成したり、キャッシュフローや収益に関するレポートを作成したりできるため、経営状況の迅速な可視化に役立ちます。
マネーフォワードAPIを用いてできること
マネーフォワードでは、マネーフォワードサービス同士での連携や外部サービスとの連携を目的として、さまざまなAPIが提供されています。ここでは、それらのAPIを用いてできることを説明します。
マスタデータの自動同期
マネーフォワードAPIを使えば、社員や勘定科目、銀行口座などに関する情報(マスタデータ)を他の人事管理システムやCRMなどと自動で連携・更新できます。
たとえば、基幹システムや人事システムに登録された従業員情報をクラウド給与やクラウド経費と連携することで、重複入力や更新漏れを防ぐことが可能です。
また、部署名やプロジェクト名、勘定科目などのよく使う基本情報を、他のシステムとまとめて連携・管理できます。部署やプロジェクトごとに会計や経費精算、給与などの複数システムで使う場合、通常はそれぞれのシステムに手作業による登録が必要です。しかしマネーフォワードAPIを使えば、1つのシステムに登録した情報を自動で他のシステムにも反映できるため、同じ内容を何度も入力し直す手間が省けます。
トランザクションデータの自動連携
マネーフォワードAPIを利用することで、経費申請や勤怠データ、仕訳、請求などの日々発生するデータ(トランザクションデータ)を外部システムと自動連携できます。
たとえば、勤怠管理システムの打刻情報をクラウド給与に取り込んで自動で給与計算を行ったり、販売管理システムから売上データを取得して会計仕訳を自動登録したりすることが可能です。これらの連携によって手入力による処理が削減されれば、作業スピードが上がり、ヒューマンエラーも防止できます。
ワークフロー・承認ステータスの連携
マネーフォワードAPIを使えば、他システムのワークフローと連携し、申請や承認のステータスを自動で反映させられます。
たとえば、外部の稟議・申請システムで承認された経費情報をクラウド経費に連携し、承認済みデータのみを取り込むことで、整合性のある業務フローが構築できます。また、申請の進捗や承認履歴を外部ツールから取得できるため、確認作業や手戻りを削減することが可能です。
帳票(レポート)やレポートの自動出力
マネーフォワードAPIを活用することで、請求書や給与明細、試算表などの帳票や財務レポートをPDFやCSV形式で自動出力することが可能です。
たとえば、請求書をクラウド請求書上で自動作成し、外部システムからPDFを取得してメール送付するなど、帳票業務の自動化が実現します。また、クラウド会計から財務データをCSV出力し、BIツールや社内ダッシュボードへ連携することで、経営状況を迅速に可視化できます。
マネーフォワードのAPI一覧
ここでは、マネーフォワードの一般開発者に公開されているAPI(オープンAPI)をご紹介します。なお、会計や勤怠など一部のサービスでは、社内関係者や特定のパートナー企業向けのAPI(クローズドAPI)も提供されています。
マネーフォワードクラウド経費API
クラウド経費APIを使うと、従業員や部署、プロジェクトなどのマスタデータの自動連携ができます。また、経費申請データの取得や作成、更新が可能です。これにより、他の勤怠・申請システムとの連携がスムーズに行え、経費精算業務の自動化や申請・承認フローの一元管理が実現します。
マネーフォワードクラウド経費APIの公式ドキュメントへのリンク
マネーフォワードクラウド請求書API
クラウド請求書APIでは、請求書や見積書、納品書の作成・取得・更新・削除が可能です。外部の販売管理システムや基幹業務システムと連携することで、請求書発行の自動化やデータの一元管理が実現できます。帳票のPDF出力機能も備わっており、請求業務のミスや手間の大幅な削減に寄与します。
マネーフォワードクラウド請求書APIの公式ドキュメントへのリンク
マネーフォワードクラウド給与API
クラウド給与APIを利用することで、従業員情報や給与支給明細、勤怠時間、手当・控除などのデータを外部システムと連携できます。これにより、勤怠管理や人事システムと給与計算の自動連携が可能になり、毎月の給与計算や明細配布の手間を大幅に削減できます。
マネーフォワードクラウド給与APIの公式ドキュメントへのリンク
マネーフォワードクラウド債務支払API
クラウド債務支払APIでは、仕入先マスタや支払依頼、振込情報などを外部システムから登録・取得できます。支払フローの自動化や振込ステータスの追跡も可能です。これにより、経理・購買システムと連携して支払業務を一元管理できるようになります。
マネーフォワードクラウド債務支払APIの公式ドキュメントへのリンク
マネーフォワードAPIを利用する際の注意点
マネーフォワードの各種APIは業務自動化やデータ連携に便利ですが、安定的に活用するにはいくつかの注意点があります。ここでは、利用前に押さえておくべきポイントを3つ説明します。
リクエスト制限
マネーフォワードAPIでは、安定性やパフォーマンスを維持し、すべてのユーザーが公平かつスムーズにAPIを利用できるよう、リクエスト制限(APIコール制限)が設けられています。
たとえばマネーフォワードクラウド請求書APIにおいて、法人向けの無料プラン・スモールビジネスプランでは、各帳票作成のリクエスト上限が100に設定されています。これを超えるとエラーが返されるため、大量のデータ連携や定期バッチ処理を設計する際は注意が必要です。
解決策としては、処理を分散させたり、リトライ制御を実装したりすることが有効です。各種APIの公式ドキュメントを確認し、予期せぬエラーが発生しないようにしましょう。
認証とセキュリティ
マネーフォワードクラウドのAPIは、OAuth2.0を認証方式として採用しています。API連携の際には、アプリポータル上で取得した「Client ID」と「Client Secret」を使ってアクセストークンを発行します。
また、連携時はアクセストークンの有効期限やスコープ設定、トークンの安全な保管に注意しておきましょう。
定期的なバージョンアップ
マネーフォワードAPIに限らず、提供されるAPIは法令対応や機能追加に伴ってバージョンアップや仕様変更が定期的に行われます。特に給与・経費・請求関連では税制改正や帳票変更が発生するため、古いバージョンのまま利用し続けると連携エラーや非対応機能が生じる可能性があります。
公式の更新情報を定期的にチェックし、必要に応じてAPIバージョンの見直しやシステム改修を行うことが重要です。
TROCCOで広がる業務自動化の可能性
ここでは、API連携よりも簡単にシステム連携を行える「TROCCO」と呼ばれるサービスについてご紹介します。
TROCCOとマネーフォワードで会計業務効率化を簡単に実現
マネーフォワードのAPIを活用すれば、各種クラウドサービスと会計データを連携して業務を自動化できますが、実装にはAPIの仕様理解やプログラミング知識が必要なケースが少なくありません。また、エラー原因の特定やログの解析にも、一定の技術的スキルが求められます。
そこで、クラウドETLツール「TROCCO」の活用が有用です。TROCCOを利用することで、マネーフォワードと他の業務システムとのデータ連携を、GUI操作のみで簡単に構築できます。プログラミング不要で、非エンジニアでも導入・運用が可能です。さらに、エラーログの通知や視覚的な管理画面により、エラーの特定や運用トラブルの対応も簡単です。
また、TROCCOには主要なSaaS・クラウドサービスと接続できる豊富なコネクタが事前に用意されており、複数システムとのAPI連携を効率的に構築可能です。これにより、マネーフォワードを中心にした会計データの一元管理や業務効率化を、より低コスト・短期間で実現できます。
まとめ
マネーフォワードクラウドは、会計や経費、給与などのバックオフィス業務を一元管理できるサービスです。しかし、他の業務システムとの連携には、標準機能だけでは足りない場合があります。
そこで、マネーフォワードAPIを使えば、外部システムとリアルタイムでデータを連携したり、仕訳や請求情報の登録、帳票の出力などを自動化したりできます。これにより、業務プロセスを最適化し、手作業によるミスや負担を大幅に減らせます。
また、システム間のデータ連携にはETLツールも有効です。TROCCOは、データ連携に必要なETL・ELT機能に加えて、ジョブ管理やデータガバナンス機能も備え、開発コストを削減できます。マネーフォワードAPIとも連携できるため、会計業務とデータ基盤を効率的に接続したい企業におすすめです。
業務自動化やデータ活用に課題があれば、ぜひprimeNumberにご相談ください。
