データ基盤構築の内製化で目指すブランド価値の向上 〜50以上のブランドを支えるサザビーリーグアウルスケープが実践する、ブランド特性に合わせたデータ戦略とは〜

株式会社サザビーリーグアウルスケープ

- 課題
- 従来の運用体制ではカスタマイズ性が低く、ブランドごとの特性を活かしたデータ可視化の要望に柔軟に対応することが困難だった
- 外部ベンダーへの委託によりデータ基盤構築の費用と調整コストが高く、運用保守の効率化が求められていた
- データ連携ごとに処理がサイロ化し、情報の一元管理やデータウェアハウスでの利活用が可能かを判断したかった
- 目的
- ブランド特性に応じたカスタマイズ可能なデータ分析環境の構築
- データ連携処理の内製化によるコスト削減と機動力の向上、運用保守の効率化
- 将来的なデータ活用の可能性を広げるための拡張性の高いデータ基盤整備
- 効果
- ブランド別の詳細な顧客分析レポートを内製化し、現場からの要望へのスピード対応が可能に
- 内製化により、開発や修正コストを大幅に削減。有用なデータを柔軟にデータウェアハウスへ集積し、処理結果のログ確認やリカバリ対応など運用保守の一元化を実現
- 様々な分析軸のBIレポートを作成・提供し、事業側で利用することでデータドリブンなマーケティング・店舗運営が実現
カリフォルニア発のスペシャリティストア「Ron Herman(ロンハーマン)」、雑貨とカフェの「Afternoon Tea(アフタヌーンティー)」、ジュエリーブランド「agete(アガット)」、セレクトショップ「ESTNATION(エストネーション)」など、ファッション・ライフスタイル分野で約50のブランドを展開する株式会社サザビーリーグ。
同社は2024年11月、社内のDX推進室を独立させる形で新会社である株式会社サザビーリーグアウルスケープを設立した。リアル店舗の運営で培ったブランディング力と最新デジタルソリューションを掛け合わせ、グループ内外のブランドに対してBX(ブランドエクスペリエンス)の向上を支援している。
以前は外部ベンダーに委託してデータ分析基盤の構築を進めていたが、データの修正や追加作業に多くのコストが要することが課題となっていた。そこでデータ活用の内製化を実現するために活用されたのが「TROCCO」だった。導入から約2年が経過した現在では、ブランド特性に応じた詳細な分析レポートを作成するなど、データ活用の範囲が大幅に拡大している。
本記事では、「TROCCO」導入の背景や現在の活用状況、そして今後の展望について、株式会社サザビーリーグアウルスケープ プロフェッショナルサービス部 EC・CRM推進課 課長の加藤瑛文様にお話を伺った。
課題・問題
データ基盤開発を外部ベンダーに委託していたが、コスト負担と対応スピードの遅さが課題に

加藤:弊社では、ブランディングからSNS、EC、CRMまで、顧客がブランドと接触するあらゆる体験・経験を一貫したBX(ブランドエクスペリエンス)の構築支援を行っています。一般的なコンサル会社が提供しているような、EC運用のサポートやCRMの分析・レポート作成だけを実施するわけではありません。各社のブランディングに合わせた表現やキャンペーン内容など、そのブランドが大事にしている価値観や方向性に寄り添ってサポートしています。
元々は、サザビーリーグの中でDX推進室という部門があり、そこで我々のグループ会社が運営する約40ブランドに向けたデジタルマーケティングの支援を行っていました。
これらの取り組みをベースに、2025年4月より新会社として株式会社サザビーリーグアウルスケープが始動しました。これまで培ってきたノウハウを活かし、グループ外の企業に向けてもコンサルティングサービスを提供しています。
加藤:DX推進室の方針の一つとして、ブランドを横断したデータ環境を整え、様々な分析業務をブランド側でより簡単に実行できる環境を作りたいと考えていました。そこで、いくつかのブランドのデータを集約し、統合したデータ基盤の構築に取り組みました。
当時はデータ基盤の開発を外部ベンダーに委託しており、ある程度のデータ基盤の形を整えることはできました。そこからデータ活用が進むにつれ、ブランド側から「このデータも追加したい」というような要望が出始めました。その時の体制からその都度ベンダーに相談する必要があり、実際に1回の修正で数十万円という多額の費用が発生する上、調整コストも多くかかっていました。
加えて当時の基盤は、データの連携先やデータベースの種類によって処理がサイロ化し、情報の一元管理ができなくなっていた点も課題でした。ログも一箇所で確認できるような環境を整えたいという声も挙がっていて、外部ベンダーに頼らずに社内で対応できるような体制を構築したいと考えていたのです。
なぜ「TROCCO」を選んだのか
ベンダーに頼らずともデータ転送が可能。ツール上でログが確認でき、管理コストの低減が見込める

加藤:primeNumber社のセミナーに参加したことです。
当時、ブランド側の要望に迅速に応えることができない状況を打破するために、データ基盤の構築を内製化する方法を模索していました。自分たちで色々と調べていくなかで最初に見つけたのが「TROCCO」で、すぐにprimeNumber社が主催するセミナーに参加しました。
セミナーを通して「TROCCO」はまさに我々が求めていたツールなのではないかと直感的に感じたため、まずはフリープランのアカウントを作成して自分たちで色々と試してみました。
実際に「TROCCO」を触ってみて、最初に驚いたのはツールの使いやすさでした。データ転送処理を作っていく過程で、UI上で処理の修正ができる機能があることを知り、「このツールを活用すれば、外部ベンダーに頼らずとも社内ですべて対応できるのではないか」と考えるようになったのです。
加藤:データの一元管理ができる点はやはり大きな魅力でした。ツール上でログが取得できるので、将来的に社内でツールを使う人が増えた場合でも管理しやすいという点が良かったです。
また弊社は処理の件数が多いこともあり、前夜から朝にかけての処理状況をSlack上で一覧を見ることができる点も魅力的でした。

導入までのスケジュール・過程
CS担当者からの手厚いサポートのおかげで、1ヶ月かからず運用が開始

加藤:トライアルとして最初に取り組んだのが、広告データの連携です。まずは、影響の大きさから既存のデータ基盤の連携は避け、今まで取り扱っていない広告データの新規取り込みから着手しました。トライアルを進めていくなかで社内での活用イメージができ、今後のデータ活用に向けた大きな手応えを感じたので、既存システムを「TROCCO」に移植する作業に取りかかりました。
「TROCCO」の導入はとてもスムーズに進めることができ、トライアルを始めてから本格的な運用開始までは1ヶ月もかからなかったですね。
加藤:primeNumber社のCS担当者に丁寧かつ迅速に対応いただいたこともあり、すぐに「TROCCO」の本格的な導入を進めることができました。
導入を進めているなかで分からない点が出てきた際には、Slackですぐに質問ができる環境は大変ありがたかったですね。primeNumber社のサポートは非常に手厚く、導入を進める上では大きな安心感がありました。

導入後の効果
データ基盤の内製化により、コストとデータ取得までの時間が大幅に削減され、ダッシュボードのカスタマイズ性が飛躍的に向上

加藤:最も大きな成果としては、データ連携の開発をベンダーに依頼する際のコストがかからなくなったことです。「TROCCO」を活用して内製化できたことによって、現場からのリクエストに迅速に対応できるようになったことも大きな変化だと思います。
また、実際のダッシュボードを作る際にも、簡単に外部データを取り込めるようになったのでカスタマイズ性が飛躍的に向上しました。
加藤:運用・保守の面においては、メンテナンスが格段にしやすくなったと感じています。障害が発生した際の処理を簡単にできるようになっただけでなく、臨機応変にワークフローを組み替えて効率的に対応できるようになりました。
また「TROCCO」では処理が可視化できるので、どこで問題が発生しているかが一目で把握でき、管理や開発の効率が大幅に向上しています。
加藤:サザビーリーグが運営する各ブランドの価値を向上させるため、さまざまなレポートを作成しています。当初はブランド横断的な活用を想定していましたが、現在は方針を転換し、ブランドごとにカスタマイズしたレポートを提供しています。
取り組みを始めたばかりの頃は、それぞれのブランド担当者からは「何から分析すればよいか分からない」という声が多く挙がっていたので、まずは現場の声をヒアリングしながら丁寧に進めていきました。
現在、作成しているレポートでは、月次や前年との比較データなどを可視化しています。売上や顧客データが詳細に確認できるようになり、上位ランクの顧客のみに絞った分析やカテゴリ別、店舗別、新規既存別など、多角的な分析が可能になりました。
その他には、キャンペーン開催中にどのような属性のお客様が商品を購入してくれたのかを分析したり、クーポンをお渡ししたお客様が実際に使ってくれているのかどうかを調べたりすることも可能です。

加藤:一つのブランドでは、店舗スタッフのために「顧客カルテ」というものを作成しています。
高価格帯の商品を扱っていることもあってVIP顧客が多く、お客様一人ひとりに対して担当者が付いています。そこで、担当者が自分の顧客の状況を正確に把握するための「顧客カルテ」を作成しました。お客様一人ひとりの詳細なデータを見ることができるようになっており、購買記録や来店履歴はもちろんのこと、年間利用金額や来店タイミングなども把握することができます。これらのデータを踏まえて顧客の行動パターンを把握し、担当者が適切なタイミングでお客様にアプローチできるようになりました。
加藤:「顧客カルテ」はブランド担当者からの評判も非常に良いですね。バックヤードでの空き時間に顧客情報を詳細に確認できるようになったので、顧客対応のクオリティを高めることができています。
また、BIツールで作成した月次のショップレポートも各店舗に配信しており、店舗ごとのKPIをさまざまな角度から確認できるようにしています。売上高や顧客の年齢層、性別、居住地などのデータを詳細に確認することができます。まだデータ分析に慣れていないスタッフも多いですが、このようなデータが定期的に提供されることで、データを意識した店舗運営をしてもらえるようになってきたという声もいただいています。
最近では、ショップレポートの配信が少しでも遅れると、店舗側から「あのレポートがないと困るのですが、いつ頃もらえますか?」という問い合わせがくるほど、業務に必要不可欠なものになっていると実感しています。
加藤:弊社はアパレルや飲食ブランドも数多く運営していますので、カスタムコネクタを活用して天気や気温データなどの外部データも掛け合わせた分析にも取り組んでいます。
例えば、アパレルブランドでは最高気温と最低気温のデータを取得し、アウターなどの商品がどの程度の気温から売れ始めるかを分析できるようになっています。アイテム別での詳細な分析も可能で、気温や天候との関係をチェックできる仕組みを整えています。

加藤:最初は1名体制でしたが、現在はデータ基盤の管理担当が2名、ダッシュボード作成担当が3名おり、合計5名の運用体制になっています。ダッシュボード作成担当のメンバーの中には、データ活用の取り組みを本格化するタイミングで新たに採用したメンバーもいます。
今後も人員を増やす必要はあると考えておりますが、社内でデータを活用する体制が徐々に整いつつあると感じています。
今後の展望
外販事業拡大とデータ活用のさらなる高度化を目指す

加藤:今後は弊社が培ってきたノウハウを活かし、グループ外の企業に向けてもコンサルティングサービスを提供していきます。これから支援を行う企業やブランドにおいてもデータ基盤を構築する必要があるため、弊社が「TROCCO」を活用して進めてきた取り組みもシェアしていく予定です。
また、グループ外の企業向けにもダッシュボードの提案ができるように、レポートのさらなる高度化に取り組んでいきたいと考えています。そして、GAのデータとCRMのデータを組み合わせた分析により、Webサイトなどを閲覧した顧客の実店舗来店状況なども可視化していく予定です。
加藤:現在は我々が作成した情報を各ブランドへ提供することが多いのですが、もう少し現場のメンバーが自分でデータを確認・分析できる環境を構築していきたいです。環境が整うことで、さらに弊社内でのデータ活用の幅が広がるのではないかと考えています。
また、リアルタイム性のあるデータ活用も進めていければ、さらにデータの有効活用が進むのではないかと期待しています。現在は日次処理が中心ですが、在庫データなどは可能な限りリアルタイムに近いデータ更新や日次処理の回数を増やすことで、より実用的なデータ環境を整備できるはずです。各店舗の売上や客数、在庫等の分析レポートをリアルタイムで確認できれば、現場にとっては非常に役に立つデータになるのではないかと期待しています。
加藤:「TROCCO」は誰でも使いやすいツールで、UI上で簡単にデータ活用ができる点が大きな特徴だと思います。セキュリティ面を心配される方も多いと思いますが、権限やユーザーの管理もしやすいため、セキュリティ面を担保しながらデータの利活用を進めることが可能です。
現在使用しているシステム以外とも容易に連携できるため、将来的なデータ活用の可能性が大きく広がると思います。自社でデータ基盤を管理・運用する際も、「TROCCO」のような拡張性の高いツールがあることで安心して取り組めるため、弊社のお客様にも自信を持ってオススメできるサービスです。
人数が少なかったり、さまざまな業務を兼務しなければならなかったりする組織ほど、「TROCCO」を導入することで効率的に業務を進められるのではないかと考えています。データ活用の推進に取り組んでいる企業は、ぜひ「TROCCO」の活用を検討してみてください。
編集後記
サザビーリーグのデジタルマーケティング支援を担ってきたDX推進室の取り組みをもとに、2025年4月に新会社 株式会社サザビーリーグアウルスケープが始動しました。
ファッションやライフスタイルなど多彩なブランドの世界観を、SNS・EC・CRMを通じて一貫したブランド体験(BX)として届ける支援を行われています。

現在は、グループ内で培った知見を活かし、外部企業にもデータ基盤構築やCRM運用などのコンサルティングサービスを展開されています。
同社のデータエンジニアは、Google BigQueryやAmazon S3、そしてTROCCOを活用したCRMデータ基盤の構築・運用を担当し、ブランドのマーケティング施策をデータ面から支えています。
少数精鋭のチームとして、大きな裁量を持ちながら多様なブランドのデータ活用を推進できる環境です。ご関心のある方は、ぜひ募集要項ページからご覧ください。

株式会社サザビーリーグアウルスケープ
https://www.szl-owlscape.co.jp/
| 業種 | コンサルティング業界 |
|---|---|
| 設立 | 2024年11月 |
| 従業員数 | 21名(2025年3月末時点) |
| 事業内容 | ブランディングからSNS、EC、CRMまで、一貫したBXの構築を包括的に支援 |