課題・問題
データ基盤が整理されず、処理遅延と属人化を招いていた

primeNumber若尾:まず、貴社の事業概要について教えてください。
酒見様(以下、敬称略):株式会社オンワードデジタルラボは、オンワードグループのデジタル事業を統括・推進する企業です。ファッション領域をはじめ、ライフスタイル全般を展開するオンワードグループ全体のECシステム管理やデジタルマーケティング、顧客基盤の運営・推進を幅広くサポートしています。
primeNumber若尾:皆様の自己紹介と、現在のお役割について教えてください。
酒見:私は株式会社オンワードデジタルラボの取締役として、イノベーショングループを管掌しております。イノベーショングループでは、デジタルマーケティングやEC周辺システムに加え、オンワードグループ全体を横断した顧客基盤の運営・推進、そしてデジタルラボのバックオフィス部門も担当しています。
久村様(以下、敬称略):私はオンワード樫山に新卒で入社し、営業を経てEC部門へ異動した後、2020年にオンワードデジタルラボに出向しました。現在はECシステム管理者として、システム改修やBIツール導入、AIプロジェクトなどを幅広く担当し、今回のCDP移行でも推進役を務めております。
高橋様(以下、敬称略):私は2017年にオンワード樫山に中途入社し、Web販促やOMO領域、マーケティング職を経験してきました。オンワードデジタルラボへの出向後、店舗とWebを融合する「CLICK&TRY」の立ち上げなどに従事してきました。
primeNumber若尾:貴社の既存のCDP環境では、具体的にどのような課題を抱えていたのでしょうか。
酒見:大きな課題となっていたのは、データ増加に対してシステムのキャパシティが限界に達し、将来の拡張性が見えづらくなっていた点です。契約プラン変更によって増強は可能でしたが、一気にコストが跳ね上がり、売上の伸び以上にインフラコストが増加していく構造になっていたため、経営的にも持続可能な基盤への見直しが必要でした。大量のデータを正確かつ低遅延で、安全に蓄積・管理できる基盤が必要だと考えていました。
高橋:現場では、処理遅延とデータ提供の属人化が大きな課題となっていました。朝9時までに必要な売上レポートの処理が詰まり、リカバリー作業に追われていたのです。また、従来のCDP環境は大量データの出力を前提とした構造ではなかったため、年間で数多くのエラーが発生し、障害対応にも時間を取られていました。
久村:また社内でSQLを書けるメンバーが少なかったため、各ブランドから届くデータの抽出依頼が特定のメンバーに集中していました。依頼のたびに通常業務が中断されるうえ、エラー対応にも追われ、本来やるべきビジネスサイドとの議論や戦略策定に時間を割くことがあまりできていない状況でしたね。
なぜprimeNumberを選んだのか
解像度の高い提案とレスポンスの速さが、選定の決め手に

primeNumber若尾:では、なぜこのタイミングでCDPのリプレースを決断されたのか教えてください。
高橋:CDPのリプレースを決めたのは、根本的な課題解決が急務、かつ未来を見据え、更にデータ活用を進化させたかったからです。そのタイミングで次期データ基盤構築に関する社内公募が実施され、私や久村を含めたメンバーが「自らの手で課題を解決したい」という想いで志願し、プロジェクトが始動しました。
primeNumber若尾:primeNumberを知ったきっかけを教えてください。
高橋:primeNumber社を知ったきっかけは、同業のアパレル企業が「TROCCO」を活用している導入事例の記事を見つけたことです。当時は社内公募で志願したものの、自社の旧基盤の全体像を掴みきれておらず、自分たちだけでは提案依頼書(RFP)の作成にも苦労している状況でした。
そこで、本格的な構築コンペに先駆けて、RFP作成の支援を依頼するベンダー選定にprimeNumber社にも参加していただきました。当時から提案内容は極めて優れていたものの、このときはご一緒するには至りませんでした。
ただ、わずか2週間という短い期間で質の高い提案を示していただいたことは社内に強く印象を残していました。だからこそ、本番の構築コンペでは、あらためてprimeNumber社に声をかけたのです。
primeNumber若尾:最初のRFP支援のご相談をいただいた際、久村様や高橋様の「現状をどうしても変えたい」という熱量に私たちも強く動かされ、初回の提案から2週間ほどで資料を準備したことを覚えています。そのため、本番の構築コンペで再びお声がけをいただいたときは、今度こそ全力で期待に応えようと準備を整えました。
久村:本番の構築コンペでは、経営層からも技術的に難易度の高い質問が数多く寄せられました。そうした質問にも、primeNumber社は常に的確かつ迅速に対応してくださり、その実行力が大きな安心感につながりました。
primeNumber社から頂いた提案書は100ページを超えるボリュームがあり、私たちが抱えていた課題への理解の深さがそのまま形になっていました。提案の時点から細かい部分まで作り込まれており、primeNumber社とならプロジェクトがうまく行くと確信しました。事前の相談から実感していた解像度の高さとレスポンスの速さが、最終的な決め手になったと感じています。
高橋:マーケティング文脈の活用だけでなく、セキュリティやインフラも含めて「データ基盤としてこうあるべきだ」という視座の高い視点で見て提案してくださったと感じました。さらにプロジェクトマネージャーを担当される若尾さん自身が丁寧にご説明いただいたところも、一緒に進めていくイメージが湧きやすかったですね。
酒見:私もprimeNumber社の解像度の高さとレスポンスの速さは高く評価していました。それに加えて、プレゼンの際には、ワークフローやコード作成におけるAI活用を含め、他社では開示しにくい技術的な裏側まで包み隠さず提案してくれたことも、選定の大きな決め手になりました。
データ基盤の全体像
Snowflakeを中心に必要に応じて組み合わせられる「コンポーザブルCDP」を採用し、AI-Readyな基盤を構築

primeNumber若尾:以前より今回の基盤でデータウェアハウスとしてSnowflakeを採用されることがほぼ決まっていたとお聞きしました。その理由を教えてください。
高橋:Snowflakeを選んだ理由としては、パフォーマンスの高さと柔軟な従量課金モデル、そして特定ベンダーに依存しない拡張性といった特徴が挙げられます。
固定プランの制約を受けず、必要なときに必要な分だけリソースを使える仕組みが、当社の利用実態に合っていました。データ戦略の主導権を自社で握れる点も大きく、将来のデータ増加や機能拡張を見据えても最適な選択肢だと判断しました。その上で、実際にどのような構成で基盤を組んでいくかは、primeNumber社と一緒に設計していきました。
primeNumber若尾:今後の展開も見据え、今回はSnowflakeを中心に、データの収集は「TROCCO」、メタデータ管理は「COMETA」といったツールを必要に応じて組み合わせる「コンポーザブルCDP」の形で構築しました。パッケージ型のように一式を導入するのではなく、要件に合わせて構成を選び、後から入れ替えられる点が特徴です。
私たちが構築の段階で重視したのは、この基盤を「AI-Ready」な状態にしておくことでした。データやパイプラインの構造をAIが読み取れる形で整えておくと、後の運用や活用の負担が大きく変わってきます。
久村:その効果は、運用の場面で実感しています。以前は特定の処理が重いというだけで、使いこなせていない部分まで含めてプラン全体を底上げする必要がありました。今は必要な部分だけを見直せますし、基盤の主導権を自分たちで持てるようになったのは大きな変化です。
primeNumber若尾:ユーザー様の今後の自走を考えると、メタデータ管理は欠かせません。メタデータは、そのデータが何を表すのかを説明する情報です。例えばテーブルに「amount」のようなシステム用語が使われていると、ビジネス側のユーザーには意味が伝わりません。「COMETA」がメタデータを自動で整理・可視化することで、専門知識がない方でもデータの意味を直感的に理解し、必要なセグメントをスムーズに抽出できるようになります。

導入のプロセス
システム稼働を止めないデータ移行と、既存ベンダーとの協調体制の構築

primeNumber若尾:既存CDPからの移行で最も困難だった点を教えてください。
久村:CDPの稼働を一切止めず、日常業務やマーケティング施策を継続しながら、新基盤の開発とデータ移行を並行して進めた点です。日々のデータ連携や新規開発が動き続けるなか、「業務を止めずに期日内で移行を完了させる」という要請に応えるため、開発と移行フェーズを細分化し、綿密な調整を重ねながら進めました。
primeNumber若尾:現行システムの稼働を止めない並行移行は、売上に直結する極めて重要なミッションです。そのため、既存ビジネスに影響を及ぼさないようあらゆる移行パターンを想定し、徹底したリスク対策をご提案しました。
高橋:並行稼働以外にも、当社側がデータ基盤の全体像を把握できていなかったという課題がありました。そのため、旧基盤の構築時からサポートしていただいていた支援会社様にも、今回の移行作業でご協力いただき、 primeNumber社、既存ベンダー、当社の3社が毎週の定例ミーティングでバックログを共有し合い、円滑に開発調整を進めました。
導入効果とサポート評価
コスト半減と手厚い伴走体制の実現を評価

primeNumber若尾:「コンポーザブルCDP」が稼働してから、どのような導入効果が表れていますか。
久村:まず分かりやすい成果として、コストの削減が挙げられます。Snowflakeを中核とした従量課金型の構成へ刷新し、利用実態に合わせてシステムコストを最適化したことで、ランニングコストを従来と比べてほぼ半分に削減することができました。それだけでなく、処理性能そのものも向上しており、コストと性能を両立できたことは、当初想定していた以上の成果だと感じています。
高橋:コスト面だけでなく、運用の安定性においてもポジティブな変化がありました。従来の環境で発生していたようなエラー対応も、新基盤への移行後はクリティカルな障害が一件も発生していません。稼働からまだ1ヶ月ほどではありますが、これは大きな変化だと感じています。エラー対応に追われる時間がなくなったことで、ビジネスサイドとのデータ活用に向けた前向きな議論に、より時間を割けるようになっていると感じています。
primeNumber若尾:primeNumber社のサポートについての評価をお聞かせください。
酒見:コンペの際にも感じたことですが、primeNumber社は単に要件に沿って対応するだけでなく、プロフェッショナルな視点から積極的に提案や議論を重ねてくださいました。当社の立場に立って真摯に向き合っていただいたことに大変感謝しています。そうした誠実な対応と深い理解力が、今回パートナーとしてご一緒したいと考えた大きな理由の一つです。
高橋:primeNumber社のサポートの速さと品質には、いつも驚かされています。パイプラインにエラーが起きても、私たちが気付く前に原因を特定し、対応まで完了していることも少なくありません。
また、構築から保守まで一貫して担当いただいているからこそ、当社のデータ構造や意図を理解したうえで話が進められ、安心して運用を任せることができています。私たちが率直な意見を伝えた際も、ただ言われた通りに応じるのではなく、専門的な立場から意見を返していただけるので、そうしたやり取りができる関係性も含め、チームとしての相性の良さを強く感じています。
primeNumber若尾:エラー対応速度については、基盤がAI-Readyな状態で構築されていることも大きいと感じています。パイプラインの構造が把握しやすいため、どこに原因があるかの切り分けが速く、対応もスムーズにできるようになっています。
今後の展望
顧客ID統合による未来像とグループ全体へのデータ・AIを活用した意思決定の加速

primeNumber若尾:今後の展望を教えてください。
高橋:グループ横断での顧客ID統合を実現したいです。当社は食品やギフト、コスメ、ペット用品などの多くの事業を展開していますが、従来は会員IDが分断されており、グループ間のシナジーを生み出せていませんでした。「コンポーザブルCDP」という強固な基盤が整ったことで、この統合に向けた道筋が明確になってきています。
また、社内でも新基盤への関心は高まっており、他部署やグループ会社からの問い合わせも増えてきています。ベンダーへの依存度を下げ、簡単な作業は内製化しながら、ブランド側にもデータを扱える人材を育てていきたいと考えています。
酒見:現時点では、データ活用に対する習熟度に部門間で大きな差があるのが実情です。デジタルラボ内にはSQLを使いこなせるメンバーやデータ構造に詳しい人材が揃っているのですが、グループ全体に視野を広げると、必要なデータの所在や粒度を把握できていないメンバーがまだ多くいます。
今後はこのギャップを埋め、全社員が自然言語などを通じて直感的に必要なデータを取り出し、ビジネスの仮説構築に活かせる環境を目指していきたいです。今はまだその入り口に立った段階ですが、各現場の業務特性に応じたAI活用を進め、グループ全体でデータに基づく意思決定ができる文化を育てていきたいと考えています。
primeNumber若尾:最後に、データ基盤の刷新やCDP導入を検討している企業へメッセージをお願いします。
久村:正直に言うと、我々もデータに関する知識が十分にあるところからのスタートではありませんでした。それでも、まずは「こういう未来を作りたい」という将来像を描き、そこに向けて何をすべきかを逆算して考えていくことで、少しずつ理想が形になっていきました。知識や経験が十分でなくても、目指す将来像を先に描くことが、プロジェクトを前に進める大切な一歩になるはずです。
高橋:今回CDPを移行して一番良かったことは「会社のデータ基盤のことを知る人間」ができたことです。データ移行だけでなく、一気通貫でプロジェクトに取り組んだことで、データ基盤の全体像を把握できるようになりました。これは、我々のような事業会社にとって大きな財産になったと感じています。既存のCDPに悩まれている方はぜひprimeNumber社へ相談してみてください。
primeNumber若尾:オンワード様の未来のデータ活用推進に向け、今後とも力強く支援させていただきます。本日は、貴重なお話をありがとうございました。













