3年で築いた信頼関係が生んだ「個人情報検知」プロジェクト。明光ネットワークジャパンがprimeNumberと挑むデータガバナンスとAI活用

株式会社明光ネットワークジャパン

- 課題
- お客様からの個人情報削除依頼や年数回の外部監査への対応において、データ基盤内に点在する個人情報を正確に把握する必要性があった
- 運用ルール以外で電話番号や住所などが誤って記載されるリスクがあった
- 目的
- AIを活用した、フリーテキストを含むデータ基盤内の個人情報を検知する仕組みを構築
- データガバナンス体制を強化し、法令遵守とデータ活用を実現するための土台整備
- 点在するデータを統合し、次期データプラットフォーム構想の実現を見据えたAI活用体制を強化
- 効果
- 多様な表現を含む自由記述欄でも一定以上の精度での個人情報検知を実現
- AIによるリスク可視化で法令遵守を強化し、安全なAI活用の前提となるガバナンス体制を確立
- 約3年にわたるデータ活用支援で築いた信頼関係を基盤に、課題解決に向けた実証実験を実現した
全国47都道府県に展開している個別指導塾「明光義塾」やAIを活用した「自立学習塾RED」などを展開する株式会社明光ネットワークジャパン。同社はDXを中期経営計画の一つに位置づけ、2022年2月から株式会社primeNumberと共にデータ活用の歩みを進めてきた。
データ基盤リプレースによるコスト削減を皮切りに、デジタルマーケティング領域の可視化やMAツール連携、コールセンターの自動化など、段階的にデータ活用を拡大。
約3年にわたる取り組みで築かれた信頼関係を背景に、同社は次の一手としてデータガバナンスの強化、特に個人情報管理という重要課題に着手した。
本記事では、データ活用におけるAI活用とガバナンスの両立を実現した「個人情報検知プロジェクト」について、DX戦略本部 本部長補佐 兼 情報システム開発部 部長 岡一樹様、ITガバナンス部 部長 角柳博樹様、そして明光ネットワークジャパンの支援を担当したprimeNumberの岡野 敦史、若尾 和広とともに、これまでの取り組みを振り返った。
これまでのデータ活用の取り組み
データ基盤リプレースを起点に、3年の支援で築いたデータ活用の土台

岡野:まず、岡様と角柳様のお役割について教えてください。
岡:私はDX戦略本部の本部長補佐と、情報システム開発部の部長を兼務しております。DX戦略本部は全社のDX推進を担っており、私は主にデータやAIの活用による事業貢献と売上向上を担当しています。
角柳:私はITガバナンス部の部長を務めています。グループ全体のITガバナンスやセキュリティ強化といった「守り」のIT領域を専門に担当しています。

岡野:改めて、これまでのprimeNumberとの取り組みについて振り返っていただいてもよろしいでしょうか。
岡:2022年2月、既存のデータ基盤のリプレースから始まりました。維持コストが高額になっている状況を打破するため、「TROCCO」を活用したデータ基盤のリプレースを実施しました。
データ基盤が整った後、デジタルマーケティング領域の可視化に着手しました。当時、塾比較サイトなどの問い合わせ媒体から獲得したリードが入塾につながっているかを把握できていませんでした。そこでLTVと獲得単価を照らし合わせることで、ROIを定量的に評価できる体制を構築していきました。
その他にも、収集したデータをMAツールに連携させ、メール配信などに活用する仕組みの構築や、コールセンターの問い合わせログ活用による自動化なども推進してきました。
角柳:他の取り組みと並行して、経営層が見る全社KPIダッシュボードの構築・運用も一貫して支援していただきました。
primeNumber社からのサポートを受けながら、現場の施策と経営視点での可視化を両輪で進め、段階的にデータ活用の範囲を広げてこられたと感じています。
なぜprimeNumberを選んだのか
信頼関係から生まれた「個人情報検知プロジェクト」

岡野:データ活用が進む中で、新たに個人情報の取り扱いに関する課題になったそうですね。
角柳:はい。かねてより、社内でも個人情報の取り扱いは重要なテーマであると感じていました。弊社が今回「個人情報検知」に取り組んだ背景には、大きく2つの理由があります。
1つ目は、お客様の方からの個人情報削除依頼への対応です。頻繁にあるわけではないですが、年に数回、何らかのトラブル時などに「在籍情報や個人情報をすべて消去してほしい」というご要望を頂くことがあります。これは個人情報保護法を遵守する観点からも、企業として誠実かつ迅速に対応しなければならない必須事項です。
2つ目は、年に1回実施している外部監査への対応です。監査においては、我々がどのような個人情報を保有し、それを適切に管理・運用しているかを具体的に示さなければなりませんでした。
色々なツールの導入を推進していくなかで、削除しなければならない個人情報がツールごとに分散していました。その結果、どこに個人情報があるのかを把握するには多くの時間や労力がかかっているような状況でした。そこで抜け漏れなく効率的に個人情報を検知し・管理する方法を模索していたのです。

岡野:primeNumberとの「個人情報検知プロジェクト」は、どのような経緯で始まったのでしょうか?
岡:primeNumber社との定例ミーティングで相談したところ、「生成AI技術を活用し、個人情報検知サービスの実証実験をしませんか」というご提案をいただきました。当時は既存のデータ基盤を統合していたものの、ガバナンス上の課題が残っており、全社的なデータガバナンスの強化が必要だと感じているタイミングでもありました。
岡野:「個人情報検知プロジェクト」に取り組むにあたって、外部企業がデリケートなデータを扱う不安はなかったですか?
角柳:全くありませんでした。3年近くにわたる取引で築いてきた「信頼関係」があったので、安心してお任せすることができましたね。
通常、外部のベンダーやエンジニアが弊社の本番環境のデータベースにアクセスし、個人情報が含まれる可能性のあるデータを直接検証することは、セキュリティポリシー上、実行が非常に困難です。
しかし、これまでにprimeNumber社と密接に連携しながらデータ基盤の構築・運用を進めてきた確かな実績がありました。基盤の隅々まで熟知しているという技術的な信頼はもちろんですが、それ以上に「このメンバーになら、デリケートな作業を任せても問題ない」という、長年かけて築いてきた人間関係と信頼関係が決め手となりました。

若尾:今回は、私がリードしているR&D部門で開発を進めていた「メタデータ自動生成技術」を応用しています。
特に難しかったのは、各種システムの自由記述欄に意図せず混入する個人情報の取り扱いです。従来のキーワードマッチングのような単純な文字列検知では対応できないものも多く、その点はかなり技術的に難しい部分でした。
そこで今回は生成AI技術のLLM(大規模言語モデル)を活用し、単語だけでなく文脈全体を解析することで、より柔軟に検知するアプローチを試みました。
さらに、単独の項目では個人情報として判断されないものの、個人情報と同じ場所に記録されていることで、企業としてのリスクが高まる情報の組み合わせも検知できるようにしました。例えば、氏名とメールアドレスの組み合わせです。AIが文脈的に判断できるようなロジックを設計することにより、人手では見落としがちなケースも効率的に発見できるようになりました。
取り組み後の成果
個人情報を検知し、今後のガバナンス体制の見直しの一助に

岡野:今回のプロジェクト結果について、どのように受け止められていますか?
角柳:課題は残ってはいるのですが、LLMを活用することで一定以上の効果が得られたという手応えを感じています。これまで把握しきれていなかったメモ欄から、意図せず混入していた個人情報やその可能性のあるデータを具体的に特定することができました。
今回の取り組みは、今後のガバナンス管理体制や全社的なデータ取り扱い指針を策定していく上でも、とても意義のあるものになりました。対外的な監査対応においても、このような先進的な技術を用いて積極的に情報管理に取り組んでいるというアピールにもなると考えています。
今後の展望
次期データプラットフォーム構想を実現させ、さらにAI活用を推進していきたい

岡野:今後のデータ活用の展望についてお聞かせください。
岡:まずは、現在進行中の次期データプラットフォーム構想を着実に実現することです。これまで段階的に構築してきたデジタルマーケティング基盤と全社KPI基盤を統合することを検討しています。新プラットフォームではこれらをシームレスに連携させ、より深い顧客理解と事業貢献に繋げていこうと考えています。
それと同時に、AI活用もより推進していきたいですね。すでに、社内マニュアルへの問い合わせを自動化したり、塾講師が実施する研修のクオリティをAIを使って評価したりなど、業務効率化のアイデアがたくさん出てきています。
今後も「データはまずデータプラットフォーム上に集約し、ガバナンスを徹底した安全な環境で活用する」という全社方針に則り、AI活用をより進めていこうと考えています。
岡野:primeNumberからのサポートに対する評価、そして今後の期待について教えてください。
岡:primeNumber社には、単なるツールベンダーや開発会社としてではなく、我々のDX推進における伴走者として深く事業に関わっていただいています。実際に、岡野さんには構想実現に向けた戦略面から一緒に検討してもらっています。
他にも弊社の各部署に対するヒアリングにご協力いただきました。新たに課題を見つけられただけでなく、「現場でどのようなデータが、どのように使われているか」「どのような分析ニーズがあるか」を具体的に把握することができましたね。
primeNumber社は、実現が難しそうなアイデアを相談しても決して否定せず、「それならこうすれば実現できます」と常に前向きな提案をしてくれます。そのポジティブな姿勢を見ていて、弊社も常に刺激と前向きなエネルギーを受けています。今後も技術面だけでなく、弊社全体のDX推進を一緒に進めてくれることを期待しています。
角柳:primeNumber社はまさに、ワンストップで相談できる重要なパートナーです。2022年のデータ基盤構築から、BIによるKPIダッシュボードの可視化といったデータ活用、そして今回のAIを活用した個人情報検知という非常に難しい領域まで幅広く対応いただいています。
ご担当の岡野様と若尾様にも、厚い信頼を寄せています。今後、次期プラットフォームの統合やAI活用を進めていく上で新たな課題も出てくると思いますが、そこもぜひ伴走支援いただければ幸いです。今後もデータ活用とセキュリティの両面から、我々の取り組みを力強く支えていただけることを期待しています。
岡野:最後に、データ活用に取り組む企業へのメッセージをお願いします。
岡:皆さまにお伝えしたいことは「AIの成否を分けるのは、結局のところデータ基盤である」ということです。
AIという先進的な技術ばかりに注目が集まりがちですが、その基盤となるデータの信頼性と安全性が確保されなければ、AIによる安定した成果を生み出せません。そのため、AI活用を進める際には、データとガバナンスの整備という基盤づくりからチャレンジしていただければと思います。
角柳:データ活用を推進する大前提として、「お客様の大切な個人情報をお預かりしている」という強い自覚を持つことが出発点だと考えています。その情報を安全に管理・運用することは、企業としての当然の責務です。
データ活用とガバナンスは表裏一体であり、両立には信頼できるパートナーの存在が欠かせないと実感しています。「守り」の部分をしっかりと固めながら、ぜひ「攻め」のアプローチにもチャレンジしてみてください。

株式会社明光ネットワークジャパン
https://www.meikonet.co.jp/ja/index.html
| 業種 | 教育 |
|---|---|
| 設立 | 1984年9月 |
| 従業員数 | 連結:1,208名(2025年8月末) |
| 事業内容 | 学習塾事業、幼児・学童・スポーツ事業、人材事業 |