日本のラグビーがファンに愛されるスポーツとして発展していくことをミッションに掲げ、協会とリーグ、そして民間企業が出資し、設立されたジャパンラグビーマーケティング株式会社。オンラインのチケットやグッズの販売、デジタルコンテンツの配信など、設立当初よりデジタルの活用に力を入れている同社では、2023年に開催されたラグビーワールドカップをきっかけにデータ基盤を構築することになった。

データ基盤の構築にあたっては、チケットサイトやユーザーIDである「Japan Rugby ID」の基盤などのデータを統合し、ビジネス部門がデータを活用できる環境を目指し、協力パートナーとの取り組みが進められた。その際に選ばれたETLツールが「TROCCO®︎」だった。「TROCCO®︎」導入の目的や背景にあった課題、データ基盤の活用状況と今後の展望について、ご担当者様にお話を伺った。

課題・問題

ワールドカップ前にデータ基盤を構築し、新規ファンのデータを一元化できる環境を求めていた

ジャパンラグビーマーケティング株式会社 システムグループ エグゼクティブリーダー 塩谷 篤史様
貴社の事業内容とシステムグループのミッションについてお聞かせください。

塩谷 篤史様(以下、敬称略):私たちジャパンラグビーマーケティング株式会社(以下、JRM)は、日本市場におけるラグビーがファンの方に愛される存在として発展していくこと、そしてスタジアムでの試合観戦やグッズ販売、デジタルコンテンツの配信といったスポーツ事業の収益性を高めていくことを目標に掲げ、事業を展開しています。

事業の対象となるのは、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が管轄する日本代表チームと、一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンが運営し、2024年9月現在で26のチームが参加するジャパンラグビーリーグワンです。

私を含めて2名が在籍するシステムグループでは、各サービスごとに協力いただいているパートナー企業さんとともにサービスやシステムの開発、運営に取り組んでいます。たとえばチケットサイトやユーザーIDの基盤、そしてデータ基盤などが挙げられます。

マーケティング部とは別のチームですが、今回のようなマーケティングのデータ活用に関しては一緒に取り組むことが多いです。

今回の取り組みにあたって、どのようなデータ基盤を理想像として描いていましたか。

塩谷:開発部門やシステム担当者が介在しなくともデータが自動で回り、ビジネス部門の非エンジニアでもデータを分析、活用でき、さらに高い精度で施策のPDCAを回していける状態が理想だと考えています。もし開発部門やシステム担当者が日々手を動かさなければならないデータ基盤であれば、データ分析と活用のスピードが格段に落ちてしまうでしょう。

この背景には、「ラグビー」というスポーツ特有の事情も関わっています。現在の日本のスポーツでは、野球は1チームあたり年間およそ150試合、サッカーは1チームあたり年間およそ40試合も開催できます。

一方チーム数がまだ少ないラグビーは、1チームあたり年間多くても18試合しか開催できません(※2024-25シーズンの場合)。つまり、施策を打てるチャンス自体が少なく、量質転化を狙いにくいのです。そのため、施策一つひとつの精度を高めていくことが重要になります。

データ基盤を構築することになった背景には、どのような課題があったのでしょうか。

塩谷:今回の取り組み以前にデータ基盤は構築されておらず、チケットサイトやアプリケーション上にそれぞれ顧客IDのデータが分散、蓄積されており、マーケティングに活用できる体制は整っていませんでした。

JRMが立ち上がった背景から考えても、共通のデータ基盤をいつかは構築しなければならないと考えていたと思います。そこで大きな転機となったのが、フランスで開催されたラグビーワールドカップ2023です。ワールドカップの盛り上がりで増えた新規ファンを取り込み、ワールドカップ後も継続してラグビー日本代表と日本のラグビーチームを応援してもらうためには有効な施策と、それを支えるデータが必要不可欠です。そこからようやくデータ基盤の構築に着手し始めました。

なぜ「TROCCO®︎」を選んだのか

協力パートナーと進められたデータ基盤の構築。決め手は導入実績と開発スピード

「TROCCO®︎」の選定はどのように進行しましたか。また、導入の決め手をお聞かせください。

塩谷:チケットやファンクラブのWebサイト同様、データ基盤を開発するにあたってもパートナー企業さんにご協力いただきながらプロジェクトを進めていきました。

導入の決め手は、以前にも「TROCCO®︎」を活用したデータ基盤の構築実績がパートナー企業さんにあったこと、それによってデータ基盤を構築するまでのリードタイムを短くできることが挙げられます。開発当時はラグビーワールドカップ2023に向けて急ピッチで各プロジェクトが進行していた時期であり、開発期間をロスしてしまう事故やリスクはなるべく避けるべきと考えていました。

また、JRM設立の背景からデータ基盤の構築には余裕のある予算が組まれており、低価格だった「TROCCO®︎」は導入がスムーズに決定しました。

TROCCO®︎導入の決め手
データ基盤の構築にあたって、プロフェッショナルサービスも採用いただいた決め手をお聞かせください。

塩谷:データ基盤を構築した当時は弊社内にエンジニアリングリソースがほとんどなく、データ活用環境を構築する知識やノウハウも不足していたのです。これを補うためにprimeNumber社のデータエンジニアリングリソースを活用することが決まりました。

導入までのスケジュール・過程

統合したデータは社内のマーケティングチームだけでなく、リーグ参加チーム側にもMAツールとともに展開

データ基盤の構築はどのように進行しましたか。

塩谷:まずデータ基盤の全体像をパートナー企業さんに整理いただき、一つひとつ確認しながら進めていきました。具体的には、各サービスに分散している顧客データをGoogle BigQuery上に構築したデータ基盤に統合、蓄積、分析できる形に加工して、BIツールのTableauで作成したダッシュボードに表示する、というデータフローです。いったんは2022年5月にデータ基盤がリリースされ、そこからフロントサービスやID基盤からデータを流し込み、2023年の5月頃にはようやく当初描いていた通りの全体像を実現することができました。

ジャパンラグビーリーグワンのチケットサイトがリリースされたのはワールドカップ後の2023年10月頃で、2024年のシーズンに間に合わせることができています。ここでようやく、試合を観戦してくださる顧客のIDと販売データを紐づけて分析できるようになりました。

TROCCO®︎導入までの流れ
データ基盤の構築後、ビジネス部門の業務にはどのような変化がありましたか。

塩谷:データを最も活用しているのは、マーケティングチームのメンバーです。ラグビーファンを増やすという大きな目標のもと、試合ごとの来場者数や顧客単価、リピート率などのデータを分析し、さまざまなキャンペーンの企画やマーケティング施策の改善につなげています。

その他にも、契約を交わしているジャパンラグビーリーグワンのチームには、専用のBIツールのダッシュボードを展開し、独自の施策を実施される際にご活用いただいています。加えて、MAツールのアカウントもJRMよりご提供しておりまして、BIツールによるデータ分析をもとにメンバー登録した方やファンクラブ会員の方に向けた独自のメルマガを配信する取り組みも始まりました。このMAツールのデータも「TROCCO®︎」でGoogle BigQueryに蓄積され、そのデータをBIツール上で確認することもできます。

JRMだけでデータを独占するのではなく、チームごとの運営も巻き込んでいくことでラグビーそのもののファンだけでなく、チームのファンも増やしていき、日本におけるラグビーファンの裾野を広げていきたいと考えています。

導入後の効果

予定通り、ワールドカップ前にデータ基盤を構築。データ転送に関わる作業工数を抑えられた

「TROCCO®」について特に評価いただいているポイントをお聞かせください。

塩谷:UIが抜群に見やすいと思います。以前、チケットサイトから転送されるデータが本来数値だけの想定が、文字も含まれていたというトラブルが起きたのですが、ワークフローのジョブ管理設定を感覚的に操作できたため、スムーズに修正することができました。おかげでデータ転送に関する各種設定、修正作業の工数はかなり抑えられています。

また、エラー画面が見やすいことも高評価です。データ転送で何かエラーが起きれば、メールに通知が飛ぶ設定なのですが、自分たちでソースコードを組むよりも圧倒的に簡単です。

「TROCCO®」の導入によって、どのような効果を得ることができましたか。

塩谷:もし「TROCCO®︎」を活用していなければ、開発工数がかさんでワールドカップまでに間に合わせることができず、当初の狙いであったワールドカップの盛り上がりから新規ファンを取り込むことができなかったかもしれません。そうなると、日本の私たちJRMの戦略自体にも見直しが迫られたでしょう。

また、ジャパンラグビーリーグワンに参加するチームのチケットサイトも今回データを統合できたことで、日本のラグビー全体としてのデータを分析し、マーケティング施策につなげることができました。もしこれがJRMとチームで別々に構築していたら、何か一緒に施策を展開する際にフロント側からわざわざデータを提供いただく必要があり、スピード感のある展開ができなかったと思います。

今後の展望

リソースが限られる体制だからこそ、非エンジニアでもデータ分析環境を整えられるように

今回の取り組みを受けて、今後のデータ活用の展望をお聞かせください。

塩谷:開発部門やシステム担当者でなくとも簡単にデータ分析の環境を整えられる環境は引き続き目指していきたいです。弊社のマーケティングチームにはSQLを書ける社員もおり、「分析軸を増やしたい」「別のシステムからデータを引っ張りたい」と考えたときに、自分自身でデータ基盤を設定できると、施策をもっと高速化できるはずです。「TROCCO®︎」の分かりやすいUIであれば、非エンジニアでも簡単に操作できるはずですので、決して達成できない目標ではありません。

施策のPDCAを少しでも速く回していき、より多くのデータを活用できるようになったその先に、ラグビーファンが増え、試合会場に足を運んでくれる人が増え、そして日本のラグビー全体が盛り上がってほしいと思います。

データ活用に課題を感じている方へ、メッセージをお願いします。

塩谷:データ基盤を構築する前に、運用フェーズ後の負荷をよく吟味してツールを選定すべきです。運用フェーズは開発フェーズよりも圧倒的に長いにもかかわらず、運用フェーズを良く考えないと納期や開発コストといった目の前のことばかりを考えてデータ基盤を構築してしまえば、取り返しがつきません、

特に弊社のように自社のリソースが少なく、パートナー企業さんにも協力いただきながらプロジェクトを進めていく企業にとっては、運用フェーズを見据えたツール選定はより重要でしょう。運用フェーズの人的コストを下げることができれば、別の施策のにリソースを回せます。データ基盤を開発したその先を考えれば、「TROCCO®︎」という選択肢はとても良いと思います。

データ分析基盤の構築・運用は
TROCCO®️におまかせ。

ETL/ELTパイプライン構築やワークフローなどを、SaaS上で実現。データエンジニアの工数を削減して、分析やクリエイティブな業務に集中しましょう。

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ジャパンラグビーマーケティング株式会社

https://japan-rugby-mktg.com/

業種情報・通信
設立2022年12月28日
従業員数---
事業内容ファンマーケティング事業、興行事業、商品化・EC事業、コミュニティ事業、デジタルコンテンツ事業