年平均成長率72.9%の急成長を支えるモダンデータ分析基盤を解説
株式会社サーキュレーション
2022年4月19日、Google社が主催するGoogle Cloud Day: Digital ’22に登壇いたしました。
株式会社サーキュレーション(以下、サーキュレーション社) 経営管理本部 企画・マーケティング・IT部 IT推進室マネジャー金谷直樹氏をゲストにお招きし、創業からの年平均成長率 72.9%(2021年7月末時点) という驚異的な成長を遂げる株式会社サーキュレーションのデータ分析基盤を紹介します。
事業の成長スピードに耐えうるデータ整備と可視化が急務となった同社は、マネージド ETL & ワークフローサービス TROCCO® と BigQuery を活用し分析基盤を構築しました。導入背景、分析基盤の構成、検討プロセスを、ビジネスと技術の両視点からお話しいただきました。
導入効果:モダンデータ分析基盤導入による成果
● 年間1000時間程度の工数削減
● 主要KPIの変動要因分析が可能に
● 迅速な仮説検証と行動のPDCAが実現
こんな方におすすめ
● 初めてデータ分析基盤の構築を検討されている方
● 既存のデータパイプラインの保守工数を削減し、エンジニアの時間を創出したい方
● 他社事例に関心をお持ちのデータスチュワード/データエンジニアの皆さま
サーキュレーション社について
サーキュレーション社の事業について
わたしたちは、「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」というビジョンのもと、「プロシェアリング」事業を運営しております。
外部のプロ人材の経験・知見を複数の企業でシェアするという新しい人材活用モデルで、2021年7月には、東証マザーズ(現東証グロース)に上場いたしました。
現在マーケティング、ビジネス、DXなどの領域で合計20,000名以上(2022年7月末時点)のプロ人材にご登録いただいております。弊社のコンサルタントが伴走し、クライアント企業の課題を定義しながらプロ人材とのプロジェクトによる解決策をご提案するビジネスモデルです。
サーキュレーション社における金谷様の役割
私は株式会社サーキュレーションにて、IT部門の責任者をしております。
サーキュレーション社には2021年5月に入社し、経営戦略や事業課題をとらえながら、今年上場2年目を迎える企業の「攻め」と「守り」それぞれの投資の企画や、デジタル組織の組成といったところに注力しております。
情報システム部門のチーム人数規模
現在は数名のチームでして、目下100名〜200名規模のチームへの階段をかけあがっているところです。現在の私の最大の関心ごとは、自チームの採用です。
導入背景、課題
データドリブンな経営を成功させるためには、3つの要素がある
サーキュレーション社が重視するデータドリブン経営の3要素
こちらは我々が半年間で得られた学びの集大成を、図式化したものです。大きく3つの要素で構成されていますが、データ駆動経営やデータにまつわるプロジェクトを成功に導く要素はこの他にも色々あると思います。例えば、データマネジメントの知識体系であるDMBOKでは、10を超える知識体系が定義されていると思います。
さまざまな要素のなかで、わたしたちが経験則から最も重要な要素と考えるのが「データエンジニアリング」「モダンなデータ分析パイプライン」「データリテラシーの組織学習」の3つです。この3つのポイントを押さえることで、わたしたちのデータ駆動経営に至る道というものが切り拓いていけたと、振り返ることができると思います。
今3つの重要要素をお伝えしましたが、わたしたちがスタートしたときには、このどれも社内に存在しませんでした。
全社に開かれたデータ分析環境は、組織に訪れた限界を突破するツール
全社データ分析基盤構築を決断した背景
わたしたちがデータ分析基盤構築を決意した背景についてご共有させてください。経緯は、組織とビジネスの急成長とともに不可避に生じてくる歪みです。
わたしたちは2021年7月に、東証マザーズ市場へ新規上場いたしました。従業員は大きく増え、分業型の営業組織体制を採用し、顧客成功を追求しました。そのなかで、つい部門最適に偏ってしまうような傾向が目立ち始めました。
また、高い事業成長率を維持するなかで、経営指標の可視化や分析環境の整備、ビジネスプロセス改善に対する企画・開発体制が追いついていかないという問題が起こり始めました。
さらに、Salesforce(MA/SFA/CRM)に情報を集約し、高度な機能を活用していた一方、システムのカスタマイズ領域で上限を迎えたことで、データの品質を維持しつつシステムを保守運用していくためにシステム構成を見直す必要性が出てきました。
コミュニケーション、ビジネスプロセス、業務システムすべての領域で硬直化の兆しが見られ、細かな打ち手が必要となってきたのです。これには地道な努力が必要ですが、少なくとも、経営から現場まで全ての領域が正しいデータを見ることができることにより、企業各領域の相互理解が進むのではないかという考えに至りました。
全社を俯瞰するデータ分析環境を整備することで、自然と、コミュニケーションやビジネスプロセスの良化が見込めるのではないかというふうに思ったのです。
業務システムとは別に、社内のデータを見るための専用の環境が欲しい
業務データはSalesforceにも蓄積されていますが、他にも会計システム、人事管理システム、Google Workspaceなどさまざまな場所にデータは点在しています。事業活動のあらゆるデータを分析可能な状態で蓄積し、それらの正しいデータを分析し、迅速に意思決定を行い、価値に繋げる能力を組織として獲得することが重要でした。
最初に設定したゴールとは
まず、「従来大きな時間をかけてスプレッドシートで集計分析」したり、「単一のシステムの中でやや限定的な情報源で可視化」してきたものに焦点を当てました。これから経営や事業の意思決定者が特に使いたいものに関してとことん可視化をして、適切な即時性と精度をもって、ドリルダウンで要因分析できるような状態を提供したいと思いました。
プロジェクトのゴールは、「高速な仮説検証を躊躇なく繰り返せるようになること」としました。検証のたびにデータを集めたり、手動でデータをかけあわせたりすることなく、分析と意思決定を繰り返せるようになることが、目標地点となります。
単に構築を外注しできあがったものを使うということでは、真のデータドリブン経営を深化させていくことにならない
プロジェクトの体制について
当時、社内のデータ活用に関する知見や組織はほとんど整備されていませんでした。経営に対する理解、業務システムに対する理解は、わたしたちプロジェクトチームのなかでカバーできたのですが、肝心の「データエンジニアリング」や「データビジュアライズ」といった部分に関しての知見がカバーできませんでした。
そのようななか、ETLツールとしてTROCCO®︎に最初に着目したタイミングでprimeNumber社にご相談し、わたしたちの事情や背景をお伝えするなかで、同社のデータエンジニアの力を借りるソリューションサービスの存在を知りました。
primeNumberのソリューションサービスを採用した理由
単に構築を外注してできあがったものを使うという形では、真のデータ駆動経営を深化させていくという理想像と乖離があるように感じていました。わたしたち自身が、データエンジニアリングもデータビジュアライズもできる能力を獲得していきたかったのです。
その点、primeNumberのソリューションサービスは「伴走型」で、わたしたちの内製化に対して、技術やリテラシーのトレーニングといった「技術継承」を含めて支援いただけるということでした。こうした点がプロジェクトのビジョンやニーズと合致し、サービスを活用させていただくことに決めました。
アーキテクチャ概要
インフラ保守にかかる時間を短縮し、より多くの仮説検証課題に向き合う
データ分析基盤の構成について
業務上のデータを一元的に集約し、分析ダッシュボードで可視化する一連の流れを、TROCCO®︎とBigQueryで実現している構成です。今回はお伝えしやすくするために、少し割愛をし、Salesforceを中心に表現しています。
当社では、あらゆる事業業務データはSalesforceにあります。このデータを、データ分析基盤構築運用支援のSaaSであるTROCCO®︎を用いて抽出/転送/変換し、BigQueryに格納します。また、この一連の抽出/転送/加工の流れを、TROCCO®︎のワークフロー形式で管理しています。
さらに、TROCCO®︎ではBigQueryの管理、例えばデータの集計過程でデータマートを生成するような場面等においても自動的にテーブルを作成してくれるなど、多くの点で管理を実施することができています。最終的に、データはTableauで可視化できるようになっています。
特に重要視した点は、データエンジニアの時間の使い道でした。いかにインフラ保守にかかる時間を圧縮し、データ活用のために時間を投下できるか。いかに現場やデータスチュアードが多くの仮説検証に向き合えるか深慮を重ねました。
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[ETL/DWH/BIツール選定のポイント]
- 工数削減: データパイプラインの保守にかかる工数を極力削減する
- 既存リソースとの相性: クラウド、マネージドサービスをフル活用する
- 使いやすいETL: 豊富なコネクタが揃っている
- コスト抑制: 学習コストと経済コストを極力低く抑える
ツール選定
ETLツールは、一段上の扱いやすさから、TROCCO®︎を選定
費用面(省力開発/運用)を中心に、Google Cloudやその他のETL処理関連ツールとの比較を実施。日本語で構成された非常に触りやすいGUIと、必要となるサービスコネクタ(Salesforce等メジャーなSaaSツールや国内マーケティングサービス)の対応状況、学習コストの低さ、エンジニア以外も触れる余地といった観点から、ETLツールはTROCCO®︎に決定しました。
DWHは、BigQuery一択
TROCCO®︎との組み合わせにより省力開発・保守のイメージが湧いたこと、経済コストに優れパフォーマンスへの不安も少なかったことなどから、DWHはBigQueryに決定しました。
BIツールは、Tableauを選定
TableauとLookerそれぞれの良さを比較検討した結果、ビジュアル機能と簡易さ、コミュニティサポートの側面からTableauが適切と判断しました。Lookerについても良さはあるため、データ組織やデータの民主化が成熟した際に利用も検討しています。組織のデータ活用のフェーズに合わせてツールを選定していく、というアプローチです。
TROCCO®︎&BigQuery データ分析基盤導入成果
年間1000時間の工数削減、データ品質の向上、迅速な仮説検証と行動が可能に
データ分析基盤導入による成果について
現在は、データ分析基盤の初期構築と一次リリースまでを完了しています。リリースから1か月程度ではありますが、効果としては主に3つあります。
1点目は、財務分析/原価管理/予実管理の領域における工数削減やデータ品質の大幅な向上。
2点目は、主要KPIの変動要因分析ができるようになったこと。
3点目は、仮説検証と行動後の迅速な検証が可能になったことです。
年間1000時間程度の工数削減
従来スプレッドシートで都度集計や分析してきた時間を、観測範囲で80-90時間/月(1000時間/年)程度の工数削減につなげることができました。また、データ集計と分析の着地精度やデータ品質の向上も効果として挙げられます。
主要KPIの変動要因分析
「財務分析/原価管理/予実管理」といった指標を、ダッシュボードで可視化するしくみをセットアップしたことにより、速やかに主要KPIの変動要因をとらえる動きがしやすくなりました。
迅速な仮説検証と行動のPDCA
仮説立案と行動後の検証といったPDCAを迅速に回せるようになりました。速度としては、従来より数日〜1週間以上スピーディに行動検証が可能となった例が、複数出始めています。
今後のビジョン
今後のビジョンについて
まだ経営変革の第一歩というところではあります。もともと、具体的なゴール設定としては、先ほどの3つの点に加えて、リカーリングプロセスのボトルネックを迅速に見つけるためのダッシュボード組成や、社内の成功モデルの横展開という点、最終的にはコミュニケーションやビジネスプロセスの硬直化の懸念から脱して、お客様の成功とわたしたちの発展につなげていきたいといったビジョンもありました。今後は、こうした点を実現していきたいと考えています。
また、データ活用組織としての取り組みも並行して進めています。データの活用リテラシーを高める組織学習と実践サイクルにも力を入れます。primeNumber社のソリューションサービスが提供するデータエンジニアリングワークショップを活用して、プロジェクトチームのデータエンジニアリングスキルを強化し、自社でもTableau勉強会を開催するなどして、社内に知識を伝播していきます。さらに、推進組織の専任体制化も進める予定です。
システム面では、TROCCO®︎を介したリバースETLで、BQ上で計算したデータの他サービスへの連携も視野に入れています。例えば、Salesforceから取得したデータを集計加工したうえで、再びSalesforceに戻すといった操作がTROCCO®︎の中で自在に定義できます。TROCCO®︎の場合は、リバースであろうがフォワードであろうが、コネクタさえ対応していれば簡単にデータをつなぐことができる、まさに「データのハブ」としての役割を果たしてくれるであろうというところに、価値を認識し始めています。
最後に、今回のデータ分析基盤構築のプロセスと、冒頭でご紹介した『データ駆動経営における3つの重要要素』との対応関係を図式化すると、下記のようになります。
わたしたちサーキュレーション社は、今回の取り組みによって獲得した3つの土台を主軸に、データ活用組織としてビジネスの成長に取り組んでいきます。
株式会社サーキュレーション
業種 | コンサルティング業界 |
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設立 | 2014年1月 |
従業員数 | 235名 (2022年7月末日時点) |
事業内容 | 経営課題や社会課題解決のためのプロシェアリングプラットフォーム事業 |