クッキー規制や個人情報保護の強化が進むなか、企業が安定的かつ継続的に活用できるデータとして注目されているのがファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)です。自社で収集・管理できるファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)の情報は、信頼性が高く、法的リスクも抑えられるため、マーケティングや営業活動の精度を左右する基盤となります。

本記事では、ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)の定義や特徴から、他データとの違い、収集手法、実践的な活用方法までを体系的に解説します。戦略的にデータを扱いたい企業担当者にとって、必須の知識を整理した内容です。

ファーストパーティデータ(1st Partyデータ)とは

ファーストパーティデータ(1st Partyデータ)とは、企業が自社で直接収集し、管理している顧客関連データの総称です。外部の第三者を介さずに取得されるため、信頼性が高く、マーケティングや営業戦略の基盤として活用されています。

代表的な取得手段は次のとおりです。

  • ウェブサイト上の問い合わせフォーム、会員登録、購買履歴
  • 展示会で収集した名刺情報、アンケート結果などのオフラインデータ

収集された情報は、自社のデータベースに一元的に蓄積できるため、部門間での連携や精度の高い分析に活用可能です。収集元が明確で、データの整合性が確保しやすいため、分析や施策設計における信頼性が担保されます。

近年では、第三者のドメインから発行される、サードパーティークッキーの規制強化やプライバシー保護への対応が求められている状況です。そのため、自社で管理可能なファーストパーティデータ(1st Partyデータ)の価値が高まっています。

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)の特徴

ファーストパーティデータは、自社で直接収集した信頼性の高い顧客データです。他のデータと比べて管理しやすいという特徴があります。とくに、収集元が明確でデータの整合性を保ちやすいため、意思決定や施策設計の根拠として活用されやすくなっています。

取得元が明確で信頼性が高い

ファーストパーティデータは、自社で取得経路を明確に把握できる点が特徴です。たとえば、Webサイトでの問い合わせや資料請求、展示会でのアンケート収集といった取得元が明確で信頼性の高いデータです。

内容の整合性を確認しやすく、後工程となる分析やシナリオ設計においても、根拠のある判断につながります。情報の出所が不透明な外部データとは異なり、誤差の少ない基礎データとしてマーケティング全体の精度向上にも期待できるでしょう。

プライバシー規制に適応しやすい

プライバシー保護の流れが加速するなかで、自社で取得・管理する情報ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)は法的リスクが低くなります。

第三者を介在させず、利用目的を明示したうえで同意を得るため、個人情報保護法やクッキー規制などにも柔軟に対応しやすくなります。また、ユーザーとの関係性に基づいて収集しているため、情報の扱いにおける透明性が高まり、顧客との信頼関係を損なわずに運用できる点も重要です。そのため、ファーストパーティーデータは企業にとって安定的かつ持続的に使える情報源と位置づけられています。

長期的に活用できる資産となる

ファーストパーティデータ(1st Partyデータ)は、一時的な広告施策だけではなく、顧客との継続的な関係構築に活かせる情報が蓄積可能です。購買履歴やサイト内行動などの時系列データは、変化の傾向を把握する材料となり、長期的なLTV向上やクロスセル施策の企画にも有用といえます。

使い捨てではない情報として、自社に蓄積されていく点は、他の外部データにはない特徴です。将来の戦略変更や市場環境の変化にも柔軟に対応できる資産といえます。

他のデータと組み合わせることで価値が向上

単体でも有効なファーストパーティデータ(1st Partyデータ)は、他社と連携したセカンドパーティデータ(2nd Partyデータ)や顧客自身が提供するゼロパーティデータと、組み合わせることで活用の幅が広がります。

たとえば、行動データに意向データを掛け合わせれば、見込み度の高いセグメントを抽出することが可能です。自社データの粒度を補完しながら、実行する施策の解像度を高められるため、パーソナライズやターゲティングの最適化が進みます。分析や配信精度を上げたい場合にも効果が期待できます。

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)が重要な理由

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)は、企業が独自に保有する唯一の顧客情報として、事業運営の根幹を支える資産です。データの信頼性や管理性だけでなく、社内の意思決定や施策展開において、再現性のある判断基準を提供します。

また、サードパーティークッキーの規制や個人情報保護への対応が求められるなかで、外部依存からの脱却を実現できる点も重要です。単なるマーケティング活用にとどまらず、組織全体のデータ活用基盤としての価値が高まっています。

部門間での連携を促進し、営業・企画・経営層が共通の指標を持てる環境づくりにもつながります。蓄積された情報をもとに、収益性の高い顧客の特性を明確化すれば、アプローチ先の優先順位やプロダクト戦略にも反映可能です。

ファーストパーティーデータとセカンド・サードデータとの違い

ここでは、ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)と比較されることの多いセカンドパーティーデータ(2nd Partyデータ)、サードパーティーデータ(3rd Partyデータ)との違いを整理します。

セカンドパーティーデータ(2nd Partyデータ)

セカンドパーティーデータとは、他社が自社で収集したファーストパーティーデータを、パートナー企業などの信頼関係を前提として提供・共有されるデータです。主な取得経路としては、業務提携先や広告ネットワークとの契約を通じたデータ提供が該当します。

たとえば、メディア運営企業が収集した閲覧データや購買プラットフォームが保有する購買傾向データなどが代表的です。取得元が明示されているため、サードパーティーデータよりも精度や一貫性に優れています。

ただし、自社で直接収集しているわけではないため、ファーストパーティーデータと比べると、活用範囲の自由度や用途制限があるケースも少なくありません。契約内容や提供範囲を明確にしたうえで、補完的なデータソースとして活用することが一般的です。

サードパーティーデータ(3rd Partyデータ)

サードパーティーデータは、企業と直接関係のない第三者が収集し、提供する外部データです。主にリサーチ会社やデータプロバイダーがWeb上の行動履歴やアンケート結果をもとに収集しています。

特定の利用者と接点を持たずに得られるため、広範囲な属性情報を取得できるという点がメリットです。一方で、収集経路が不透明になりやすく、データの正確性や鮮度にばらつきが生じる傾向があります。

とくに近年は、個人情報保護の規制が強化され、収集や提供の条件が厳しくなっています。

項目ファーストパーティーデータセカンドパーティーデータサードパーティーデータ
取得元自社チャネル(Web、アプリ、イベントなど)提携先企業が自社で収集したデータ第三者機関が独自に収集した外部データ
収集方法の把握自社内で取得方法を管理できる取得元は明確である。しかし、収集方法の詳細は自社で選べない取得経路が不透明になる場合がある
データ精度・信頼性高い(取得元が明確で、対象も自社の見込み顧客)比較的高い(提供元との関係性に依存)ばらつきがある(対象や収集条件が不明なケースがある)
管理・運用の自由度自社で全て管理できる契約条件や利用範囲に制限がある自由度は低い(提供側の仕様に依存することが多い)
主な活用シーンパーソナライズ、LTV分析、CRM施策などターゲティング強化、リーチ拡大認知拡大、広告配信、大規模な市場分析
法的リスク小さい(同意管理や利用目的の明示が可能)契約内容の把握が不可欠となっている高い(同意不備や規制違反のリスクがある)
導入ハードル自社の環境次第で柔軟に対応可能データ連携や契約手続きが前提となっている購入や使用許可の取得が必要
今後の有効性高まっている(クッキー規制の影響を受けにくい)場面によって有効といえる。しかし、連携先の質に左右される減少傾向(規制強化により活用が制限されつつある)

ファーストパーティデータ(1st Partyデータ)の主な収集方法

ファーストパーティデータの取得経路は大きく「オンライン」と「オフライン」に分けられます。チャネルや顧客接点の性質によって、収集できる情報の種類や精度も異なります。ここでは、それぞれの代表的な手法をみていきましょう。

オンラインでのデータの収集方法

法人向けのオンライン収集では、自社のWebサイトやホワイトペーパーのダウンロードページを活用します。見込み顧客が情報収集の目的でアクセスするため、取得される情報は業務関連性が高く、営業活動に直結しやすくなります。

主に収集される情報は以下のとおりです。

  • フォーム入力によって取得される会社名、氏名、部署、メールアドレス
  • お問い合わせや資料請求時に入力される導入検討の背景や課題

また、Web上の行動データも重要です。

  • 製品紹介ページの閲覧履歴や、セミナー申込の有無
  • ページ遷移や滞在時間の長さ

入力情報と閲覧履歴を照合することで、興味関心のある製品領域や検討段階を推測できます。たとえば、営業リストの精査に活用すれば、優先順位の判断精度を高めることが可能です。

オフラインでのデータの収集方法

オフラインでの収集は、商談や展示会、セミナーなどの対面機会を通じて行います。営業担当者が直接やり取りすることで、業務に即した情報を正確に把握できます。

主に収集される情報は以下のとおりです。

  • 名刺交換によって得られる企業名、役職、部署名
  • セミナーやイベント申込書に記入された業種、関心分野

加えて、営業活動のなかで以下のようなデータも蓄積されます。

  • ヒアリング内容に基づく課題や導入予定時期
  • 面談履歴や過去の提案内容

収集した情報は、営業担当者がSFAやCRMに入力すれば、社内で共有可能です。対面で取得した、担当者の役割や導入の背景などは、見込み顧客の検討状況を整理する材料となります。

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)の活用方法

ファーストパーティーデータは企業のマーケティング戦略において、営業支援や顧客維持、収益性向上などさまざまな目的で活用されます。ここでは、代表的な活用方法を4つみていきましょう。

パーソナライズドマーケティング

ファーストパーティデータに含まれる属性情報や行動履歴をもとに、対象企業ごとに訴求を変える対応が可能です。たとえば、管理職には意思決定を後押しする導入事例を案内し、現場担当者には製品の具体的な活用方法を提示するなど、役割に応じた調整が有効です。

資料請求や閲覧履歴を分析すれば、関心領域や検討フェーズを把握できます。配信タイミングと内容を合わせることで、メルマガやバナー広告の反応率が高まり、営業部門のアプローチにも連動させやすくなります。

リターゲティング広告の精度向上

Webサイト上で収集された閲覧履歴や滞在時間などの行動データをもとに、広告配信の対象企業を絞り込めます。製品やサービスページへのアクセス頻度や閲覧傾向を分析することで、関心の高い企業をリストアップ可能です。

自社で収集したファーストパーティデータを活用するため、外部の属性推定に頼る必要がなく、精度の高いセグメント抽出ができます。関心度の高い企業に限定して広告を配信すれば、クリック率や再訪問率の向上が見込まれます。

LTV(顧客生涯価値)の向上

取引履歴やサービス利用状況などの継続データを時系列で整理し、顧客ごとの売上傾向や契約継続性を把握できます。担当者との応対履歴や問い合わせ記録、商品構成の変化などを組み合わせて分析すれば、継続提案や更新交渉の時期を具体的に特定可能です。

過去の購入金額や期間別の利用頻度に基づいて、アップセル・クロスセルの見込みが高い企業を優先的に抽出できます。長期的に安定した関係を維持することで、年間売上と利益率の両方に良い影響をもたらします。

過去データをもとに、未来の行動を予測

Webサイト上で蓄積された行動データを時系列で整理すれば、顧客企業の検討状況を把握できます。資料請求やフォーム送信の有無に加え、ページ閲覧の頻度や順番を確認すれば、現在の関心領域や検討段階を判断可能です。

特定の製品ページに繰り返しアクセスしている企業は、比較検討を進めている可能性があります。反対に、急にアクセスが止まった企業は、優先度が下がったと推測できます。企業ごとの動きを分類すれば、受注確度の高い企業を抽出することが可能です。

ファーストパーティーデータ(1st Partyデータ)の活用戦略ステップ

ここでは、ファーストパーティデータを効果的に活用するための段階的なプロセスについて解説していきます。

ファーストパーティーデータを実際の業務に活かすためには、集めた情報を整理し、活用できる状態に整える必要があります。その後、分析を行い、施策として実行する流れを確立することが重要です。

1. データの収集と統合(データ基盤の構築)

Webフォームや営業日報などに記録された顧客情報は、部門ごとに保有されており、形式や保存場所が統一されていないケースが多くあります。

分析や施策に活用するためには、情報の収集元を明確にし、項目ごとの形式を統一したうえで、データベースに集約しなければなりません。MAやCRM、SFAなど既存のツールと連携し、部門間で共有可能な基盤を構築することが重要です。

2. データの整理・クレンジング(データの品質向上)

統合されたデータは表記の揺れや重複、入力ミスが含まれているケースもあります。たとえば、「株式会社」を省略した社名表記や同一人物の情報が複数登録されている状態では、精度が低くなってしまうといえるでしょう。

精度の低いデータを使った分析は、営業活動の失敗や機会損失を引き起こす可能性があります。そのため、入力ルールの標準化と定期的なクレンジングによって、データの整合性と信頼性を高めなければなりません。

3.データ分析とインサイトの抽出(顧客理解の深化)

業種や役職といった属性データと資料請求履歴やページ閲覧数といった行動データを統合し、数値として分析します。

対象ごとの傾向を可視化することで、関心のあるテーマや検討の深さを把握できます。頻度や回数に着目すれば、意思決定に向けた動きの有無も明確にすることが可能です。

BIツールやCRMのレポート機能を用い、実務に反映可能な判断材料を導き出します。BIツールやCRMの分析機能を使い、再現性のある仮説として整理することで、施策に落とし込める情報が得られます。

4.施策の実施(データドリブンマーケティング)

分析で得られた示唆をもとに、対象企業の状態に応じた施策を設計し、実行します。検討段階が浅い企業には、課題喚起につながる資料を案内し、導入が近い企業には製品の比較情報や提案書を送付するといった施策が考えられます。

施策の実施後は、反応の有無や内容を記録し、結果を次回の設計に反映しましょう。行動履歴に基づいて優先順位と対応内容を判断することで、属人的な対応を排除し、継続的に成果を出す運用体制を構築できるでしょう。

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まとめ

​ファーストパーティーデータは、信頼性の高い顧客情報として、BtoBにおけるマーケティングや営業の基盤となります。自社で取得・管理できるため、プライバシー規制にも対応しやすく、長期的な資産として活用可能です。

収集から施策実行までのプロセスを確立することで、属人的な対応を排除し、精度の高い意思決定や継続的な成果創出が可能です。外部環境の変化にも強い、持続性のある情報活用体制が求められます。

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