インターネット上にはさまざまなデータが存在しており、ウェブサイト内部からデータを自動的に抽出するプログラム技術の1つがWebスクレイピングです。企業のマーケティング調査、価格比較、競合分析など、さまざまな用途で活用されています。しかし、「Webスクレイピングとは何か?」「どのように活用できるのか?」「法的な問題はないのか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、Webスクレイピングの基本概念からAPIとの違い、メリット・リスク、具体的な活用シーンまで詳しく解説します。初心者の方でも理解できるよう分かりやすく説明するので、ぜひ最後までご覧ください。
Webスクレイピングとは
Webスクレイピングとは、プログラムを使用してWebサイト上の情報を自動的に取得・解析する技術のことです。通常、手作業で収集するには膨大な時間がかかるデータを短時間で効率的に取得できるため、多くの企業や個人が活用しています。
たとえば、以下のような用途として活用されています。
- 価格比較サイトの情報収集
- ニュース記事の収集
- マーケティングの市場調査
Webスクレイピングを行う際には法的なリスクやサイト側のルールを守ることが重要です。そのため、無作為に情報の取得などを行うと事業や会社への損害が発生してしまう可能性があるので、実施をする際には気を付ける必要があります。
WebスクレイピングとAPIの違いとは?
WebスクレイピングとAPIは、同じ役割を持つように見られがちですが、実際は用途や機能が異なります。Webスクレイピングは、プログラムを用いてWebページを解析し、表示されている情報を抽出する手法です。一方、API(ApplicationProgrammingInterface)は、サイト運営者が提供する正式なデータ取得手段であり、決められた形式でデータを取得できます。
スクレイピングにはAPIが用意されていないサイトでもデータを取得できる利点がありますが、技術的な制約や法的リスクを伴う点に注意しなければなりません。
〇WebスクレイピングとAPIの比較
Webスクレイピング | API | |
データ取得方法 | WebページのHTMLを解析し、ページ情報データを抽出 | サイト運営者が提供するAPIを通じてデータを取得 |
データの提供 | 一般公開されているページから取得 | 事前に定義されたフォーマットで提供 |
使用の自由度 | APIがないサイトでもデータ収集が可能 | 提供されているAPIの範囲内でのみデータ取得可能 |
リアルタイム性 | ページの更新に依存(最新情報を取得可能) | APIの更新頻度に依存 |
法的リスク | 著作権侵害や不正アクセスのリスクがある | 公式に提供されているため、法的リスクに影響はない |
サーバーへの負荷 | リクエストがサイトに負担をかける可能性がある | サーバー負荷を考慮した設計がされている |
開発のしやすさ | HTMLの構造変更に対応が必要 | APIの仕様に従えば比較的簡単 |
Webスクレイピングのメリット
Webスクレイピングには、企業や個人がデータ収集を効率化するための多くのメリットがあります。とくに、手作業では時間がかかる競合の価格調査データ収集などを自動化できるため、市場の情報収集を短時間で取得できるというのが大きな強みとなります。
また、自動的に情報が更新されるため、市場動向のスピーディな把握や競合分析にも役立ちます。以下で、メリットについてさらに詳しく解説します。
効率的にデータ収集ができる
Webスクレイピングを活用することで、検索エンジンから手動でデータの収集をするよりも圧倒的に効率的にデータを収集できます。たとえば、数千ページに及ぶオンラインショップの商品情報を手作業で取得するのは非常に手間がかかりますが、スクレイピングを使えばそれも数分で完了します。
さらに、一度作成したスクリプトを使えば、定期的にデータを取得し更新することも可能です。これによりデータ収集の手間を大幅に削減し、他の業務にリソースを集中できます。
APIが提供していないデータも手に入る
APIは提供されたシステム間のデータ取得に便利ですが、検索エンジン上にあるWebサイトから情報を取得するには難しい点があげられます。とくに、競合他社の価格情報やニュース記事、特定の商品の口コミなど、APIでは難しい場合にはWebスクレイピングが有効な手段となります。
たとえば、多くの求人サイトはAPIを提供していないか、提供されていても一部の求人情報に限られます。Webスクレイピングを活用すれば、特定の業界や職種の求人情報を自動収集し、給与相場や求人数の変動を分析できます。
ただし、スクレイピングを行う際にはサイトの利用規約や法的なルールを確認し、適切な範囲でデータを取得することが重要です。
最新情報の収集に役立つ
Webスクレイピングでは、株価の変動、ニュース速報、SNSのトレンド情報など、頻繁に更新されるデータの収集に適していると言えます。
たとえば、競合企業の新商品情報や市場のトレンドを把握するために、定期的にWebサイトをチェックするのは時間がかかります。しかし、スクレイピングを活用すれば、自動的に最新情報を取得し、データを保存することが可能になります。
また、スクレイピングスクリプトを定期的に実行すれば過去のデータと比較することも容易になり、傾向分析や予測にも活用できます。とくに、価格変動の監視や需要予測のためのデータ収集には非常に有効な手段です。
ただし、Webサイトに過度な負荷をかけないようにし、適切な間隔でリクエストを送るなどの工夫が必要です。
Webスクレイピングの法律上の問題
ここまでWebスクレイピングの便利な点をご紹介してきましたが、一方でその使用には法律的なリスクが伴うことを事前に理解しておく必要があります。とくに、無断でデータを取得する行為は、著作権の侵害や不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。
また、スクレイピングによってWebサイトのサーバーに過度な負荷をかけてしまうと、サイト運営者にとって迷惑行為となることがあります。サイト側が設けている利用規約に違反すると法的措置を取られてしまうリスクもあるため、慎重に運用しなければなりません。
ここでは、スクレイピングに関する主な法律上の問題として、
- 著作権侵害の可能性
- 対象サイトへの負荷
に関して詳しく解説します。
著作権侵害の可能性がある
Webスクレイピングを行う際に最も注意すべき点の1つが、著作権の問題です。Webサイト上のコンテンツには著作権が適用されている場合があり、無断で情報を取得し、再利用すると著作権侵害に該当する恐れがあります。
たとえば、ニュース記事やブログの文章、画像などを許可なく収集・転載することが著作権法に抵触する可能性があるのです。取得したデータを第三者に提供したり、商用目的で利用する場合には注意が必要です。
スクレイピングを行う際には、対象サイトの利用規約を確認し、著作権を尊重することが重要です。
Webスクレイピング対象サイトに負荷がかかる可能性がある
Webスクレイピングでは、プログラムを用いて短時間で大量のデータを取得するため、対象サイトのサーバーに負荷をかけるリスクがあります。短時間に高頻度のリクエストを実施することで、サーバーの処理能力を圧迫し、最悪の場合サイトの動作に影響を与えることもあります。
こうした負荷を防ぐため、多くのサイトでは「robots.txt」というファイルを用いて、スクレイピングの可否や制限を設定しています。このファイルに記載されているルールを無視してスクレイピングを行うと、サイト側からアクセスを禁止される可能性があるため、事前に閲覧して遵守することが求められます。
適切なリクエスト間隔を設定するなどの工夫を行い、サイトに過度な負担をかけないように配慮することも重要となります。
Webスクレイピングの活用場面
Webスクレイピングで収集したデータはマーケティングでの施策や競合分析、価格調査などさまざまな場面で活用されています。
たとえば、市場調査では消費者の関心があるトレンドを分析し、競合の価格戦略を把握するために活用されます。また、自社のオウンドメディアと競合サイトを比較し、コンテンツの方向性を決定する際にも有効です。
ここでは、具体的な活用事例として
- マーケティング市場調査
- 競合他社の価格情報収集
- オウンドメディアのベンチマーク
- 不動産情報調査
について詳しく解説します。
マーケティング市場調査
Webスクレイピングを活用すれば、市場の最新トレンドや消費者の関心を把握するためのデータを自動収集できます。SNSやECサイト、ニュースメディアからデータを取得し、マーケティング戦略に活かすことが可能です。
たとえば、SNSの投稿データを分析することで、特定の商品やサービスに対する消費者の評価や流行を把握できます。また、商品レビューの収集を行い、ユーザーのニーズや不満点を分析することで、商品開発やマーケティング施策の改善に役立てることもできます。
さらに、競合のWebサイトや広告データを収集することで、どのようなプロモーション戦略を展開しているのかを把握し、自社のマーケティング活動に活用することができます。
競合他社の価格情報の収集
オンラインショップやオンラインサービス業界では、競合の価格情報を把握することが重要です。Webスクレイピングを活用すれば、リアルタイムで競合他社の価格変動を監視し、自社の価格戦略に活かすことができます。
たとえば、航空券やホテルの予約サイトでは競合の料金が頻繁に変動するため、スクレイピングを利用して自動的にデータを取得し、自社の価格を最適化することが可能です。また、オンラインショップの商品価格をスクレイピングし、競合との価格差をリアルタイムで比較することで、ダイナミックプライシング(市場動向に応じた価格設定)を実現できます。
価格競争の激しい業界では、定期的なデータ取得を行い、適切な価格調整を行うことが競争力向上につながります。
ベンチマークしたオウンドメディアの情報を収集
Webスクレイピングは、競合のオウンドメディアと自社のコンテンツを比較・分析する際にも有効です。主に、競合がどのようなトピックを扱い、どのような記事が人気を集めているのかを把握するために活用されます。
たとえば、特定の業界のニュースメディアやブログのデータを収集し、どのキーワードがよく使われているかを分析することで、SEO対策の方向性を決めることが可能です。また、競合サイトの新着記事やユーザーの反応を継続的にモニタリングすることで、トレンドを先取りしたコンテンツ戦略を立てることもできます。
スクレイピングを活用することで、オウンドメディアの成長戦略をよりデータに基づいて判断し、進めることが可能になります。
不動産情報調査
不動産業界では、物件情報の収集が非常に重要です。Webスクレイピングを活用すれば、複数の不動産サイトから価格や物件情報を自動取得し、比較・分析することが可能になります。
たとえば、賃貸物件の相場を調べるために特定エリアの賃料データを収集し、地域ごとの価格差を可視化することができます。また、新築マンションの販売価格や間取りの情報を取得し、競合の動向を分析することも可能です。
不動産投資家や不動産会社にとっては、市場の最新情報を素早く把握することで適切な投資判断ができるため、Webスクレイピングは有効なデータ収集手段となります。
まとめ
本記事では、Webスクレイピングの基本やメリット・注意点について解説しました。Webスクレイピングは、データ収集を効率化し、競合分析やマーケティングに役立つ強力な手法ですが、著作権やサイト負荷の問題には注意が必要です。
また、企業がデータ収集を行う際には、適切なデータ処理基盤を構築することが重要です。そこでおすすめなのが、データ統合を効率化するプラットフォーム「TROCCO」です。TROCCOを活用すれば、収集したデータを整理し、ビジネスに活かせる形で運用できます。
Webスクレイピングを活用する際は、適切なツールと組み合わせ、正しくデータを活用していきましょう。
