Zendeskナレッジベースは、多くの企業でカスタマーサポートのヘルプページとして導入されており、顧客の自己解決を促進し、サポート業務の効率化に大きく貢献しています。FAQや製品マニュアルなどを集約することで、顧客は24時間365日、必要な情報を自ら見つけ出すことができます。

このナレッジベースに蓄積されたデータは、単なる「よくある質問」の集まり以上の価値を秘めています。例えば、どの記事がよく読まれているか、どのようなキーワードで検索されているか、といったデータは、顧客の疑問点や製品への関心事を直接的に反映しています。これらのデータをGoogle Analyticsなどの行動ログや、Zendesk Supportのチケットデータ、CRM/SFAに蓄積された顧客情報と組み合わせることで、「どの顧客層が、何に、どの程度困っているのか」を深く理解し、プロアクティブなサポートやプロダクト改善に繋げることが可能です。

本記事では、クラウドETLサービス「TROCCO」のConnector Builderを利用し、ノーコードでZendeskナレッジベースのAPI連携・データ連携を実現する手順を具体的に解説します。

どういう場合にETLツールの利用が適しているか?|公式分析機能とETLツールの使い分け

Zendeskは公式の分析機能「Zendesk Explore」を提供しており、ナレッジベースの基本的な利用状況を把握することが可能です。一方で、

  • Google Analytics等の外部データと紐づけて、ユーザーの流入元から自己解決までの道のりを分析したい
  • ナレッジベースの閲覧状況と、その後の問い合わせ(チケット起票)の相関関係を分析し、問い合わせ削減に貢献している記事を特定したい
  • 取得したデータを自由に加工し、Looker StudioやTableau等のBIツールで独自のダッシュボードを構築したい
  • ノーコードによる迅速な業務可視化を行いたい
  • データウェアハウス(DWH)に他のビジネスデータと合わせてナレッジベースのデータを集約し、一元管理したい

といった場合は、ETLツール「TROCCO」との連携がより適しています。

「TROCCO」はデータ転送だけでなく、データのフィルタリング、フォーマット変換、集計、マージなどの加工処理も一連のワークフローとして自動実行が可能です。

これにより、データを最適な形に整えられ、さらに様々な部門向けの分析やレポート作成に活用するデータを作成・転送することができます。

この記事の執筆時点では「TROCCO」に公式のZendeskナレッジベースコネクタはありませんが、転送元HTTP・HTTPSを利用すれば、ZendeskナレッジベースのAPIをGUIで設定しながら手軽に自作コネクタを作成することができます。

TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタとは?

TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタは、公式コネクタが用意されていない外部サービスについて、REST API形式でデータを取得できる機能です。

このコネクタを利用すれば、URLを指定するだけでデータの定期取得からデータ基盤への転送までを自動化できます。

主な特徴は以下の通りです。

  • セキュアな認証設定: APIキー、Bearer Token、OAuth等の認証方式に対応
  • 柔軟なパラメータ設定: クエリパラメータ、ヘッダー、リクエストボディの自由な設定
  • ページング設定: 大量データの自動分割取得に対応可
  • スケジュール実行: 定期的な自動データ取得
  • データ変換機能: JSONレスポンスの自動パース・フラット化

これにより、Zendeskナレッジベースが提供するAPIより取得したデータをETLパイプラインの一部として組み込むことができます。

※ 転送元HTTP・HTTPSコネクタは TROCCO の Advanced プラン以上のプランでご利用いただける機能です。

利用するデータ

今回はZendeskナレッジベースで管理されている記事情報の取得を行います。

APIリファレンス

概要

https://developer.zendesk.com/api-reference

Articles API

https://developer.zendesk.com/api-reference/help_center/help-center-api/articles

【実践編】Zendeskナレッジベースと転送元HTTP・HTTPSコネクタでデータ連携を実現

ここからは具体的に、TROCCOの転送元HTTP・HTTPSコネクタを利用して、Zendeskナレッジベースに登録されているCTAを自動取得・転送する設定手順を解説します。

事前準備

まず、記事取得にあたり、Zendeskナレッジベース側で認証情報の取得を行います。

APIを利用するに当たっての認証方法としてトークン方式とOAuth方式がありますが、今回はトークン方式の取得を行います。Zendesk管理画面にログインした後、サイドバーより「API」と検索したのち、表示された「APIトークン」をクリック、APIトークン取得画面に遷移します。

画面右上の「APIトークンを追加」をクリックし、APIトークン作成画面に遷移します。
画面に従い必要情報を入力し、右下の「保存」をクリックしてください。
「トークン」に利用できるAPIトークンが表示されるので、手元に控えてください。

※作成したAPIトークンは一度しか表示されないため、必ず保存してください。

転送設定の作成

次に、TROCCO上で実際にZendeskナレッジベースの記事情報を取得するための手順を解説します。

STEP1:転送元・転送先の設定

  1. TROCCOのメニューから [データ転送] → [転送設定] を開きます。
  2. [新規転送設定作成] ボタンをクリック。
  3. 「転送元」で HTTP・HTTPS を選択します。
  4. 「転送先」では今回は Google BigQuery を選択します。

転送元の設定

記事データを取得するためのエンドポイントURLは以下となります。

api/v2/help_center/ja/articles.json

このエンドポイントURLと、契約しているZendeskナレッジベースのドメインを組み合わせた値を、HTTPコネクタの項目”URL”に入力します。

例:”https://samplecompany1234.zendesk.com”というドメインで利用している場合、”https://samplecompany1234.zendesk.com/api/v2/help_center/ja/articles.json”と入力

他の項目は以下のように入力します。

項目
URL{用意したURLを設定}
HTTPメソッドGET
文字エンコーディングUTF-8
入力ファイル形式JSON Path
ルート$.articles
ページング設定オフセットベース
from/offsetパラメータ名page
toパラメータ(入力不要)
リクエスト回数{記事数に応じた値}
from/offsetパラメータ初期値1
1リクエストで進めるfrom/offsetパラメータの数1
パラメータ1行目名前:per_page値:50
HTTPヘッダ1行目キー:Authorization値:basic {取得したAPIトークン}

転送先の設定(Google BigQuery)

転送先の設定は次のドキュメントを参照して設定してください。

設定後、 [次のSTEPへ] ボタンをクリックします。

[自動データ設定の選択] [自動データ設定を実行] を選択し [決定して次へ進む] をクリックします。

STEP2:スキーママッピング

  1. ZendeskナレッジベースAPIより記事データが取得され、テーブルのプレビューが表示されます。
  1. TROCCOが自動的にカラム名・データ型を推論します。
  2. 必要に応じてカラム名を変換したり、データ型の変換を行ってください。

STEP3:設定の確認・保存

  1. 入力内容を確認したら、画面右下の [確認画面へ] をクリックします。
  2. 設定内容が表示されるので、問題がなければ画面右下の [保存して適用] をクリックして設定を保存します。
  3. 設定完了後、転送設定の詳細画面に戻ります。
  4. 右上の [実行] ボタンを押し、手動実行でデータ転送のテストを行います。

ジョブのログ画面でステータスが「SUCCESS」になれば、データ取得とBigQuery転送が正常に完了しています。
BigQuery上で確認すると、以下のようにデータが作成されていることが確認できます。

又、今回はBigQueryへの転送を例示いたしましたが、お客様のニーズに応じて、Google Sheetへの出力や、CSV形式でのGoogle Driveへの出力も可能となっております。

定期実行の設定

定期ジョブ化することで分析データを常に最新状態に保つことが可能となります。

  1. 転送設定画面の [スケジュール設定] タブを開きます。
  2. [スケジュールを追加] をクリックしスケジュール登録を行います。

また、実行完了の通知をSlack/メールへしておくと運用がスムーズです。

ZendeskナレッジベースAPIの実践的な活用ユースケース

今回は記事データを例に取得をしましたが、TROCCOを用いてZendeskナレッジベースのデータをBigQueryなどのDWHに蓄積すると、社内のさまざまなデータと掛け合わせた分析・自動化が実現します。
ここでは代表的なユースケースを紹介します。

ヘルプセンターコンテンツの効果測定と改善 

  • PV数やユーザー行動ログと記事データを組み合わせ、どの記事が自己解決に貢献しているかを可視化します。これにより、評価の低い記事や閲覧されていない記事を特定し、リライトや削除といった改善アクションの意思決定に繋げることができます。

検索キーワード分析によるコンテンツ拡充 

  • ヘルプセンター内での検索ログと記事データを組み合わせることで、「ゼロ件ヒットキーワード(検索されたが合致する記事がなかったキーワード)」を抽出できます。これはユーザーが求めているのに存在しないコンテンツのヒントであり、新規記事作成の優先順位付けに大いに役立ちます。

プロダクトのUI/UX改善点の発見 

  • 「特定の機能のエラー対処法」など、ある特定のトピックに関する記事の閲覧数が突出している場合、その機能がユーザーにとって分かりにくい、あるいは不具合が多い可能性を示唆します。この客観的なデータを開発チームにフィードバックすることで、勘や経験に頼らないデータドリブンなプロダクト改善を実現します。

可視化の実現例:ヘルプセンターコンテンツの効果測定と改善 

最後に、ユースケース例の一つである「ヘルプセンターコンテンツの効果測定と改善 」について、実際に可視化を行ったサンプルダッシュボードを共有いたします。

本ダッシュボードは、今回取得した記事情報に加え、上位階層にあたるカテゴリー・セクションの情報と、事前にZendeskナレッジベースから取得した行動ログを用いて実現したものです。

以下のグラフは日別の新規記事作成状況と、執筆者の割合の見える化です。

どのセクション・カテゴリの記事が増加傾向にあるのか、どの執筆者が特に記事作成に貢献しているかなどを一目で把握することが可能となります。
また、以下グラフのように、ユーザの行動ログと組み合わせることにより、各セッションごとのアクセス数推移や平均来訪者数といった情報の見える化と自動更新を構築することが可能となります。

これらの情報はナレッジベースの利活用度を図る上で非常に重要な数値となり、「具体的に来訪者数を高めるためにはどのような施策を行えば良いのか」という検討から、その実施前後でどのように来訪者数が変化したかなどを測定するために活用することが可能です。

行動ログ取得にはGoogle Analytics4に加え、primeNumberが提供しているWeb行動ログSDKでも実現可能です。

興味がある場合はお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 複数言語のヘルプセンターに対応できますか?

A. はい、対応可能です。パスに含まれるロケール部分(例: /ja/)を、転送設定の変数機能を使って切り替えたり、言語ごとにエンドポイントを作成したりすることで、複数言語のコンテンツを柔軟に取得できます。

Q2. Zendesk Supportのチケットデータと組み合わせることはできますか?

A. はい、可能です。TROCCOはZendesk Supportの公式コネクタも提供しています。ヘルプセンターのデータとチケットデータを同じDWHに転送・統合することで、「どの記事を読んだユーザーからの問い合わせが多いか」といった、より高度な分析が実現できます。

Q3. データの更新頻度はどれくらいに設定できますか?

A. TROCCOのスケジュール実行機能で柔軟に設定可能です。日次や週次でのバッチ実行はもちろん、高頻度な更新が必要な場合は時間単位での実行も設定できます。

まとめ

Zendeskナレッジベースを用いて「記事を執筆し、公開する」という活動は、公開しただけではその価値が十分にお客様に届いているかを確認することは困難です。

Zendeskナレッジベースのデータを収集し、他データと掛け合わせて集計することではじめて「記事を執筆し、公開する」という活動の振り返り・測定を行うことが可能となります。

その結果、「どのような記事が読まれるのか、どのような記事だとお客様に価値を届けることが出来るのか」という本質的な価値を考え、達成することが可能となります。

そのためにはデータ統合が必要となりますが、TROCCOのHTTP・HTTPSコネクタを利用すれば、こうしたZendeskナレッジベースのデータをノーコードで自動取得し、BigQueryなどのDWHへ転送できます。
さらに、ワークフロー機能を組み合わせることで、SQLによるデータ加工や集計など、一連のデータ整備を自動化することも可能です。

社内に蓄積された多くのビジネスデータを活用し、データドリブンな意思決定を支える仕組みを、TROCCOで構築してみるのはいかがでしょうか。
上記お取り組みをご検討の方は、ぜひ TROCCOの無料トライアル をお試しください。

※転送元HTTP・HTTPSコネクタは、TROCCO の Advanced プラン以上のプランでご利用いただける機能です。

ぜひ無料トライアルでその使いやすさを体験してみてください!

primeNumber編集長

primeNumberのブログを担当している編集長