DXは、現代ビジネスにおいて避けて通れない課題です。DXの核心にはデータの活用があり、適切なデータ活用の基盤構築が事業価値の向上に直結します。

今回のセミナーでは、DXの実現におけるデータ活用基盤の重要性、データ分析基盤のプロジェクトにおける具体的な課題と解決策を解説していただきました。

また、データエンジニアリングの効率化を実現するサービス「TROCCO®」を紹介し、データ活用による事業価値向上の可能性を探ります。

以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひご覧ください。

  • DXの推進で、どのようにデータ活用基盤を設計し、運用すべきか迷っている
  • データ分析基盤のプロジェクトにおいて、要件調整やデータ連携に関する課題を解決したい
  • データエンジニアリングの工数を削減し、ビジネスにおけるデータ活用を効率化したい

なお、当日のセミナーはこちらからご覧いただけます。

※本イベントレポートの内容は2024年2月当時のものです。TROCCO®の利用や接続オプション等の利用の詳細について知りたい方はprimeNumberまでお問い合わせください。
https://TROCCO.io/inquiry/new

講演者紹介

根本 崇司 / 株式会社Sharing Innovations CTO

先端研究開発系ベンチャーの初期メンバーとしてスタートし、大手飲食店検索企業での大規模自社データ基盤構築をへて、独立(共同代表)。その後ベトナム開発子会社を立ち上げて代表を兼任。2019年にベトナム子会社とともに、執行役員兼CTOとして現職に移籍。現職では、全社の技術力の向上施策などを実施。平行して、顧客に対してAWS、Snowflake、 TROCCOなどのクラウドソリューションを組み合わせたデータ活用基盤を提案している。

渕橋 未夢 / 株式会社Sharing Innovations Cl事業本部  クラウドPFチームリーダー

2018年に株式会社Sharing Innovationsに入社。大手グローバル企業の大規模システムの運用保守、スマートフォン向けアプリの受託開発等に従事。2021年よりCI事業本部にて、ナショナルクライアント向けに、クライアントの自社データを用いてTableau、Snowflake、TROCCO®などのソリューションを活用したDX推進支援をおこなう。

塚本 翔太 / 株式会社primeNumber パートナーアライアンス  Account Executive

株式会社レゾナック、吉積情報株式会社入社。Google Cloud専門のSierとしてクラウドエース株式会社の立ち上げとGoogle Cloudの技術を使った『Cmosy』の新規事業立ち上げを経験。2023年株式会社primeNumber入社。Snowflake、AWS 、GCPのSierの企業を中心としたアライアンス業務を担当。

SECTION1

SECTION1では、根本氏に、データ活用の視点から見たDXの実現について、データ活用基盤のKPIの考え方について解説していただきました。

根本氏:「今日のテーマは、DXの重要性と実装についてです。

まずDXが我々の事業でどのような位置を占めるべきか、どのように捉え、組み込んでいくべきかについてお話しします。

DXではデータが重要な要素となりますが、活用基盤の価値はどのように判断するかという問題についても議論します。

これらはDXの進行に伴い、より重要性を増している課題であり、価値の判断が難しい部分もあるため、解決策についても具体的にお話しします。」

DXを改めて考える

根本氏:「デジタル変革やDXを再考するためには、まずDXの定義を理解することが必須です。

事業改善の観点から考えると、データ活用基盤の示す位置づけや値が重要な意味を持ってきます。

データ活用基盤は事業展開においても重要な役割を果たし、その価値は事業価値を判断する上でなくてはならない要素となります。これが今日の話の要約です。」

根本氏:「DXの定義は、経産省の情報通信白書をはじめとして多くのものが存在します。

改めてDXとは、『企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引し、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を使用して、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを通じて、ネットとリアルの両面での顧客体験の革新を図り、価値を生み出し、競争力を確立すること』です。

しかし、この定義は難解です。

野村総研が提供する、よりわかりやすい定義を見てみると、『デジタル技術を活用してビジネスプロセスを改善し、ビジネスモデルそのものを変革し、企業文化も変えていき、最終的に競争力の優位性を確立する』と述べられています。

さらに、海外のケースを見てみると、マッキンゼー&カンパニーも同様の定義をしています。DXとは、基本的に『デジタル技術の活用と、その過程における情報の電子化、デジタル化』を指します。これらによって、事業を改善する機会を取り込んでいくのです。

そして、次の段階として、電子化されたデータを利用して事業のプロセスそのものを改善していくことをデジタライゼーションと呼んでいます。

最終的に目指すべきところはDXです。この段階では、新たな価値の創造や、事業の創生や転換を行っていくことになり、これが大変大掛かりな変革につながるのです。」

根本氏:「デジタル技術を活用し、情報を電子化するプロセスを実現することで事業を改善できます。

また、デジタル化を通じて新たな価値を創造し、事業や組織の大きな転換をもたらすことも可能です。

具体的には、情報をデジタル化し、その情報を活用することで事業を改善します。これを続けていくことで、最終的には企業全体が変革を遂げ、新たな価値を創造することに繋がります。

DXの実現には、デジタル社会に即した企業文化の育成が不可欠であり、それが結果的に企業の変革を促進します。

システムの力を活用し、たとえば、情報検索のスムーズ化などを行うことで日常業務を便利にします。一方で、それを基盤に人々が変革を進めることで、更なる事業価値創出を目指します。」

根本氏:「DXへの取り組みについて、各業種の状況を見ると、以下のような分野で活用が進んでいます。

  • 製造業
  • 流通業
  • 小売業
  • サービス業
  • 情報通信業
  • 金融業
  • 保険業

一方で、DXへの取組みはまだ始まったばかりで、多くの企業が取り組んでいない状況です。しかし、それはネガティブなことではなく、これから始めるチャンスとも言えます。

具体的な取り組みとしては、アナログや物理データのデジタル化があります。この領域でも、十分な成果が出ている企業やある程度の成功を収めた企業が存在します。

しかしまだ全面的に成果を出しているところは少なく、これからの成果に期待している状況です。

各データを基に、私たちはDXを推進するためには、まずデジタライゼーションから始めることが重要だと考えています。

最終的には、全社戦略に基づいたDX変革を進め、各企業がDXによる価値創出を実現できる環境を整備していくべきです。」

根本氏:「DXの本質について考えてみましょう。

まずは、デジタイゼーション、つまり情報を電子化し活用できる環境を整備することです。

デジタイゼーションの段階で得た情報は、ビジネスの現場で使用可能となり、システムへの導入が進んでいきます。

次のステップはデジタライゼーションです。デジタライゼーションでは、電子化された情報を元に、事実に基づいて業務を改善します。

このプロセスの改善は、ビジネスの効率化に直結します。

そして最後に、DXです。このフェーズでは、これまで積み上げてきた電子情報やデジタル技術を活用し、業務そのものを変革していく環境を整備します。

これこそがDXの本当の姿であり、事業価値を高める道筋であると言えます。」

DXとデータ活用基盤

根本氏:「私たちは全てのデジタライゼーションプロジェクトでデータを活用しています。具体的には、それがデータ活用基盤という形で事業展開されます。

データ活用基盤とは何か、どのような価値あるのかについて説明します。」

根本氏:「従来の作業をDXの視点から見ると、業務自体は既にシステム導入によって情報の電子化が進んでいます。在庫の管理や販売管理、人事管理などは一通り業務システムで統合されている状態です。

しかし、事業全体として、各データをどう活用するかはまだ課題として存在します。

来期の計画や来週の販売目標を立てる際には、画面上で行うことや、データを抜き出してExcelで見るなど、業務データの活用が求められます。

リアルタイムのデータや現場の人のデータを組み込んだ業務データを作成し、分析していく工程が必要なのです。

基本的には、情報はすでに電子化されているはずなので、データの活用についてはこれからの取り組みとなるでしょう。」

根本氏:「伝統的な作業手順をデジタル化やデータ化の視点から見ると、多くの場合、企業がシステムを導入し、業務データの電子化を進めています。

しかし、組織全体として、各電子化されたデータを十分に活用するだけでなく、データの一貫性や整合性を保つのが難しい問題があります。

たとえば、同じ情報にも関わらず、それらのデータが合致しなかったり、データ分析の方法や使われる指標が個別化されてしまっていたり、複数のシステム間で共通のデータIDが異なるなど、横断的にデータを把握するのが困難な状況が生じます。

また、個別に作られた細かいデータは、元のファイル形式のままで全員が利用できる状況になっていない事もあります。そのため、在庫管理のマネージャーや営業推進チームなど、各部署が異なるデータをもとに作ったファイル間で数字が合わないことも珍しくありません。

これらが、企業がDXを進める上での課題です。」

根本氏:「業務ではすでに、システムを導入し情報の電子化が進んでいます。

しかし、それらのデータを事業全体で活用する体制がまだ不十分です。

データを利用する基盤が未整備であったり、データ分析方法が局所的であったりした結果、活用指標が異なってしまっているのです。そのため、事業の成長を支えるための施策の指標が一貫していません。

また、実際には価値の高い情報を含むデータがあるものの、その情報が各チーム内で完結してしまっているため、事業全体としての活用が不足しています。

これらが、デジタル変革がまだ十分に進んでいない理由の1つです。

問題を解決し、効果的にデータを活用していくことが今後の課題となります」

根本氏:「データ活用基盤とは、企業が保有する情報を一元的に管理し、分析する場所です。

データ活用基盤を使用すると、事業または企業全体の情報を横断的に利用できます。

具体的には、データをデジタル化し、進行中の事業を成長させるための施策へとつなげることが可能です。

また、データの名寄せや基本的な集計も含まれており、統一された評価指標で議論できます。

データ活用基盤の導入としては、さまざまなデータ(たとえばデータベースからのデータやExcelなどからのデータ、SNSからのデータ)を、ETLなどを通じて大きなデータベースに投入します。

ETLなどでデータ基盤を共有することで、企業全体のデータをすぐに使える状態にし、ビジネス上の決定に有用です。

データを分析ダッシュボードに活用することで、誰でも情報を使える環境を作り、同じ基準や指標を共有できます。

統一的な施策を立て、全員が同じ価値観や指標で議論ができる環境を作ろうというのが、現在の主流です。」

根本氏:「データ活用基盤とは、組織内で散り散りになっていたデータを整備し、一元化することにより分析を効率化するものです。

たとえば、滞在時間と消費額などのデータを組み合わせることで、より詳細な分析ができ、マーケティングのポイントを創出できます。

また、装置や施設、機材の稼働状況の分析も効率化でき、新たなサービスの創出にもつながります。

データ活用基盤は、現状の把握と仮説検証をより具体的な数値ベースで行うためのものと言えます。

また、データ活用基盤を導入することで、各業務の数値の結合や、データ抽出を連携して行うことが可能となり、業務メンバー全員が同じデータを利用する環境を構築できます。

データ活用基盤は、日々の業務プロセスに組み込み利用するものであり、その上で人材育成も同時に行うことが重要であると考えています。」

根本氏:「最近、新型コロナウィルスの影響で働き方が大きく変わったことにより、集団で使用する会議室よりも、個人が利用する小規模なブースの需要が増加しています。

変化に対応するために、全ての施設を一度に変更するのではなく、一部の施設で試験的に個人ブースを設け試すことから始めました。

この事業転換の過程で、その企業は既存の使用率や利用者の属性情報などから、利用率がそれなりにありつつも、改革が可能な施設を選定しました。その上で、設備改修に必要な投資額などのデータを集計し、改修後の利用状況や投資回収計画を見える化できたのです。

同時に、広告効果の分析も行いました。どの媒体から新規の利用者が流入してきたのかなどのデータを蓄積し、最終的には投資回収計画が実行可能なのか、適切な施設を選んだのかという評価にも有用です。

当然ながら、全体の機能が初めから揃っていたわけではなく、一部一部機能を追加し、実際にこの取り組みを幾つか短期間で進めることができました。これがとても評価され、この方法が良い例となったのです。」

根本氏:「直接事業の変革に進むのではなく、DXを効果的に行う2つの準備が重要です。

一つ目は、自社の事業や企業が持つデータを横断的に活用できる環境の整備です。これはデータ活用の基盤となります。

次に、データ活用基盤を事業に関連する人材が共有し利用できるよう、人材育成にも注力すべきです。

各業務プロセスでのデータ活用がDXの重要な要素です。データ活用基盤の整備というハード面と、それを活用する人材育成というソフト面です。

これら2つは、平行して育成していく必要があるでしょう。」

データ活用基盤の事業への展開

根本氏:「次に、DXとデータ活用基盤がどのように関連しているかを理解することが重要です。

データ活用基盤はビジネスにおけるインサイトや知見を多角的に把握する重要なツールであり、その展開によって事業価値を一層向上させます。

しかし、その価値を適切に評価することが必要で、慎重なKPI設計とプロジェクト運営が求められます。

これらを踏まえ、データ活用基盤の事業への展開を進めていく方法について、詳細に話をしていきたいと思います。」

根本氏:「経済産業省などでも、多くのDX取り組み事例が公開されています。

とくに、『製造業DX取組事例集』という資料では、株式会社今野製作所からダイキン工業株式会社まで、各社のDX導入例が詳細に紹介されています。

各企業がどのようなプロセスやプラットフォームを用いてデジタル化を推進しているのか、具体的な手法を学ぶことができます。

また、経産省からは『DXセレクション』などの報告も公開されており、各リソースを活用してDXの事業価値を高める方法を考えることが可能です。

時間を見つけてぜひご覧になってみてください。」

根本氏:「ここでは、KPI設計からプロジェクト運営までに焦点を当てた具体的な手法を解説します。

事例として取り上げるのは、株式会社今野製作所です。今野製作所では、自社の業務プロセスが複雑化しており、業務効率が低下していました。そのため、社内の各組織で仕事の整理を行う必要があると感じました。

私たちは、この問題を解決するために『プロセス参照モデル』を導入しました。生産現場の職人と営業だけで成り立っていた組織体制から、製品設計や生産設計に焦点を当てる新しい体制に変更したのです。

また、データの管理方法も見直しました。以前は、設計業務と調達業務の間や、在庫管理とエンジニアリングと販売管理の間などで手作業でデータを転記していました。

そこでデジタルツールの導入により、データの自動流用が可能になっています。

さらに、自社の生産形態を含めて業務の整理を行った結果、従来行っていなかったビジネスも取り込めるようになりました。

デジタルツールを用いて得られたデータを自社内の業務改善や製品プロセスの最適化に活用しています。

DXを推進する上で重要なのは、どのような改善や変革が必要なのかを自社で深く考えることです。

他社の情報やデータを参考にするのも大切ですが、結局は自社の独自性や特性を理解し、自社にとって最適な変革を試行錯誤していくことが必要です。」

根本氏:「DXは、具体的にはマーケティング施策の一つ、ファネル分析を例にすると理解しやすいでしょう。

たとえば、一般消費者向けのビジネスや法人向け営業といった異なるユースケースごとに、特定の施策が適用されます。

認知フェーズでは、誰にどのようなメッセージをいつ伝えるかという『コミュニケーションのタイミング』を考え、潜在顧客を増やします。興味や関心が湧いた段階では、提供する内容やデザインに工夫を凝らし、リードを増やします。

以下のステップでも、継続的な接触や具体的な提案といった施策により、最終的にはクロージングにつなげることを目指します。

こうした施策は、多くの企業ですでに取り組まれていると思います。

DXを効果的に進めるためには、この一連の流れをデータ分析基盤と組み合わせることでより深く詳細な分析が可能となり、新たな取り組みも実現できます。」

根本氏:「たとえば、マーケティングとセールスのプロセスを見てみましょう。

まずは情報収集から始めます。潜在顧客のリストを作り、未接触の企業の情報を集め、既存の顧客のデータや過去の営業結果を把握します。各情報を元にターゲティングします。

しかし、ここで作成した潜在顧客リストはシステムが閉じているため、自分のチームだけの情報になってしまいます。加えて、営業履歴が日報に記載されている場合などは全体を把握しにくい状況があります。

そこで、各情報抽出や情報共有の困難さを解消するために、データ活用基盤を導入します。

その結果、全ての情報が一元管理されていて、全員で確認できるようになりました。

また、潜在顧客のデータも、外部から購入して取り込むことで、皆さんの認知領域を拡大しやすくなります。」

根本氏:「営業プロセスにデータ活用を組み込むことで、マーケティングからセールスまでの各段階でデータを利用し、分析や検討などのクリエイティブな活動に注力できるようになります。

そして、企業全体の活動や実績データを分析することで、より多角的な視点から検討でき、自分だけでなく営業チーム全体の過去の事例も活用してステップを再構築できます。

これはデータを有効活用することで、営業プロセスを効率化し、事業価値を高める具体的な方法の一つです。」

根本氏:「ここでのポイントは情報収集から始まり、営業活動を通じて最終的に成約へ繋げる一連のステップに対しする効率化です。

過去事例からの情報分析や認知領域の拡大、効率的な情報の取得と活用といった要素を加えることにより、プロセス全体の価値を高めていくことです。

とくに、効率的な情報の取得と活用が可能になること、個々に持っていた価値が、全体としての価値に繋がり向上することを意識することが重要です。」

根本氏:「各自の業務プロセスでは、データをどの部分で活用できるかを探すところから始めます。それがデータ活用をより深化させ、また拡大するポイントにつながります。

さらに、データ活用基盤を使うことで、データを非専門家でも利用できる形にし、そのデータを横断的に利用可能できます。

データの蓄積は共通化され、データの取得に注力するのではなく、取得したデータの活用に注力できます。

その結果、データ活用基盤に投資する意義が実際に示されるのです。」

データ活用基盤の価値判断

根本氏:「たとえば、マーケティングチームとセールスチームの役割を見てみましょう。

マーケティングチームでは情報収集からターゲティング、そして新しい市場や属性への拡大を行います。各活動がうまくいけば、新規顧客の増加や市場の拡大といった価値が生まれます。

一方、セールスチームでは営業方針の検討から営業活動、そして成約につなげる働きをします。その結果、成約率や成約額といった価値が実現します。

ここで注目すべき点は、価値の中にはデータ活用基盤が生み出している部分があるということです。つまり、データ活用基盤もまた価値を創出しているのです。

しかし、その価値を定量的に評価するのは難しいのです。たとえば、成果が上がったとしても、それがデータ活用基盤のおかげか、それともチームの努力が主な要因かを判断するのは容易ではありません。

だからと言って、データ活用基盤の価値が見過ごされるべきではありません。

我々はデータ活用基盤をどのように活かすか、どのようにその価値を事業価値とつなげるかを考えなければなりません。」

根本氏:「データ活用基盤の価値とは、デジタル化した情報をどれほど業務に組み込めているか、また、その情報の活用をどこまで事業プロセスに組み込めているかを計測することです。

情報をデジタル化し利用することで、事業を改善します。

データを一元的に蓄積するデータ活用基盤の構築によって、『データを探す・集める』から一歩進んで、『データを使った本来の業務の遂行』に注力できる環境を提供します。

また、個々人が持っている『属人データ』をなくし、全体で利用できるデータ基盤を提供できる環境を目指しましょう。」

根本氏:「データ活用基盤の効果を計測する価値は、データがどれだけ業務に組み込まれているか、データ蓄積がどれほど進んでいるかによって判断します。

具体的には、マーケティングからセールスまでの各フェーズで、さまざまなデータをコレクトし、それをデータ活用基盤に取り込むことです。

対象となるデータには、情報収集やターゲティング、営業方針の検討、具体的な営業活動や成約の状況なども含まれています。

それが潜在的な顧客、既存の顧客、営業履歴に記録されているか否かは問いません。データ活用基盤へインプットされるデータは、企業外部から得られるデータも含むべきなのです。」

根本氏:「データの利用や集約が業務プロセスにどれだけ取り入れられているかを見ることで、新しい分析視点の発見、マーケティングの自動化や改善、情報収集から営業活動までの流れの効率化を測定します。

とくに、データ活用基盤がマーケティングチームの営業活動における利用率や、ターゲティングリストの作成やその結果の蓄積など、実際の業務におけるデータの利用状況と有効性を重視します。

これにより、企業がデータ活用基盤をどれだけ効果的に活用できているかを判断できます。」

根本氏:「事業戦略を考える際は、主に、どのデータを選ぶべきか、ターゲットの進行状況、データの組み合わせやフィルタリング方法に注目します。

さらに、どの顧客が最終的に商品やサービスを購入したかを特定し、その情報を基にもっと効果的なターゲット設定方法を考えます。

これには、クリエイティブな取り組みとPDCAサイクルの速度向上が重要です。

データをどう活用し、業務プロセスをどう改善するかも大切で、これらがデータ利用の価値を高めます。

マーケティングと営業の協働でこれらを実現し、プロセスを効率化することで、集中して成果を上げられます。

PDCAサイクルを3ヶ月ごとから1ヶ月ごとに短縮し、さらなる改善のスピードアップを目指します。」

根本氏:「具体的には、各種指標としてログからの利用数、登録数、PDCAの回転数などが計測可能です。

さらに、閲覧ログからのデータ取得、新しいダッシュボードの作成回数といった数値を見ることもできます。

各データをもとに、情報のデジタル化と、そのデジタル化した情報の適切な活用の成熟度を測ることが可能です。

最初の測定では目標数値が定まらない場合でも、2回目、3回目の測定からは目標数値を設定し、それに向けて改善できます。」

根本氏:「データ活用基盤の構築には、エンジニアリング作業とシステム運用の2つの重要な部分があります。

初期の構築フェーズでは、データの精査や連携のためのデータ設定、必要なデータの抽出や分析の定義などを行います。既存のシステムや在庫管理などとの連携も不可欠です。構築後は継続的な運用が求められます。

この段階で新たなデータソースの追加や、新たなデータ抽出・分析処理が発生するでしょう。

各作業は外部のベンダーに委託するのが一般的かもしれませんが、運用の観点から自社内に専用チームを構成するのが良いと私は考えています。

これはプログラミングのスキルだけでなく、どのデータをどのように活用するか、どのデータがどこに存在するかといった論理的な構成を理解し、それを自社のビジネスにどう活かすかを考えることにも関わります。

そのため、この部分だけでも自社で専用チームを作ってリードしていくことが、データ活用基盤をビジネス価値につなげる上で重要だと考えています。」

根本氏:「データ活用基盤の導入には価値がありますが、その価値は直接的な数値で示すことが難しいです。

そのため、売上や利益を直接的な指標とするのではなく、データ活用の広がりや浸透度を価値と受け止めるべきです。

また、基盤の利用は個々の業務だけにとどまらず、全体の業務改善にも寄与します。これはPDCAサイクルが効率的に回り始めることからも明らかです。

そして、結果として事業の体質改善を進めます。つまり、データ活用基盤導入の価値は、売上の直接的な増加ではなく、事業の質がいかに改善されるかを見るべきです。」

まとめ

根本氏:「DXとは再考するものであり、データ活用基盤はその一部として重要です。

データ活用基盤は事業展開において大きな役割を果たし、その価値を適切に判断することが求められます。

以上を踏まえ、結論としては、DXの実行とデータ活用基盤の適用が事業価値を高める重要な要素である、と言えます。」

根本氏:「DXを成功させるには、まずデータをデジタル形式に変換し、これを効果的に使うことが大切です。

データをうまく活用することで、正確な判断ができるようになり、業務プロセスにデータ活用のシステムを組み込むことが可能です。

このシステムの使われ方を見て、その価値を判断します。DXはデータの利用から始まり、最終的にはビジネスの大きな変化をもたらします。

デジタルデータを活用する計画は、様々な部署が協力して進めるべきです。事実に基づく判断ができる環境を整えることで、デジタル化が進みます。

しかし、データを活用するシステムも大切ですが、そのシステムを使いこなし、創造的な活動に時間をさくことが、ビジネス価値を生み出すのです。」

SECTION2

SECTION2では、渕橋氏に、データ活用基盤プロジェクトにありがちな問題と、リスク回避の考え方について解説していただきました。

渕橋氏:「本日のセミナーでは、データ活用基盤プロジェクトに関して、よく起こる問題やリスク回避の方法について説明いたします。

現在、データ分析基盤の実装に悩まれている方や、過去にトラブルがあり再度取り組むことにためらいを感じている方も多いと思います。

本セミナーを通じて、データ活用に関する案件管理で頻繁に見られるリスクパターンを理解し、リスクを避けるための具体的なアクションプランを明確にします。

これからプロジェクトを進めていく皆様の参考になれば幸いです。」

データ分析基盤プロジェクトでありがちな問題点と類型化

渕橋氏:「まず、データ分析基盤プロジェクトにおける一般的な問題点とその類型化について説明します。

今回は、既存のデータベースやエクセルなどのデータを、クラウド上のDWHやビジネスインテリジェンスに移行することを目指したプロジェクトを例にして説明していきます。」

渕橋氏:「どのような問題が起こりがちなのか、ステップごとに挙げていきます。

まず、データ連携やDWH構築の設計・開発においては、大量のテーブルやデータを扱うため、データ連携にかかるスケジュールが読めないことです。データ分析に適した形にするための検証などでスケジュールが読めないこともあります。

検証レビューのフェーズでは、数値の整合性が取れなかったり真値や責任の所在の確認に時間がかかったりすることがあります。

また、ダッシュボード開発においては、これまでの運用や管理に手間がかかったり、リリース間際までに諸問題の解決やブラッシュアップに追われたりします。

このような問題が、最終的に工数遅延を引き起こすのです。」

渕橋氏:「つまり、一度作られた画面を触ってみるとさまざまな問題が見えてきたり、リリース直前になっても微調整が続き間に合わなかったりするのは、UX画面設計の進め方の問題です。

数値が一致せずに真の値が不確かだったり、責任の所在が明確でなかったりするのは、数値の整合性の問題なのです。

データ連携部分のスケジュールが読めず、プロジェクトの後半になって遅延が発覚するのは、プロジェクト設計上の問題です。

この3つの問題点と、それぞれの解決策を解説していきます。」

問題のパターン1:UX画面設計のすすめかた

渕橋氏:「パターン1の、UX画面設計の進め方に潜む問題点について説明します。

たとえば、データの分析を行うための画面を1ヶ月で設計してリリースするためには、開発の初期段階で基本設計を進め、約2週間を設計開発に費やします。その後、レビューを行い、最後の1週間をブラッシュアップに割けます。

しかし、この進行方法の問題点はレビューが後半に来るため、多くの要望や修正点が一気に出て来て、時間が足りずにリリース期日に間に合わない可能性があることです。

その結果、リリース予定が遅れてしまい予算の確保も難しくなります。

また、作業者側にとっては、作業量が増えてしまい、計画通りに進行しなくなるという問題が発生します。

ユーザは当然ながら製品のリリースを待ち望んでおり、それが遅れれば業務効率に影響を与えてしまいます。

この問題を避けるためには、初期段階の設計からリリースまでのプロセスを適切に管理することが求められます。」

問題のパターン2:数値の整合性問題

渕橋氏:「パターン2の数値の整合性問題とは、データ分析のシステムが変遷し、新旧のシステムが生み出す数値に違いが生じる問題です。

具体的な例としては、以前は基幹システムからデータベースやCSVにデータを保存し、それを集計した結果をExcelなどの帳票で確認していた、ということがあります。

しかし、現在では新たに構築したDWHにデータを保存し、最終的にBIツールでダッシュボードを作成し、その数値を確認するという流れに変わっています。

この場合、その移行作業により既存の帳票の数値とBIツールで確認する数値に差が生じることがあります。そして、その差がある限りは、新しいシステムは適切に機能せず、結果的に事業価値としての期待を満たせません。

数値のずれは新旧のシステム間でデータ管理の手法が異なることに起因することであり、DXプロジェクトではよく見られる問題です。

また、発注者側から送られてくる種々の数値データが一致しない、数値の整合性が取れていない場合もあります。この数値データが使えない場合、基幹システムの管理や運用に大きな影響を及ぼします。

加えて、いわゆる『ロジック』の不明確さや、責任範囲の曖昧さから調査すべき範囲が明示されていない場合、作業者は混乱しプロジェクトは炎上に近い状況に陥る可能性があります。

このような事態を避けるためにも、数値の整合性を確保し、ロジックや責任範囲を明確にすることが重要です。」

問題のパターン3:プロジェクト設計上の問題

渕橋氏:「最後のパターン3は、プロジェクト設計における問題です。

要件定義の段階からリリースまでの流れで、前半部分で遅延を検知できず、後半で遅れが発覚する場合があります。

このような状況は、とくに大量のデータをDWHに導入する際や、分析用の中間テーブルを作成する際に発生します。

この課題は、作業量が増大し、待ち時間も長くなるため、プロジェクト全体の進行スケジュールが読みにくくなる問題を引き起こします。

問題を避けるためには、各段階でのスケジュール管理や進行具合の見直しを徹底することが重要です。」

渕橋氏:「工数遅延を引き起こす、主に3つのパターンを紹介しました。

1つ目は、画面設計の進め方に問題があること。2つ目は、数値の整合性が取れていないこと。3つ目は、プロジェクト設計自体に問題があることです。

とくに、画面設計の進め方と数値の整合性問題が高い頻度で発生しており、これらが直接的な工数遅延の要因となり得ます。

見積もり自体は正確でも、プロジェクトの進行方法や運営方針が適切でない場合、工数遅延が発生するのです。

では、この3つの問題を解決するにはどのようにすればいいでしょうか?」

パターン1の解決法:UX画面設計の進め方

渕橋氏:「パターン1『UX画面設計の進め方』の解決法を考えてみましょう。

プロジェクトを進める上で解決すべき問題は、別々の視点から考えることが重要です。

一つ目のUX画面設計の進め方については、とくにプロトタイプの作成段階での問題です。ここでは、アジャイル開発の手法をどう取り入れるかです。」

渕橋氏:「一般的な開発フローの問題について説明します。

たとえば、1ヶ月でシステムの画面を作成するプロジェクトの場合、3週間目に作業者が完成したと報告してきます。

しかし、実際にその画面を確認してみると、フィルターやボタンの種類、文字の大きさ、グラフの色など、さまざまな問題が見つかります。画面設計には多くの要素が関与しているため、見落としがちな部分です。

しかし、問題が発生すると、その修正に時間がかかり、結果としてプロジェクトのリリースが遅延してしまいます。

DXで問題となる点は、要件調整、設計・開発、作業者と発注者の間のコミュニケーションです。

プロジェクトが進行して、『できました』と言われても、発注者が実際にそれを触ってみると、いろいろな問題が見えてくることがあります。

そして、それはリリースに堪えられるものではない、という事態になることもあります。

ではどうすればよいでしょうか?私からは3つの提案をさせていただきたいと思います。」

渕橋氏:「プロジェクトの開始段階では、まず最初にプロトタイプをできるだけ早く完成させることが重要です。

その際、要望は全て対応するのではなく優先度を定め、それに基づいて開発を進めましょう。

そして、完成したプロトタイプに対する改善のためにリバイズ期間を設け、イテレーションを回して価値の高い商品を作るというのが基本的なアプローチです。」

渕橋氏:「プロトタイプ作成とその優先度付けについて説明します。

まず、当社のスケジュール上では、完成度が低くても、最初の1週間程度で早く動作するものを作ります。

その上で、プロトタイプが早期に完成した段階でそれを実際に触り、フィードバックを得ることで要望や改善点を見つけ出します。

要望や改善点を優先度順に整理し、それに従ってプロトタイプの改善やイテレーションを繰り返します。

優先度付けについては、基準AからCまで設けています。Aは必須の要件、リリースに必要な要望、または最低限必要な要望と位置づけ、Aは必ず完成させることを目指します。

BとCはそれぞれ、リリース時に満たすべき要望と将来的に改善していきたい要望を意味しています。これらは必ずしもすぐに完了する必要はありません。」

渕橋氏:「イテレーションの回し方について具体的に解説します。

まず、1週目は最優先事項とされたAの対応を行います。次に、2週目では1週目のレビューで改善が必要となった点に対応します。その後、余裕があれば、優先度B、Cのタスクを処理します。最終的に3週目では、予備としての時間を設けています。

ここでは、前回までの改善が不十分だった点への対応を行うか、余力がある場合には、優先度B、Cから追加でタスクをこなすという方法を取ります。

そして、時間内に終わらなかった項目については、プロジェクトがリリースされた後に手をつけます。

基本的にはアジャイル開発の手法を採用し、要件の調整とプロトタイピングを織り交ぜながら、段階的に開発を進めていくというアプローチです。

基本開発とアジャイル開発の間で、もしも予算が許すのであれば残った要素に対して別会計で対応するなど、柔軟に開発を進めることが重要です。

これらのルールは、最初から考えておくと良いでしょう。」

渕橋氏:「UX画面設計がうまくいくと、発注者側から見て以下のようなメリットが生まれます。

まず、設定していた予算の範囲内で改善策を打つことができ、それに伴い新機能のリリースも可能になるという点です。

さらに、ユーザーが実際に新機能を使うことで新たな課題が見えてくるため、それを元にした追加予算の交渉がしやすくなります。

開発者にとっても収束が見えやすくなり、現実的な範囲で開発が進められるため、納期通りに納品が可能となります。

一連の流れは、事業価値を最大化する重要な要素であり、DXを推進していく上で重要視すべきものです。」

パターン2の解決法:数値の整合性問題

渕橋氏:「パターン2『数値の整合性問題』の解決法を考えてみましょう。

まず、数値が合わない理由について説明します。

最初に、基幹システムから基幹DBやCSV等でデータを連携し、SQLなどでデータを抽出して最終的に帳表で数値を確認します。それをDWHに連携し、中間テーブルを作成して最終的にBIで分析ダッシュボードを作成します。

このフローを通じて、最後のBIの数値と帳表の数値が一致しないという問題が発生します。

数値の不一致は主に3つのポイントが考えられます。

1つ目は、DWHと基幹の既存DBが異なる可能性があります。これはデータ連携の過程で何らかの差異が発生し、保存されるデータが異なるからです。

2つ目は、データを抽出や変換したりするロジックが異なるからです。

3つ目は、Excelの関数などで集計する部分とBIツールで集計や絞り込みをするロジックが異なるためです。

また、特定のベンダーに依存すると、数値の不一致が発生しやすいです。

さらに、既存DBを作成したベンダーが存在しない場合、数値確認の際に問題が起こります。」

渕橋氏:「具体的に、既存のDBとDWHの構築が異なるベンダーによって行われる場合について考えてみましょう。

既存のDBを作成していたベンダーから、DWHを構築するベンダーへテーブル定義などの資料を共有しておくことが重要です。

もし前のベンダーが消えてしまい、新ベンダーが何のテーブル定義であったかを調査する必要が出てきた場合、その調査のためのコストも見積もっておく必要があります。

さらに、既存の帳票やさまざまな集計、BIツールなどを使用してデータの分析を行います。各ベンダー間で情報共有が円滑に進む環境が必要です。

たとえば、ベンダーCは、集計ロジックが当初と同じになるように、正確な情報をベンダーBから受け取ることが必要です。

集計ロジック自体は問題ないのですが、テーブルに入っているデータ自体が間違っている場合は、修正依頼をベンダーAにする流れです。

流れをスムーズに進められるよう、発注者側が適切な情報共有環境を作ることが重要です。

事前の調整やロジックの共有を行い、もし数値が合わない場合は調整や修正を行うことで、全てのベンダーが一致した情報を持つことができます。」

渕橋氏:「事前調整により、発注者と作業者間の役割と目標が明確になると、結果的に数値の不一致が生じた際の解決策を具体的に示すことができます。

作業者の責任範囲と目指すべきゴールがはっきりしているため、最終的な数値を一致させるまでのプロセスが明確になるからです。」

パターン3の解決法:プロジェクト設計上の問題

渕橋氏:「パターン3『プロジェクト設計上の問題』の解決法を考えてみましょう。

プロジェクト設計上の主な問題点としては、不確定要素や長い待ち時間が挙げられます。

具体的には、プロジェクトの各段階で、

  • 要件調整
  • 設計・開発
  • 検証
  • リリース
  • アップデート

など、進行中のプロジェクトが遅延する原因となる要素が存在します。

見積もりをしっかりと行っていても、データ連携部分でトラブルが発生すれば1週間単位で遅延することがあります。

さらに、プロジェクトの遅延が最初の見積もり時には予見できていないため、プロジェクトの後半になって初めて遅延が発覚するという問題も頻発するのです。」

渕橋氏:「プロジェクト設計上の問題にどう対処すればいいでしょうか。

まず重要なポイントとして、初回のデータ投入をできる限り早く完了させることです。

また、マイルストーンの設定では、ただ単にタスクの完了状態を見るのではなく、次にどのような状態になるのかという視点で設定することが重要です。」

渕橋氏:「データの初回投入はできるだけ早く終わらせ、時間を節約しましょう。初回投入が遅くなると、それに伴って各種タスクの進行にも支障が出てくる場合があります。

たとえば、データ投入が遅れると、それに伴ってプロジェクトのスタート時間も遅れてしまいます。更に、データ連携時のエラー修正などの作業にも影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、初回のデータ投入は仮投入でも良いので、まずは一旦済ませてしまい、その後のタスクを並行して進められるようにしましょう。

また、データ投入の準備とBI実装は並行して進められるべきです。後々のリリース遅延を防ぎ、トラブルを少なくできます。」

渕橋氏:「マイルストーンの考え方について説明します。マイルストーンはタスクが完了した状態ではなく、次に何を行える状態に進化したのかを明確にしましょう。

たとえば、ダッシュボードの画面作成が完了したか、あるいは、監視バッチAの準備が整ったかなどが挙げられます。

また、発注者側の状態も大切です。たとえば、あるチーム全員が検証環境にログインでき、ダッシュボードAとBについて、数値のブレはあったとしても全ての機能が動作することを確認できる状態が求められます。

さらに、データ連携に関してトラブルがあった場合は、その対応状況がメールで通知され、保守チームが手順書に従って問題に対処できる状態であることも重要です。

ただし、ここで手順書が用意されていない場合の対処法も明記しておくべきです。

このように明確なマイルストーンを設定し、それを達成することで、ベンダーとのトラブルを防ぐことが可能になります。」

渕橋氏:「適切なプロジェクト設計とマイルストーン設計によって、発注者側はプロジェクトを管理しやすくなり、遅延リスクに対しても早期に対応できます。

作業者は、余裕を持って初回投入を完成させることができ、その後の同期設定やBI開発がスムーズに進行します。

発注者と作業者双方にとって、効率的で価値のあるプロジェクト運営が可能になるのです。」

まとめ

渕橋氏:「まとめます。まず、プロジェクトの遅延は主に3点から起こります。

  • ユーザー体験(UX)の画面設計の進行方法に問題がある場合
  • 各種数値データの一貫性が保たれていない場合
  • プロジェクト設計そのものに問題がある場合

各問題をうまく管理・解決することで、プロジェクトの遅延を回避できます。」

渕橋氏:「プロジェクトの遅延に対処するアクションプランをまとめます。

まずUX画面設計を進める際には、何回繰り返すか決め、アジャイルの手法で取り組み、プロトタイプを作成してみることが重要です。

次に数値の整合性問題に対しては、プロジェクト関係者を集めて事前に責任範囲のすり合わせとロジックの共有を行うことが求められます。これで、誤解や混乱を回避できます。

プロジェクト設計上の問題に対しては、進行状況を見える化するためにも、マイルストーンを設定します。そして、一つひとつの段階で『何が達成できた状態か』、『次に何ができる状態になっているのか』を明確にします。さらに、データ導入は最初の段階で素早く終わらせることが望ましいというのが私の提案です。」

SECTION3

SECTION3では、塚本から、DXを推進する企業でTROCCO®がなぜ必要とされているのか、TROCCO®の具体的な活用方法などを解説しました。

塚本:「TROCCO®とは、データの多様な統合を自動化し、データエンジニアリングにかかる工数を削減するフルマネージドETL/ELTサービスです。

データがサイロ化されている現状から、データの統合とDWHへのつなぎ込みを自動化することで、時間とリソースの削減を実現します。

この度、Sharing Innovations様でもこのサービスを活用いただき、データ基盤の構築に貢献しています。」

TROCCO®の紹介と導入事例

塚本:「TROCCO®は、データ処理に必要な要素を全て網羅的にカバーすることが特徴です。

具体的には以下のような要素です。

  • ETL
  • データマネジメント
  • ワークフロー
  • データマート
  • リバースETL

また、データのリネージを追跡するデータカタログといった、データエンジニアにとって有益な機能も盛り込まれています。」

塚本:「上記スライドは、データを活用して事業価値を向上させる方法として、TROCCO®を導入した企業の事例です。

ただし、実際にはTROCCO®だけでは、データ活用を実現することは困難です。多くの場合、DWHとTROCCO®、そしてDXの取り組みをセットで進めることになります。

さまざまな企業が、コンバージョンレートの向上やコスト削減などの課題解決に向けてこの手法を採用しています。

各会社の事例を参考にすることで、皆さんの業務改善に役立つヒントが得られると考えています。」

TROCCO®によるデータ活用のベストプラクティス

塚本:「データ活用のための最良のプラクティスとは、データ分析基盤の構築から活用、そして人材育成までを一気通貫で行うことです。

データ活用の構造は、Sharing Innovations様でも同様のものを提案しています。

基本的にはクラウド上で各処理が行われることが多いので、適切な環境を設計・組織する必要があります。」

塚本:「マーケティング施策のデータとSFAのデータを統合することにより、マーケティング戦略から営業活動に至るまでの一連の流れと効果の把握が可能です。

マーケティングの成果を伝統的なクリック数やコンバージョンレートなどの指標ではなく、ビジネスに直結する売上、LT、ROIなどで測定できます。

広告費やイベントスポンサー費などのマーケティング施策データ、SFAデータ、ユーザー行動ログなどを収集・分析する際に有用です。

SFAとマーケティングツール、広告のデータを元にリードから成果に至るまでを視覚化したダッシュボードが作成されます。

各種データをDWHで一元管理し、任意のタイミングでダッシュボードからデータを引き出すことで、その効果確認やPDCAサイクルの効率化が可能です。

興味がある方はぜひ一度、我々のサービスにトライアルで体験いただき、ご相談いただければと思います。」

primeNumberに自社のデータ活用を相談する
https://trocco.io/inquiry/new

本記事のまとめ

本セミナーでは、DXの実現に向けたデータ活用基盤の重要性、プロジェクト管理の最適化、データエンジニアリング効率化の具体的な方法などを解説しました。データを戦略的に活用し、事業のDX化を目指す企業のリーダーやデータエンジニア、プロジェクトマネージャーの参考になったと思います。

DXに課題を抱えている方、データの統合と分析に興味がある方は、本記事の内容を参考に、DXの推進とデータ分析の更なる効率化を目指してみてください。

DXの成功は単にデータ処理の効率化を超え、いかに事業価値に結びつけるかが鍵です。

TROCCO®を利用することで、データエンジニアリングの工数を削減し、ビジネスへのデータ活用を効率化できます。すでに多くの企業がTROCCO®を導入し、データ活用による事業価値を向上させています。

データ基盤の総合支援サービス「TROCCO®」は、データの統合や分析をサポートする多機能なツールです。データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方は以下よりぜひ資料をご覧ください。