Sansanは、名刺を起点に顧客情報をデジタル化し、営業・マーケティング・管理部門で活用できる、統合型の営業DXプラットフォームです。AI補正によって非常に高い精度で名刺データを取り込める点や、組織内で共有・検索・活用できる使いやすいUIが評価され、国内外の企業で広く導入されています。
Sansanは標準機能だけでも名刺管理から社内共有、簡易レポートまで対応できる優れたツールです。しかしAPIを利用すると、他システムとのデータ連携や業務フロー自動化が加速し、データ活用の幅がさらに広がります。
たとえば、CRMツールと連携してオンライン/オフラインの顧客接点を一元管理したり、MAツールと連携してイベントで集めた名刺を自動的に営業リードとして登録したりすることが可能です。
本記事では、Sansanが提供するAPIを一覧として紹介し、各APIで具体的に何が実現できるかを解説します。また、API利用時の注意点や外部システムとの連携事例についても紹介します。Sansan APIについての理解を深め、活用価値を最大化させましょう。
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Sansanとは
Sansanとは、法人向けのクラウド型名刺管理サービスです。Sansanの最大の特徴は、正確なデータ化とスムーズな情報共有にあります。紙の名刺をスキャンするだけで、AIとオペレーターのダブルチェックによって99.9%の精度でデータ化され、データ化された顧客情報は組織全体で共有・活用できます。
部署や個人に分散していた名刺情報が一元的に管理できるようになることで、「誰が」「どの企業・担当者と」つながりがあるかを可視化します。これにより部門間の連携が強化され、営業機会の損失を防げるのです。
また、蓄積された名刺データは社内システムと連携させることで、マーケティングやセールス活動の効率化に寄与します。
Sansan APIを用いてできること
Sansanは、企業の名刺管理や顧客情報活用をさらに強化するため、複数のAPIを提供しています。ここでは、Sansan APIを利用するとどのようなことができるのかを解説します。
外部システムとの自動連携
Sansan APIを用いることで、CRMツールやMAツール、ERPなどの既存の社内システムとシームレスにデータ連携できるようになります。たとえば、名刺登録と同時にMAツールへリード情報を連携させたり、商談の進捗状況をSansanのタグ情報に自動反映させたりといったフローを構築可能です。
また、Webhookを活用することで、新規名刺登録や顧客情報更新などの特定のイベントをトリガーに、他システムと連動した処理を実行できます。これにより、人的ミスの削減や業務効率の大幅な向上が期待できます。
顧客情報管理の効率化
Sansan APIを活用すると、名刺データの包括的な管理と活用が可能になります。たとえば、自社のCRMやSFAと連携させることで、顧客データの二重管理を防ぎ、常に最新の情報を維持できるようになります。
また、同一人物の複数名刺の統合管理やキャリア変遷の追跡も可能です。これにより、担当者の異動があっても取引先との関係性を維持し、長期的な顧客育成に活かせます。
データの整理・分類によるインサイト創出
Sansan APIを活用すると、名刺や人物、コンタクトなどに独自の分類基準を設けられます。たとえば、商談状況や顧客ランクなど、ビジネスに合わせた切り口でデータを整理できるため、セグメント別のマーケティング施策や営業アプローチに有用です。
また、企業グループ全体での取引状況把握や、業種・規模別の分析も容易になります。企業の統廃合や組織変更にも柔軟に対応でき、常に最新の組織体制を反映した顧客管理が実現します。
Sansan API一覧
ここでは、Sansanが提供する全7種のAPIをご紹介します。
名刺API
名刺APIは、Sansanに登録されている名刺データの取得や操作を行うためのAPIです。名刺の検索、詳細情報取得、新規登録、更新、削除などの基本操作が可能です。
登録されたデータには、名前や会社名などの名刺に記載された情報に加え、登録日時や更新日時などのメタデータも含まれます。そのため、条件を指定した名刺の一括検索や登録日時による絞り込みなどを行えます。
名刺APIを活用することで、CRMツールとSansanの名刺データを同期させたり、マーケティングツールと連携して顧客分析を行ったりできます。顧客情報の一元管理と営業DXを推進するうえで中心的な役割を担うでしょう。
人物API
人物APIは、Sansanに登録されている人物情報の取得や操作を行うためのAPIです。このAPIを使用することで、人物の検索、詳細情報の取得、人物情報の更新、および人物の統合・分離といった操作が可能になります。
人物情報には、最新の所属情報や連絡先、人物ごとのメモ、コミュニケーション履歴などが含まれます。そのため、これらの情報をもとに、顧客のキャリアパスの追跡や人脈ネットワークの可視化、重要顧客との接触履歴の一元管理などが可能です。営業担当者の異動があっても顧客との関係性を維持したり、取引先キーパーソンの動向を把握したりするなど、長期的な顧客関係管理に役立ちます。
コンタクトAPI
コンタクトAPIは、Sansanに登録されている名刺や人物に対するコミュニケーション履歴(コンタクト)の管理を行うためのAPIです。主な機能として、コンタクトの登録、検索、取得、更新、削除などの操作が可能です。
コンタクトAPIを活用することで、営業活動の記録を自動化したり、SFAやCRMと連携して顧客対応の履歴を一元管理したりできます。たとえば、メールシステムと連携して送受信履歴を自動的にSansanに記録したり、商談管理システムの情報をSansanのコンタクト情報として反映させたりすることが可能です。これにより、「いつ」「誰が」「どの顧客と」「どのようなやり取りをした」かが可視化され、効果的な顧客フォローや引き継ぎが実現します。
タグAPI
タグAPIは、Sansanに登録されている名刺や人物、コンタクトなどに対するタグ情報の管理を行うためのAPIです。具体的には、タグの作成、検索、更新、削除、および各オブジェクトへのタグ付け・解除といった操作が可能です。
タグAPIを活用することで、顧客や取引先を独自の基準で分類・整理したり、特定のプロジェクトやキャンペーンに関連する顧客をグループ化したりできます。たとえば、商談状況や顧客ランク、フォローアップの優先度などをタグによって表現することが可能です。また、自社のマーケティングシステムと連携させれば、セグメント別の施策実施や効果測定も容易になるでしょう。
組織API
組織APIは、Sansanに登録されている企業や部署などの組織情報の管理を行うためのAPIです。たとえば、組織の検索、新規登録、更新、削除、および詳細情報の取得などの操作が可能です。
組織APIを活用することで、自社のCRMツールや顧客データベースとSansanの組織情報を同期させたり、取引先企業の情報を体系的に管理したりできます。たとえば、取引先の組織変更(合併・買収・分社化など)の追跡や、企業グループ全体の取引状況の把握に役立ちます。
営業活動の分析においても、業種や企業規模などの切り口で現状の取引を分析する際に有用です。
管理API
管理APIは、Sansanアカウントの各種設定や統計情報を管理するためのAPIです。管理APIでは、プラン情報、請求情報、ストレージ使用量、APIの利用制限や利用状況など、Sansanアカウント全体に関わる情報にアクセスできます。また、通知設定やセキュリティ設定などの変更も可能です。
管理APIを活用することで、Sansanの利用状況をモニタリングしたり、独自の管理ダッシュボードを構築したりできます。たとえば、部門ごとの名刺登録数や活用状況を可視化したり、APIの利用量が制限に近づいた際に自動的に通知を送ったりするシステムを構築できます。
ユーザーAPI
ユーザーAPIは、Sansanを利用する社内ユーザーの情報管理を行うためのAPIです。具体的には、ユーザーの検索、詳細情報の取得、新規ユーザーの追加、既存ユーザー情報の更新、および権限設定の変更などの操作が可能です。
ユーザーAPIを活用することで、人事システムと連携したユーザー情報の自動更新や、組織変更に伴うアクセス権限の一括変更などを実施できます。たとえば、社員の入退社や異動情報を人事システムから取得し、Sansanのユーザー情報を自動的に更新することで、常に最新の組織体制を反映させられます。また、プロジェクトチームなど、公式の組織図とは異なるグルーピングでのユーザー管理も可能です。
Sansan APIを利用する際の注意点
Sansan APIの利用にあたっては、いくつかの注意点があります。ここでは、主な注意点を3つ説明します。
リクエスト制限への対応
Sansan APIにはレート制限があり、短時間に多数のリクエストを送信すると429エラー(Too Many Requests)が返されます。とくに、初期データ移行時や定期バッチ処理の実装では、この制限を考慮したアーキテクチャ設計が重要です。
基本的なレート制限は1分あたり300リクエストです。大量データを扱う場合は、バルクエンドポイントの活用やページネーションの実装を検討しましょう。差分更新(更新日時によるフィルタリング)を活用し、必要最小限のAPI呼び出しに抑えることも効果的です。
また、レスポンスヘッダーには、X-RateLimit-RemainingやX-RateLimit-Resetなどの情報が含まれています。これらを活用して動的にリクエスト頻度を調整するロジックを実装することで、安定したAPI利用が可能になります。
認証におけるトークンの扱い
Sansan APIでは、OAuth 2.0に基づく認証フローを採用しています。開発時には以下の点に注意が必要です。
- アクセストークンの有効期限
アクセストークンの有効期限は、1時間に設定されています。長時間実行される処理を実装する場合、処理中にトークンが失効する可能性があるため、自動的にリフレッシュトークンを使って再取得する仕組みを組み込みましょう。 - リフレッシュトークンの有効期限
リフレッシュトークンは、90日で失効します。定期的なバッチ処理などでは、リフレッシュトークンの有効期限管理も考慮したエラーハンドリングが必須です。 - アクセストークンの管理
アクセストークンは機密情報として適切に管理し、クライアントサイドのJavaScriptなどに直接埋め込むのは避けましょう。サーバーサイドでの中継処理を実装するのがベストプラクティスです。
初回実装時に適切な認証フローを構築しておくことで、将来的なメンテナンスの手間を大幅に軽減できます。
エラーハンドリング
Sansan APIに限った話ではありませんが、APIを使った開発では適切なエラーハンドリングが求められます。
「名刺の登録と同時にタグ付けする」といった複数のAPIを組み合わせた処理では、トランザクション管理がありません。そのため、一部のみが成功した状態を適切に検知・リカバリーできる仕組みを実装することが重要です。
また、更新や削除などの一部のAPIオペレーションでは、楽観的ロックのためにetagヘッダーを使用します。最新の状態を取得してから操作することで、複数のクライアントからの同時更新による不整合を防げます。
エッジケースを含めた十分なテストと、失敗時のリカバリー戦略を事前に検討しておき、本番環境での予期せぬ問題を最小限に抑えましょう。
Sansan APIを活用した連携事例
ここでは、Sansan APIを活用した、外部システムとの代表的なデータ連携をご紹介します。
Sansan × Salesforce
SansanとSalesforceをAPI連携することで、Sansanで取得した名刺情報を自動的にSalesforceへ取り込めるようになります。これにより、手動でのデータ入力や更新作業が削減され、業務効率を大幅に向上させることが可能です。
名刺情報がSalesforceに取り込まれるということは、オンライン/オフライン双方のデータを一元的に管理できるようになるということを意味します。したがって、組織内における企業・個人の営業データの重複を解消でき、データの整合性の保持にも寄与します。
この連携についての詳細はSansan公式サイトをご覧ください
Sansan × Marketo
SansanとMarketoをAPI連携させれば、展示会やセミナーで取得した名刺データをSansanからMarketoへ自動で同期できます。SalesforceとのAPI連携同様、担当者がCSVを作成してアップロードするといった手間が不要になり、名刺交換から数分以内にリードスコアリングやメール配信のワークフローを開始できます。
オフラインで得た名刺情報がリアルタイムでMarketoに蓄積されることで、ウェブフォームや広告経由のオンラインリードと同一基盤で管理できる点も大きなメリットです。これにより、リード重複や属性の食い違いを防ぎながら、メール配信やイベント招待、スコアによる優先付けなどの一貫したナーチャリング施策を実施できます。
まとめ
Sansan APIの概要やできること、利用時の注意点、外部システムとの連携事例について解説しました。
Sansanは名刺管理を軸に、顧客データを組織全体で共有・活用できる営業支援プラットフォームです。ただし、外部のCRMツールやMAツール、基幹システムとの連携を標準機能だけで完結させるのは難しい場面があります。
Sansan APIを利用すれば、名刺データを外部システムへリアルタイム同期したり、ワークフローを自動化したりでき、より柔軟な運用が可能になります。API連携を通じてオンライン/オフラインの顧客情報を一元管理し、データ精度の向上と営業プロセスの効率化を実現しましょう。

