SaaSは、クラウド上で手軽に導入でき、さまざまな業務領域においてビジネスプロセスをスピーディーかつ低コストで改善するものとして、多くの企業に採用されています。しかし、複数のSaaSを同時に活用する中でデータ活用における課題に直面する企業は少なくありません。
たとえば、データ統合に時間がかかり業務に遅れが生じたり、データ統合の際の人的ミスが発生したりします。さらにはデータの整合性や品質が担保できないといった問題に直面することもあるでしょう。
SaaS連携を実現することで、異なるツール間のデータを自動で統合し、データ一貫性を保ちながらデータ活用を効率的に行えるようになります。
本記事では、SaaS連携の重要性や方法、失敗しないためのポイントを解説し、最後には効率的なSaaS連携を実現するためのツールをご紹介します。
SaaS連携とは
第一に、SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを介して利用できるクラウドサービスのことです。具体的には、Web会議システムやCRMツール、MAツールなどです。そして、これらのSaaSが持つ機能やデータを、外部のクラウドサービスやITシステムと連携することをSaaS連携と呼びます。
それぞれのSaaSのデータが独立していると、データ品質の低下につながり、結果として、業務の非効率化や機会損失を招くおそれがあります。SaaS連携は、これらの問題を解消し、効果的なデータ活用を実現するために、非常に重要なプロセスなのです。
SaaS連携ができていないことで生じる3つの問題点
どれだけ有用なSaaSを導入しても、部署や業務ごとにデータが散在してしまっていては、効果的なデータ分析に繋げられません。本章では、SaaS連携が適切に実施されていないことで生じる問題について解説します。
スピーディなデータ活用ができない
SaaS連携ができていないと、各ツールのデータが部署や業務ごとに散在している状態(データのサイロ化)に陥ってしまいます。これにより、部署を横断したデータ連携がスムーズに行えず、データ活用が非効率的になってしまうでしょう。
たとえば、営業部門ではCRMツールによって商談履歴や顧客のフィードバックを管理している一方、マーケティング部門ではMAツールによって顧客の興味関心や行動データを管理している場合があります。この際、それぞれのデータがスムーズに共有されていなければ、顧客への適切かつ迅速なアプローチが困難となります。
人的ミスが増加する可能性がある
SaaS連携が適切に行われていないと、各ツールに対して個別にデータを入力する手間が生じます。これにより、データの重複や誤入力など、人的ミスを招くリスクが高くなるでしょう。
たとえば、営業部門がCRMに顧客情報を入力し、同様にマーケティング部門もその顧客情報をMAツールに入力する場合、誤字脱字やデータの欠落が発生する可能性があります。このデータの不一致がデータ品質を低下させ、後のデータ分析の精度に悪影響を及ぼすのです。
また、同じデータを別のSaaSに入力すること自体が非効率な作業であり、業務の生産性を低下させる要因となります。SaaS連携を実現することで、こうした手間を削減し、その分のリソースを付加価値の高い業務に注力できる状態を目指しましょう。
データの整合性を保てないリスクがある
SaaS連携が実施されていないと、1つのツールで修正した内容が他のツールに反映されず、SaaSどうしでデータの不整合が生じるリスクが高まります。
たとえば、ある顧客情報がCRMツールで修正されたとしても、MAツールや会計システムにその修正が自動的に反映されることはありません。また、手動でデータ入力を行う際に人的ミスが生じるリスクがあり、さらなる整合性の低下を招くおそれがあります。
API連携とiPaaS連携の違い
SaaS連携を実施するための代表的な手法として、APIを利用する方法とiPaaSを活用する方法があります。どちらも複数のシステムやアプリケーションを統合する手段ですが、その目的や機能、それに伴うメリット/デメリットは大きく異なります。
API連携は、その名の通り、SaaS間のデータ連携にAPIを利用する方法です。API連携のおもな目的は、特定の機能やデータのみを統合することです。そのため、必要なデータをピンポイントで取得したいケースに適しています。
一方iPaaS連携とは、SaaS間のデータ連携にiPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれるツールを利用する方法です。iPaaS連携のおもな目的は、クラウド上でシステムやアプリケーションごと統合し、自動化することです。そのため、複数のSaaSのデータ連携が必要となるケースに適しています。
また、その他の特徴や求められるスキルの違いについては、以下の表の通りです。
API連携 | iPaaS連携 | |
活用シーン | 特定の機能やデータのみを連携したいとき | システムやアプリケーションごと連携したいとき |
特徴 | 異なるツールを簡易的に連携できるリアルタイム性に優れている連携の自由度が高い | 複雑なワークフローを設計、自動化できるデータ変換など、カスタマイズ性に優れているスケーラビリティに優れている |
求められるスキル | 設定や管理にプログラミングスキルが必要 | ノーコード/ローコードで運用できるため、専門スキルは不要 |
コスト | 社内に開発できる人材がいなければ、数十万~数百万円で外注 | 月額制(数万円~)や課金制(数千円~)で利用可能 |
メンテナンス | API情報の変更に伴って、都度開発者が対応する必要あり | iPaaSのベンダー側が対応するため、ユーザー側は特に対応する必要なし |
SaaS連携を実施する際は、目的や特徴、コストなどを慎重に比較したうえで、自社の状況に適した方法を選択するようにしましょう。
SaaS連携を行う5つの手段
前章で比較したAPI連携とiPaaS連携以外にも、SaaS連携を行う手段はいくつかあります。本章では、これら2つの代表的な手法に加え、特定のニーズで利用する手法を3つ紹介します。
API連携
API連携は、先述した通り、SaaS連携にAPIを利用する方法であり、特定の機能やデータを統合したいケースに向いています。たとえば、天気予報APIを用いて自社アプリに天気予報の機能を追加したり、在庫APIを用いて商品ページに在庫数を表示させたりできます。
自社独自のシステムとベンダーが提供するサービスを連携でき、カスタマイズの自由度が高い点が特長です。また、APIを利用すると、リアルタイムでデータの取得や更新が行えるため、データドリブンで迅速な意思決定が可能になります。
API連携は、おもに以下の5ステップで実装できます。
- 連携したいAPIを選定する
- その提供元でサービスの情報を登録し、APIキーやシークレットなどを取得する
- エンドポイント・メソッドポイントを確認し、リクエストを準備する
- 指定されたURLへリクエストを送信し、レスポンスを確認する
- プログラムに実装する
- 連携したいAPIを選定する
- その提供元でサービスの情報を登録し、APIキーやシークレットなどを取得する
- エンドポイント・メソッドポイントを確認し、リクエストを準備する
- 指定されたURLへリクエストを送信し、レスポンスを確認する
- プログラムに実装する
一方、これらの連携プロセスにはプログラミングスキルが求められるため、注意が必要です。社内に開発できる人材がいれば低コストでSaaS連携を実現できますが、いない場合は外注として数十万〜数百万円のコストが発生してしまいます。
iPaaSの活用連携
iPaaS連携は、SaaS連携にiPaaSを利用する方法であり、システムやアプリケーションごと統合したいケースに向いています。とくに、複雑なワークフローの作成や自動化の機能に優れており、大幅な業務効率化が期待できます。
たとえば、CRMツールとMAツールを連携させることで、「MAツールで取得したリード情報を、自動的にリアルタイムでCRMツールへ同期する」機能を実装可能です。これにより、セールスチームは迅速に営業活動を行えたり優先度の高いリードに注力したりできます。
iPaaS連携は、おもに以下の4ステップで実装できます。
- iPaaSを選定する
- アカウントを作成する
- コネクタの情報やデータフロー、自動化プロセスを設定する
- 動作テストを行い、本番環境にデプロイする
iPaaS連携の強みは、これらのプロセスをノーコード/ローコードで実現できる点です。そのため、データ連携や日々のメンテナンスに割く工数を抑えられ、本来の業務に専念できます。一方、iPaaS連携は個別のAPI連携をまとめた、1つの集合体のようなものです。 したがって、そのサービスがAPIを提供していない場合はiPaaS連携を行えないため、注意が必要です。
SaaSが提供する連携機能を活用する
SaaSによっては、それ自体が他のSaaSと連携できる機能を持っているものもあります。
この場合、SaaS連携のためにAPIやiPaaSを利用したり、1からプログラムを開発したりする必要がないため、開発工数やコストを削減できるメリットがあります。また、SaaSのベンダー側がメンテナンスやアップデートを行うため、ユーザー側の技術的負担が小さい点も魅力です。
一方、提供されている機能が不十分であったり、コネクタ数が少なかったりする場合があります。これにより、結局外部ツールの利用やカスタム開発が必要になってしまう可能性があります。SaaSが提供する連携機能を活用する場合は、目標のSaaS連携がこの機能だけで実現できるのか、事前に検討しておく必要があるでしょう。
スクラッチ開発で連携する
SaaS連携のよりプリミティブな方法として、スクラッチ開発での連携が挙げられます。スクラッチ開発とは、iPaaSなどの既存ツールを利用せず、0から自社独自でシステム開発を行うことを指します。
0からの開発で自由度が高いため、自社の要件やデータフローに完璧に合致した連携を実現できる点が最大の特長です。また、自社独自のシステムやレガシーシステムとも連携できる点が強みです。
しかし、要件定義から開発、運用までを実施できる人材が求められますし、これらを実施するためには多大な工数がかかってしまいます。また、連携先のシステムやデータフォーマットが変更された際、再度システム開発をしなければなりません。
スクラッチ開発を検討する際は、メリットである自由度の高さとデメリットである工数の大きさを天秤にかけ、本当にメリットが上回るかを考慮する必要があるでしょう。
ETLツールを活用する
ここまでSaaS連携に便利な外部ツールとして、iPaaSを中心にご紹介してきましたが、データ連携ツールはそれだけではありません。とくに、ETLツールはSaaS連携を行ううえで非常に大きな効果を発揮します。
ETLツールはiPaaS同様、GUI上の簡単な操作だけで、ノーコード/ローコードでSaaS連携の自動化設定を行える点が強みです。また、SaaSのコネクタの種類においても、iPaaSと遜色のない数が用意されています。
一方、iPaaSとは異なり、データ連携自体が目的ではない点に注意が必要です。ETLツールの本来の目的は、SaaSをはじめとしたさまざまなデータソースを一元管理し、効果的なデータ分析へ繋げることです。つまり裏を返せば、他の連携手法よりもその後のデータ処理・分析に繋げやすい点が大きなメリットといえます。
TROCCOでSaaS連携を行った事例
TROCCOでSaaS連携を行った事例として、株式会社オープンエイト様の事例をご紹介します。
同社では、AWSやSalesfroce、Google広告などのSaaSを利用していました。一方、これらのデータが一元化されておらず、管理者やエンジニアがバラバラのデータを参照する状況でした。これにより、同じ指標でも定義や分析期間が異なっており、意思決定にも悪影響を及ぼしていました。
この課題をふまえ、ETLツールであるTROCCOを導入していただきました。導入を検討するにあたって、既存SaaSを含め接続先が豊富であった点、ツールの操作性が高い点、バグの発生頻度が低い点が高評価だったといいます。
また同社は、ETLツールの導入目的として「Single Source of Truth」の実現を掲げていました。その点においてTROCCOは、「データリネージ機能」を提供しており、接続先数が多くなってもメタデータ管理が複雑化しません。
結果として、複数のSaaSやデータソースを統合し、「Single Source of Truth」が実現されたことで、データの一貫性と正確性を確保できました。また、手作業だったETLプロセスが自動化され、5日間かかっていたSalesforceへのデータ連携が1時間で完了するようになったといいます。
さらに、コスト面においても、導入の効果が得られました。データ連携ツールがない場合、SaaSを導入した分だけ接続口が増え、その接続先のコネクタに都度費用がかかってしまいます。一方TROCCOのようなデータ連携ツールを導入していれば、月額10万円〜という低コストでそれらを一元管理できるのです。
詳しくは、以下の活用事例記事をご覧ください。
https://primenumber.com/cases/open8
まとめ
本記事では、SaaS連携の重要性や具体的な方法をふまえ、実際の事例についてご紹介しました。社内で多くのSaaSを利用しているものの、それらのデータを連携できていないという方は、本記事で解説した方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。
本記事でご紹介したとおり、SaaS連携には、API連携やiPaaS連携などをはじめとした、いくつかの手法が存在します。それぞれの特徴を理解したうえで、導入目的や社内リソースの状況などを考慮し、適切な手法を選択するようにしましょう。
その中でも、「連携後のデータ処理も自動化したい」「複数のSaaSを接続したい」方は、ETLツールを利用した連携がおすすめです。
分析基盤総合支援ツール「TROCCO」は、SaaS連携を実現させる強力なETLツールでありながら、「データマート生成」や「ワークフロー」機能により、データ活用を全面的にサポート可能です。また、直感的に理解しやすいUIにより、データエンジニア以外のさまざまな職種の方でも活用でき、データの民主化を促進できます。
データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方はぜひ資料をご覧ください。
