組織の業務効率化を図る中で、kintoneを導入している企業も多いのではないでしょうか。

kintoneはそのままの機能でも非常に有用なサービスですが、APIによる連携を活用すると、異なるシステムどうしをつなぐことができ、さらなる業務効率化が期待できます。たとえば、レコード操作、ユーザー管理、自動化ワークフローの設定などが実現可能です。

本記事では、kintoneのAPI連携について、提供されているAPIの種類や具体的な方法、注意点について解説します。また、ETLツールを用いた、API連携以外の業務効率化の方法もご紹介します

kintoneとは

kintone(キントーン)とは、サイボウズ株式会社が提供する、業務アプリ開発を簡単にできるサービスです。たとえば、各業務の日報や管理など、自社の業務に合わせたアプリを開発できます。

最大の特徴は、それらのアプリ開発をGUI上の操作だけで実行できる点です。コーディング無しで直感的に操作できるため、プログラミングの知識が無い方でも簡単に扱えます。
kintoneはクラウドサービスであるため、インターネット環境さえあれば、オフィス外からでもアクセス可能です。そのため、リモートワークや出張先でも必要なデータに迅速にアクセスでき、チームメンバーとのスムーズな連携が図れます。

kintoneは、中小企業から大企業までの幅広い組織にとって、業務効率化や情報共有の強化のカギとなるサービスといえるでしょう。

kintoneのAPI連携でできること

kintoneについてもAPIが提供されており、外部サービスとの連携が可能です。API連携によってできることを知り、活用の幅を広げましょう。

営業の効率化

顧客情報や営業件数、成約率などの営業データは、SFAやCRMで管理している企業が多いでしょう。しかし、それらのデータが各ツールに散在していると、都度ツールをまたいでデータを入力、確認する手間が生じ、業務の非効率化を招きます。

こうしたデータの分断を解決するのが、kintoneのAPI連携です。
kintoneのAPI連携を活用することで、SFAやCRMのデータを自動で同期し、一元的な管理が可能になります。これにより、営業やマーケティング担当者がリアルタイムで最新データを共有でき、迅速な意思決定が可能になります。また、データの入力作業やツール間のインポート作業を削減できるため、本来の営業活動に注力できるようになるのです。

また、kintoneのAPI連携を活用することで、MAとSFAを組み合わせることも可能となります。たとえば、MAで収集した顧客のWeb上の行動データと、SFAで収集した営業活動データを活用し、より精度の高いリードスコアリングを実現可能です。

これにより、営業担当者は関心度の高い見込み顧客に優先的にアプローチでき、成約率の向上が期待できます。また、顧客の興味・関心に応じたコンテンツや提案を最適なタイミングで提供することで、顧客体験の向上にもつながります。

会計業務の効率化

会計業務においては、freee会計やMoney Forward クラウド会計など、クラウド会計ソフトを利用している企業が多いでしょう。この場合、請求書や売上データ、経費などを手動で入力する手間が生じます。また、それら入力データに誤りや重複がないかチェックする作業も必要です。

そこで、会計ソフトとkintoneの連携を行い、会計業務の効率化を図ります。

まずは、kintoneに登録された請求データや売上データを1つのレコードに集計する仕組みを構築しましょう。その後、集計されたデータを会計ソフトに自動連携します。
これにより、都度発生していたデータ入力作業の手間を省けます。また、入力ミスや重複の発生を防止でき、毎月のチェック作業などからも解放されるでしょう。その結果、担当者はルーチンワークから解放され、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。

Webフォームの回答データの管理

アンケートやイベントの出欠確認などを作成したい場合、GoogleフォームなどのWebフォームを利用するケースが多いでしょう。EmailやSNSに送信したり、自社のサイトに埋め込んだりできるため、非常に便利です。

しかし、Webフォームで収集したデータを手動で集計・整理する作業が発生し、管理に手間がかかる場合があります。また、複数フォームからのデータを一元化するのは難しく、担当者間での情報共有にタイムラグが生じる可能性もあります。

Webフォームでは、フォームに記入された回答を自動的にkintoneへ記録することで、管理の手間を大幅に減らせます。データがリアルタイムで一元管理されるため、担当者間での情報共有もスムーズになるでしょう。さらに、kintone上でフィルタリングやレポート作成を簡単に行えるため、アンケート結果をスピーディーに分析へつなげられるようになります。

通知の自動送信

kintone自体にも、通知機能は搭載されています。たとえば、レコードの編集やレコードへのコメント、kintone内での承認依頼などは、事前に設定したメールアドレス宛に通知が送信されます。
しかし近年では、ビジネス上のやり取りやタスク管理を、SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールで行っている企業が多くあります。そのため、kintoneの通知も、チャットツールで一元的に管理できた方が便利です。

チャットツールとkintoneをAPI連携すれば、kintone上のデータの変更がリアルタイムでチャットツールに通知され、重要な情報を見逃すリスクが軽減します。さらに、チーム全体が同じツール上で情報共有できるようになれば、承認依頼やコメントへの対応がスムーズになるでしょう。

kintoneのAPI一覧

kintoneのAPIには、「kintone REST API」と「kintone JavaScript API」という、2種類のAPIが存在します。本セクションでは、それぞれがどのような用途で使用されるのかをご説明します。

kintone APIとは?

kintone APIには、「kintone REST API」と「kintone JavaScript API」の2種類があります。
kintone REST APIとは、REST(REpresentational State Transfer)と呼ばれる規格で設計されたAPIで、いわゆる一般的なWeb APIです。外部サービスからkintone内のデータを操作する際に利用されます。

具体的には、レコードの取得/登録/更新/削除や、ファイルのアップロード/ダウンロードを実行可能です。前章の「kintoneのAPI連携でできること」でご紹介した連携事例は、このkintone REST APIを利用して実施されます。
一方kintone JavaScript APIは、kintoneのアプリ画面上の操作や見た目に関するカスタマイズを行うためのAPIです。その名の通りJavaScriptで記述され、kintoneのUI上で動作します。

kintone JavaScript APIを活用することで、標準機能だけでは実現が難しい機能も補うことができ、自社に最適なシステムを構築できます。たとえば、住所情報をもとにした地図表示や条件によって文字のフォントやサイズ、背景色を変更可能です。

kintone API公式ドキュメントはこちら

kintone REST API

kintone REST APIには、特定の操作を行うためのいくつかの種類があります。kintone API ドキュメントで紹介されているkintone REST APIは、以下の6種類です。

レコード

取得・登録・更新・削除、レコードのコメントやプロセス管理などを操作するためのAPIです。具体的な操作は、以下の通りです。

レコードの取得・登録・更新・削除
1件もしくは複数のレコードを取得・登録・更新・削除する際に使用します。また、レコードの一括取得カーソルの作成や削除にも使用します。
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レコードのコメントの操作
レコードのコメントの取得や投稿、削除に使用します。
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プロセス管理の操作
レコードの作業者を更新したり、1件もしくは複数のレコードのステータスを更新したりする際に使用します。
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その他
複数アプリのレコード操作を一括処理したり、APIを実行したユーザーのレコードのアクセス権の設定を取得したりする際に使用します。
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ファイル

ファイルのダウンロード/アップロードを行う際に使用します。
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アプリ

アプリの情報やフィールド、通知、アクセス権などに関する設定を行うためのAPIです。具体的な操作は、以下の通りです。

アプリ情報
アプリの情報や使用状況、アプリ管理者用メモの取得などに使用します。
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フォーム
フィールドの取得・追加・削除や、フォームのレイアウト変更、設計情報の取得に使用します。
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一覧
一覧の設定の取得・変更に使用します。
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グラフ
グラフの設定の取得・変更に使用します。
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アプリの設定
アプリの一般設定やカスタマイズ、通知、アクセス権に関する設定をする際に使用します。
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スペース

スペース情報やスペースのスレッド、ゲストユーザーに関する設定を行うためのAPIです。具体的な操作は、以下の通りです。

スペース操作
スペース自体の情報やスペースのメンバーとスペース管理者の情報、スペースの使用状況などを取得する際に使用します。
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スレッド操作
スペースのスレッドを作成・更新したり、コメントを投稿したりする際に使用します。
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ゲストユーザーとゲストスペース
ゲストユーザーの追加・削除やゲストスペースのゲストメンバーの更新に使用します。
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プラグイン

プラグイン一覧の取得や読み込み、更新、アンインストールなどを行うためのAPIです。

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API情報

kintone REST APIの一覧やスキーマ情報を取得するためのAPIです。

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kintone JavaScript API

kintone REST API同様、kintone JavaScript APIにもいくつかの種類があります。kintone API ドキュメントで紹介されているkintone JavaScript APIは、以下の7種類です。

イベント

イベントが発生するタイミングを設定する際に使用するAPIです。具体的なタイミングは、以下の通りです。

レコード一覧画面
レコード一覧画面で発生するイベントをトリガーに、一覧画面にカスタムボタンを追加したり、レコードデータを変更したりできます。イベントが発生するタイミングとして、「一覧画面を表示した後」「インライン編集を開始したとき」などがあります。
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レコード詳細画面
レコード詳細画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「詳細画面を表示した後」「レコードを削除する前」などがあります。
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レコード追加画面
レコード追加画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「追加画面を表示した後」「フィールドの値を変更したとき」などがあります。
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レコード編集画面
レコード編集画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「編集画面を表示した後」「フィールドの値を変更したとき」などがあります。
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レコード印刷画面
レコード印刷画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「印刷画面を表示した後」があります。
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グラフ画面
グラフ画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「グラフ画面を表示した後」があります。
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ポータル画面
ポータル画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「ポータル画面を表示した後」があります。
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スペース画面
スペース画面で発生するイベントをトリガーに、JavaScriptを実行できます。イベントが発生するタイミングとして、「スペースのトップ画面を表示した後」があります。
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イベントハンドラーの登録・削除

イベントハンドラーの登録や削除を行う際に使用するAPIです。
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API実行

kintone REST APIや外部APIの実行に関する操作を行う際に使用するAPIです。

kintone REST APIの実行
kintone REST APIのリクエスト送信やAPIのURL取得に使用します。
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外部APIの実行
外部APIの実行や外部にファイルをアップロードする際に使用します。
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情報の取得・設定

レコードやアプリに関する操作を行う際に使用するAPIです。

レコード
レコードのIDや値を取得、セットする際に使用します。
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アプリ
アプリのIDやアイコンのURLなどを取得する際に使用します。
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全体
ログインユーザーの情報やデザインのバージョンを取得する際に使用します。
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フィールドの表示/非表示

フィールドの表示/非表示の切り替えや、グループフィールドの開閉を行う際に使用するAPIです。
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要素の取得

レコード詳細画面やレコード一覧画面、ポータル画面などの要素取得を行う際に使用するAPIです。

レコード詳細画面
レコード詳細画面に関するフィールド要素やスペースフィールドの要素を取得する際に使用します。
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レコード一覧画面
レコード一覧画面に関するフィールド要素などを取得する際に使用します。
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ポータル画面
ポータルの上側の要素を取得する際に使用します。
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スペース画面
スペースのトップ画面上側の要素を取得する際に使用します。
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プラグイン

設定情報の取得・保存や外部APIの実行に必要な情報の取得・保存などを行う際に使用するAPIです。

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kintone APIの注意点

kintone REST APIでは、kintoneのデータを管理するサーバーに大きな負荷がかかるのを防ぐため、リクエスト数や接続数に上限を設定しています。APIを用いたシステム設計を行う際には、これらの制限を事前に考慮して計画を立てましょう。

1日あたりのリクエスト
1日に実行できるAPIリクエスト数は、「1アプリにつき10,000件まで」です。レコードの取得や登録件数がそこまで多くなかったとしても、数十人のユーザーが同じアプリを使う場合は注意が必要です。

同時アクセス数
API 同時接続数とは、kintoneのサーバー内で処理されているAPI のリクエストの数のことです。この同時接続数には、「1ドメインにつき100個」の制限があります。たとえば、100個のアプリで同時にkintone REST APIを使ったリクエストが送信されると、エラーになって処理されなくなってしまいます。

アップロードしたファイルの保存期間
アップロードしたファイルは、一定期間のみ保存されます。レコード登録 APIやレコード更新 APIによってレコードに添付しない限り、「3日間」で削除されます。

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TROCCOで広がる業務自動化の可能性

ここまでご説明した通り、kintoneのAPIを活用することで、さまざまな側面から業務効率化・自動化を実現できます。ただ、クラウドETLツールである「TROCCO」を活用すれば、kintoneの活用価値をさらに引き出すことが可能です。

TROCCOとkintoneでサービス連携を簡単に実現

APIを用いてサービス間を連携する場合、APIに関する専門的な知識やプログラミングスキルが必要となるケースが多いです。また、APIエラーの原因特定やログ分析の際にも、専門知識が求められます。

一方、クラウドETLツールである「TROCCO」を利用すれば、APIに関する専門的な知識やプログラミングスキルがなくても、GUI上の操作のみでデータ連携を設定可能です。また、エラー通知や詳細なログ管理の機能を備えており、エラーの原因特定やログ分析も容易に行えます。

またAPI連携では、複数のシステムとデータ連携を行いたい場合、個別に接続設定を行う必要があります。一方TROCCOには、あらかじめ多くのコネクタが用意されているため、複数のサービスとの連携を行う際も、個別に接続設定を行う必要はありません。

TROCCOを活用したkintoneのデータ分析・可視化

kintoneと他のサービスを連携する際、API連携のほかに、クラウドETLツール「TROCCO」による連携が有用であるとご説明しました。

ここでは、TROCCOを用いて、kintoneのデータをノーコード・ノープログラミングで可視化する方法をご紹介します。

kintoneの営業データをGoogle BigQueryへ統合し、Tableauで可視化する

kintoneに蓄積された顧客情報をBigQueryを経由し、Tableauで分析・可視化をすることが可能です。DWHを活用するとエンジニアの協力が必要になるケースも多いですが、TROCCOを活用すれば非エンジニアの方でも実装できます。

  1. TROCCOを使用してkintoneからBigQueryへのデータ転送を設定します。
  2. 転送したいレポートタイプやメトリクスを選択します。
  3. スケジュール設定を行い、定期的にデータが更新されるようにします。
  4. BigQueryにデータが転送されたら、Tableauで接続設定を行います。
  5. Tableauで顧客データを分析するためのダッシュボードを作成します。

kintoneの営業データをAmazon RedshiftにETL(転送)し、Lookerで可視化する

kintoneに蓄積された顧客情報をAmazon Redshiftを経由し、Tableauで分析・可視化することも可能です。

  1. TROCCOを使用して、kintoneからRedshiftへのデータ転送を設定します。
  2. 転送したいレポートタイプやメトリクスを選択します。
  3. スケジュール設定を行い、定期的にデータが更新されるようにします。
  4. BigQueryにデータが転送されたら、Lookerで接続設定を行います。
  5. Lookerにて、顧客データを分析するためのダッシュボードを作成します。

まとめ

本記事では、kintoneのAPI連携について、提供されているAPIの種類や具体的な方法、注意点について解説しました。API連携でできることや注意点を正しく理解し、さらなる業務効率化・自動化につなげましょう。

一方、本記事の中でもご紹介した通り、データ連携・業務効率化にはETLツールの利用も効果的です。APIでの連携の場合、プログラミングスキルが必要となったり、接続先ごとに設定が必要となったりします。しかし、ETLツールではそれらの壁を克服し、簡単に業務効率化に着手できます。

TROCCOは、ETL/データ転送・データマート生成・ジョブ管理・データガバナンスなどのデータエンジニアリング領域をカバーした、分析基盤構築・運用の支援SaaSです。プロダクトに興味がある方や自社のデータ連携のお困りの方は、ぜひ一度primeNumberにご相談ください。