近年、企業のDX推進が加速する中で、データドリブンな意思決定の重要性が高まっています。しかし、多くの企業では、顧客情報、販売データ、マーケティングデータなどが、CRM、ERP、MAなどの多岐にわたるシステムに分散しており、これらのデータを効果的に活用するための基盤構築が急務となっています。

そこで注目されているのが、ETLツールです。ETLツールは、企業内に散在するデータを一元的に統合し、分析や活用に適した形に変換することで、データドリブンな意思決定を支援します。

本記事では、ETLツールの基本機能、導入メリット、選定ポイントを解説するとともに、国内外のおすすめETLツール8選をご紹介します。国内ツールと海外ツールの違い、また処理能力やコネクタ数などの違いを理解し、自社に最適なツールを選定できるようになりましょう。

ETLツールとは

ETLツールとは、組織に散在しているデータを抽出(Extract)し、必要に応じて変換・加工(Transform)を行ったうえで、格納先に書き込む(Load)プロセスを担うツールです

近年、DX推進の重要性が叫ばれるようになり、データ利活用のためのツール・サービスが急増しました。しかし、活用環境の整備が追いつかず、社内のデータは(CRM、ERP、IoTデバイスなどの)さまざまなシステムに散在しています。

これらのデータを効果的に活用するためには、データソースをデータベースに連携し、一元的に管理することが重要です。そこでETLツールは、異なるシステムやフォーマットのデータを統合し、そのデータを分析や意思決定に適した形に整える役割を果たします。

ETLツールの主な機能は、以下の3つです。

データの抽出機能

データソースから、必要なデータを収集します。スケジュール設定により、抽出を自動化できます。

データの変換・加工機能

抽出したデータを、目的の形式や仕様に合わせて整形します。たとえば、欠損値や不正データを修正するデータクレンジングや、通貨の単位や日付形式を変換するデータの正規化が行われます。

データの書き出し機能

変換・加工したデータを、データウェアハウス(DWH)などの次のターゲットへ格納します。この際、プロジェクトの要件に基づき、適切な書き出し方法(インクリメンタルロード/フルロード)を選択します。

ETLツールを導入するメリット

ETLツールを導入することで、データ利活用においてさまざまな恩恵が得られます。ここでは、主なメリットを3つ解説します。

各部署に点在した情報を統合的に整理できる

多くの企業において、その組織が保有するデータはCRMやSFA、MAなど、多岐にわたるシステムに分散しています。これらのデータを個別に管理していては、全社的なデータ利活用は困難です。

ETLツールは、これらの異なるシステムからデータを抽出し、DWHへ一元的に統合します。これにより、組織のデータのサイロ化を防ぎ、部署横断的なデータ活用が実現できます。

データ処理にかかるコストや時間を削減できる

従来、異なるシステムからのデータ抽出、加工、統合は、手作業やスクリプト開発によって行われており、非常に大きな工数のかかる作業でした。特に、データ量が多い場合や、複雑なデータ加工が必要な場合であれば、その負担はさらに大きくなります。

ETLツールは、これらのデータ処理を自動化することで、大幅な工数削減を実現します。たとえば、データ抽出や加工を定期実行することで、その作業に割いていた人的リソースを削減し、より戦略的な業務に注力できるようになるでしょう。

データ整形時間が短縮され、分析までのスピードが向上する

データ分析を行うにあたって、欠損値の補完やデータ形式の統一など、抽出したデータの前処理が必要です。このデータ整形作業は、データ分析においてボトルネックになりがちなプロセスであり、意思決定のスピードを遅らせる要因となります。

ETLツールは、データクレンジングやデータマッピングなどのデータ整形機能を備えており、これらの作業を効率化・自動化することが可能です。これにより、データ整形にかかる時間を大幅に短縮できるため、スムーズなデータ分析・可視化を実現できます。結果として、データドリブンな意思決定を迅速に行えるようになるのです。

ETLツールを選ぶ際の比較ポイント

ETLツールは、データの利活用において重要な役割を担います。多様なサービスの中から自社に適したものを選択できるよう、選定における比較ポイントを理解しておきましょう。

自社のデータ規模と処理ニーズに合っているか

ETLツールを選定する際は、そのサービスが自社の要件に合致しているかを確認しましょう。その中でも、データ規模と処理ニーズが適しているかどうかは非常に重要なポイントです。

データ規模が小さいにもかかわらず、大規模データ処理に対応した高価なツールを導入してしまうと、コストパフォーマンスが悪くなります。反対に、大規模なデータを扱う必要があるにもかかわらず小規模データ向けのツールを選んでしまうと、処理速度の低下やシステムの不安定化を招く可能性があります。

また、処理方式に関しても、自社のニーズに最適なツールを選定することが大切です。たとえば、リアルタイム処理が必要な場合はストリーミングデータ処理に対応したツール、大量のデータを高速に処理する必要がある場合は分散処理に対応したツールが適しています。

さまざまなシステムと連携できるか

DX需要の拡大に伴い、企業が扱うツール・サービスも多種多様になっています。そのため、ETLツールがさまざまなシステムと連携できるかどうかは、非常に重要な比較ポイントです。

具体的には、データベース、クラウドストレージ、SaaSアプリケーション、APIなど、自社が利用しているシステムとの連携が可能かどうかを確認する必要があります。将来的に新たなシステムを導入する可能性も大いにあるため、豊富なコネクタを取り揃えているサービスがよいでしょう。

また、連携可能なデータ形式も確認しておくとよいです。CSV、JSON、XMLなど、多様なデータ形式に対応しているツールを選ぶことで、データ連携の柔軟性が高まります。

操作は簡単か

ETLツールの操作性は、導入後の運用効率に大きく影響します。データエンジニアだけでなく、ビジネスユーザーも利用する可能性がある場合は、ノーコード/ローコードで実装できるツールを選定するとよいでしょう。

GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を備えたツールは、プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの使い慣れた操作でデータ連携処理を構築できます。また、テンプレートやサンプルコードが豊富に用意されているツールも、導入時の学習コストを削減でき、迅速な運用開始に寄与します。

トライアル期間を利用して、実際にツールを操作してみることをおすすめします。

手厚いサポートが受けられるか

ツールを比較する際は、その機能の違いに着目しがちですが、サポート体制の充実度も大きな選定要素です。

たとえば、データ転送時にエラーやジョブの失敗が発生した際に、迅速なサポートを受けられなければ、データ分析が遅れる可能性があります。ツールの選定にあたっては、24時間365日のサポート体制が整っているベンダーがおすすめです。

また、海外ツールでは、言語の壁やサポート対応の遅さがしばしば課題となります。英語での対応に不安を感じる方や迅速な返信を希望する方は日本発のサービスを選択するのが無難でしょう

国内と海外ETLツールの違いとメリット/デメリット

ETLツールは、海外・国内ともに、多種多様なサービスが提供されています。それぞれの大まかな特性を理解しておくことで、導入後のトラブルを減らしましょう。

国内ETLツールの最大のメリットは、日本語による手厚いサポート体制です。導入時の設定支援から運用中のトラブル対応まで、充実したサポートを受けられるため、安心して利用できます。また、比較的安価なものが多いため、スモールスタートで始めやすいのが特徴です。

一方、海外ETLツールは、グローバルで豊富な導入実績があり、多種多様なシステムとの連携に強みを持っています。特に、クラウドサービスとの連携機能が充実しており、すでにさまざまなサービスを自社に導入している企業に適しています。また、最新のテクノロジーやトレンドを取り入れた先進的な機能も魅力です。

ただし、海外ツールはサポートが英語のみである点や日本と商習慣が異なる点が、導入や運用の壁となる可能性もあります。また、法制度も日本と異なるため、データ管理やセキュリティ面で注意が必要です。

国内ETLツール海外ETLツール
サポート体制日本語による手厚いサポート英語対応やサポート体制が手薄な可能性がある
機能日本の商習慣に合わせた機能が充実豊富な導入実績があるが、日本の商習慣に適していない可能性がある
連携システム国内システムとの連携に強い海外クラウドサービスとの連携に強い
最新技術への対応最新技術の導入が遅れる場合がある最新技術やトレンドを取り入れた先進的な機能がある
導入・運用の難易度比較的容易英語対応や商習慣の違いにより、比較的難しい
データ管理・セキュリティ日本の法制度に準拠しており安心日本の法制度と異なるため注意が必要
コスト比較的安価なサービスが多い高価なサービスが多い

国内おすすめETLツール

国内製ツールは、手厚いサポート体制や日本のユーザーに使いやすい設計が特長です。ここでは、おすすめの国内製ETLツールを4つご紹介します。

TROCCO

TROCCOは、株式会社primeNumberが提供するSaaS型ETLツールです。GUIを通じて、ノーコード・ノープログラミングでETLパイプラインを構築できる点が強みです。また、複雑な処理が必要な場合は、適宜プログラミングによる独自実装を行えます。

ETLツールとしてのETL/ELT機能はもちろん、データ分析基盤の構築を全面的にご支援する機能を提供しています。ワークフロー機能によるジョブ管理や、データカタログ機能によるメタデータ管理など、TROCCOひとつでデータエンジニアリング領域を総合的にカバー可能です。

連携先が豊富な点も大きな特長です。現状でも約100種の連携先に対応しており、2025年には、100を超える新たなコネクタの拡充が予定されています。

料金体系は、初期費用0円で、転送データ量に応じた従量課金制を採用しているため、スモールスタートで始められます。無期限で利用できるフリープランに加え、ライトプラン/スタンダードプラン/エンタープライズプランの3つのプランが用意されており、自社の処理ニーズに適したプランを選択可能です。

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ASTERIA Warp

ASTERIA Warpは、アステリア株式会社が提供するEAI/ETLツールです。厳密には、EAI(Enterprise Application Integration)ツールに位置づけられ、組織で散在したシステムをつなぐ役割を果たします。

ASTERIA Warpの最大の特徴は、これまでの実績から培った信頼度の高さです。100種類以上の豊富な連携先を搭載しており、多様なシステムとのデータ連携が可能です。テンプレートも多数用意されているため、導入後すぐに業務自動化を実現できます。また、ノーコードでデータ連携を実装できる点も、多くの企業から評価されている1つの要因です。

ただし、ASTERIA Warpは高機能な分、コストが比較的高価になります。Core/Core+/Core++/Standard/Enterpriseと、5つのプランに細分化されているため、自社の要件に最適なプランを選択しましょう。

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Waha! Transformer

Waha! Transformerは、株式会社ユニリタが提供するETLツールです。基幹系システムやクラウドデータベース、Web APIなど、さまざまなデータソースを対象に、シームレスにデータ連携できます。

Waha! Transformerの特徴は、処理性能の高さです。高速なデータ処理エンジンを搭載しており、膨大なデータであっても処理速度を落とすことなく実行できます。また、プログラミングやSQLの知識がなくても、GUI上の操作のみでデータ連携を実装できる点も強みです。シンプルなUIで操作性が高いため、非エンジニアの方でも短時間で習得できます。

ただし、ASTERIA Warpと同様、処理性能の高さから、運用コストが比較的高くなります。利用料金は公開されていないため問い合わせが必要ですが、大規模なデータ処理や高いパフォーマンスを求める企業向けの製品といえます。

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krewData

krewDataは、株式会社メシウスが提供するkintone専用のETLツールです。複数のkintoneアプリに散在するデータをノーコードで集計・加工できるため、kintoneを用いた業務の幅が広がります。

外部SaaSや基幹システム、Excel業務で発生するデータをkintoneに連携できるため、二重転記作業やコミュニケーションコストを大幅に削減できます。kintoneの拡張機能として提供されており、kintoneの画面上で直感的な操作が可能です。

契約プランは、スケジュール実行プランとリアルタイム実行プランの2種類です。スケジュール実行プランは、「定期的に処理を実行したい」「手軽に大量のデータを処理したい」というニーズに適しており、リアルタイム実行プランは、「アプリ操作と連動した処理を行いたい」「アプリ操作のタイミングで特定のデータを処理したい」というニーズに向いています。

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国内ETLツールの比較表

国内ETLツールを「コネクタ数の多さ」「操作性の高さ」「処理能力の高さ」「サポート体制の充実度」「コスト」の5つで評価しました。処理能力の高さとコストの低さなどは、トレードオフの関係であるため、どの要素を重視して導入するのか、自社の判断軸を明確にしておきましょう。

コネクタ数操作性処理能力サポートコスト
TROCCO
ASTERIA Warp
Waha! Transformer
krewData

海外おすすめETLツール

Talend Data Fabric

Talend Data Fabricは、Talend社が提供するETLツールです。Talend社は、Gartner社が行った2023年の調査において、8年連続でデータ統合メーカーの中でのリーダー評価を獲得しています。

最大の特徴は、豊富な連携先です。1,000以上のコネクタとコンポーネントを提供しており、あらゆるデータソースとの連携・統合を可能にしています。また、マスキング機能による機密データの保護や適切なアクセス権限の付与により、セキュアな環境でのデータ連携が可能です。

料金プランは、Starter/Standard/Premium/Enterpriseの4種類に分かれています。PremiumプランにすることでDWHやデータレイク、データレイクハウスの自動化が可能になったり、EnterpriseプランにすることでAIを活用したデータパイプラインの構築が可能になったりします。

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Stitch

Stitchは、Stitch社が提供するクラウド型ETLツールです。シンプルで使いやすいインターフェースが特徴で、非エンジニアの方でも数分でクラウドデータパイプラインを構築できます。

多様なデータソースに対応しており、コネクタ数は140種類以上です。特にSaaSアプリケーションとの連携に強みを持っており、SalesforceやGoogle Analytics、Zendeskなど、さまざまなSaaSアプリケーションのデータをノーコードでDWHへ格納できます。

Stitchは、セキュリティ性の高さも強みです。IPホワイトリストやSSHトンネリングなど、データソースと接続先を安全につなぐためのオプションが用意されています。さらに、AWS環境下で定期的に自動脆弱性スキャンを実行しており、高いセキュリティレベルが維持されています。

料金プランは、Standard/Advanced/Premiumの3種類です。AWS プライベートリンクやリバースSSHトンネルなど、高度な接続性はPremiumプランに加入することで利用できるようになります。

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Precisely Connect

Precisely Connect(旧Syncsort DMExpress)は、Precisely社が提供するETLツールです。「開発はシンプルに 処理時間は短く」の信念から生まれたETLツールで、高品質・高性能の処理を誰でも簡単に開発できます。

Precisely Connectの最大の特徴は、独自の機構「スマートETLオプティマイザ」です。処理が実行されると、Precisely Connectが対象のデータ分析とシステムリソース分析を行い、いくつものアプローチの中から最適な手法を選択、自動チューニングを行います。これにより、高品質・高性能なETL処理が容易に実現できます。

Precisely Connectは、用途に応じて、「Connect Sortエディション」と「Connect ETLエディション」の2つのエディションが提供されています。Connect Sortエディションでは、基本的なレコード操作やデータ変換のみが可能ですが、Connect ETLエディションでは、データベース連携やバッチ処理などのETL処理全体をサポートする機能が提供されています。

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Informatica PowerCenter

Informatica PowerCenterは、Informatica社が提供する、オンプレミスのデータ統合のためのETLツールです。Informatica社はTalend社同様、Gartner社が行った2024年の調査において、11年連続でデータ統合メーカーの中でのリーダー評価を獲得しています。

Informatica PowerCenterの特徴は、メインフレームやデータベース、アプリケーション、クラウドなど、あらゆるシステムに接続し、データ連携を実行できる点です。GUIベースで開発し、データ連携が一連のフローとして可視化されるため、非エンジニアの方でも簡単に実装できます。

料金プランは、Standard/Advanced/Premiumの3つのエディションに分かれています。自社のデータ統合の規模やメタデータ管理などのサポート機能の必要性に応じて、適切なエディションを選択しましょう。

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海外ETLツールの比較表

国内ETLツールの比較表と同様、以下の5つの軸で評価しました。海外ETLツールは、日本語対応していない分、サポート体制の充実度では国内ETLツールに劣ります。しかし、コネクタ数や処理能力では、国内ツールを大きく上回るものもあります。

コネクタ数操作性処理能力サポートコスト
Talend Data Fabric
Stitch
Precisely Connect
Informatica PowerCenter

まとめ

本記事では、ETLツールの導入メリットや比較ポイント、おすすめのETLツールをご紹介しました。

現代ビジネスでは、いかに品質の高いデータを抽出し、分析に活用できるかが事業の競争力を左右します。その際、データを有効的に活用する鍵を握っているのが、ETLツールです。本記事で紹介した比較ポイントなどを参考に自社に最適なETLツールを選択し、データ利活用において大きな効果を創出しましょう。

クラウドETLツール「TROCCO」は、データ分析基盤の構築を総合的にご支援するサービスです。ETLツールとしてのETL/ELT機能はもちろん、ワークフロー機能やデータカタログ機能、データエンジニアリング領域全体をカバーする機能を提供しています。

また、国内発のサービスであるため、日本語でのサポート体制を整えており、平日の日中帯であれば、Slackやメールでご対応が可能です。導入後のオンボーディングMTGやTROCCOの仕様問い合わせ対応、エラー要因分析も実施しております。

プロダクトについて詳しく知りたい方、自社のデータ活用に課題感を抱いている方は、ぜひ一度primeNumberにご相談ください。