現代のビジネス環境では、膨大なデータをいかに効率的に管理し、価値ある情報に変換するかが大きな課題となっています。また、さまざまなデータソースが追加され、それに伴ってフォーマットの種類が増えていることに頭を抱えている方も多いでしょう。

「データレイクハウス」は、データレイクの柔軟性とデータウェアハウスの堅牢性を融合させることで、構造化データと非構造化データを一元管理し、高速な分析と運用が実現可能となるためです。

本記事では、データレイクハウスの基本的な概要や特徴、メリットをわかりやすく説明します。また、従来のデータウェアハウスやデータレイクとの違いを明確にし、なぜこの技術がデータドリブンなビジネス戦略に不可欠なのかを解説します。

データレイクハウスとその他データベースの違いを理解し、組織内のDX推進を加速させましょう。

データレイクハウスとは

データレイクハウスとは、その名の通り、データウェアハウス(DWH)とデータレイクの特性を融合させたデータアーキテクチャです。

データレイクハウスは、データウェアハウスの特徴である、

  • トランザクション処理によるACID特性
  • 高度なデータ処理
  • Schema On Write(格納される前にデータを構造化・変換するしくみ)


などと、データレイクの特徴である、

  • Schema On Readによる柔軟性(非構造化データや半構造化データも可)
  • 単価の低さ/コストパフォーマンスの高さ
  • 構造化データの多様な形式(CSVやAvro、parquetなど)


などを継承しています。

これにより、「データウェアハウスでは、保管できるデータに制約がある」「高度な分析・可視化にデータレイクの性能が追いつかない」といった、両者の課題を克服するデータアーキテクチャとなったのです。

データレイクハウスのアーキテクチャ

データレイクハウスのアーキテクチャは、データウェアハウスのデータ整理能力とデータレイクの柔軟なデータ保存機能を統合しています。これは、オブジェクトストレージを用いた異なるタイプのデータの保存と、ACIDトランザクションを用いたデータの一貫性と信頼性の確保を目的としています。

これにより、以下のような恩恵が得られるのです。

  • データガバナンスを強化できる
  • リアルタイム処理を行える
  • バッチ処理を統合できる
  • コストが最適化される

データレイクハウスが登場した背景

データレイクハウスの登場は、以下のような課題・背景があります。

  • ビッグデータの急増
  • データ形式の多様化
  • 進化する分析技術
  • コストとパフォーマンスのバランスの必要性

データレイクハウスは、これら課題を包括的に解決するために開発されたソリューションといえます。

ビッグデータの急増

データ量が急速に増加している現代において、従来のデータウェアハウスシステムだけでは、大量のデータを効率的に処理し分析するのは難しい状況です。この状況がストレージコストの増加、データ処理の遅延、スケーラビリティ問題を引き起こし、新しいアーキテクチャへの需要を促しました。

データ形式の多様化

DXの進展に伴い、企業は構造化データだけでなく、ソーシャルメディア、IoTデバイス、ビデオ、画像などの非構造化データも収集するようになりました。その際、従来のデータウェアハウスでは、非構造化データを効果的に扱えませんでした。そのため、多様なデータ形式を一元的に管理し分析する能力が求められるようになったのです。

進化する分析技術

データ分析技術の進化により、企業は過去のデータを分析するだけでなく、将来を予測しリアルタイムで意思決定を行う能力を求めるようになりました。この高度なデータ活用を実現するためには、データウェアハウスとデータレイクの機能を統合した、より柔軟でスケーラブルなデータアーキテクチャが必要とされています。

コストとパフォーマンスのバランスの必要性

データ量の増加と高度な分析ニーズに対応するため、コスト効率よくスケーラビリティとパフォーマンスを提供できるソリューションが求められるようになりました。この場合に、従来のデータウェアハウスやデータレイクだけでは、これら3つの両立が難しくなっていました。

データレイクハウスの特徴

データレイクハウスは、データ管理の革新的なアプローチを提供し、データ活用の方法を根本から変えています。データウェアハウスの整理されたデータ管理能力とデータレイクの柔軟性を融合することで、BI(ビジネスインテリジェンス)、リアルタイム分析、そしてAIや機械学習アプリケーションへの対応を可能にします。

スケーラビリティと柔軟性

データレイクハウスの設計は、事業の成長と共に増大するデータ量を支えるために、高い拡張性を持っています。

根底にあるクラウド基盤のおかげで、物理的な限界を超えたスケールアップが可能であり、ビジネスの要求に応じてリソースを迅速に調整可能です。また、多様なデータ形式をシームレスに一元管理できるため、多岐にわたるデータソースからの情報を統合し、分析することが可能です。このような柔軟性により、データレイクハウスは洞察を深め、迅速な意思決定を支援します。

リアルタイム分析

データレイクハウスは、リアルタイムデータ処理と分析を核としています。エンドツーエンドのストリーミング対応により、データ収集から分析までの遅延を最小限に抑え、瞬時のBIと迅速な意思決定を実現します。この即時性は、市場変動に素早く対応し、顧客体験を向上させるために重要です。

AI・機械学習への適応性

AIおよび機械学習の可能性を最大限に引き出すため、データレイクハウスにはDelta LakeやApache Parquet、ORCなどのオープンフォーマットが採用されています。このフォーマットはデータサイエンスのエコシステムとの高い互換性を保つため、分析や予測モデルの開発が容易です。

データレイクハウスとデータウェアハウス・データレイクとの違い

データレイクハウスは、データウェアハウスとデータレイクの特性を補完する形で生まれた概念です。それぞれから継承している特徴もあれば、そうでない特徴もあります。

導入した際に、そのツールの能力を最大限引き出せるよう、それぞれの特徴を正確に理解しておきましょう。

データウェアハウスとの違い

データウェアハウスは、伝統的なデータ管理方法であり、BIや意思決定サポートのために長らく使用されてきました。このデータウェアハウスは、構造化データを中心に整理・格納し、高速なクエリ処理を提供します。

一方、構造化データをテーブル形式で保管するための設計となっており、容量あたりのデータ保管コストも高いため、非構造化データや半構造化データの蓄積には向きません。

これに対してデータレイクハウスは、データレイクのアーキテクチャを反映しており、非構造化データや半構造化データも扱えます。これにより、画像データや音声データ、自然言語などをおもな収集ターゲットとする、機械学習やAIへの活用が可能です。

データレイクとの違い

データレイクは、非構造化、半構造化、構造化データを問わず、多種多様なデータをそのまま収集・保存するプラットフォームです。この柔軟性により、新たなデータの追加や変更が容易であり、データの蓄積に向いています。

しかし、さまざまなデータ形式を許容するあまり、データ品質やセキュリティに問題が生じる場合があります。

一方データレイクハウスは、データウェアハウスの特徴であるスキーマ・オン・ライトの機能も兼ね備えており、品質を維持しつつデータを蓄積させることが可能です。また、データレイクハウスは、データウェアハウスと同様にテーブル形式でデータを管理し、メタデータ管理を強化することで、高いOLAP性能を実現します。

データレイクハウス・データウェアハウス・データレイクの比較

以下は、それぞれの違いについて簡潔にまとめた表です。

データウェアハウス (DWH)データレイクデータレイクハウス
特徴構造化データの整理・格納、高速クエリ処理ができる非構造化、半構造化、構造化データの収集・保存をするなど柔軟性が高いデータウェアハウスとデータレイクの統合、多様なデータ形式のサポートしている
データの取扱い構造化データ構造化データ非構造化半構造化構造化データ非構造化半構造化
利点高速なクエリ処理データの柔軟な蓄積データの品質管理高速クエリリアルタイム分析
課題非構造化データの
取り扱いが困難
データ品質の管理と
セキュリティ課題
スキーマの適用データ統合の複雑さ
最適な用途データベースとしての蓄積データの蓄積と
柔軟な分析
より柔軟で高度な分析

データレイクハウスのメリット

データレイクハウスは、従来のデータウェアハウスやデータレイクの機能を組み合わせ、さらにそれらを超える機能を提供することで、企業が直面するデータ管理の課題を解決するために設計されています。

データレイクハウスの採用により、企業はデータの収集、保存、分析、および活用の方法を根本的に変革し、ビジネスの意思決定やイノベーションの加速に貢献できるようになります。

以下では、データレイクハウスが提供する主要なメリットについてくわしく見ていきます。

機械学習・AIの統合による高度な分析

データレイクハウスは、現代のビジネス環境において、機械学習(ML)や人工知能(AI)の統合により、高度なデータ分析を実現するための優れた解決策です。

従来のデータ管理では、主に構造化データを扱ってきましたが、今日ではAIを活用した製品開発や意思決定が企業にとって不可欠です。

データレイクハウスは、あらゆるデータ形式に柔軟に対応し、データのバージョン管理、データガバナンス、セキュリティ、ACIDプロパティを提供するため、高度な分析に適しています。そのため、機械学習モデルのトレーニングやAIによる予測分析が容易に行えるのです。

データ品質やデータガバナンスの向上

データレイクハウスの導入により、データ品質とデータガバナンスが飛躍的に向上します。データは厳格なスキーマに従って管理され、品質の一貫性が保たれます。

また、セキュリティ、アクセス制御、メトリックの監視など、データの管理要素を詳細に制御できるため、データ活用における信頼性が高まります。

これにより、法的規制やコンプライアンスに対応しやすくなるため、データに関するリスクを最小限に抑えることが可能です。

コストの最適化

データレイクハウスはコストの最適化に貢献する重要な要素です。

このアーキテクチャはストレージとコンピューティングを分離しており、ストレージの追加やスケーリングが簡単です。そのため、低コストのデータストレージを活用しながら、必要に応じてコンピュートリソースを追加できます。このようなデータの収集、保管、分析にかかるコストを効果的に管理し、ビジネスの運用効率を向上させます。

データレイクハウスの課題

データレイクハウスを成功させるためには、いくつかの課題に対処する必要があります。これらの課題は、技術的な側面から組織的な側面に至るまで多岐にわたります。

とくに、高度な技術的知識の必要性、データ統合とデータ整合性の維持、初期投資と継続的な管理コストの問題は、データレイクハウスを導入する際に慎重に検討すべき重要なポイントです。

これらの課題に効果的に取り組むことで、データレイクハウスのポテンシャルを最大限に引き出し、企業のデータ戦略を強化することができます。

高度な技術的知識が必要

Databricksが提供するデータレイクハウスのように、現代ではデータレイクハウスを導入する際のハードルが下がっています。

しかしながら、トラブルが起きた際に対応できるように、データレイクハウスを扱うエンジニアには高度な技術的知識が必要です。具体的には、複雑で多様なデータタイプとワークロードを処理するため、データエンジニアリング、データアーキテクチャ、セキュリティ、クエリ最適化など、多岐にわたる専門知識が求められます。

データ統合と整合性の維持の難しさ

データレイクハウスは、異なるデータソースからのデータを統合し、一貫性のあるデータビューを提供する必要があります。この異なるデータ形式や異なるデータストレージシステムからのデータの統合は複雑であり、データの整合性の維持には労力が必要です。

また、データレイクではデータの変更や更新に対処するメカニズムを確立する必要もあります。そのため、データレイクハウスではData Lake Formatを用いています。

このように、データ品質の維持と一貫性を保つために、組織は適切なデータ統合戦略を策定する必要があります。

初期投資と継続的な管理コスト

データレイクハウスの導入は、近年では簡単に実現が可能ですが、データレイクハウスは継続的な管理と保守が必要であり、データ品質の維持、セキュリティの強化、パフォーマンスの最適化などに対するコストも生じるでしょう。

そのため、これらのコストを考慮に入れ、データレイクハウスを運用するためのリソースを確保する必要があります。経済的な側面を慎重に計画し、データレイクハウスの長期的な価値を考慮することが必要です。

まとめ

今回は、データレイクハウスの概要やデータウェアハウス・データレイクとの違いやメリット、課題などについて解説しました。

データレイクハウスは、データレイクとデータウェアハウスの利点を統合した新しいアーキテクチャです。トランザクション管理やスキーマエンフォースメントをサポートしており、データレイクが抱える信頼性やガバナンスの課題を解決しています。また、非構造化データや半構造化データも扱えるため、データウェアハウスより広範な用途に対応可能です。

データレイクハウスの価値を最大限引き出すためには、データの収集と統合のプロセスが重要となります。しかし、多様なデータソースから大量のデータを効率的に収集し、データレイクハウスに取り込むプロセスは、手作業では大きな工数がかかります。

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