現代のビジネスでは、データの連携と統合が企業の競争力を左右します。異なるシステム間でのデータ連携は、ビジネスプロセスを円滑に進めるために不可欠です。
データ連携手法としては、CSV(Comma-Separated Values)ファイルを使った方法とAPI(Application Programming Interface)を使った方法が一般的です。CSV連携はシンプルで汎用性が高く、エクセルなどのスプレッドシートソフトでも扱いやすい特徴があります。一方、API連携はリアルタイムでのデータ交換が可能で、自動化されたデータ処理が得意です。
ここでは、CSV連携とAPI連携のメリット・デメリット、具体的な連携方法について解説します。それぞれの特徴を理解し、自社に適している手法を判断できるようにしましょう。
CSV連携とは
CSVファイルを使って、異なるシステムやアプリケーション間でデータ交換する方法を「CSV連携」と呼びます。CSV連携は、多くの場面で活用され、簡単に情報を共有できるため広く利用されています。
ここでは、CSV連携の概要について詳しく解説します。
CSV連携のメリット/デメリット
CSV連携には、導入の容易さや互換性の高さなど、いくつかの特徴があります。一方で、手作業が必要になるなどの課題もあります。
以下は、CSV連携の主なメリットとデメリットです。
メリット
CSV連携は、誰でも簡単に扱える点が大きなメリットです。多くの人が日常的に使用しているエクセルなどの表計算ソフトで操作できるため、特別な技術知識がなくても導入できます。また、コストをかけずに短期間で導入可能です。
CSV連携は、互換性の低いシステム間でもデータ共有ができる点でも優れています。ほとんどのクラウドサービスやITツールがCSV連携に対応しているため、異なるシステム間でもデータの移行や共有が可能です。
また、CSVファイルは一括編集が可能なため、大量のデータを効率的に更新できます。たとえば、エクセルで選択した列の範囲内のデータを一度に更新でき、作業時間の短縮や転記ミスの防止につながります。
デメリット
最も大きなデメリットは、データの移行や更新に手作業が必要となることです。作業に時間がかかり、人為的なミスの発生リスクが高まります。
また、リアルタイムでのデータ共有が困難であるという点もデメリットです。データの更新が即座に反映されないため、最新の情報を把握しにくいのです。業務の効率性や、意思決定の正確性に影響を与える可能性があります。
CSV連携の手順
CSV連携のおもな手順は、データのエクスポート、フォーマット変換、インポートの3ステップです。各ステップには固有の注意点があり、効率的な実行が求められます。
CSV連携の理解は、スムーズなデータ統合と業務効率化に不可欠です。以下では、各ステップについて詳しく説明します。
①連携元CSVをエクスポート
CSV連携の最初のステップは、連携元システムからデータをCSV形式でエクスポートすることです。
まず、連携元システムの設定画面や出力機能を確認し、CSVエクスポートが可能かどうかを確認します。多くの場合、システムに搭載されている「CSVエクスポート機能」を利用可能です。従業員管理システムから従業員情報をCSVで出力する場合であれば、システム内の「データエクスポート」や「CSV出力」といった機能を使用します。
たとえば、以下のような情報がCSVファイルとして出力可能です。
- 従業員ID
- 氏名
- 氏名カナ
- 生年月日
- 部署
- 入社年月日
- 住所
CSVファイルでは、コンマで区切られた各項目のデータが1行ごとに記録されます。
②連携先のフォーマットへ変換
次に、エクスポートされたCSVファイルを連携先のシステムで受け入れ可能なフォーマットに変換する作業を行います。
まず、CSVファイルをエクセルなどの表計算ソフトに取り込みます。より柔軟な編集作業を可能にするためです。
次に、連携先システムの要求に合わせてデータを加工します。たとえば、日付のフォーマットであれば、「YYYY-MM-DD」から「MM/DD/YYYY」に変換されるといった具合です。また、不要なデータの削除や、新たな列の追加もこの段階で行われます。
変換作業は、手作業で行うと時間がかかり、ミスも発生しやすくなります。エクセルの関数やマクロを使用した自動化が効率的です。
③連携先にCSVをインポート
最後に、変換済みのCSVファイルを連携先のシステムにインポートします。連携先システムのインポート機能を使用しましょう。多くのシステムでは、「データインポート」や「CSV取り込み」といった機能が用意されています。
たとえば人事管理システムに従業員データをインポートする場合であれば、システム内の専用ページでCSVファイルをアップロードします。
インポート時には、CSVファイルの各列とシステムの各フィールドの対応を確認しましょう。多くのシステムでは、対応付けを自動で行いますが、手動で調整が必要な場合もあります。
インポートが完了すると、連携先システムでデータが正しく表示され、利用できる状態になります。これにより、異なるシステム間でのデータの統合が実現し、業務プロセスの効率化が図られるのです。
API連携とは
API連携とは、異なるソフトウェアシステムやアプリケーションが、API(Application Programming Interface)を通じて互いにデータをやり取りし、機能を共有する仕組みのことを指します。
API連携によって、プログラムは他のアプリケーションの機能を利用したり、情報を交換したりできます。API連携にはさまざまな特徴があり、利点と課題の理解が重要です。
API連携のメリット・デメリット
以下では、API連携の具体的なメリットとデメリットについて詳しく説明します。
メリット
API連携のメリットとして、データ共有を自動化できるという点が挙げられます。システム間でデータを共有する際に手作業が不要で、新しい情報が入力されると自動的に連携先のシステムに同期されます。CSV連携で必要だったエクスポートやインポート作業が省略され、作業効率が大幅に向上するのです。
API連携では、リアルタイムでのデータ共有も可能です。情報のタイムラグが解消され、最新のデータを常に利用できるため、業務の効率化や人的ミスの減少につながります。
また、API連携は、複数のシステムで同時に利用できます。たとえば、販売管理システムのデータを、在庫管理や勤怠管理、会計システムなどの複数システムと連携可能です。組織全体の業務フローが効率化され、部門間の連携が強化されます。
デメリット
API連携は、提供側のシステムに大きく依存する点がデメリットとして挙げられます。API提供者がサービスを停止したり、仕様を変更した場合、連携システムに深刻な影響を与える可能性があるのです。
また、API連携の導入はコストが高くなる傾向がある点にも注意が必要です。多くのAPI連携サービスは有料で提供されており、継続的なコストが発生するためです。小規模な企業には、維持費が負担になる可能性があります。
API連携の手順
API連携には、初期の準備から最終的な実装まで、適切な対応が求められます。以下では、実装手順について説明します。
①API提供元へのユーザー登録
API連携する際に最初に必要となるのが、API提供元へのユーザー登録です。まず、API提供元のウェブサイトで登録フォームに、必要な情報を入力します。海外の企業が提供するAPIの場合は、英語での入力が求められるでしょう。
通常、登録後に利用規約やプライバシーポリシーへの同意が求められ、APIの利用に関する基本的なルールを理解できます。さらに、登録プロセスの一環として、メールアドレスの確認や本人確認が行われる場合もあります。
②APIキーとシークレットを取得
ユーザー登録が完了すると、次にAPIキーとシークレットを取得します。APIキーとは、APIへのアクセスを認証するために使用される一意の文字列であり、シークレットはそのキーを補完するためのものです。
APIキーとシークレットキーは、コンピューターシステムにアクセスする際のユーザーIDとパスワードに似た役割を果たします。APIキーは公開情報として扱われますが、シークレットキーは非公開情報として厳重に管理しましょう。キーが漏洩した場合、不正アクセスのリスクが高まるため、定期的な更新も推奨されます。
③審査・実装
APIキーとシークレットを取得した後、一部のAPIプロバイダーでは、利用申請に対する審査が行われるケースがあります。とくに、高度なAPIや商業利用の場合、提供元は申請内容や利用目的を確認し、審査を通過した後にAPIの利用が可能となります。
審査が完了し、利用が承認されると、次はAPIの実装です。実装では、APIキーとシークレットを使用して、連携先システムとAPIの接続を確立し、必要なデータのやり取りを行います。
CSV以外のテキストベースのデータ形式
CSVの他にも、テキストベースのデータ形式があります。JSONとXMLが代表例です。各形式は、独自の構造と特徴を持ち、異なる用途や状況に適しています。
以下では、JSONとXMLについて説明します。
JSON(.json)
JSONは、人間にとって読みやすく、機械にとっても解析しやすいデータ形式です。JSONは、データを階層構造で表現できるため、複雑な情報でも効率的に処理可能です。
JSON「.json」という拡張子を持ち、キーと値のペアで構成します。名前と年齢を表す場合であれば、{name: 山田太郎, age: 30}のように記述します。配列を使用して、複数のデータをまとめることも可能です。
JSONはウェブアプリケーションでのデータ交換によく使用され、多くのプログラミング言語でサポートされています。とくにJavaScriptとの親和性が高く、ブラウザ上でのデータ処理や、サーバーとのデータ交換で頻繁に使用されます。CSVと比べると、より複雑なデータ構造を表現できる点も大きな特徴です。
JSONは、そのシンプルさと効率性から、現在では多くのアプリケーションやサービスでデータの標準フォーマットとして採用されています。
XML(.xml)
データを階層構造で表現し、タグを用いて情報を整理するのがXMLです。XMLは、複雑なデータ構造を処理でき、人間にも機械にも理解しやすい設計です。
XMLファイルは「.xml」という拡張子を持ち、開始タグと終了タグで要素を囲む形式で記述します。たとえば、人物の情報を表す場合であれば、<person><name>山田太郎</name><age>30</age></person>のように記述します。属性を使用して、情報を付加することも可能です。
XMLは、ウェブサービスやデータ交換、設定ファイルなど、さまざまな用途で利用されています。多くのプログラミング言語やツールでサポートされているため、異なるシステム間でのデータ連携に適しています。CSVと比較すると、より詳細なデータ構造を表現できる点が大きな利点です。
ただし、XMLはその冗長性から、データ量が増えるとファイルサイズが大きくなりやすく、処理速度が低下することがあります。それでも、標準化されたフォーマットであるため、幅広い分野で信頼性の高いデータ交換手段として利用されています。
CSV連携とAPI連携のどちらを選ぶべき?
CSV連携とAPI連携では、状況に応じてどちらを選ぶかの判断が必要です。
データの更新頻度が低く、即時性があまり重要でない場合はCSV連携が適しています。CSV連携は特別な知識がなくても実行できるため、年次更新などの頻度が低いデータ連携に適した形式です。
データの即時性が高く、頻繁に更新が必要な場合はAPI連携が適しています。API連携は自動化が容易で、ヒューマンエラーを減らすことが可能です。そのため、作業時間の削減につながります。
CSV連携とAPI連携の選択は、組織のリソースや予算、連携するシステムの重要度や利用頻度を総合的に判断して決定しましょう。頻繁な更新や自動化を重視する場合は、API連携を選択することで長期的なメリットを得られます。
まとめ
CSV連携とAPI連携について解説しました。企業がデータを効果的に利用するためには、適切なツールと戦略が不可欠です。データの収集や統合、分析と活用のプロセスを効率的に行うことで、ビジネスの成長と競争力の向上につながります。
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