データドリブンなマーケティングが主流となった現代では、顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかなアプローチが求められます。そこで、顧客体験向上の大きなカギを握るのが、「Customer Data Platform(CDP)」です。

CDPは、顧客とのやり取りを分析・追跡・管理するために、他のシステムからアクセス可能な包括的な顧客データベースを作成する仕組みです。さまざまなデータソースからの顧客情報を一元化し、パーソナライズされたマーケティング戦略を展開できます。しかし、CDPの構築は、多数の部署をまたぐ大掛かりな作業であり、戦略的な取り組みが不可欠です。

本記事では、CDP構築のための具体的な手順を7ステップで解説します。構築時の注意点やTROCCOを用いた効果的な構築方法もご紹介します。

CDPとは

このセクションでは、CDPの基本概念と重要性、メリットなどを解説します。

CDPの基本概念

CDPは、さまざまなシステムから収集された顧客データを一元管理し、それをクレンジング、整理して分析可能な形で統合的に活用するプラットフォームです。

ウェブサイト、アプリ、店舗などの複数のタッチポイントから得られた顧客情報を統合し、データの重複や誤りを排除することで品質を保ちます。

統合されたデータは、顧客の行動パターンや購買傾向を明らかにするために分析され、これによって企業はより精度高いマーケティング戦略を策定することが可能になります。

CDPの導入は、データの有効活用を実現し、顧客データを戦略的な資産として活用するための鍵となる技術なのです。

CDPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

CDPとは?顧客データの一元化でデータドリブンな意思決定を効率化するための方法を紹介 | TROCCO(トロッコ)

CDPの重要性・メリット

CDPの導入により、企業は顧客の行動やニーズをより深く理解し、パーソナライズされたマーケティングが可能となります。顧客データを一元化することで、データの断片化を解消し、全体的な顧客理解が深まるためです。

統合されたデータは、顧客の行動パターンや購買傾向を明らかにするために分析されます。これによって企業は、より精度の高いマーケティング戦略を策定することが可能になります。

また、CDPを活用することで、マーケティング活動の効果を測定し、顧客体験の施策を迅速に実行できるのです。このようなデータ主導型のアプローチは、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現し、顧客との関係を深めることができます。

このように、CDPは、顧客満足度の向上、顧客ロイヤルティの強化、売上の増加などビジネス上のさまざまなメリットをもたらします。

CDP構築の主な手順

CDP構築は複雑なプロジェクトであるため、計画的かつ段階的に進めることが重要です。
ここでは、CDP構築の主な手順について詳しく解説します。

1.目的・ゴールの明確化

CDPの構築を開始するにあたって最初に行うべきは、プロジェクトの目的とゴールの明確化です。

まずは、何を達成したいのか、どのような顧客体験を提供したいのかを定義します。また、どの市場のニーズに応えるためにCDPを使用するか、どのような顧客体験を提供したいかという点も定義します。

さらには、連携するデータソースの洗い出しと、連携方法の確認も重要です。

明確な目的とゴールを設定することで、プロジェクト全体の方向性を決定し、関係者全員が団結して実施できます。

2.連携可能なデータソースの確認

目的とゴールを明確化したら、企業内外から集められるデータソースを確認し、データがCDPにどのように統合されるかを検討しましょう。

データソースの確認には、

  • ウェブサイトやアプリ
  • CRMシステム
  • POSシステム
  • ソーシャルメディアプラットフォーム

など、さまざまなチャネルからのデータ収集が含まれます。

データソースの確認を通じて、各データが顧客理解に貢献するかを判断します。データの質と整合性を確保する、CDP基盤の設計も済ませておくことが重要です。

データソースの確認によって、CDPが提供する顧客ビューの正確性と有用性が高まります。

3.データ統合の計画

CDP構築の第三ステップは、データ統合の計画です。

データ統合の計画では、収集したデータをどのように統合し、どのような形でCDPに取り込むかを計画します。

具体的なデータ取得の設計には、

  • データの種類やフォーマット
  • 取得頻度
  • データソースとの連携方法

などが含まれます。

計画段階でしっかりとしたデータ統合を設計することで、CDPが提供する顧客情報の信頼性と有用性を高めます。

4.データの取り込み

CDP構築の第四ステップは、データの取り込みです。

データの取り込みでは、計画した通りにさまざまなデータソースからデータを収集し、CDPに取り込みます。

データの取り込みには、API連携やファイルインポートなど、データソースに応じた技術的な方法が使用されます。また、リアルタイムデータの取り込みやバッチ処理など、データの取得タイミングも重要な要素です。

データの取り込みが正確に行われることで、CDPは一貫性のある顧客ビューを提供し、マーケティング活動の効果を最大化できます。

5.データウェアハウスの構築

CDP構築の第五ステップはデータウェアハウスの構築です。データウェアハウスは、集約されたデータを効率的に分析、管理するためのシステムです。

このフェーズでは、収集された生データを加工・変換して、分析や活用のための構造化されたデータベースを作成します。

たとえば、データウェアハウスでは、以下のような

などの作業が行われます。

CDPは一貫性のある、分析に適したデータを提供できるようになります。

6.データマートの構築

データウェアハウスが完成したら、次はデータマートの構築に移ります。データマートは、特定の部門や目的に特化したデータウェアハウスのサブセットです。

データマートの構築では、顧客のプロファイリングやデータクレンジングを行い、必要なデータを適切な形式で抽出します。

たとえば、マーケティング部門向けのデータマートでは、顧客の購買履歴や行動データを中心に構成されることがあります。

データマートを通じて、各部門は必要なデータに迅速にアクセスできるため、効果的な意思決定に有用です。

7.カスタマイズ/最適化

CDP構築の最終ステップはカスタマイズと最適化です。

カスタマイズと最適化では、マーケティングオートメーション(MA)やビジネスインテリジェンス(BI)などの、他のシステムとの連携を図ります。

また、以下の設定を適宜行い、CDPのパフォーマンスを最適化しましょう。

  • ダッシュボードのカスタマイズ
  • レポートの設定
  • アラートの構成

企業はCDPを活用して、顧客に関する洞察を深め、マーケティング活動を効果的に展開できます。

CDP構築をする際の4つの注意点

CDPの構築は、企業が顧客データを統合的に管理し、顧客に合わせた最適な体験を提供するために不可欠です。

しかし、CDPの構築にはいくつかの注意点があります。以下では、CDP構築を成功させるための4つの注意点を紹介します。

ステークホルダーと協力して行う

CDP構築は、マーケティング部門だけでなく、IT部門や営業部門など、企業内のさまざまなステークホルダーの協力が必要です。様々な部署にまたがるデータを一元化する必要があるためです。

各部門が持つ顧客データやニーズを理解し、連携してCDPを構築することが重要です。部署間でのコミュニケーションを密にし、共通の目標に向かって取り組みましょう。

各部門が連携してCDPの構築に取り組むことで、企業は顧客データを全体的に活用し、ビジネスの成長を加速できます。

データガバナンス・データプライバシーを遵守する

CDP構築では、データガバナンスとデータプライバシーの遵守は非常に重要です。データの収集、管理、利用に関するポリシーを確立し、適切なセキュリティ対策を実施しましょう。

欧州で事業を展開する企業がCDPを構築する場合、EUの一般データ保護規則(GDPR)に準拠する必要があります。顧客データの収集に関する明確な同意の取得、データの利用目的の明示、顧客のデータアクセス権や削除権の尊重などが必要です。

また、アメリカのカリフォルニア州で事業を行う場合は、カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)の要件を満たす必要があります。消費者に対してデータ収集の通知を行い、データ販売をオプトアウトする権利の提供などが含まれます。

データガバナンスの観点では、CDPにはデータの品質管理やアクセス制御などの機能が必要です。データの正確性を保証するために定期的なデータクレンジングを行い、不正アクセスを防ぐために強固な認証システムを導入しましょう。

CDP構築においては、データプライバシー規制の遵守とデータガバナンスの強化が欠かせません。企業は、顧客の信頼を維持し、法的リスクを回避するために、要件を適切に管理する必要があります。

スケーラビリティと拡張性を意識する

CDPは、企業の成長とともに顧客データが増加することを考慮し、スケーラビリティと拡張性を持たせる必要があります。将来的にデータ量が増えたり、新しいデータソースが追加されたりしても、柔軟に対応できるように設計しましょう。

事業拡大に伴い、複数のチャネルから大量の顧客データを収集するようになった場合、CDPは増加したデータ量に対応できるようにスケーラブルである必要があります。

将来的に新しいマーケティングツールやCRMシステムが導入されたときに、データソースをCDPに簡単に統合できるような拡張性も重要です。

CDPはビジネスの成長に合わせて拡大し、変化するデータ要件に対応できるように設計する必要があるのです。

継続的な監視・改善を行う

CDP構築は、「一度設定して終わり」というものではありません。CDPは、企業の成長とともに進化し続ける必要があります。市場や顧客ニーズの変化に対応するため、継続的な監視と改善が必要です。

CDPのパフォーマンスを定期的に評価し、必要に応じて最適化することで、常に最高の顧客体験を提供できるようにしましょう。

また、CDPのパフォーマンスを定期的に監視し、データ処理速度の低下やエラー率の上昇などの問題が発生していないかを確認することも重要です。問題が見つかった場合は、迅速に対応し、システムの最適化を行うことで、顧客体験の質を維持できます。

CDPは継続的な監視と改善を通じて、変化する市場環境に柔軟に対応し、顧客に最適なサービスを提供するための重要なツールとなります。

TROCCOを活用したCDP構築の例

TROCCOは、株式会社primeNumberが提供するサービスであり、CDP構築において、データ連携やデータマート生成、データクレンジングなどさまざまなプロセスで活躍します。

以下に、TROCCOを活用したCDP構築の具体的な例を紹介します。

データ転送・ETL(Extract, Transform, Load)

TROCCOは、複数のデータソースからデータを収集し、必要に応じて変換してCDPに取り込むETL機能を提供します。

たとえば、

  • ウェブサイトやアプリの行動データ
  • eコマースのトランザクションデータ
  • 顧客のデモグラフィックデータ

など、異なる形式やソースのデータを統合し、CDPで利用可能な形式に変換します。

データマート生成・モデリング

データウェアハウス内のデータをさらに加工し、特定の分析やレポート作成のためのデータマートを生成します。

TROCCOを使用することで、CDP内で顧客セグメントごとにデータマートを作成し、顧客行動のパターン分析やマーケティング施策の計画に役立ちます。

ワークフローの自動化

TROCCOはデータの取り込みや加工、更新などのプロセスを自動化し、CDPの運用を効率化します。

TROCCOのワークフロー機能を利用することで、定期的なデータ更新やリアルタイムでのデータ処理が可能となり、常に最新の顧客データをCDPで活用できます。

データカタログ

TROCCOは、データカタログと呼ばれるメタデータ管理機能を通じて、CDP内のデータの概要や関連性を把握しやすくします。

データカタログを活用することで、CDP内のデータソースやデータセットの詳細情報を一元管理し、データの検索や活用を容易にします。

まとめ

CDPの構築は、企業が顧客データを一元的に管理し、マーケティング施策を最適化するために重要です。

この記事で紹介した7ステップに従って計画的にCDPを構築することで、企業は顧客理解を深め、顧客満足度を向上させます。

CDP構築の際には、

  • 目的の明確化
  • ステークホルダーとの協力
  • データガバナンスの遵守
  • スケーラビリティと拡張性の確保
  • 継続的な監視と改善

が重要です。各注意点を踏まえることで、効果的かつ持続可能なCDPを構築しましょう。

また前章でもご紹介したように、TROCCOを活用することで、CDP構築のプロセスを効率化できます。

CDPを構築し、データの連携・整備・運用を効率的に進めていきたいとお考えの方や、プロダクトにご興味のある方はぜひ資料をご覧ください。