Notionは、ドキュメント作成、データベース管理、タスク進行などを一元的に扱えるオールインワンの情報管理ツールです。直感的なUIと柔軟なカスタマイズ性により、個人から企業まで急速に導入が進んでいます。
標準機能だけでも日々の情報整理や業務管理に活用できますが、APIを活用することで、さらなる業務効率化や生産性の向上が実現可能です。たとえば、外部アプリからデータベースへの自動書き込み、ワークフローとの統合、定期レポートの自動生成などが可能となります。
本記事では、Notionが提供するAPIの内容と、各APIで実現できること、具体的な活用シーンについて詳しく解説します。API連携を通じて、Notionでのデータ活用をより一層拡張させましょう。
Notionとは
Notionは、アメリカのスタートアップ企業Notion Labsが開発した、生産性を高める多様な機能を兼ね備えた多機能アプリケーションです。ユーザー数は、2020年時点で100万人を超え、そこから4年で1億人に到達しました。日本においても、2021年10月の日本語β版リリース以降、トヨタ自動車や三菱重工といった大企業でも導入が進んでいます。
Notionでは、議事録やTo-Doリストなど、用途に応じてドキュメントを柔軟に管理できます。その多機能性から「オールインワンツール」と称されており、以下のような主な機能があります。
- ナレッジ
- 議事録管理
- メモ
- 社内wiki
- タスク
- To-Do表
- プロジェクト管理
- マイルストーン
- データベース
- 帳票
- データ
- メディア
これらの機能を切り替えることなく一つの画面上で操作できるため、他のツールと比較しても圧倒的なシームレス性を誇ります。「ナレッジ」「タスク」「データベース」の3機能を一元管理できることが、Notionの大きな特徴です。
Notion APIでできること
Notionでは、外部ツールとの連携や標準機能の拡張を目的に、無料で利用できるAPIを提供しています。主に以下4つの操作が可能です。
- データベースの操作
- ページの操作
- ブロックの操作
- ワークスペースのユーザーの情報取得
ここでは、「それぞれの概念がどのような意味を持つのか」「APIを用いて具体的にどのようなことができるのか」を解説します。
データベースの操作
Notionのデータベースは、情報を構造的に整理・管理する中核的な機能です。Excelやスプレッドシートに似た形式で、情報の分類・蓄積・検索が可能です。
表示形式は以下の6種類に対応しています。
- テーブル
- ボード
- タイムライン(ガントチャートなど)
- カレンダー
- リスト(箇条書き)
- ギャラリー(カード形式で画像などの表示が可能)
APIを用いることで、データベースの新規作成やデータのクエリ(検索)、ページの追加・更新などが可能になります。たとえば、外部ツールと連携し、収集データをリアルタイムでNotionに反映することが可能です。
ページの操作
Notionにおける「ページ」とは、文書やタスク情報などを格納する単位のことです。テキストや画像、チェックリストなど多様なコンテンツを自由に配置できます。
さらに、ページ内に子ページを作成することで、階層的なフォルダ構造も構築できます。
APIを活用すれば、ページの新規作成、取得、更新、削除といった一連の操作を自動化可能です。たとえば、Googleカレンダーの予定に基づいてページを自動生成する、といった使い方ができます。
ブロックの操作
ブロックとは、Notionのページ内にある最も小さなコンテンツ単位のことで、テキスト、画像、動画、表などの要素がこれに該当します。Notionでは、ページとブロックの2つで構成されており、ブロックを自由に組み合わせたり順序を入れ替えたりして、ページを作成します。
Notionのブロックエディターはマークダウン記法を採用しており、直感的で使いやすい反面、複雑なコンテンツの一括作成や大量編集には手間がかかりがちです。
そこで、APIを活用することで、ブロックの取得や追加、別ページへの移動を自動化できます。定型報告書の自動生成や外部サービスからのデータ取得・反映にも応用可能です。
ワークスペースのユーザーの情報取得
ワークスペースは、Notionを利用するための作業領域であり、ユーザー単位・チーム単位・企業単位で設定可能です。情報共有とセキュリティ管理において重要な要素です。
ユーザーには管理者、メンバー、ゲストといった役割が設定されており、APIを使えば、ユーザー一覧の取得やユーザーIDの検索、botユーザー情報の取得といった操作が自動化できます。
SCIM(System for Cross-domain Identity Management)規格にも対応しているため、他の社内システムとの連携も可能です。大規模な組織においては、ユーザー情報をAPIで一元管理することで、業務効率とセキュリティが大幅に向上します。
チームの規模が大きくなるほど、メンバーの入れ替えや情報管理が煩雑になります。APIによってユーザー情報を自動的に整理・管理し、アクセスの透明性や効率性を高めることが重要です。
Notion API一覧
Notion APIを活用することで、データベースやページ、ブロックなど、Notion内の各要素を外部ツールから操作できます。
ここでは、実際に利用可能なAPIエンドポイントをカテゴリ別に紹介します。各項目には、公式ドキュメントへのリンクも設けていますので、詳細についてはそちらをご参照ください。
データベースに関するAPI
Notionのデータベースは、情報を体系的に保存・整理するための機能です。APIを通じて外部サービスとデータの作成・取得・更新などができ、情報管理を効率化します。
データベースを作成する
指定されたプロパティスキーマに基づき、親ページ内にサブページとしてデータベースを作成します。
データベースをクエリする
リクエストに基づき、フィルターと並び替え条件に従ってデータベース内のページリストを取得します。HTTPメソッドはPOSTです。
データベースを取得する
指定されたデータベース ID のデータベース オブジェクト(データベースの構造と列を記述する情報)を取得します 。HTTPメソッドはGETです。
データベースを更新する
指定されたデータベースのデータベース オブジェクト (タイトル、説明、またはプロパティ) を更新します。HTTPメソッドはPATCHです。
ページに関するAPI
ページとは、Notion内で情報を記録するドキュメント単位のことです。APIを使えば、自動でページの作成や編集を行うことが可能になります。
ページを作成する
既存のページまたはデータベースの子となる新しいページを作成します。HTTPメソッドはPOSTです。
ページを取得する
指定されたIDを使用して、ページオブジェクトを取得します。HTTPメソッドはGETです。
ただし、ページプロパティに25を超える参照が含まれている場合は、このエンドポイントではなく、次の項目「ページプロパティ項目を取得する」を使用します。
ページプロパティ項目を取得する
指定されたIDを使用して、ページオブジェクトを取得します。HTTPメソッドはGETです。
プロパティ項目の参照が25を超える場合、このエンドポイントを使用します。
ページのプロパティを更新する
データベース内のページのプロパティを更新します。HTTPメソッドはPATCHです。
ブロックに関するAPI
ブロックとはページを構成する要素のことで、テキストや画像などが該当します。APIを使って、ブロックを個別に操作・編集できます。
ブロックの子を追加する
指定された親に新しい子ブロックを作成して追加します。HTTPメソッドはPATCHです。
ブロックを取得する
指定されたIDを使用して、ブロックオブジェクトを取得します。HTTPメソッドはGETです。
ブロックの子を取得する
指定されたIDを使用して、ブロックに含まれる子ブロック オブジェクトのページ分割された配列を返します。HTTPメソッドはGETです。
ブロックを更新する
ブロックタイプに基づき、指定されたコンテンツを更新します。HTTPメソッドはPATCHです。
ブロックを削除する
指定されたIDを使用して、ページブロックを含むブロック オブジェクトを設定します。HTTPメソッドはDELETEです。
ユーザーに関するAPI
NotionではユーザーをAPI経由で管理・取得できます。チーム内のメンバー管理や情報共有がよりスムーズに行えます。
全てのユーザーを一覧表示する
ワークスペースのユーザーのページ区切りリストを返します。HTTPメソッドはGETです。
ユーザーを取得する
指定されたIDを使用して、ユーザーを取得します。HTTPメソッドはGETです。
トークンのボットユーザーを取得する
認証ヘッダーで提供されるAPIトークンに関連付けられたボットユーザーを取得します。HTTPメソッドはGETです。
コメントに関するAPI
APIを通じて、Notion内のページやディスカッションへのコメント追加・取得が可能になります。コミュニケーションやフィードバックの効率化に役立ちます。
コメントを作成
ページ・既存のディスカッションスレッドにコメントを作成します。HTTPメソッドはPOSTです。
コメントを取得
ページ・ブロックから、未解決のコメントオブジェクトのリストを取得します。HTTPメソッドはGETです。
検索に関するAPI
Notion内のコンテンツをAPI経由で検索できます。外部システムと連動させ、情報をすばやく発見・取得するのに役立ちます。
タイトルで検索
統合によって共有されているすべての親ページ・子ページとデータベースを検索します。HTTPメソッドはPOSTです。
認証に関するAPI
外部サービスとNotionの安全な連携を実現するために、認証に関するAPIが提供されています。トークンの作成や管理を行うことで、安全に連携を実現します。
トークンを作成する
サードパーティのサービスがNotionで認証するために使用できるアクセストークンを作成します。HTTPメソッドはPOSTです。
イントロスペクトトークン
トークンのアクティブステータスやスコープ、発行時刻を取得します。HTTPメソッドはPOSTです。
トークンを取り消す
アクセストークンを取り消します。HTTPメソッドはPOSTです。
Notion APIの注意点
Notion APIを活用するにあたっては、いくつかの注意点を把握しておくことが重要です。ここでは、主な注意点を3つご紹介します。
リクエスト制限
Notion APIでは、システムの安定性とパフォーマンスを確保し、すべてのユーザーが公平に利用できるようリクエスト制限が設けられています。
短時間に大量のリクエストを送信すると、レートリミット(制限)がかかり、リクエストがエラーとなります。一般的には平均で3回/秒を超えると制限対象となるため、エラー発生時には指定された時間を待ってから再送信する必要があります。
また、リクエストに含まれるデータサイズや項目数にも上限があります。たとえば、URLの最大長は2,000文字、ブロック要素は1リクエストあたり最大1,000個、容量は最大500KBまでです。これらを超過すると、エラーが返されるため注意が必要です。
Notion APIのリクエスト制限に関する詳細はこちら
β版や仕様変更
Notionは継続的にアップデートが行われており、新しいAPI機能がβ版としてリリースされることもあります。そのため、将来的に仕様が変更されたり、既存機能が大きく変わる可能性もあります。
β機能を利用する場合は、将来において機能や仕様が大幅に変更される可能性があることに留意しておきましょう。また、定期的にNotionの公式ドキュメントを確認し、最新の仕様を把握しておくことも重要です。
認証とセキュリティ
Notion APIに限定したことではありませんが、API連携を実施する際には、適切な認証とセキュリティ対策が不可欠です。
APIキーやOAuth2.0などの認証方式を正しく実装し、機密情報の保護に努める必要があります。また、API通信の暗号化やアクセス制御の設定といった、セキュリティのベストプラクティスに従った設計・運用を行うことが求められます。
Notionのデータ連携活用事例
Notion APIによって、外部ツールとのデータ連携を実施すれば、更なる業務効率化・生産性向上が期待できます。ここでは、Notion APIを用いた、データ連携のユースケースをご紹介します。
スケジュールの同期
日々の予定管理にはGoogleカレンダーなどのカレンダーアプリを利用している方が多いでしょう。しかし、スケジュール管理をGoogleカレンダーで行い、タスク管理をNotionで行うと、情報が分散し、二重管理や更新漏れの原因となります。
一方、スケジュール管理はGoogleカレンダー、タスク管理はNotionのように両ツールを併用してしまうと、二重管理や更新漏れが起こりやすくなります。
Notion APIを活用すれば、GoogleカレンダーとNotionを双方向的に自動同期させることが可能です。Googleカレンダーに追加・変更された予定が自動的にNotion側にも反映され、手動の二重管理を避けられます。また、常に最新のスケジュールをNotion上で確認できるようになり、スケジュールとタスクの管理効率が向上します。
ビジネスチャットへの自動通知
Notionはチームでの情報共有や共同編集に適していますが、通知機能の不足が課題になることがあります。データベースやページの更新に対して、メンバーが気づかないケースも少なくありません。
しかし、データ更新のたびに情報共有するのは、非常に大きな手間です。また、手動では共有のし忘れなど、伝達ミスのリスクがあります。
Notion APIを活用し、ビジネスチャットツールと連携することで、こうした課題を解決することが可能です。たとえば、NotionとSlackをAPI連携させれば、データベースやページが更新されるたびにSlackへ自動で通知送信するよう設定できます。これにより、情報共有の手間が大幅に削減され、業務効率の向上につながります。
表計算ソフトやBIツールへの連携
Notionのデータベースは、情報の蓄積・管理に優れていますが、高度なデータ分析や可視化には向いていないという側面があります。
そのため、ExcelやGoogleスプレッドシート、TableauやLookerなどのBIツールと連携することで、分析機能を補完することが一般的です。ただし、手動でのデータ移行は工数がかかる上、リアルタイム性の欠如や入力ミスのリスクもあります。
Notion APIを活用すれば、これらのツールと自動同期が可能となり、常に最新のデータを活用した分析やレポート作成が実現できます。業務効率とデータ品質の両方を向上させる効果が期待できます。
まとめ
本記事では、Notion APIを用いてできることや具体的なユースケースをご紹介しました。
Notionは、非常に幅広い機能を提供する「オールインワンツール」であり、柔軟なドキュメント管理や情報共有を可能にします。一方、スケジュール管理や通知機能、データ分析機能に関しては、他の専門ツールに劣る部分があります。
Notion APIを活用することで、Notionは単なるドキュメントツールから業務のハブへと進化します。まずは小さな自動化から始めて、業務の最適化を図ってみましょう。
