CASE STUDY

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増え続けるデータ連携をTerraform×AIで半自動化。少人数チームが、現場と経営の「データ活用の自走化」を支えるまで

「医療ヘルスケアの未来をつくる」というミッションのもと、「病院や行政による持続可能な医療」「患者やそのご家族にとって納得できる医療」、それぞれの実現を目指し、医療ヘルスケア領域でテクノロジーを活用した事業を展開する株式会社メドレー。従来より、同社ではデータに基づいて意思決定を行うファクトベースの文化が深く浸透している。また、複数プロダクトにまたがるデータ連携に「TROCCO」を活用してきた。

しかし、新規プロダクトの立ち上げや機能強化に伴う分析対象データの増加により、GUIによる手動管理は限界に直面していた。この状況を打破したのが、データ連携設定のコード管理(IaC化)と、生成AIを組み込んだ「半自動化フロー」の構築である。

本記事では、「TROCCO」をどのように活用してデータ運用を進化させてきたのか、そして今後の展望について、株式会社メドレー 人材プラットフォーム本部 CTO室 データマネジメントグループ グループマネジャー 山邉様と、ジョブメドレー事業部 カスタマーサクセス部 第二グループ グループマネジャー 友野様にお話を伺った。

課題

  • 新規プロダクトの立ち上げや分析軸の多様化に伴いデータが急増し、GUIでの手作業設定・修正が限界に達していた
  • 複数人によるGUIからの変更や運用の長期化に伴い、実環境とコードで管理している環境にズレが生じていた
  • プロダクトと営業のデータが繋がっておらず、カスタマーサクセスでの支援効果を正確に追跡できていなかった

目的

  • 連携設定をTerraformでコード管理し、設定ポリシーの一元化や一括修正を実現する
  • ズレの検知と修正案の提案はシステム、最終確認は人が担う運用を構築する
  • kintoneの顧客対応履歴と利用データを統合し、オンボーディング支援などの効果を測定する

効果

  • 新規プロダクトのデータ連携設定にかかる時間が1〜2日から1〜2時間に短縮した
  • AIによる自動検知・修正案の作成、その後の人のレビューと承認により、効率化と質の担保を両立できるようになった
  • 顧客支援終了後の活用状況が可視化され、組織戦略を見直すきっかけに

導入の背景

データ基盤が当たり前に運用される組織を支える

株式会社メドレー 人材プラットフォーム本部 CTO室 データマネジメントグループ グループマネジャー 山邉様
まず、貴社の事業概要について教えてください。

山邉:株式会社メドレーは「医療ヘルスケアの未来をつくる」をミッションに掲げ、大きく2つの事業を展開しています。

1つ目は、医療介護向けの人材採用システム「ジョブメドレー」を筆頭とした人材プラットフォーム事業です。医療介護をはじめとした50職種以上の有資格者にご利用いただいており、人材プラットフォーム事業全体の会員数は333万人にのぼります。

2つ目は、医療機関と、患者・生活者向けのアプリをデジタル上でひとつにつなぐ次世代医療プラットフォーム「MEDLEY AI CLOUD」を展開する医療プラットフォーム事業です。医療プラットフォーム事業全体で2.3万の医療機関に導入していただいています。

お二人の自己紹介と現在の役割を教えてください。

山邉:私は人材プラットフォーム本部のCTO室で、データマネジメントグループのグループマネジャーを務めています。

メドレーには2025年4月に参画し、組み込みエンジニアからソフトウェアエンジニア、データエンジニアへと変遷をたどり、データ基盤の開発やデータ組織の立ち上げを経験しています。

現在、データマネジメントグループには、私以外にデータサイエンティストとデータエンジニアが1名ずつ所属しています。

友野:私はジョブメドレー事業部のカスタマーサクセス部に所属し、グループマネジャーを務めています。導入初期のお客様を支援する「オンボーディング」と、契約後に活用が滞っているお客様へ再度アプローチする「リテンション」の2チームを統括しています。

ジョブメドレー事業部 カスタマーサクセス部 第二グループ グループマネジャー 友野様
当時、社内のデータ活用はどの程度進んでいましたか。

山邉:私が入社する前からデータ活用には積極的に取り組んでおり、Google CloudのBigQueryに多くのデータが蓄積されていました。会議資料にも単に数値を貼るだけでなく、その数値を算出したSQLも添えられていたりと、データに基づいて判断するファクトベースの文化が深く浸透していました。

友野:現場のメンバーでも生のデータに直接アクセスし、お客様のログイン回数や応募状況をチェックしていました。お客様のアクティブ状況を判断する指標として自ら数字を確認することが、当たり前の業務フローとして溶け込んでいます。

「TROCCO」の導入背景と、当時抱えていた課題を教えてください。

山邉:「TROCCO」はもともと医療プラットフォームで先に導入していて、その活用実績を見て、人材プラットフォームでも使い始めた、という流れです。ただ、プロダクトや組織は医療と人材で分かれており、データ基盤も新たに構築する必要がありました。

当時、人材プラットフォーム事業には専任のデータエンジニアがいなかったため、限られたリソースの中で、工数をかけずにスピード感を持ってデータ基盤を立ち上げることが大きな課題でしたね。

現在、貴社のデータ基盤はどのような構成になっていますか。

山邉:AWS上にあるプロダクト本体のデータベースや、kintoneといった外部システムから、「TROCCO」でデータを抽出してBigQueryへ転送する構成です。

さらに「TROCCO」のdbt連携とワークフローを利用することでdbtのジョブを起動し、データの変換加工処理を行っています。

格納したデータはBIツールであるMetabaseやGoogleスプレッドシートから直接参照するほか、リバースETL(データ基盤から業務システムへデータを戻す仕組み)で再びkintoneへ書き戻して活用したりしています。

メドレー様 人材プラットフォーム部門 データ基盤構成図

IaC化への取り組み

コード管理への移行で基盤構築を高速化。立ち上げ直後から事業の数字を追えるように

転送設定をGUIからコードで管理する「IaC化」の仕組みに切り替えられたとお聞きしましたが、そのきっかけと効果を教えてください。

山邉:弊社では、直近でも様々な新規プロダクトや機能の立ち上げが行われています。新しいプロダクトができると、事業側からはすぐに「いろいろな数字を見たい」というニーズが出てきます。

そのため「一気に40〜50テーブル規模のデータを連携したい」ということも多く、それまではGUIで手作業で設定していましたが、大量のテーブルを一度に扱うとなると限界がありました。

主な課題は、作業担当者ごとの設定のブレや一括修正工数の肥大化です。それに加えて、ジョブが増えすぎるとGUI画面上でワークフローの描画が重くなったり、文字が潰れてどこでスケジュールが設定されているのか把握できないという問題も起きていました。

そこで「Terraform Provider for TROCCO」を活用し、コード管理体制への移行を完了しました。以前は40テーブルの連携に丸1〜2日かかっていましたが、現在は1〜2時間程度で本番反映まで完了しています。

基盤の構築が短時間で済むようになったことで、立ち上げ直後から事業の数字を追える状態をつくれるようになりました。

当初、Terraformではkintone向けの転送は対応されておらずprimeNumber社に問い合わせたりしていましたが、その後のアップデートで対応していただき、BigQuery側のデータ抽出とkintone側への連携設定をセットでコード管理できるようになりました。

AIによる半自動化

運用中に発生するズレ。AIが自動検知し修正案を提供する仕組みとは

AIを活用した「半自動化フロー」を構築したと伺いましたが、その仕組みについても教えてください。

山邉:一言でいえば、設定と実体の「ズレ」をシステムが自動で検知して修正案を作り、人はその確認と承認だけを行う仕組みを構築しました。

プロダクトごとに採用している技術スタックやデータベースが異なり、担当する開発チームもそれぞれ別なので、データチームへの変更依頼のやり取りが煩雑になっていました。データのライフサイクルも違うので、都度の依頼対応をする中でのブレや、データスキーマの変更によって、気づかないうちにTROCCOの設定とTerraformのコード、そしてプロダクト側のスキーマがズレてしまうことがあります。

このズレをシステムが自動で検知し、直すための修正案を作る仕組み作りにAIを活用しています。人はその修正案の内容を確認し、問題なければ承認する、という役割分担です。

「全自動」にはせず、AIと人の間に役割の境界線を引いているのはなぜですか。

山邉:AIに任せきりにはできない部分があるためです。

例えば、これまでにない新しいパターンの連携が必要になったときは、人が仕組み自体を拡張する必要があります。

また、個人情報など機微な項目の連携可否や連携方式の判定は、必ず人の目を通す必要があります。そのため、AIには「人が判断するための情報をあらかじめ整理して提示する」ところまでを任せ、最終的な判断は人が担う、という役割分担にしています。

本件の詳細は山邉様のprimeNumber User Groupの登壇資料もご覧ください。

導入後の効果

見えていなかった顧客の実態。データ連携がもたらしたCS戦略の見直し

データ連携が稼働したことで、カスタマーサクセスの実務にはどのような変化がありましたか。

友野:これまでのCS活動の戦略を見直すきっかけになりました。私たちは新規のお客様に「オンボーディング支援」を設けています。従来は新規のお客様向けに一定期間の伴走支援を行っていたものの、顧客対応データとシステムのご利用ログが分断されており、支援の効果を正確に追跡できていませんでした。

しかし、双方のデータを連携したことで、支援期間の終了後に利用頻度が伸び悩むケースが一定数存在するという実態が浮き彫りになったのです。もしデータ連携がなければ、支援期間中の高いアクティブ度だけを見て「成功している」と誤認し続けていたかもしれません。

現実が可視化されたことで、初期の伴走支援にとどまらず、その後の継続的なフォロー体制へもバランスよくリソースを配分できるようになりました。支援のあり方そのものを見直す、大きな転換点となっています。

そうしたデータ活用は、事業責任者の方や経営層にも広がっているのでしょうか。

友野:事業責任者自らダッシュボードを運用するほどデータ重視の文化が根付いており、経営層も日々の状況把握に積極的に活用しています。データの精度については経営層からも関心が寄せられており、常に高い品質を維持する動機付けになっています。

このデータの妥当性への要求の高さこそ、ファクトベース文化の象徴です。今回のIaC化や半自動化でデータ品質を維持していく、強い原動力にもなっています。

今後の展望

AIエージェントが現場と経営をつなぐ。社内MCPの検証とデータエコシステムの構築へ

今後のデータ利活用における展望を教えてください。

山邉:最近は、AIエージェントにデータを提供することの重要性が増していると感じています。事業サイドや現場のメンバーも、自分でエージェントを使ってデータにアクセスし、分析できる時代になってきました。

そこで、直近では社内用のMCPを立てて、そこを経由して私たちが整備したデータマートやログデータを使ってもらう、という技術検証を始めています。

整備したデータマートやメタデータ、社内ドキュメントをエージェントが自律的に探索し、分析に活用できる環境をつくります。現場から経営陣までエージェントを介して瞬時に同じファクトの取得からロジックの検証まで行える、フラットなデータエコシステムが目指す姿です。

友野:カスタマーサクセスの現場では、現状でもメールの添削やトークスクリプトの改善といった形でAIを使い始めています。また、データ活用自体も日常になりつつあります。

AI活用に決まった型はありません。部署ごとに課題が異なるからこそ、現場のプレイヤーがそれぞれの業務で主体的にAIに触れ、試行錯誤を通じて最適な使い方を模索していく姿勢を大切にしています。

最後に、同じようにデータ基盤の課題に向き合っているエンジニアへメッセージをお願いします。

山邉:これからのデータエンジニアは人一倍強い事業感と数字感を持つべきだと考えています。「TROCCO」のような便利なツールの普及で、データ連携の実装や基盤構築の工数は驚くほど下がりました。

その先に訪れるのは、高い知識を持ったAIエージェントや社内ユーザーが、それぞれの切り口からデータ基盤へ次々とアクセスしてくる世界です。指示や依頼通りにデータをつなぐだけでは、データエンジニアとしての存在意義は保てないと感じています。

そこで、事業指標でもプロダクトKPIでも良いので「自分に報告責任がある数字」を1つ持つことをおすすめします。私の場合は、データエンジニアリングとは別に事業数値の予測や変動要因の分析業務も担っています。自らもデータ活用の当事者としてビジネスに関わることで、事業を伸ばすために本当に必要なデータ基盤がわかるようになります。

単にデータを提供するのではなく、事業の現場に飛び込んで数字の肌感を持つことで、データマネジメントの価値や可能性が見えてくるのではないかと思います。

TROCCOに関心を持ってくださった方は、こちらからお問い合わせください。

株式会社メドレー

業種

設立

2009年6月

従業員数

1,815名(2025年12月末)

事業内容

人材プラットフォーム事業/医療プラットフォーム事業

導入事例

様々な業界のお客様がprimeNumberを活用して、ビジネスの成長を実現しています。