課題・問題
誰もがメンテナンスできる安定したデータ基盤を模索

まずは簡単な自己紹介と、貴社の事業内容について教えてください。
高尾様(以下、敬称略):株式会社クラシコムは、「北欧、暮らしの道具店」というライフカルチャープラットフォームを運営しており、ECを通じて雑貨やアパレルの企画販売を行っています。
現在、私はビジネスプラットフォーム部の責任者をしております。本部署では、データ分析や基盤整備をはじめ、システム開発のプロジェクトマネジメント、物流管理、情報システム、カスタマーサポートまで、事業運営を支える幅広い領域を担当しています。
データ活用の取り組みは、これまでどのように進めてこられたのでしょうか?
高尾:2020年頃から本格的にデータ基盤の構築を始め、翌年に「TROCCO」を導入しました。私が2019年に入社した当時は、まだ社内にデータをグラフにして分析するといったカルチャーがあまり根付いておらず、環境も十分に整っていませんでした。
そこで、データ基盤の実装を担う面白法人カヤックさんと協業しながら基盤づくりをスタートさせました。
当初は、Lookerによるデータの可視化を見据え、顧客対応データなどをBigQueryへ集約するために、「TROCCO」を導入しました。GUIで直感的に操作できるため、データ連携の仕組みをスムーズに構築できたことを覚えています。
ただ、データ活用が広がるにつれて、次第にLooker側で多くの処理を担うようになりました。その結果、運用が複雑化し、システム全体の安定性や保守性に課題が見え始めたのです。
なぜ「TROCCO」を選んだのか
基幹システムは自社で作り込むからこそ、データ転送はワンストップの「TROCCO」を選択

運用が複雑になってしまった課題に対して、どのように対処されたのでしょうか?
高尾:「TROCCO」のdbt連携機能を活用して、データ転送からdbtの実行までをワークフローで一元管理できる体制へ移行する「データ基盤安定化プロジェクト」を実施しました。
当時は、カヤックのエンジニアの方にLooker(LookML)をカスタマイズしていただき、複雑な処理を支えていただいている状態でした。しかし、このままでは特定の人しかメンテナンスができなくなってしまうという懸念があったのです。
そこで、特定の個人のスキルに依存する状態から、誰もがメンテナンスできる仕組みへ移行することを目指しました。ちょうど「TROCCO」がdbt連携機能を実装するタイミングだったため、弊社がファーストユーザーとしてフィードバックを行いながら移行を進めました。
その結果として、エラーの発生頻度が減少し、障害発生時の対応負荷も軽減されたのです。利用者は安心してデータを閲覧でき、データ分析チームも異常時に迅速に対応できる環境が整えられたと感じています。
その後、基幹システムのリプレイスも実施されたと伺いました。そこではデータ転送をどのように位置づけられていたのか教えてください。
高尾:ECの根幹である商品登録から発注、入庫、受注、出荷までの業務を同一のシステムに乗せる「システムの環を閉じる」という方針のもと、ソフトウェア開発会社のソニックガーデンさんと基幹システムの再構築を進めました。
弊社CTOの倉貫からも「システム上で在庫金額や数量、入出金などの理論値が計算できる状態を目指そう」という声があり、事業基盤の強化に注力しました。
その一方で、データ基盤はその「環の外側」に位置する機能です。基幹システムは自分たちで作り込んでいますが、データを集めて整えるこの領域だけは外部に任せると決めました。
データ転送に「TROCCO」を採用したのは、データの抽出からdbtの起動までをワークフローで一元管理でき、ワンストップで対応できる利便性があったためです。
自社で専用のサーバーを立ててホスティングする必要がなく、「TROCCO」上だけでデータ転送の仕組みを構築・運用できます。また、プロセスのどこかで処理に異常が発生した場合は、確実にアラートが通知される環境も整えられます。
「TROCCO」がなければ運用はとても煩雑になっていたはずです。自分たちで作らずに外部ツールに任せる以上、このような「手間のなさ」と「確実性」は非常に重要なポイントでした。
導入後の効果
経営判断から商品企画まで。データが新たな意思決定を生む

経営会議など、ビジネスの現場では現在どのようにデータを活用されているかお聞かせください。
高尾:経営会議をはじめ、各場面で必要なダッシュボードを用意して事業判断の土台にしています。
経営層向けには、売上をKPIに分解したダッシュボードや、特定のファネルにおけるプラットフォーム別の状況、売上や購入頻度の推移などをLooker上で確認し、さまざまな角度から議論を行っています。例えば、5年分の購買データから継続購入している顧客の割合をグラフ化し、その傾きを見ることで「自分たちの事業の状態」を客観的に把握できるようになりました。
また、現場の各部門でもデータを見る文化が育ってきています。バイヤーが商品の売れ行きを確認したり、SNS運用担当者がLINEやメルマガの配信結果を翌日に振り返ったりと、自分たちの施策がお客様にどう受け止められたのかを知るためのフィードバックとしてデータを活用していますね。
データが共通言語となり、それぞれのスタッフが自身の仕事に主体的に向き合える環境が生まれていると感じています。
データの活用が、商品企画など具体的なビジネスの意思決定につながった事例を教えてください。
高尾:これまで直感やお客様の様子からインサイトを得ることが多かったのですが、見られるデータの範囲が広がったことで新しい発見が生まれています。
例えば、最も継続購入されている層と初めて購入された方の中間にいるお客様が、どのようなお買い物をしているのかを分析したことがありました。すると、「この商品群を買った後に、特定の商品群に行き着くとリピートにつながりやすい」といった購買行動の傾向が見えてきたのです。そこから、その商品群に近い単価の商品を配置して興味を持ってもらうといった具体的な施策や、新たな商品企画の議論へと発展するケースが出てきています。
当初は現状把握のために活用していたデータが、今では商品企画や施策立案にもつながるようになりました。その可能性の大きさを実感しています。
商品企画以外でも、現場の業務がデータによって変わった事例はありますか?
高尾:現場の業務がデータによって変わった例の1つが、バイヤーの発注業務です。現場では「発注をかける際、将来の予算状況や在庫状況がどうなるかを確認しながら進めたい」という強いニーズがありました。
これに応えるため、基幹システムのデータを1日1回まとめて転送するだけでなく、特定のテーブルのみを「TROCCO」のワークフローで切り出しました。そして、そのワークフローを実行する権限をバイヤーに渡し、彼らが発注作業を行う任意のタイミングで最新情報をBigQueryへ即時転送できるようにしています。これにより、手作業での転記作業がなくなり、より正確な数字に基づいた発注判断が可能になりました。
データ活用を現場に浸透させる上で、工夫されていることがあれば教えてください。
高尾:弊社では、社内であらゆるメンバーが「TROCCO」を使う想定はしていません。
ツール自体は中央集権的に管理しつつ、現場のスタッフが「自分の仕事の成果をフィードバックとして受け取るため」にデータを見られる環境を整えることを重視しています。
クリエイティブな仕事をしているスタッフが多く、彼らが直感的に感じている手応えを数字で確認できることで、主体的に働けるようになることが本来の目的だからです。ダッシュボードを作ることが目的ではなく、それを見て仕事が良くなることが最も重要だと考えています。
今後の展望
生成AIに合わせたデータガバナンスとさらなる基幹システムデータ活用の実現へ

今後のデータ活用の展望についてお聞かせください。
高尾:今後の大きなテーマとなるのが生成AIの活用です。自然言語で誰もが簡単にBigQueryへアクセスし、データを分析できる環境が身近になりつつあります。この新しい時代において、社員によるデータ活用のあり方が変わるなかで、適切なデータガバナンスをどのように構築していくかが問われています。
今後もprimeNumber社には、弊社のデータ基盤を支える強力なパートナーとして伴走していただきたいと考えています。












