CASE STUDY

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現場の課題解決から進めた「データドリブン」への第一歩。戸田建設がprimeNumberと挑むモダンデータスタック構築と今後のAI活用に向けたデータ活用体制の確立とは

オフィスビルや病院、トンネルなど、日本の都市インフラを幅広く手がける戸田建設株式会社。同社では、業務データがうまく集約できておらず、部門間での連携が困難な状況が長年の課題となっていた。データドリブンな組織への変革を目指すなかで、社内にデータ活用の潜在的なニーズは存在するものの、まだ十分に顕在化しておらず、データ基盤構築の構想はあるものの具体化できない状況が続いていた。

一方、事業部門のデータを用意するための工数が増えている現状から「ユーザー部門」として巻き込み、同社ではSnowflakeを中心としたモダンデータスタックによるデータ基盤の構築に着手。primeNumberのプロフェッショナルサービスによる伴走支援を受け、クラウドETL「TROCCO」やAIデータプラットフォーム「COMETA」を活用しながらデータ基盤の構築と社内展開に取り組んでいる。

本記事では、プロジェクトの発足に至った経緯や背景にある課題、内製化を見据えた取り組みの進め方、そして今後の展望について、戸田建設株式会社 デジタルプラットフォーム部 部長 一色晃彰様、そして本案件を担当したprimeNumberの岡野敦史とともに、これまでの取り組みを振り返ります。

戸田建設様のデータ活用事例につきましては、こちらをご覧ください。

課題

  • 分析のたびに各所からCSVやExcelをダウンロードし、手作業で名寄せや加工を行うなど、属人的な集計作業の増大により誰もが自由にデータを扱える「データの民主化」を阻んでいた
  • システム間でのデータの定義が統一されず、過去データの精度や粒度も業務ごとに異なっていたことにより、データの不整合が発生し、全社的なデータの共通利用を妨げる要因となっていた
  • 案件・工事・建物に関する情報が各業務システムごとに管理されており、データがサイロ化していた

目的

  • 特定の部門に閉じず、将来的に全社員が自らデータを探索・分析できる状態を定着させるための、現場のユーザーにとっても使い勝手の良いユーザーフレンドリーな全社データ環境を構築する
  • 社内に点在していたデータの定義を統一し、誰でも迷わず正確なデータにアクセスできる環境を整えることで、全社的なデータ活用の底上げを図ること
  • 最終的には外部に依存しすぎることなく、自社内の体制を中心にクイックに社内のデータ利活用を推進可能なデータ環境と推進体制を構築する

 

効果

  • 基盤の構築により、社内に散在していた建築、土木、営業、人事などのデータを統合することができ、各種情報を共通の軸で一気通貫して分析することが可能となった
  • 「データマネジメント基盤運用ガイドライン」の作成により、データ活用において運用する側だけでなく活用する側にとっても各自が「自分で判断できる領域」が拡大し、データマネジメントが活用できる状態となった
  • データ活用の社内促進に伴い、データマネジメントチームが正式に「データマネジメント課」として新設され、全社的なデータ利活用を支え続けるための組織体制が確立された

課題・問題

「データを使うニーズがない」状態からのスタート

戸田建設株式会社 コーポレート本部 ICT統轄部 デジタルプラットフォーム部  部長 一色 晃彰様

primeNumber岡野:まずは、一色様の現在のお役割について教えてください。

一色 晃彰様(以下、敬称略):私はコーポレート本部 ICT統轄部 デジタルプラットフォーム部の部長を務めております。かねてよりデータ基盤構築の必要性を感じており、本プロジェクトにおいては、データ基盤の構想から構築、事業部との社内調整を含め、さまざまな業務を広く担当しています。

primeNumber岡野:データ基盤の構築を始めたきっかけや、当初の課題について教えてください。

一色:個人的にデータ基盤が必要であると考え最初の提案をしたのは、2020年のことでした。当時は現在のようなSaaSを組み合わせた仕組みが少なく、オンプレミスで構築するのを当然のように考えていました。

当時は社内に「データを活用する」潜在的なニーズは存在するものの、まだ十分に顕在化しておらず、データ基盤構築にかかる予算を確保できないという状況でした。

primeNumber岡野:そこから、どのようにしてプロジェクトが動き出したのでしょうか。

一色:私は以前、支店の営業系の企画部門に身を置いていたこともあり、現場の状況はよく理解していました。2022年頃、本社建築企画部では営業活動と将来の社員配置状況を照らし合わせるために、複数のシステムからCSVを書き出して手作業で集計したり、Tableauを駆使して分析したりと、データ活用に多くの工数を割いている実態を聞いていました。

そこで、彼らをデータ基盤を活用する「ユーザー部門」として巻き込むことで、ようやくプロジェクトを始めることができました。工事と営業のデータを組み合わせる重要性をICT統轄部内で議論し、このままでは問題だと説得したことで、本格的に専門家の力を借りてデータ基盤の構築を目指すことになったのです。

なぜprimeNumberを選んだのか

質の高い提案内容とコストパフォーマンスの高さが決め手に

株式会社primeNumber DS事業部 執行役員VP 岡野 敦史

primeNumber岡野:データ基盤の構築にあたり、最初はどのようにパートナー企業を探されたのでしょうか。

一色:SaaSなどの最適なクラウドサービスを組み合わせる「モダンデータスタック」の構築を目指しており、Snowflakeを中心に基盤を構築したいと考えていました。また、将来的には外部のエンジニアに頼り切ることなく、自社で運用していくという方針もあらかじめ決めていたのです。

その方針に沿ってRFP(提案依頼書)を提示したのですが、提案内容やコスト面を含めて、当社が満足できるような内容の提案は出てきていない状況でした。

primeNumber岡野:そのようなご状況の中で、primeNumberにお声がけいただいたのですね。

一色:そうですね。提案期限まで1ヶ月を切っていたタイミングで、たまたま参加したSnowflakeのイベントのブースでprimeNumber社の「TROCCO」のことを知りました。

直感的に触れるインターフェースを見て「これなら自社運用が可能だ」と感じ、すぐにお声がけしたのがprimeNumber社との出会いです。

非常にタイトなスケジュールだったにもかかわらず、primeNumber社は私たちの要望を即座に汲み取り、短期間で極めて質の高い提案をまとめてくれました。提案内容とコストの両面で十分に納得できる提案だったため、迷うことなく依頼することを決めました。

岡野:提案内容とコスト面以外に、決め手になった部分はありましたか?

一色:primeNumber社が提供しているAIデータプラットフォーム「COMETA(コメタ)」の存在も大きかったですね。実は比較検討した他社の提案にもデータカタログは含まれていましたが、それらは機能的には優れているものの私たちの想定していた予算感とは折り合いがつかないものばかりだったのです。

その点、COMETAはデータカタログに類する機能として必要十分な機能を実装していながら、コストパフォーマンスも非常に高いと感じました。現場の担当者が自らデータを探索し、その内容を正しく理解できる環境を作る上で、データカタログの機能は必須でした。

本格的な基盤構築に着手する前に「あるべき姿」を固めた

primeNumber岡野:実際の構築フェーズはどのように進めていったのでしょうか。

一色:基盤構築の前に、2022年の10月から12月にかけて外部コンサルタントの知見を交えながら「データマネジメント企画書」を作成しました。

基盤が無い状態からのスタートだったため、まずはデータマネジメント基盤のあるべき姿や対象となるデータの解析を行いました。この段階で方針を固められたことで、その後の判断に迷いがなくなったと感じています。
primeNumber岡野:確かに当時のプロジェクトを振り返ると、弊社が構築に加わる前の段階で、すでにデータマネジメントの明確な指針や「あるべき姿」をかなり具体的に固められていましたよね。

導入後の成果

「モダンデータスタック」にこだわったデータ基盤

primeNumber岡野:現在のデータ基盤は、どのような技術構成になっているのでしょうか。

一色:各システムから「TROCCO」を使ってデータを収集・転送し、「Snowflake」でデータの蓄積・管理をしています。その上で「COMETA」を活用し、データの定義やオーナーを確認できる状態にした上で、「Tableau」でデータを可視化するという構成になっています。

primeNumber岡野:さまざまな部署の社員が触ることを前提にしたと伺いましたが、特に基盤設計においてこだわったポイントはどこですか。

一色:従来のオンプレミス環境のように、データソースの追加のたびにベンダーへ依頼する形ではなく、マニュアルさえあれば自分たちでデータソースの追加や改修ができるインターフェースを重視しました。 また、将来的に全社データ基盤へと拡張させていくため、新しいSaaSサービスを柔軟に組み合わせられる「モダンデータスタック」な構成にすることには強くこだわりましたね。

primeNumber岡野:一色様から「将来的には内製化していきたい」、「あらゆる部門が活用できる全社基盤に育てたい」というご要望を伺っていたため、我々としてもできるだけユーザーフレンドリーなサービス構成にすることを意識しました。

また、特定の用途に限定せず、今後新しいサービスが出てきた時にも組み合わせて拡張性が維持できるようなアーキテクチャを心がけました。

一色:2025年の5月から7月にかけては、「データマネジメント基盤運用ガイドライン」を作成しました。業務フローが固まっていないなかで、それを一つひとつ固めていく作業だったため、そこは少し苦労したことを覚えています。

運用ガイドラインの策定自体は別のパートナー企業にご支援いただいたのですが、primeNumber社には、その定めたルールに沿って現場でどのように運用していくかという、実務への落とし込みなどを支援していただきました。

戸田建設様 データ基盤構成図

データ収集の工数削減で、より本質的な業務に注力できるように

primeNumber岡野:基盤構築と社内展開を経て、どのような成果が現れていると感じますか。

一色:正直なところ、この基盤を入れたからといって即座に売上に直結するという性質のものではありません。ただ、本気でデータ活用を行う部門にとっては、本当の意味での「武器」がやっとできたと感じています。

以前はデータ基盤がなかったため、さまざまなシステムからCSV形式でデータをダウンロードするなど、データ収集に膨大な時間と手間がかかっていました。今では彼らがこの基盤を活用してより本質的な業務に時間を使うことができています。

また、運用ルールの整備による変化も大きいです。先ほどの運用ガイドラインを定めたことで、これまでは運用メンバーが私に判断を聞きにくることが多かったのですが、ガイドラインに沿って各自が「自分で判断できる領域」がすごく増えました。これは基盤を利用する側にとっても同様で現場の大きな変化の1つだと感じています。

今後の展望

AIとデータが高度に融合したプラットフォームへ

primeNumber岡野:今後の展望についてお聞かせください。

一色:2026年3月1日付で、基幹業務システム部で任意のチームであったデータマネジメントチームが正式に「データマネジメント課」として新設、インフラセキュリティ部と統合され、「デジタルプラットフォーム部」として新たな体制でスタートを切りました。

組織としての基盤が整ったことで、これまでExcelやCSVを用いて手作業で分析を行っていた事業部門にとっても、理想的なデータ活用環境がようやく形になったと言えます。

今後のロードマップとしては、2026年度は構造化データを中心にAI-Readyな状態を目指す予定です。しかし、その先には図面や議事録といった非構造化データの取り込みやAIの本格的な活用も視野に入れています。

今後はAIの実装にも柔軟に対応し、最終的にはAIとデータが高度に融合したプラットフォームへと発展させていきたいですね。当然ですが、それらを実現するには今の体制ではリソースが不足するのでその強化も必須と考えています。

primeNumber岡野:今後、primeNumberに対して期待していることを教えてください。

一色:データ基盤という「器」は出来上がったので、今後はその中身を充実させていくためのサポートをお願いしたいです。

また、当初から掲げているように、戸田建設の社内で自走できる割合を増やしていきたいと考えていますが、そのためにはまだまだ運用メンバーにスキルが不足しています。

そのスキル向上を求めて、primeNumber社にサポートをお願いしている部分もありますので、ゆくゆくは自分たちで動けるように、当社の運用メンバーたちを鍛えていただきたいです。

primeNumber岡野:最後に、データ基盤の構築や活用に悩まれている企業の担当者の方々へ、メッセージをお願いします。

一色:データ基盤は「作って終わり」ではありません。せっかく構築しても使われないという事態を防ぐためには、まず「そのプラットフォームを活用するユーザー」を明確に見定めてからスタートすることが極めて重要です。

今回のプロジェクトが現在も継続できている最大の理由は、最初からユーザー部門と密に協力してスタートできた点にあります。

まずは小さな規模でも構いませんので、現場を巻き込んだ成功事例を一つ作ってみてください。それがデータドリブンな組織に向けた大きな一歩となるはずです。

プロフェッショナルサービスにご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

戸田建設株式会社

業種

設立

1936年(昭和11年)7月10日

従業員数

4,315人(2025年3月31日現在)

事業内容

建築一式工事、土木一式工事等における総合的エンジニアリング業務、不動産売買・賃貸事業、再生可能エネルギー等による発電事業等

導入事例

様々な業界のお客様がprimeNumberを活用して、ビジネスの成長を実現しています。