カスタマーサポートとマーケティングオートメーションの重要性が高まる中、顧客とのコミュニケーションプラットフォームであるIntercomは、グローバルで広く採用されており、一方でIntercomの顧客データや会話データをSalesforce、HubSpot、Slackなど他のSaaSや社内システムと連携したいというニーズも増加しています。
本記事では、クラウドETLサービス「TROCCO」のConnector Builderを利用し、ノーコードでIntercom API連携・データ連携を実現する手順を具体的に解説します。
https://www.intercom.com
Intercom API公式連携とETLツールを活用した連携との違い
IntercomはZapier、Segment等の統合プラットフォームを通じて多くのサービスと連携可能です。一方で、データを継続的に格納し整形する前提がある場合は、ETLツールが適しています。
- データ加工・変換が必要な業務フロー
- 複数SaaSとのデータ統合
- ノーコードによる迅速なデータ基盤構築
- カスタム分析レポート作成のためのデータ供給を定期的に行う
- DWH未導入でも、まずはスプレッドシートへ定期出力し段階的にデータ環境を整える
「TROCCO」はデータ転送だけでなく、データのフィルタリング、フォーマット変換、集計、マージなどの加工処理も一連のワークフローとして自動実行が可能です。
これにより、データを最適な形に整えられ、さらに様々な部門向けの分析やレポート作成に活用するデータを作成・転送することができます。
この記事の執筆時点では「TROCCO」に公式のIntercomコネクタはありませんが、Connector Builderを利用すれば、IntercomのAPIをGUIで設定しながら手軽に自作コネクタを作成することができます。
〇違いの表
項目 | Intercom API公式連携 | ETLツールを活用した連携 |
柔軟性 | 連携先やデータ項目が限定されることが多い | 自由度が高い。任意のデータ項目、任意の連携先にデータを送ることが可能 |
データ加工 | 簡易的な変換のみ。複雑な加工は難しい | ツール上で自由にデータ加工(フィルタリング、集計、正規化など)が可能 |
運用・保守 | Intercom側で管理されるため、自社の運用負担は少ない | ツール側で運用・保守が必要。スケジューリングやエラーハンドリングの設定が必要 |
主なユースケース | – Salesforceなど他のSaaSと顧客データを同期- 問い合わせ対応の効率化 | – DWHにIntercomデータを集約して分析- 複数のSaaSデータを統合し、マーケティング施策に活用 |
Connector Builderとは?
ETLツールでは一般的に、2つの異なるインターフェース間の接続を可能にする実装のことを、コネクタと呼びます。Connector Builder は、ユーザー自身で独自コネクタをノーコードで作成できるTROCCOの機能です。
- OAuth認証(認可コード・クライアントクレデンシャルズ)やAPIキーの設定に対応
- ページネーションや任意のクエリパラメータに対応
- 通常のコネクタと同様にスケジュールによる定期実行が可能
詳細は下記の記事をご参照ください
Connector Builder(コネクタビルダー)とは
※ Connector Builderは TROCCO の Advanced プラン以上のプランでご利用いただける機能です。
Intercom API連携カスタムコネクタをConnector Builderで作成してみる
実際にIntercom API連携カスタムコネクタをTROCCOのConnector Builder機能を利用した独自コネクタを作成する方法を解説します。
STEP1|作成前に環境の準備をする
Intercom APIではAPIキー認証を利用してAPIの認証を行います。そのため、カスタムコネクタを作成する前に、認証に必要な Access Token の発行を行います。
Developer Hub にログインし、新しいアプリを登録し、アプリの認証画面からAccess Tokenを取得します。ここで取得したAccess TokenをAPI認証に利用するため、保管しておきます。Access Tokenは機密情報のため、必ず安全に控えてください。
また、カスタムコネクタの作成時にはサービス側のAPIドキュメントの参照が必要となるため、事前に準備する必要があります。

STEP2|カスタムコネクタの新規作成・接続設定
事前準備が完了したら、次はTROCCOのカスタムコネクタの設定を行います。
TROCCOの管理画面からカスタムコネクタを新規作成
TROCCOの [カスタムコネクタ] メニューから [新規作成] ボタンを押してカスタムコネクタを作成します。
カスタムコネクタの各種設定を実施
APIドキュメントを確認しながら、コネクタ情報・認証情報の各種設定を行います。
Intercom API の認証方式は Bearer Token認証を採用していますので、認証情報の設定にて、認証種別「APIキー」を選択します。認証ヘッダーの設定はデフォルト入力値のままでOKです。

- 基本情報
- 任意の名前をつけてください。
- コネクタ情報
- ベースURL: https://api.intercom.io
- 認証情報
- 認証種別: APIキー
- 認証ヘッダー名: Authorization
- 認証ヘッダースキーム: Bearer
必要なAPIエンドポイントの追加
[エンドポイントを追加] ボタンを押して必要なAPIエンドポイントを追加します。
今回は顧客リストを取得できるエンドポイントを追加します。

〇エンドポイント設定内容
項目 | 設定内容 | 解説 |
名前 | Contacts | (任意の名前) |
パス | /contacts | |
パラメータ | 設定しない | 利用時に任意のクエリパラメータを指定してリクエストできるようにしたり、毎回固定パラメータでリクエストするなどの設定ができます |
HTTPヘッダ | 設定しない | 利用時に任意のリクエストヘッダの指定してリクエストできるようにしたり、毎回固定ヘッダでリクエストするなどの設定ができます |
JSONPathルート | $.data[*] | レスポンスを確認してデータの行が格納されている配列形式のキー名をJSONPath記法で記述してください。 |
ページング設定 | 無効 | 今回はページング設定は行いませんが、ページベース、オフセットベース、カーソルベースのページングの設定が行えます。 |
ステータスコード設定 | デフォルト設定 |
ここまで設定し、エンドポイントを保存し、さらにカスタムコネクタを保存すればカスタムコネクタの作成は完了です。
STEP3|Intercom APIの接続設定の作成
[接続情報] メニューをクリックし、接続情報一覧画面の右上の [新規作成] ボタンを押して接続情報を作成します。
カスタムコネクタは [その他] のタブの中にあります。

以下が設定手順になります。
① 接続設定を作成したいカスタムコネクタを選択します。
②「接続情報」画面で以下の項目を入力します
- 名前:接続設定の名前
- リソースグループ:接続を共有するグループがあれば選択します
- APIキー:事前準備で発行したAccess Tokenの値を入力します
③ [保存] を押して接続情報を保存します。
これで接続設定の作成は完了です。
STEP4|データ取得のための転送設定の作成
これまで設定した内容を稼働させる実装手順を行います。
先ほど作ったカスタムコネクタを利用して、顧客リストを取得してみます。
① 転送元・転送先の選択
サイドバーの[データ転送] > [転送設定] をクリックし、画面右上の端にある[新規転送設定作成] ボタンを押します。
転送元と転送先を選択する画面が表示されますので、転送元をクリック、カスタムコネクタを選択します。

カスタムコネクタは [その他] のタブの中にあります。
今回は転送先に Google Spreadsheets を指定します。

② 転送元・転送先の設定
先ほど作ったIntercomの [カスタムコネクタ]、[カスタムコネクタ接続設定]、[取得対象] を選択します。

転送先の設定は次のドキュメントを参照して設定してください。
③ スキーママッピング
[次のSTEPへ] ボタンを押すと、スキーマのカラムマッピングが自動的に実行されます。
スキーママッピングは、一方のシステムのスキーマ(ソーススキーマ)を、もう一方のシステムのスキーマ(ターゲットスキーマ)に対応させる作業です。これにより、データ移行、データ統合、データ連携などを円滑に行うことができます。
カスタムコネクタが正しく作成されていれば、取得予定のデータサンプルがプレビューに表示されます。

カラムの型推論とマッピング設定は自動的に行われますが、転送先のカラム名やデータ型はGUI上で任意に編集できます。
④ カスタムコネクタの設定を確認

設定内容に問題なければ [保存して適用] を押します。
これで転送設定の作成は完了です。
STEP5|転送ジョブの実行
それでは、作成した転送設定を利用し実際にデータを転送するために、作成した転送設定の画面の右上にある [実行] ボタンを押します。

ジョブの実行時に指定できる項目がありますが、今回は特に変更せず、そのまま実行をクリックします。

ジョブの実行ログ画面に切り替わり転送が開始されます。
ジョブが正常終了するとステータスが [SUCCESS] に変更になります。

GoogleスプレッドシートにIntercomの顧客データが転送できました。
TROCCO の Connector Builder を利用すると、最小限の設定でAPI連携ができるカスタムコネクタの作成やデータの転送までできることがおわかりいただけたかと思います。
IntercomAPI連携を活用したConnector Builderのユースケース
実装方法を解説してきましたが、他にも以下のようなユースケースの利用が可能になります。興味があるものは一度実装をお試しください。
- DWH未導入でもIntercom顧客データをGoogleスプレッドシートやkintoneに連携可能
- Salesforce・HubSpot・Slackなどカスタマーサポート関連SaaS横断のデータ統合
- 顧客対応履歴の分析レポート自動作成
- サポート品質メトリクス(応答時間、解決率等)の定期集計
- フィルタ・集計・結合等の加工処理もワークフロー機能で自動化
追加のエンドポイント例
Intercom APIには多くのエンドポイントが用意されており、用途に応じて追加できます。
〇会話データの取得
- パス: /conversations
- 用途: カスタマーサポートの対応履歴分析
〇チームメンバー情報の取得
- パス: /admins
- 用途: サポート担当者のパフォーマンス分析
〇タグ情報の取得
- パス: /tags
- 用途: 顧客セグメント分析
よくある質問(FAQ)
Q. ノーコードでカスタムコネクタを作成・運用できますか?
A. GUIで直感的にコネクタを作成でき、さらにAPIドキュメントをもとに設定に必要な情報を自動で読み取り、最適な内容を提案するAIサポート機能を搭載しています。コネクタ作成時にはAPIやAccess Token理解などの基礎知識が必要となりますので、以下の記事もご参照ください。
非エンジニアでもわかる!Connector Builderを使うための3つのポイント
Q. Intercom APIの制限はありますか?
A. Intercom APIには Rate Limit(API呼び出し制限)があります。
詳細はIntercomの公式ドキュメントをご確認ください。
Q. リアルタイムデータの取得は可能ですか?
A. 定期実行機能により、最短5分のスケジュール設定でのデータ取得が可能です。
まとめ
Connector Builderは、データ統合ツール「TROCCO」の新機能です。APIの専門知識がない方でも簡単にコネクタを作成できるようになります。
GUIベースの直感的な操作で、DWHやクラウドアプリケーション、Googleスプレッドシートなど、さまざまなサービスとのデータ連携をすぐに実現します。
一度作成したコネクタは何度でも再利用できるため、現場の担当者でも手軽にデータ連携や運用の自動化が可能です。これにより、設計・実装・運用の負担を大幅に削減し、開発・保守の効率を向上させます。また、公式コネクタと同等の性能とセキュリティを備え、ワークフローや通知機能も利用できるため、自社開発と比較して大幅なコスト削減が期待できます。API連携の初期コストを抑えたい企業に最適なソリューションです。
まずは無料トライアルで、その使いやすさをお試しください。
※Connector Builderは、TROCCOのAdvancedプラン以上でご利用いただけます。
※本機能は2025年7月1日に正式リリースされました。技術仕様についてはお問い合わせください。
