CASE STUDY

>

清水建設がデータをもとに取り組む人員配置の最適化とは 〜TROCCOとSnowflakeで大容量データの安定処理と高度なセキュリティ要件を同時にクリアした全社横断のデータ基盤構築の裏側〜

スーパーゼネコン5社の一角として、幅広い分野で強みを持つ清水建設株式会社。1804年の創業から220年以上の歴史を持つ同社では、2030年に掲げる「スマートイノベーションカンパニー」の実現に向け、データドリブン経営を重要なテーマとしている。

これまで仮想統合基盤を活用してデータ基盤の整備を進めていた同社だが、現場から生み出される大容量データの取り扱いや、クラウド環境へのシフトにおいて課題を抱えていた。

これらの課題を解決に導いたのが、クラウドETL「TROCCO」とオンプレ環境からの転送が可能な機能「Self-Hosted Runner」、そしてクラウドデータウェアハウス(以下DWH)Snowflakeの連携である。

本記事では、データのサイロ化をどのように解消し、全社横断的なデータ活用を推進しているのかについて、DX経営推進室 先端技術応用部 データマネジメントグループの半田貴志様、長井悠徒様、宮尾侑典様にお話を伺った。

課題

  • 既存の仮想統合基盤では大容量データの処理能力に限界があり、分析に必要なデータ処理を最後まで完了できない状態だった
  • データが各部門や個人のローカル環境に点在し、業務が属人化していた
  • 厳格なセキュリティ要件があるオンプレミスのデータをうまく活用できていなかった

目的

  • クラウドDWHへの大量データの安定した連携と処理環境の構築
  • 専門的なプログラミングスキルを持たない担当者でも扱える、直感的なデータ連携基盤の導入
  • オンプレミスのデータをセキュアにクラウドへ連携し、全社横断的なデータ分析を可能にする

効果

  • 大容量データを安定して処理できるようになり、途中で停止することなく生データの分析・レポート化が可能になった
  • 直感的なUIで、非エンジニアでもデータ連携パイプラインを迅速に構築できた
  • 「Self-Hosted Runner」を活用し、オンプレミスデータの安全なクラウド連携を実現

課題・問題

データのサイロ化が原因となった勘・経験・度胸に頼った業務進行

清水建設株式会社 DX経営推進室 先端技術応用部 データマネジメントグループ グループ長 半田 貴志様
まずは、皆様の簡単な自己紹介からお願いいたします。

半田:私はDX経営推進室 先端技術応用部 データマネジメントグループのグループ長を務めております。データマネジメントグループは社員6名と社外メンバー5名の計11名で構成されています。全社のデータ利活用を推進するため、データ基盤の整備からデータの可視化、部門におけるデータ活用の支援など、あらゆる業務を担っています。

長井:私は昨年10月より、現在のデータマネジメントグループへ配属となりました。それ以前は広島の支店に在籍しており、情報化推進の担当者として業務にあたっておりました。現場や内勤のデータ管理に関する当時の経験も活かしつつ、全社的なデータ基盤の整備に取り組んでいます。

宮尾:私は入社3年目で、現在は二人と同じデータマネジメントグループで業務にあたっています。現在のグループへ異動してくる前は、建設現場で用いられる現場系システムを扱う部署に所属していました。現場におけるシステム運用の経験も踏まえながら、社内のデータ活用推進に携わっています。

データ活用に取り組もうとされた背景や、当時感じていた課題についてお聞かせください。

半田:当時はデータ管理の専門グループが新しく発足し、全社的な取り組みがスタートした段階でした。それまではExcelを中心に、いわゆるKKD(勘・経験・度胸)に頼った業務が主流になっていました。データを根拠とした意思決定へ移行することを目標に、データ整備や可視化の取り組みを始めたのです。

私たちが実現したかったのは、会社全体での包括的なデータ活用です。当時、働き方改革関連法により時間外労働が960時間に制限され、建設業界でも施工体制や工期への影響が懸念される2024年問題が発生していました。こうした背景から、明確な課題があった人事部門と協力して取り組みをスタートさせました。

長井:私が広島の支店にいた頃、現場のデータも内勤のデータもどこにあるのか不透明でした。個人のローカル環境に保存されたデータが多く、他の担当者に展開すればより有効活用できるような重要なデータが多数存在していたような状況でしたね。支店内の重要なデータを、誰もが利用できる状態に整備することに大きな課題を感じていました。

なぜ「TROCCO」を選んだのか

誰でも使いやすいツールでデータ転送のブラックボックス化を避ける

清水建設株式会社 DX経営推進室 先端技術応用部 データマネジメントグループ 宮尾 侑典様
新たにクラウドDWHのSnowflakeとクラウドETLツールの「TROCCO」を導入された背景についてお聞かせください。

半田:これまではデータを仮想的に統合した基盤を使用し、徐々に社内におけるデータ活用も進めることができていました。しかし、オンプレミス環境での仮想統合であったため、大容量データを扱う際に十分な処理性能が発揮できないという課題に直面したのです。

さらに、今後のクラウドシフトを見据えたシステム連携の親和性にも課題を感じていました。具体的には、各部門でAWS環境でのシステム構築や、各種SaaSの導入を積極的に進めていくなかで、従来のオンプレミス環境からではネットワークの疎通やデータ連携に難しさがありました。

そこで、大容量データの処理に強いDWHであるSnowflakeを導入し、基盤を補完しようと考えたのが出発点です。そして、そのSnowflakeへ大量のデータを安定してロードするためのツールとして、「TROCCO」の導入を検討しました。

大容量データの取り扱いで限界を感じたのは、具体的にどのようなデータでしょうか。

半田:特に限界を感じたのは、建設現場の入退場や、予定と実績を管理するクラウドシステムとの連携部分です。作業員ごとの入退場データは数千万件規模と膨大で、従来の基盤では処理能力が限界に達していました。

宮尾:現場の人流データをRFID(電波を用いて非接触でICタグの情報を読み取る技術)などのセンサーを用いて取得し、分析したいという要望もありました。作業員やエレベーターの動線を突き合わせて人員配置の最適化などに役立てることが目的です。これもデータ量が非常に膨大になるため、新たなDWHに格納する必要があったのです。

ETLツールとして「TROCCO」を選んだ決め手について教えてください。

半田:データ基盤構築などを支援してくださっている企業が主催するハンズオンセミナーに参加したことがきっかけです。当時はSnowflakeの導入を主軸に進めており、データ連携ツールはあくまでオプションという位置づけでした。

検証を行った際、コードを記述できるエンジニアからは「Snowflakeの標準機能で十分です」という意見も挙がりました。しかし、将来的な運用や業務の属人化の解消を考慮すると、教育コストが低く、直感的な画面操作のみで容易にデータ転送パイプラインを構築できるツールが絶対に必要だと判断しました。

ツールの内部でデータの流れがブラックボックス化する事態を避けたかったため、「TROCCO」の分かりやすいUIは私たちのニーズに完全に合致していたのです。

長井:システム担当者向けのツールは操作が複雑で玄人向けな印象ですが、「TROCCO」は視覚的なインターフェースがとてもシンプルで洗練されています。また、誰もがすぐに操作方法を理解できる設計になっているのも大きな魅力でした。

宮尾:「TROCCO」はどこからどこへデータを転送するのかが非常に明確だと感じました。エラーが発生した際に原因をコードで提示してくれる点も評価しています。そのエラーコードを生成AIに読み込ませて問題を特定することで、初心者でも極めて高速に実装できるようになっています。

なぜ「Self-Hosted Runner」を導入したのか

オンプレミス環境にあるデータを安全に連携したかった

今回の導入において、オプション機能の「Self-Hosted Runner」を追加導入された背景について教えてください。

半田:弊社の社内システムはほぼすべてオンプレミスのOracle Databaseにデータが蓄積されており、この膨大な重要データをSnowflakeへと統合し、より本格的なデータ活用を推進したいと考えていました。

しかし、通常のクラウド型データ連携ツールでは、セキュリティ上の厳格な制約からオンプレミスのデータに直接アクセスできませんでした。パートナー企業へ相談したところ、「TROCCO」に「Self-Hosted Runner」という新機能が提供されているとご紹介いただいたのです。

「Self-Hosted Runner」を利用することで、どのようなメリットがありましたか。

半田:「Self-Hosted Runner」は、弊社のオンプレミスやプライベートネットワーク内でDockerコンテナを立ち上げ、ジョブを実行する仕組みです。

実データが「TROCCO」のクラウドサーバーを経由することなく、メタデータのみ外方向のポートを利用したアウトバウンド通信を行う仕様となっているため、セキュリティの懸念を完全に払拭できました。外部から社内ネットワークへのアクセスを許可する必要がないため、社内のセキュリティ部門への説明も非常にスムーズに進行できたことを覚えています。

実際に導入を進めるプロセスにおいて、苦労された点などはございますか。

半田:導入に向けた実証実験(PoC)は約2ヶ月かけて実施し、その後の構築開始から約2ヶ月でカットオーバーを迎えることができました。全体として非常にスピーディーな導入だったと感じています。

苦労した点を強いて挙げるとすれば、認証周りの設定です。社内の基盤チームと連携し、弊社のセキュリティルールに沿った調整を行う部分に、少しだけ時間を要しました。

その他にも、当初想定していた環境ではDocker DesktopではなくDocker Engineを使用しなければならず、開発や運用に負荷がかかってしまうことが途中で判明しました。しかし、構築を支援いただいているパートナー企業様とprimeNumber社が迅速に連携して適切な解決策を提示してくださったおかげで、素早く問題を解消できました。

導入後の効果

大容量データの安定処理が実現

清水建設株式会社 DX経営推進室 先端技術応用部 データマネジメントグループ 長井 悠徒様
「TROCCO」と「Self-Hosted Runner」を導入したことで、現在はどのようなデータ活用が行われているのでしょうか。

長井:具体的な成功事例としては、システムの利用者分析が挙げられます。社内システムからは、日々非常に大量の利用ログが生成されます。しかし、以前の環境では処理の途中でタイムアウトが発生してしまい、最後までデータを流しきれない状態が続いていました。

「TROCCO」を活用することで、クラウドへ安定してデータをロードできるようになったため、生のデータをそのまま分析し、精緻なレポートを作成することが可能になったのです。

宮尾:現場からはクレーンの荷重に関するデータ分析の要望も寄せられています。これは、クレーンがどの程度の荷重で稼働しているのかを毎秒単位で取得しているもので、データ量は非常に膨大です。

クレーンの待ち時間は現場の生産性低下に直結する大きな課題です。荷重データを詳細に分析することで、人員と機材の最適な運用を実現したいと考えていました。こうした膨大なデータに対しても、解決への具体的なアプローチとして現実的にイメージできるようになりました。

半田:現場が抱える具体的な業務課題に対して、新しいデータ基盤を活用した解決策を提示できるようになったことは我々にとっても大きな前進だと感じています。

また、社内向けのSNSツールを通じて新しいデータ基盤を導入したと告知したところ、想定を上回る反響がありました。「自分たちの部署でもぜひ使ってみたい」という声が多数寄せられており、大きな手応えを感じています。

現場の担当者様が直接ツールを操作するような機会も増えていきそうでしょうか。

半田:そうですね。各部署にはデータリテラシーの高いメンバーがいるので、そのような人材には適切な権限を付与し、自らデータパイプラインを構築して活用してもらう運用を開始しています。

拠点ごとに独自構築されたExcelツールなどのローカルなノウハウを拾い上げ、標準化して全社へ横展開していくことを目指しています。

今後の展望

生成AI活用を見据え、Snowflakeを軸としたデータ基盤の拡充へ

今後のデータ活用やデータドリブン経営に対する展望をお聞かせください。

半田:今後は意思決定に直接関与するような、より高度な分析の取り組みをさらに推進していきたいと考えています。そのプロセスにおいて、AIの活用は避けて通れません。

そのなかでもAIが学習・活用しやすいデータ、特に社内システムに長年蓄積された構造化データの整備が極めて重要になります。AI用の構造化データの最適な保管先としてクラウドDWHのSnowflakeが候補に挙がっており、そこへのデータロードにおいて「TROCCO」の存在が不可欠になってきます。

長井:新入社員向けのワークショップでも、新たな試みを始めています。弊社では、以前よりオープンデータプラットフォーム「CO-ODE(コ・オード)」を導入しています。世帯構成や建築物数などのデータを活用し、地域の課題定義から解決策の企画までを行う実践的なアプローチです。こうしたデータ活用の教育は、今後さらに重要度が増していくと考えています。

「TROCCO」活用に関する今後の展望や要望などあったら教えてください。

半田:現在はオンプレミスのOracle DatabaseやクラウドストレージからSnowflakeへのデータロードが主な用途ですが、「TROCCO」には多種多様なコネクタが標準で用意されています。

私たちがまだツールのポテンシャルを完全に把握しきれていない部分もあるため、今後は利用可能なデータソースの幅をもっと積極的に広げ、より多くのデータをSnowflakeへ統合していきたいと考えています。

最後に、これからデータ活用を進めようとしている企業の方々へメッセージをお願いいたします。

半田:弊社のような規模の大きな企業では、各支店や部門に独自のデータが散在し、属人化してしまっているケースが頻繁に見受けられます。まずは「存在しているデータを、誰もが活用できる状態に整備する」ことが重要な第一歩です。

その実現には、「TROCCO」のように専門的な知識がなくても直感的に操作できるツールが欠かせません。現場担当者自身が改善サイクルを回せる環境を整えることで、小さな成功体験を積み重ねながら全社へ広げていく。そのようなプロセスを経ることで、組織全体のデータドリブン経営は着実に前進していくと思います。

清水建設株式会社

業種

設立

1804年

従業員数

11,163人(2025年3月31日現在)

事業内容

建築、土木、機器装置等建設工事の請負、建設工事に関する調査、企画、研究、評価、診断、地質 調査、測量、設計、監理、マネジメント及びコンサル ティング業務など

導入事例

様々な業界のお客様がprimeNumberを活用して、ビジネスの成長を実現しています。