課題・問題
事業拡大の裏側で顧客別の過去データを見ることが複雑で、より良い提案やスムーズな引き継ぎができる方法を模索していた

貴社のサービスについて教えてください。
山田様(以下、敬称略):当社はこれまで、応援購入サイト「Makuake」の運営を中心に事業を展開してきました。しかし、今年度からは事業のフェーズを「プラン」「デビュー」「グロース」の3つに分け、新しい挑戦を始めたい企業様をあらゆる側面からサポートするプラットフォームへと進化しています。
「TROCCO」とkintoneを活用した業務改善に取り組まれているとお聞きしました。その背景には、どのような課題があったのでしょうか。
山田:今回の業務改善は、各プロジェクトの担当者から「基幹システムのデータを見たいのに、簡単に見られない」という声が挙がっていたことがきっかけです。従来は、専門的なクエリを書かなければ、顧客情報や過去のプロジェクト履歴といったデータにアクセスできず、現場にとってはデータ利用のハードルが非常に高い状況になっていました。
また、データがプロジェクトごとに管理されていたため、「この事業者様が過去にどんなプロジェクトを行っていたのか」といった“顧客ごと”の情報把握が難しい状況でした。このような点は、これまでの事業者様のお取り組みに合わせた提案や担当者の引き継ぎでも大きな課題となっていたのです。
担当者の方々は、これまではどのようにプロジェクトを管理されていたのですか?
山田:それぞれの担当者が個人の活用しやすいツールで打ち合わせ等の情報を記録していました。そのため、当人以外が事業者様といつ、どのようにやり取りしたのか把握できない状態でした。退職や異動の際はスプレッドシートごと引き継ぐなど、完全に業務そのものが属人化していたのです。
一人で何十ものプロジェクトを並行して担当するメンバーも多く、データ管理方法の改善は急務でした。この状況はコロナ禍以降に社員数とプロジェクト数が急増したことでさらに深刻化し、人的リソースが事業成長のボトルネックになりかねないという強い危機感から、早急な改善が必要だと認識していました。
どのようにデータ活用に取り組んだのか
誰でも簡単にデータにアクセスできる状態を目指し、「TROCCO」との相性の良さからkintoneを選択

どのようにデータ活用に取り組んだか教えてください。
山田:まずは、社内の誰もが簡単に基幹システムのデータにアクセスできる方法を探し始めました。検討を重ねる中で、暫定的にCRMを構築するのが良さそうだと考え、どのように実現するかを模索しました。
当社では元々、「TROCCO」とkintoneを別の用途で導入していました。「TROCCO」は基幹システムやGoogle Analyticsなど、サービスごとに分散していたデータをGoogle BigQueryに集約するために活用しています。

一方でkintoneは2019年頃から社内に導入していたものの、一部のチームが名刺管理に使う程度で、十分に活用されていませんでした。
他の製品とも比較しましたが、多くの社員が手軽に使え、すでに導入していたTROCCOにkintoneコネクタがあったことから、「あるものを組み合わせたらできそうだ」という発想で作ってみることにしました。そうして、2022年頃にkintoneをベースにしたCRM構築を本格的にスタートしました。

活用までのスケジュール・過程
「暫定版CRM」からスタートし、成功を重ねた導入プロセス。申込書業務の機能改善を1ヶ月でリリースし、年間768時間の工数削減を実現。

kintone活用に向けた本格的な取り組みは、いつ頃から、どのような流れで進められたのでしょうか。
山田:2022年頃からCRMとして、kintoneの活用を本格的に開始しました。まずは基幹システムに格納されている顧客情報や過去のプロジェクト履歴といったデータをkintoneに集約し、「誰もがデータを見やすい状態」をスピーディーに作ることを最優先に進めました。
さらにkintoneを活用する大きな転機となったのは、紙でやりとりしていた申込書の電子化プロジェクトです。この取り組みがきっかけで、全社的にkintoneの有用性が認知されるようになりました。
以前は事業者様に申込書のファイルをメールで送り、手書きで記入・押印したものをPDFで返送していただき、そのデータを元に審査チームが対応していました。もし記入ミスがあった場合は、再度事業者様とやり取りを行う必要もあり、非常に手間のかかるプロセスです。
そこで、kintoneのフォーム機能と電子契約サービスを連携させ、すべてオンラインで完結する仕組みを構築しました。当初は「何ができて、何ができないか」を一つずつ確認しながら構築を進めていきました。「TROCCO」との相性の良さもあり、企画からテスト、本番リリースまで約1ヶ月という短期間で実現できました。
その効果はどれくらいだったのでしょうか。
山田:試算したところ、この電子化によって年間で768時間もの工数削減につながっていることが分かりました。月換算で約60時間なので、社員1人が1ヶ月以上かけていた作業を全て削減できた計算になります。
時間的なコストだけでなく、事業者様にとっても手続きが格段に楽になっていると思います。さらに、これまで担当者が仲介していた審査チームとのやりとりもフォーム上で直接行えるようになり、担当者は進捗を確認するだけで済むようになりました。
この事例を皮切りに、各部署から「私たちの業務も改善したい」という声が次々と挙がるようになり、そこから活用の流れが一気に加速しました。メディア掲載実績の通知やプロジェクト終了後のアポイント調整など、現場の具体的な要望に対して、次々とkintoneアプリを開発・提供していきましたね。

導入後の効果
定型業務を改善し、本来やるべき業務や付加価値の高い業務に時間をかけられるように

申込書の電子化以外にも、具体的な改善事例があれば教えてください。
山田:主に3つの定型業務を自動化・効率化しました。
1つ目は「メディア掲載実績の送付」です。以前は、弊社の広報担当が集めた掲載情報を、各担当者が事業者様に個別で連絡していました。これを「TROCCO」とkintoneを連携させることで、自動で担当者へメール通知が飛ぶようにしたのです。この仕組みは、相談を受けてから2時間ほどで構築できました。
2つ目は「プロジェクト終了後の振り返りアポイント調整」です。プロジェクトが無事に終了した後、事業者様へアンケートと次回の打ち合わせ日程を調整するメールを送るのですが、忙しいと後回しになりがちでした。そこで、プロジェクト終了日を起点に、自動でメールが送付されるようにしました。
3つ目は「新規問い合わせの商談管理」です。以前は、誰がどの事業者様に対応しているのかが分かりにくいという課題がありました。しかし、kintone上でステータスを見える化したことで、チーム全体で進捗を共有できるようになったのです。
これらの改善によって、担当者の方の働き方はどのように変わりましたか?
山田:事務的な作業から解放されたことで、彼らが本来やるべきプロジェクトのコンサルティング業務により集中できるようになりました。例えば、応援購入の成果を大きく左右するリターンの設計といった、より付加価値の高い業務にじっくり向き合えるようになったのです。
このような取り組みは弊社にとってだけでなく、ご支援している事業者様にも大きなメリットになると考えています。対応できるプロジェクトの量だけでなく、質も向上したと実感しています。
今後の展望
現場のメンバーが自発的に課題を解決し、全社的なデータ活用文化の醸成を目指す

今後のデータ活用について、どのような展望をお持ちですか?
山田:これまでの取り組みの結果、当社のkintoneのシステム内には800以上のアプリが作成され、さまざまな業務で活用されるようになりました。最近では、「自分たちの部署でも、kintoneを使って業務改善したい」という声が社内で増えています。
そこで、今年の10月からkintoneに関する社内研修を立ち上げました。研修の最終目的は、参加者自身が所属部署の課題を解決するアプリを開発し、発表してもらうことです。今後は専門部署がトップダウンで改善を進めるだけでなく、現場のメンバーが自発的に課題を見つけ、解決できる文化を育てていきたいと考えています。
「TROCCO」に対して、今後期待することはありますか?
山田:「TROCCO」が私たちのデータ活用の根幹を担っていることは間違いありません。現場の社員で「TROCCO」の存在を知っているメンバーはあまり多くはありませんが、むしろ現場の社員が「TROCCO」の存在を意識することなく業務を遂行できていることこそ、弊社のインフラとして完全に定着している何よりの証拠だとも考えています。
導入当初と比べても、「TROCCO」は着実に進化していて、連携機能も格段に使いやすくなりました。例えば、以前はkintoneの特定項目のデータしか連携できませんでしたが、「この項目も連携したい」という要望をprimeNumber社にお伝えしたところ、迅速にコネクタをアップデートしていただきました。
いつも弊社の要望に対してスピーディーに改善してくれるので、本当に助かっています。これからも「TROCCO」の更なる進化に期待しています。
最後に、これからデータ活用に取り組む企業へメッセージをお願いします。
山田:弊社としても、さまざまなトライアンドエラーを繰り返しながらデータ活用を進めてきました。その経験を踏まえ、皆さんに大切にしてほしいと思うことが3つあります。
1つ目は、小さく始めて積み重ねることです。いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、定型メールの送付自動化など、まずは身近で効果を実感しやすい業務から着手してみてください。改善効果が目に見えやすいため、次の施策への展開もスムーズになります。
2つ目は、マスターデータを整備することです。誰がどのデータを見ても同じ認識が持てるように、社内で統一されたデータを常に最新の状態で維持することが、データ活用の基盤になります。
そして3つ目は、使えるツールは何でも活用することです。どんなツールを使う場合でも、「今あるものをどう活かすか」という視点は忘れてはいけません。その点で「TROCCO」のように、さまざまなツールと柔軟に連携できるサービスは、データ活用の可能性を大きく広げてくれるはずです。
そして、これら3つのポイントのベースには「難しく考えすぎない」というスタンスが重要だと思っています。まずは身近な課題を解決するために、今ある道具で何ができるかを考えてみてください。












