現代のビジネス環境では、データの量が爆発的に増加しています。その中で、Excelは依然として多くの企業や個人にとってデータ管理と分析の強力なツールです。しかし、Excelで大量のデータを扱うことは容易ではありません。

本記事では、Excelで大量のデータを効率的に処理するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説します。

大量のデータを効率的に処理するには、Excelの基本的な使い方だけでは不十分な場合があります。Excelの限界を理解し、適切なツールやテクニックを駆使することで、データ処理の効率を飛躍的に向上させることができます。

この記事を通じて、業務効率化に役立つ知識を提供できれば幸いです。それでは、具体的な方法を見ていきましょう。

Excelを使用してデータ処理をしなければならないケース5選

大量のデータを処理したい場合、ETLツールBIツールを組み合わせることが一般的です。しかし、Excelを使用してデータ処理をしなければならないケースも存在します。本章では、そのようなケースを5つご紹介します。

小規模企業でのデータ管理

小規模企業では、コスト制約が大きく、専門的なデータ管理システムの導入は難しい場合が多いです。たとえば、ETLツールやBIツールを導入する場合、ランニングコストだけでも月額数十万〜数百万円ほどを要します。

一方Excelであれば、イニシャルコストをほぼ0に抑えつつ、十分なデータ管理を行えます。また、多くのメンバーにとって馴染みがあり、導入や操作に対する抵抗が小さいため、小規模企業にとって現実的な選択肢となるでしょう。

具体的には、Excelをデータベースとして利用し、顧客リストや製品情報、売上データなどを管理できます。Excelの最大の特徴であるセルを用いて情報を入力し、並べ替えやフィルタリング機能で、特定のデータを抽出します。また、関数や条件付き書式により、データの一貫性を保持でき、効率的なデータ管理が可能です。

特定のプロジェクトやレポート作成

大規模なデータ処理を必要としないプロジェクトの場合、Excelを用いるケースがあります。既存のツールであるExcelを使用することで、迅速かつ安価に必要なデータ処理を済ませられるからです。

また、手作業でデータの修正や細かなカスタマイズが行え、柔軟性が高い点も特徴です。そのため、短期間のプロジェクトや簡易的なレポート作成など、臨機応変な対応が求められるシナリオに向いています。


たとえば、月次の売上データをもとにレポート作成が可能です。各営業担当者から提供された売上データをExcelに取り込み、ピボットテーブルで自動的に集計することで、売り上げの推移や成長率を視覚化できます。また、複数のシートに分けることで、地域別や製品別の売上や成長率を分析することも可能です。

小規模ビジネスでの在庫管理

在庫管理システムやERPシステムの導入には、比較的大きなコストがかかります。そのため小規模ビジネスでは、それらのシステムの導入に対して、高いROIが見込めない場合があります。そこで、すでに社内で使用されているExcelを活用し、追加コストなしで在庫管理を行うケースが多いです。

たとえば、各商品ごとの在庫数や仕入れ日、出荷日などのデータをシートに記録します。これにより、VLOOKUP関数などを使用して在庫の残数を検索し、発注が必要なタイミングを自動で判断できます。また、在庫管理のテンプレートも数多く公開されているため、操作に慣れていない方でも簡単に運用を開始できるでしょう。

プロジェクトのスケジュール管理

簡易なスケジュール管理を行いたい場合や、そもそもコスト制約によりプロジェクト管理ツールの導入が難しい場合は、Excelでスケジュール管理を行うケースがあります。Excelはカスタマイズの自由度が高い点が特長であるため、プロジェクトに合わせた柔軟な作成が可能です。

たとえば、プロジェクトの進捗状況を把握したい場合は、ガントチャート形式で視覚的に管理できます。また、関数を使って、「このタスクが完了しないと次のタスクが開始できない」といった、タスクの依存関係を設定できます。在庫管理同様、プロジェクト管理についてもテンプレートが数多く公開されているため、運用開始のハードルは低いでしょう。

他のツールやソフトウェアが利用できない場合

最新のデータ処理ツールやソフトウェアの中には、一定のITインフラの要件が求められるものもあります。具体的には、データベースとの連携やクラウドへのアクセスなどです。そのため、ITインフラやシステム環境が古く、それらを刷新するリソースが不足している組織では、ローカルで実行できるExcelが重宝されます。


セキュリティ保護の観点から、他のツールやソフトウェアが利用できないケースもあります。たとえば、政府機関や医療、金融などのセキュリティポリシーが厳しい業界では、クラウドや外部との通信が制限されている場合があります。また、それらの業界に限らず、個人情報や機密情報を含む業務は、クラウドの使用を制限している組織も多いです。

このような場合、クラウドやインターネット経由でデータにアクセスする設計になっている、最新のツールやソフトウェアは好まれません。一方Excelであれば、それらを経由せずにローカル環境で使用できるため、情報漏洩のリスクが低減できます。

Excelで大量のデータ処理をする5つの方法

先述のとおり、大量のデータ処理が必要な際は、専用のツールやソフトウェアを導入することが一般的です。しかし、前章で説明したケースのように、やむを得ずExcelを使用しなければならないケースもあるでしょう。そこで本章では、Excelを用いて大量のデータ処理を実現する5つの方法を紹介します。

グリッド制限以上のデータセットを開く

テキストファイルやCSVファイルなど、大規模なデータセットのファイルを開こうとした際、以下のような警告文が表示されることがあります。これは、データセットがExcelで利用可能な行数、列数を超えており、一部のデータが読み込まれていないためです。

各バージョンにおけるグリッドの上限は以下の通りです。

Microsoft 365, Excel 2007 以降1,048,576 行16,384 列 (A~XFD)
Excel 2003 以前65,536 行256 列 (A~IV)

グリッド制限以上のデータセット(テキストやCSV)を活用するためには、以下のような方法でファイルを開きます。

  1. まず、Excelで空白のブックを開きます。
  2. 「データ」タブから、「データファイル指定(Power Query)」を選択します。
  1. データソースの形式として、「テキスト/CSV」を選択します。
  1. 「参照」から読み込むファイルを見つけ、「データ取り出し」を選択します。
  1. 「ファイルデータのプレビュー」画面にて、文字化けや0落ち(数字の先頭の0が消える)がないかチェックします。
    1. 問題なければ「読み込む」を選択します。
    2. 修正が必要であれば、「データの変換」からデータ型を変更しましょう。
  1. 以上の操作で、データがテーブルとして読み込まれます。

SQL Serverやその他の外部データベースについても、同様のプロセスでデータをインポートできます。

詳しい方法はこちらをご覧ください

データ構造を最適化する

場合によっては、データ構造の最適化を行うことも大切です。具体的な手法として、データクレンジングやデータの正規化、使用しない列/行の削除が有効です。

データクレンジングは、エラーや重複、不整合などのデータを取り除き、データ品質の向上に寄与します。したがって、分析の精度を高め、信頼性の高い意思決定をするためにも欠かせません。また、データの正規化により、データの冗長性が低減され、データの管理と更新がしやすくなります。

さらに、使用しない列/行を削除することも重要です。これにより、処理速度やデータの視認性が向上しますし、メモリの節約につながります。また、結合セルは、フィルタリングや並べ替えの操作時に問題となるケースがあるため、可能な限り使用を避けましょう。

「フィルター」や「並べ替え」機能を使う

Excelには、フィルターや並べ替えの機能があります。大量のデータ分析をする際は、高度なフィルター条件や複数条件の並べ替えを用いることで、扱いやすい状態に整備しておくことが大切です。

フィルター機能

具体的には、以下のようにフィルター機能を設定することにより、大量のデータの中から絞り込みが可能です。

フィルター設定具体例
単一列での複数条件(OR条件)(所在地 = ‘東京’ OR 所在地 = ‘大阪’)
複数列での複数条件(AND条件)(契約時期 = ‘1年前’ AND 売上 > 100万)
複数列での複数条件(OR条件)(契約時期 = ‘1年前’ OR 所在地 = ‘東京’)
単一列での複数条件の組み合わせ((売上 > 100万 AND 売上 <100万) OR (売上 < 500万))
複数列での複数条件の組み合わせ(所在地 = ‘東京’ AND 売上 > 3000) OR (所在地 = ‘大阪’ AND 売上 > 150万)

また、ワイルドカード(?,*)により、一部の文字が一致する言葉を検索できます。

ワイルドカード検索方法検索対象
?インターフェ?ス・インターフェイス・インターフェース など

*

データ*
・データ分析・データベース・データウェアハウス など
~(?,*を通常の文字として検索する際に使用)
データ~?

・データ?

並べ替え機能

データを列ごとに並べ替える際、おもに昇順・降順ボタンを使用します。昇順の場合、数字は「1→2→3」と大きい順になりますし、日本語やアルファベットであれば、あいうえお順やABC順になります。もちろん、降順であればその逆から並べられます。

一方、「売上が大きい順に並べ替えるが、売上が同じ場合は契約期間が短い順にしたい」のように、複数条件を指定したいケースもあるでしょう。

この場合、以下の手順で並べ替えを行います。

  1. 並べ替えたい対象のセルを選択します。
  2. 「ホーム」タブから、「並べ替えとフィルター > ユーザー設定の並べ替え」を選択します。
  1. 各オプションについて、求める形式にカスタマイズしましょう。
  1. 「列」項目で、「最優先されるキー」の列を選択します。
    「次に優先されるキー」として、2番目の列を選択します。
  2. 「並べ替えのキー」項目で、「値」を選択します。
  3. 「順序」項目で、「最小から最大」や「最大から最小」を選択します。
  4. 左下の「+」ボタンでレベルを追加していき、並べ替えに必要な他の各列について、以上の手順を繰り返します。
  1. データに見出し行がある場合は、「先頭行を列見出しとする」にチェックを入れます。
  2. 「OK」を選択します。

このように、「ユーザー設定の並べ替え」から「並べ替えるレベルを追加」していくことで、より詳細な並べ替え設定を行えます。

ピボットテーブルを使用する

ピボットテーブルとは、大規模なデータを自動集計・分析するための機能です。ピボット(pivot)は「回転軸」、テーブル(table)は「表」を意味する単語であり、大規模なデータから分析したい項目を軸に置き、表として可視化できます。

組織内に蓄積されたデータがあっても、そのデータを分析する人がいないために、「データが持つ意味を可視化できていない」ケースがあると思います。そのような時に役立つのが、ピボットテーブルの「クロス集計」です。クロス集計は、その名の通り、項目どうしの掛け算でデータを分析でき、収集したデータに意味づけをしてくれます。

ピボットテーブルの作り方

  1. 集計/分析したい表の作成

まず、集計や分析をするための元となる表を作成します。

この際、”正しい形式”となっていない場合、ピボットテーブルを挿入する際のエラーの原因となります。作成された表が以下の点を守っているか、事前に確認しておきましょう。

  • 各列において、データの種類が同じ
  • 各行において、1件のデータが入力されている
  • 表の途中に空のセルや空行/空列がない

また、ピボットテーブルを挿入する際、項目名をもとに操作していくため、1行目には各列の項目名を入力しておきましょう。

  1. ピボットテーブルの挿入

「挿入」タブから、「ピボットテーブル」を選択します。

「テーブルまたは範囲を選択」にチェックを入れ、「テーブル/範囲」として集計したい表の範囲を選択します。また、ピボットテーブルの作成先として、「新規ワークシート」を選択します。

「OK」を押すと、新たなシートにピボットテーブルが作成され、右側にはフィールドが表示されます。

  1. 集計したい項目の選択

集計/分析のニーズに沿って、各項目を移動させていきます。フィールドから各ボックスへの移動は、ドラッグ&ドロップでの操作が可能です。チェックボックスを選択する場合、それぞれの項目が自動で各ボックスに配置されます。

「列」「行」「値」全てに項目が入ることで、クロス集計表が完成します。

また、ボックスの外へドラッグ&ドロップすることにより、集計が不要になった項目を削除できます。フィールド/各ボックス内を逐次入れ替え、その集計結果を素早く得られる点がピボットテーブル最大の特長です。

ピボットテーブルの便利な機能

  • 並び替え

項目を五十音や数値の大小の順に表示させたい場合、ピボットテーブルの「並べ替え」機能が役立ちます。

並べ替えたい項目のセルを右クリックし、「並べ替え」から、昇順/降順か「その他の並べ替えオプション」で任意の条件を設定します。

  • グループ化

「グループ化」とは、日付や時刻などのデータを、グループとしてまとめて表示できる機能です。

日付項目を行または列ボックスに追加すると、自動的に月ごとにグループ化されます。

また、四半期や年ごとのグループ化も可能です。

日付が入力されているセルを右クリックし、「グループ化」を選択します。

ダイアログボックスが表示されるため、「四半期」や「年」など、任意の単位を指定します。

またグループ化された日付は、「+」マークをクリックすることで、その詳細を閲覧できます。

  • スライサー機能

「スライサー機能」とは、特定の項目のみを集計したい際に用いる、いわゆるデータ抽出の機能です。顧客名や商品名などのテキスト形式のデータを抽出できます。

スライサー機能を追加する場合、「ピボットテーブル分析」タブから、「スライサーの挿入」を選択します。

スライサーは項目ごとに作成されるため、一覧の中から抽出したい項目にチェックを入れます。

選択した項目のデータのみが、スライサーとして抽出されます。

  • タイムライン機能

「タイムライン機能」は、スライサー機能と同様、特定の項目のみを集計したい際に便利なデータ抽出の機能です。スライサー機能と異なる点は、時系列のフィールドでデータを抽出する点です。

タイムライン機能を追加する場合、「ピボットテーブル分析」タブから、「タイムラインの挿入」を選択します。

スライサー機能と同様、一覧が表示されるため、抽出したい項目名を選択します。(今回は日付のみ)

これにより、ピボットテーブル上に特定の期間のみを表示させられるようになります。

  • 表示桁数の指定

大量のデータを集計していると、数値の桁数が多くなってしまうケースがあるかと思います。その場合、ピボットテーブルの機能により、表示桁数を千単位/百万単位などに調整すると便利です。

まず、「ピボットテーブルのフィールド」から値があるセルを右クリックし、表示されるメニューから「フィールドの設定」を選択します。

表示されたダイアログボックスから「表示形式」を選択します。

表示された「セルの書式設定」ダイアログボックスから、「ユーザー定義」を選択し、千単位にしたい場合は「#,##0,」と入力します。この時、1つ目のカンマは桁区切りの意味を持っており、2つ目のカンマが千単位で区切る役割を果たしています。

そのため「#,##0,」と入力した場合、“7654321”の値は“7,654”と表示されます。(小数点以下を表示しない設定の場合)また、最後のカンマを増やしていくことで、値が÷1000ずつされていくため、百万単位は「#,##0,,」、十億単位は「#,##0,,,」と表されます。

  • ピボットグラフ

ピボットテーブルのデータをグラフとして可視化したい場合、ピボットグラフの活用が便利です。表よりも、データの推移や大小比較がわかりやすくなります。

作成する際は、「ピボットテーブル分析」から、「ピボットグラフ」を選択します。

表のデータを反映させたグラフがすぐに作成されます。

グラフの種類の変更は、「デザイン」タブから「グラフの種類を変更」を選択することで行えます。

条件付き書式を使用する

条件付き書式は、値や文字列などに関する特定の条件に基づき、セルの色を自動変更できる機能です。特定の条件に合致するデータを強調表示することで、そのデータセットの傾向や外れ値などを効率的に確認できるようになります。

大量のデータを可視化/確認するのに便利な機能

  • 特定の文字列を含むセルを強調する

特定の言葉や文字を強調したい場合は、「セルの強調表示ルール」を使用します。

まず、条件付き書式を設定するセル(今回は購入商品名)の範囲を選択します。ホームタブの「条件付き書式」から、「セルの強調表示ルール」「文字列」を選択します。

「特定の文字列」「次の値を含む」が指定されていることを確認し、書式設定する文字列(今回はハンバーグ)を入力します。文字やセルの塗りつぶしの色を変更する場合は、「書式」から選択します。

以下のように、「ハンバーグ」が含まれるセルに強調表示が適用されました。また、同じ範囲に複数の書式設定を適用することも可能です。

  • 最大値から最小値までにグラデーションをつける

ある範囲において、値の大小によってグラデーションをつけたい場合には、「カラースケール」の機能を利用します。カラースケールを適用することで、該当する値が「どの範囲にあるのか」や「どのような分布か」を視覚的に把握できるようになります。

まず、カラースケールを適用するセルの範囲を指定します。そして前述の強調表示ルールと同様、「条件付き書式」から「カラースケール」を選択します。

指定した範囲にカラースケールが適用されます。(今回は値が大きい順に赤色が濃くなる設定)

  • 指定の値より大きい/小さい値を強調する

条件付き書式では、値の上限や下限を設定できます。今回は下限を設定し、それより大きい値を強調表示します。

範囲(今回は購入点数)を指定した後、同様にして「セルの強調表示ルール」から「指定の値より大きい」を選択します。

「セルの値」「次の値より大きい」が指定されていることを確認し、下限の値(今回は10)を入力します。

「OK」を押すと、指定した範囲における10以上の値が強調表示されます。

  • 複数条件に合致する値を強調する

複数条件に合致する値を強調表示したい場合、OR関数やAND関数を利用します。

今回は例として、「合計金額が4000円以上かつ、購入商品の分類がお菓子または冷凍食品」を強調表示する方法をご紹介します。

強調表示を適用するセルの範囲を指定したら、「セルの強調表示ルール」から「その他のルール」を選択します。

ルールの種類として、「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択します。

数式用の入力欄が表示されるため、OR関数やAND関数を用いて、設定したい条件を数式で表現します。

「OK」を押すと、複数条件に合致するセルが強調表示されます。

  • 重複データがないかをチェックする

複数のデータソースからデータを収集していると、データの重複が生じることがあります。この場合、条件付き書式の設定から重複データを強調表示することで、データチェックを効率的に行えます。

まずチェックしたい範囲を選択し、「セルの強調表示ルール」から「重複する値」を選択します。

「一意の値または重複する値だけを書式設定」「重複」が選択されていることを確認し、「OK」を押します。

重複したデータが強調表示されます。

Excelで大量のデータ処理が難しい5つの理由

前章では、Excelで大量のデータを処理する方法についてご説明しました。しかしその中で、Excelではどうしても対処しきれない問題もあります。本章では、Excelで大量のデータ処理をする際に起こりうる問題を5つ紹介します。

Excelが扱えるデータ容量に限界がある

前章の「グリット制限以上のデータセットを開く方法」でもお伝えしたとおり、Excel 2003以降では、1,048,576行 × 16,384列の制限があります。そのため、複数のデータソースから抽出したデータをまとめて管理していたりデータの保管期間が長かったりする場合は、容量が不足する可能性があります。

この状況を解決するためには、外部ツールの利用が効果的です。Excelの代替となる外部ツールとして、データウェアハウスやETLツール、BIツールなどが挙げられます。

これらのツールは、クラウド上に構築されていることが一般的です。そのため、データ量が大きくなっても、その都度容量を拡張できます。それに対しExcelは、オンプレミスのサービスとしてローカルな環境で使用するため、スケーラビリティの観点で劣ってしまうでしょう。

エラーが起こりやすい

大量のデータを統合したり、複数のデータソースから集約したりすると、特定の行/列に文字や数値が混在し、データの整合性が崩れてしまうケースがあります。

この場合、Excelの「データの入力規則」機能が有用です。この機能を使えば、セルにテキストや数値のみを許可することができ、データ検証を実施できます。さらに、ユーザーが誤ったデータを入力した場合に警告メッセージを表示させる設定もでき、エラーの要因を未然に防ぐことが可能です。

また、複数のデータソースからデータを集約したり、コピー&ペーストを繰り返したりすると、同じデータが重複してしまうケースがあります。重複データも文字や数値の混在と同様、エラーを引き起こす要因となります。

この場合、Excelの「重複を削除」機能が有用です。この機能を活用することで、重複している行の検出、削除が可能です。また、前章の条件付き書式でも説明した「重複したデータを強調表示する」ことでも、重複データを効率的に発見できます。

複雑な処理ができない

Excelは、直感的な操作性や豊富なテンプレートから、比較的簡単なデータ処理には最適なツールです。しかし、以下のような複雑な処理を行いたい場合、通常のExcelの機能のみでは困難となるでしょう。

  • 大規模なデータクレンジング
  • 多変量回帰分析やクラスタリング分析など、高度なデータ分析
  • 定期的なデータ更新や集計の自動化
  • 多重ループを組み合わせた計算

そこで、Excelに採用されている高度な数式やマクロ、またその他ツールとの連携が必要になります。

「多重ループを組み合わせた計算」は、INDEXやMATCHなどの高度な関数を駆使することで実現可能です。「定期的なデータ更新や集計の自動化」に関しても、マクロを組むことで実現可能です。さらに、Excelに実装されているVBAを使えば、毎日更新されるCSVファイルを読み込んで新たに計算し、フィルタリング結果を別シートに自動保存するといった複雑な処理も実現できます。

ただ、「大規模なデータクレンジング」や「高度なデータ分析」はExcelのキャパシティを超えているといえるでしょう。そこで、ETLツールやBIツールなどの外部ツールと連携する必要性が生じます。

多くのツールでは、Excelをデータソースとして簡単にインポートできます。そのため、データ量の多寡に依存せず、データクレンジングを自動化したり、分析結果をグラフやダッシュボードにリアルタイムで反映させたりすることが可能です。

データの整合性を保つのが難しい

さまざまなシステムやデータソースからデータを取得していると、フォーマットや形式、命名規則が異なる可能性があります。またExcelでは、データの改変や削除が簡単に行えるため、手作業による入力ミスや編集ミスが起きやすいです。その結果、データの整合性が取れなくなり、データ品質の低下につながってしまいます。

データの整合性を保持するためには、まず定期的なデータ検査が重要です。これにより、不正確なデータやそれに伴うエラーを、早期に発見できるようになるでしょう。

データの一貫性を保つためには、前述した「データの入力規則」の機能が効果的です。この機能によってデータ形式を制限することで、異なる形式のデータの混在や入力ミスを抑止できます。

Excelの動作が遅くなる

Excelはオンプレミスのソフトウェアであるため、データ量が大きくなってメモリが不足すると、処理速度が低下してしまいます。また、データ量の増加にともない、関数や条件付き書式を過剰に使用すると、動作が遅くなるケースもあります。

初歩的な解決策として、大きなデータセットは複数のシートやファイルに分割することが効果的です。これにより、1つのシートにかかる負荷を低減でき、処理速度の向上が期待できます。また、不要な条件付き書式は削除しておきましょう。

大量のデータを処理するならETLツールがおすすめ

前章の理由のとおり、Excelでは大量のデータを扱うことが困難な場合があります。そこで、Excelの代わりにデータ処理を行ってくれるのが、ETLツールです。本章では、「ETLツールがどのような機能を持つのか」、そして「その機能がどのようなメリットを創出するのか」を解説します。

ETLツールの代表的な機能

ETLとは、データを分析するための前処理であり、Extract(抽出)、Transform(変換・加工)、Load(書き出し)の略語です。さまざまなデータソースからデータを抽出し、適切なフォーマットに変換して、データウェアハウスに書き出します。ETLツールは、このETL処理のプロセス全体をサポートするツールなのです。

データの抽出

データの抽出は、ETL処理における最初のプロセスです。

データベースやドキュメント、アプリケーションなど、分析に必要なデータをさまざまなデータソースから抽出します。この中には、CSVなどの構造化データはもちろん、PDFや画像、動画などの非構造化データも含まれます。

抽出のプロセスでは、データソースから効率的にデータを収集しつつ、一貫性を保持することが重要です。そこでETLツールは、このプロセスを自動化/半自動化し、抽出時に発生しがちなエラーやデータの不整合を抑止する役割を果たします。

データの変換・加工

データソースから目的のデータを抽出した後は、データの変換・加工を行います。

このプロセスでは、データウェアハウスなどへの書き出しが行いやすいよう、一定の規則に従ってデータの変換・加工を実施します。データ変換は、以下の手順で構成されています。

  1. データの把握
  2. データ品質の確認
  3. データクレンジング
  4. データマッピング
  5. プログラムの作成
  6. データの確認

ETLツールは、これらの作業を大幅に効率化させられるツールです。たとえば、データクレンジングを自動化する機能を備えていたり、GUI上で簡単にデータマッピングを行えたりします。また、データの品質チェックやテスト機能を備えているツールもあり、迅速な問題の特定、修正が可能です。

データの書き出し

データの書き出しは、ETL処理における最後のプロセスです。

変換・加工したデータをデータウェアハウスなどの最終的な格納場所へ書き出します。このプロセスが終われば、BIツールと連携してデータの分析、可視化を行えます。

ETLツールには、TableauやPower BI、Lookerなどの主要なBIツールとのネイティブコネクタやAPIが用意されています。つまり、ETLツールを利用することで、前処理したデータをBIツールへシームレスに連携できるのです。

ETLツールのメリット

前章で解説した機能をETLツールが担うことにより、データ分析においてさまざまな恩恵が得られます。ETLツールを利用するメリットを正しく把握しておき、導入を検討する際の判断材料としましょう。

データ管理が効率化する

ETLツールを導入することで、プログラミングをせずにデータの抽出・変換・書き出し(格納)のプロセスを自動化できます。これにより、手作業でのデータ取り込みや加工を大幅に削減でき、データ管理が効率的になるのです。

またETLプロセスが自動化されることで、データの一元化と統合の作業のハードルが低くなります。その結果、データ管理業務の効率化やプロセス改善が図れます。

効率と生産性が向上する

ETLツール導入によって、ビジネス効率と生産性の向上も期待できます。ETLツールはプログラミングの知識や専門的なスキルが不要なため、ビジネスサイドのメンバーでも作業を遂行できます。これにより、組織全体としてのビジネス効率と生産性が向上するでしょう。

また、データ処理にかかる時間を短縮化できたり、開発環境が整うことで開発工数を削減できたりします。結果として、今までそれらの作業に配分していたリソースを他の業務に割くことができ、より多くの時間を付加価値を創出する業務に充てられるようになります。

データ品質の確保や改善ができる

ETLツールを導入することで、データ品質の確保や改善が行えます。

たとえば、データクレンジングなどの作業が自動化されることで、データの完全性や一貫性を保持できます。また、ETLツールはストリーム処理を実現できるため、データの適時性の確保が可能です。

このように、ETLツールはデータ品質を構成するいくつかの評価基準にアプローチでき、データ品質の保持/向上に寄与します。その結果、信頼性の高いデータを基にした定量的な分析を行え、正確かつ迅速な意思決定が可能となります。

エラーを減らせる

また、人為的なエラーを削減できる点も、ETLツールを導入するメリットです。

データ処理が自動化されることによって、誤変換やデータの逸失などの人為的なミスが起きるリスクを低減できます。これにより、データの品質を維持しつつ、余剰したリソースを別の業務へ有効活用できるようになります。

データ管理に高度な知識が不要

ETLツール自体のメリットとして、データサイエンスに関する高度な専門知識やプログラミングのスキルが不要である点が挙げられます。

もちろん、最低限のデータリテラシーは求められますが、ETLツールを導入することで、直感的に理解しやすい開発環境を整備できます。そのため、ビジネスユーザーでもデータの操作や管理が可能となり、社内リソースに制約のある状況でも、効果的にデータ活用ができるようになります。

大量のデータ処理をするならTROCCOがおすすめ

これまで、大規模データの分析にあたって、さまざまなデータの事前処理が必要である点、その事前処理にはETLツールが便利である点を解説しました。その中でもデータ基盤総合支援サービス「TROCCO」は、ETLツールとしての基本的な機能にくわえ、大量のデータ処理をサポートするさまざまな機能を兼ね備えています。

TROCCOを活用することで、複雑なETLパイプラインであっても、GUI上の操作だけで簡単に自動化できます。実際、簡単なETLパイプラインであれば、ノーコードで最短5分で構築可能です。

また、TROCCOが大量のデータであっても高速処理できる理由として、ETLの処理エンジンにEmbulkを採用している点が挙げられます。Embulkは、並列処理をサポートしており、マルチスレッドでのデータ処理が可能です。そのため、大量のデータでも高い処理能力を実現できるのです。

さらに、Embulkはスケーラビリティにおいても優れています。まず、クラウドネイティブな環境上で動作するため、必要に応じて柔軟にリソースを追加可能です。また、プラグイン機構を採用しており、さまざまなデータソースから接続できます。実際TROCCOは、50種類100以上のDB・ストレージ・SaaSとの連携に対応しています。

まとめ

本記事では、Excelで大量のデータを効率的に処理するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説しました。

しかし、記事内でも説明したとおり、大量のデータを効率的に処理するには、Excelだけでは不十分な場合があります。そこで、Excelの限界を正しく理解し、必要に応じて外部ツールを利用することが大切です。

そこで、大量のデータ処理において大きな役割を果たすのが、ETLツールです。ETLツールはデータ分析に必要な前処理を自動化してくれるため、データ管理の効率化やデータ品質の確保が期待できます。

ただ、現状の大量のデータ処理に課題感を抱いていても、「どのようなETLツールが自社に適しているのかわからない」方も多いでしょう。そのような場合は、TROCCOを提供するprimeNumber社に一度ご相談ください。ご要望に合わせた提案を行い、ビジネスニーズに合ったETLパイプラインの構築をご支援します。